sogor25
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2019/04/24
"病院薬剤師"が主人公というだけではない、これまでにない医療マンガ
近年、ややニッチな分野をテーマにした医療マンガが人気になりつつあります。ドラマ化された作品だけでも、病理医が主人公の「フラジャイル」、産婦人科が舞台の「透明なゆりかご」そして平成最後の月9ドラマとなった放射線科が舞台の「ラジエーションハウス」などなど…そして、"病院薬剤師"である葵みどりを主人公として描かれるのが今作です。 今作には、何でも解決できるようなスーパードクターも、私腹を肥やす倒すべき悪徳医師も登場しません。そのかわりに描かれるのは、主人公の葵先生を始めとした「患者さんのため」を想って日々の業務に携わる医療従事者達。彼女達は患者の「当たり前の毎日」を守るために日々の業務を遂行していきます。 そのため、この作品は従来の医療マンガとは少し異なった雰囲気を見せます。例えば、葵先生は主人公らしく熱血漢気味の性格なのですが、その熱血の心で突っ走るだけで問題を解決することは決してありません。突っ走りそうになるところを周りが諭したり影ながら支えたりして、気持ちだけでなく薬剤師としての知見をちゃんと駆使しながら解決を図ろうと奔走します。 また、主人公が医師ではなく薬剤師ということから、患者の生死に関わるような大きなイベントを常に扱ってはいないというのも特徴の1つです。あくまで日常の業務の中で、薬剤師として患者に接する中で直面する問題を描いており、他作品に比べてドラマチックな展開はないかもしれませんが、その分心構えをすることなく読むことができ、でもしっかり心に残るものがある作品となっています。 そして、私がこの作品の1番の魅力と感じている点が「チーム医療」を感じられる作品という点です。医療マンガ・医療ドラマといえば、スーパードクターが問題をバリバリ解決していく、もしくは悪徳医師が登場してそれを仮想敵として打倒していく、という作品が多いように思います。また、ドラマではナースが主人公の作品も多々ありますが、そのような作品も物語の舞台はナ―スステ―ションが中心で、他の医療従事者との接点が薄い作品が多い印象があります。でもこの作品は、仮に初出で性格の悪そうなキャラが出てきたとしても、それは敵対すべき存在ではなく、共に医療を作っていくチームの一員という描かれ方をします。そのため、意見が違った場合には、相手を論破するのではなく今後長く協力していくための"説得"もしくは"議論"するという様子が描かれます。実際、医師と薬剤師が治療方針について"議論"をしている様子を描いている作品はこれまでに殆どなかったのではないでしょうか。この作品は主人公の薬剤師だけでなく、医師、看護師、その他の医療従事者も含めて病院の全てのメンバーで"チーム医療"を支えている様子を垣間見ることができる、稀有な作品だと思います。 このように、色んな意味でこれまでにない医療マンガになりつつある、それがこの「アンサングシンデレラ」という作品だと思います。 2巻では"調剤薬局の薬剤師"という、同じ薬剤師でも特徴の異なる存在も描かれており、今後もたくさんの面から医療の現場が描かれることを期待しています。 2巻まで読了
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/02/10
潔癖症小学生美少女×美少年殺し屋の恋!?
小説家・舞城王太郎×漫画の新作! ジャンプ+で注目の新連載の一つ。 バイオーグトリニティでもめちゃくちゃ絵がきれいな大暮維人先生とタッグを組んでいましたが、今度は以前マガポケでかわいい女の子に思わせぶりなことをされる男子中学生の話を連載されていた百々瀬新先生。 この漫画がなんだかもう相手は女子中学生なのに妙に色っぽくて、読んでたらどぎまぎして体温上がってしまうんですよ。 前作『コイツ、俺のこと好きなのか?!』一話→https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029158729 今作の主人公は女子小学生の高学年なんですが、かわいいのにやはり妙に人間的な色気がある! そこがなんだかとてもいいんですよね。 超潔癖症な女の子がいじめで目隠しされてゴミ屋敷に閉じ込められたら、地下に美しい少年が閉じ込められてて、帰ってきた家主はやばい奴で、さらに少年は殺し屋だった。 目の前で人を殺す少年。 鮮烈な出会い、清潔感のある美しい少年。 そう、それは恋。 潔癖症美少女と美少年殺し屋。 そこに一切のリアルさは無いが、なんか概念が美しかった。 そのまま掃除ついでに死体処理する美少女っていう話の続け方で、美少年も小学校に転入してきてこれはいよいよ面白くなっていきそうだなって感じです。 それにしてもやっぱり、絵がかわいいっていうのはとてもいいことですよね。
sogor25
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2019/03/05
「ダルちゃんは、私だ」と思わないで
はじめに、今回の感想は作品既読の方に向けた形で書いております。普段は自分の好きな作品を他の方にも読んでほしいという思いから未読の方が読むことを念頭に置き感想を書いておりますが、他の方のこの作品への感想を幾つか読むうちにある違和感を覚えるようになったので、今回はその違和感を解消しようと色々と考察してみた結果を感想として文章にしてみました。 かなりの長文となってしまいましたがお時間のある方はお付き合い頂ければ幸いです。 この作品の感想をいろいろと漁ってみると、肯定的な意見も否定的な意見も様々ありましたが、多くの感想に共通していたのが「共感」という視点でした。Yahooニュースでも「ダルちゃんは、私」という見出しで作品が紹介されているように、自身をダルちゃんに重ねたり、逆に共感できなかったりというのが感想に現れているものが多かったような気がします。 この「共感」というワード、特に作品を評価する上で「ダルちゃんに共感できる、できない」という基準で語られている点が、私がいろんな方の感想を読んで違和感を覚えるポイントでした。 私はこの作品を「他者への迎合という価値基準しか持たなかったダルちゃんが、自分自身が本来内面に持っている価値観の存在に気付き、それに従い生きるようになるまでの物語」だと思っています。 当初、ダルちゃんは人間の女性に擬態することについて全く違和感をもっておらず、それ故に序盤では飲み会の席でダルちゃんを見下した態度で接してきたスギタさんよりもダルちゃんに対して正論をぶつけるサトウさんに対して逆に嫌悪感を抱く様子が描かれていました。 それが、様々な人との関わり合いによって、他人からの目線に依存しない、文字通り自分の内面から発露する価値観を持っていることに気付き、最終的にそれに基づいて行動するようになる、その道程を描いた物語、という解釈です。 その過程で「他者へ迎合することの生きづらさ」を描かれていますが、それはダルちゃんが本来持っていた悩みではなく、上記の歩みの過程で生じたものであるため、この作品のメインのテーマではないと捉えています。 最終的にダルちゃんは恋愛と自己表現を両天秤に掛け、後者を選択します。かなり恣意的な捉え方になりますが、恋愛至上主義という外部の価値観に囚われず、しっかり自分の価値基準でどちらがより自分にとって幸せなのかを考えた上で出した結論という風に見ることもできるのではないでしょうか。 また、ダルちゃんとお付き合いを始めるヒロセさんのほうも、心理描写はそこまで多くはありませんが、ダルちゃんとの付き合いを継続することよりも、自身のプライベートを詩という形で公表されることを避ける道を選ぶ、という選択をしており、この選択もヒロセさん自身の価値観に従い出した結論と見ることができるのではないか思います。 この「周りに左右されずに自分の価値観に従って生きる」ということが、この作品の根底に流れるテーマなのではないか、私はそのように感じました。 確かに「他者に迎合する」様子に自分を重ねて共感し、涙する方もいると思います。しかし、共感して涙するということは、自身が実際に「他者に迎合する」ことに生きづらさを感じているということ。自分と同じような境遇のダルちゃんに涙する、で終わるのではなく、物語の結末でダルちゃんが至ったように、読者自身も自分が抱く生きづらさに対して自分の価値観で判断し行動するところまで進んでほしい。それが私がこの作品から受け取ったメッセージです。 ダルちゃんは恋愛と自己表現との両天秤については明確に答えを出しました。しかし、擬態して生きていく自分に「そこまで苦痛ではない」と強い拒絶を示さず、結果として擬態を継続する生き方を選択します。つまり、「他者に迎合する」ことが絶対悪ということではなく、他者に迎合すること自体が辛いのかどうか、どうすれば自分はより幸せになれるのか、というのをちゃんと自分の価値観で決めようよ、ということを伝えたいのではないでしょうか。 実は、私はこの作品を読み終わったとき、作品の好き嫌いはあるにせよ、「賛否両論」特に「否定的な意見」が多く出るような作品だとは全く思っていませんでした。それはダルちゃんへの「共感」以上に、この作品を通してダルちゃんが得たもの、そしてそこまで描ききったこの作品に対して感動したためです。 もし、この文章を通して、この作品に否定的だった方が(ダルちゃんのことを好きになれなくても)この作品自体を少しでも肯定的に思って頂けるようになったなら何よりです。 全2巻読了
たか
たか
2019/04/24
洋菓子から転向!下町と修行と人情と
「パティシエールを目指していた女の子が、和菓子職人の弟子になる物語。「そんなん面白いに決まってんじゃん…!」と読んだら、案の定面白かった! (違う世界に挑戦する話が大好きなんです…Real Clothes、スピナマラダ!、空手小公子 小日向海流みたいな) まずこの絵柄がいい! キラキラした少女漫画やシュッとした少年漫画じゃ出せない「素朴さと温かみ」が下町の義理人情を引き立ててたまらない。 そして職人の在り方・心構えをガッツリ丁寧に描いてるところがいい! 和菓子を作るには、材料から日本の四季と文化に精通しなくてはならない。よって親方や女将さんがなっちゃんを育てるために、あれやこれや手を尽くすし、なっちゃんも期待に応えるために真剣に努力する。 店には親方、兄弟子、店を取り仕切る女将さんがいて、和菓子の道を極めるうえで主人公彼らとは「師弟関係」という線引きがある。 尊敬と愛情で繋がる「親しいが馴れ馴れしさはない関係」が、職人の世界がすごくよかったです。 そして何より、全く道の厳しい世界でもヘコたれない、主人公の真っ直ぐな心とタフな根性が読んでいて気持ちがいい! こういう子好きです。 何も知らずに読み進めていたところ、20巻のあとがきで衝撃を受けました。 作者の方がご病気で逝去されており、その遺志を継いで未完のまま完結させるというお知らせでした。 アメリカから来た新しい弟子となっちゃんの関係がどう決着するのか本当にワクワクして読んでいただけに、「ここでなっちゃんの世界は終わり」といきなり知らされショックで呆然としました…。 未完ではありますが、作中の下町人情や美味しそうなお菓子、日本の伝統文化は本当に最高。 最初から未完であると知ったうえで楽しんで読んでほしい名作です!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/04/15
ポップでキュートでコミカルな童貞3人組! #読切応援
毎日昼休みに校庭に出てバレーボールで遊ぶ日常系四コママンガのように和やかな女子高生3人組、を見る野暮ったいクラスの端っこにいるような3人組がこの話の主人公。 漫研でもないのに生身の女子3人組の二次創作漫画をそれぞれノートに描いてきては交換するというキモ日課を送っていた。 彼女らのことはずっと見守るだけでいい、と距離を取っているが、その中の一人今井君は違う感情を抱いていた。それは・・・。 めちゃくちゃいい! まずページをめくってパッと目に入ったときの絵の印象が最高で、キャラのデフォルメ具合がたまらなくて見やすい。 イケてない彼らでさえとってもキュートだ。 キュートな絵柄なのに、女の子の描写はたまにエロくも見える色気がある。 団子っ鼻でメガネで白目でニヒルな女の子もいい味出してる。 これでいいのかと自問自答し大いなる一歩を踏み出す今井くんが素晴らしい。 いつまでもそのままずっと、ぬるま湯に見える薄めの硫酸風呂に入り続けることもできたのに。 「眺めるだけで本当にいいんですか!?」「小さな決断があとあと効いてくるんです!!」は自分たち自身に問いかけ続け毎日小さい後悔を積み重ね続けた言葉だろう。 沁みる。 最終的にもなんだかポップでかわいらしい結末が待っている。 ここで、なるほどそうだったのかと腑に落ちる。 そしてもう一度読み返すと、あーほんとだ、と。 とても好きな読切だった。 コンプレックスやダークサイドの描き方も傷心も全部ポップ! 全くエグくならず、コミカルで楽しい読み味が続く。 自分の中で早く連載を読みたい作家さんの一人になった。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/03/28
これはいい新連載がきた!
ちょっと未来のちょっと田舎の海辺に住む頑固おじいちゃん。 家族が心配して送ったのは、この仕事が終わったら廃棄が決定している30年動いているメイドロボ。 ガタがきてて首はすぐ落ちるし、包丁を持つとロボット三原則により人間を傷つけてはいけないから震えちゃうし、いろいろぽんこつだけど、とても愛らしくて構ってしまいたくなる。 しかし、500円玉のシーンほんとよかった。妙に説得力があって存在感と寂寥感が漂っててとてもシュールで最高の俯瞰の構図だった。 大ゴマの使い方がとても大胆で潔いので切れ味があって気持ちがいい。 そして、包丁の場面にしろ、イオンにしろ、500円玉にしろ、コマ割りが上手いので間が上手く表現されていてテンポがすごく気持ちいい。 あと単純にかわいい。 ああいう丸い目が好き! 基本的にキャラクターのデザインとか背景の描きこみとか、絵のバランスがすごく良くて好みだ。 最初は、設定的にはベタで手垢がついてるようにも感じたが、いままでの全然上手く描けてなかったんじゃないかって思うくらいすごくよく描けてていいなと思った。 おじいちゃんも「アリスと蔵六」の頑固おじいちゃん的で気持ちがいい。 ドラえもんのような家に転がり込んで一緒に住むタイプになるとは思うけど、のび太君の面倒を保護者の観点から見るような昔のドラえもんとは立場が若干違って、介護という意味では面倒をみられるのはおじいちゃんでも、おじいちゃんの方がより大人だしぽん子の方がトラブル起こすことになりそうだから逆転しそうな気もする。 二人のいい関係性が構築されていきそうで楽しみ。 おじいちゃんのボケ防止になって賑やかで寂しくなくなればいいな。
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