熊蔵
熊蔵
2020/05/30
闇カジノをイカサマで食い荒らす #1巻応援
漫画ゴラクらしい、裏社会のギャンブルノワールといった感じで、1話目からずっと緊張感と勢いのある漫画です。大型店舗のカジノではなく、闇カジノと呼ばれる違法賭博店を舞台に、主人公ゲンがディーラーとなり、客や店側をイカサマにかけて金を巻き上げようとするのですが、その場の緊迫感たるや尋常ではありません。ミスれば「死」という状況の中、イカサマをどうやって成立させるか?読者をドキドキさせる演出が抜群にうまいのです。作画・吉田史朗さんの漫画はけっこう好きで、これまで『村上海賊の娘』『甲鉄城のカバネリ』など読んできましたが、いずれの作品でも「雰囲気」を持ってる主人公像が良いんですよねぇ。劇画すぎない、かといって今どきの画とも違う、画力のある作家さんだと思います。覚悟と胆力を感じさせる顔つきだったり、人物の表情が素晴らしいですね。あと、原作者の方も相当凄い人じゃないかと睨んでますが、検索しても情報が一切出てこないので何者なのか気になるところです。(誰かご存知でしたら教えてください) ちなみに、この作品タイトルを初めて見たとき、オッサン的には「女喰い」という往年のエロ作品を連想いたしました。ちょっとしたエロ要素を期待してた部分も正直ありましたが、いい意味で裏切られたというか、本格的なギャンブル漫画で逆に良かった感じがあります。日本でもカジノ法案ができて、これから盛り上がる題材かもしれないので、ヒットしてほしいですね。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2018/05/13
まだまだやってやる
僕はお笑い芸人だ。 7年目でもまだ若手で、まだ売れてもいない。 今年で30になるが、意識するとふと他の生活を考えてしまうことがある。 そんなとき、いつも思い出すのは僕がお世話になった先輩と、この読切漫画だ。 この漫画は、売れていくイケメン芸人と、真剣にお笑いに向き合っていたが苦悩の末にアイドルにハマって辞めていった主人公を描いている。 イケメン芸人は主人公・清水の才能を羨み、清水はイケメン芸人を妬んだ。 僕の先輩は、心底面白くて、芸人の誰からも愛されていて、でも地味で人気がなかった。 僕なんかのことを可愛がってくれた「大久保たもつ」さんという大好きな先輩だ。 深夜のバラエティに少しずつ出始め、ドラマ化した芥川賞受賞作の「火花」で売れていく若手芸人役を演じて、去年の冬に、突然芸人を辞めた。 「ODD FUTURE」の主人公・清水は、実はこの大久保さんがモデルだと聞いた。 当時、まだ芸人を辞める前に、この漫画を読んだ大久保さんがTwitterで感想をつぶやいたところ、作者から返信があったと喜んでいた。 この漫画がいいのは、もがいた闇の向こう側に一筋の救いを見せてくれているところだ。 僕たち若手芸人はその一筋の光にすがって売れるか辞めるまで、もがき続ける。 おそらく都内にいるであろう1万人ほどの売れていない芸人が抱えている苦しみ、葛藤、光と闇を生々しく描いてくれている。 主な収入はアルバイトで、睡眠時間削ってたくさんライブに出ていっぱいオーディションを受けても売れなければお笑いでの給料は雀の涙だ。 それでも頑張れるのはひとえにお笑いが好きだから。 しかし好きでも結果が出ないと疑念が首をもたげ、自身の才能を疑い、貧しい老後、孤独死を考えない人はいないだろう。 僕が大好きな先輩も芸歴10年目にして辞めてしまった。 夜道で泣きながら必死に自転車をこいで気持ちを紛らわせた記憶がまだ生々しく残っている。 しかし、実はいまその大久保さんは就職して幸せそうに暮らしている。 人生何が起こるか分からない。 この漫画はあくまで可能性だ。 再び立ち上がることもあるかもしれない、そうじゃないかもしれない、もっと向いていることがあるかもしれない。 この漫画を読むと、それでも自分が思う幸せに向かって頑張ろうじゃないか、少しでも報われることもあるかもしれないよね、と語り掛けてくる、気がするのだ。 そう思うとまだ頑張れる。 今年で30。 結構じゃないか。 80で死ぬとしてもまだあと50年。 余裕余裕。 折り返し地点にすら来ていない。 まだまだやれる。 やってやる。 読切がずっと読めるモアイさんはありがたい。 http://www.moae.jp/comic/chibasho_oddfuture
pennzou
pennzou
2020/05/04
小さな物語で描くもの
「窓辺の春」は月刊フラワーズ2019年4月号に掲載された鯖ななこ先生による短編読切作品だ。 鯖先生は現状自著の発行がなく、また作品も月刊ないしは増刊フラワーズにしか掲載されていない。そのため、鯖先生を存じない方が多いと判断し、まず鯖先生の経歴を記す。(間違いがあればご指摘頂けると嬉しいです!) 鯖ななこ先生は月刊フラワーズ2017年8月号にて発表された第90回フラワーズコミックオーディションにて金の花賞(賞の位としては第2位にあたるが、金の花賞以上が出ることはそうそうない)を受賞、受賞作「最適な異性となる要因の主観的考察」が増刊フラワーズの同月号に掲載されデビューした。以降より増刊フラワーズでは短編読切を、月刊フラワーズでは定期購読の販促4コマを執筆されていた。初の連載作品は月刊フラワーズ2018年5月号より開始された「きょうのヤギさん」で、現在も続いている。「きょうのヤギさん」は先述の販促4コマの設定を汲んだ4コマショートで、物語形式の作品が月刊フラワーズ本誌に掲載されたのは2018年10月号の短編読切「おとぎの杜」が初めて。以降、いくつかの短編読切と短期連載作品「Hide&Seek」が発表されている。 この経歴は、例えばデビュー当時の岩本ナオ先生も同様に販促4コマ(「町でうわさの天狗の子」の巻末に収録)や短編読切・短期連載(「スケルトン イン ザ クローゼット」に収録)を執筆しているように、フラワーズ生え抜き作家の定番ルートといえる。ただし、4コマショートとはいえかなり早い時期から連載を任されているパターンは珍しく、ここから編集部から特に期待されている(悪い言い方だと囲い込まれてる)のでは?と察することも出来る。 「窓辺の春」に話を戻す。本作は月刊フラワーズで発表された作品としては2作目となる。自分は前作の「おとぎの杜」で鯖先生の読切をはじめて読み、もしかしてこの人のマンガはすごいのでは……?と思いはじめ、本作でそれが間違いでなかったことを確信した。 鯖先生作品では「主人公が失ったものや隠れていたものに気がつき、見方を変える」ということが多く行われる。その変化がもたらす心地よさが魅力だと思う。本作ではその上で主人公の行動が他のキャラクターに伝播していく様子が描かれており、より風通しのよい作品になっている。 個人的にビビっときたのは、(ややネタバレになるが)おじさんが清潔な身なりで出掛けるシーンがあるのだが、なぜおじさんがその格好をしたのかを、後のたった1コマで表していた点だ。そのほんの小さな、しかしあざやかな手腕に惚れ惚れした。 本作は決してスケールの大きい物語ではない。小さな物語だ。しかしながら、岩本先生などフラワーズの先達が描いてきたように、小さな物語によって表せるものはあり、それがフラワーズらしさを形作る要素のひとつだと考えている。その潮流に鯖先生は乗っていると思う。 絵柄については丸みを帯びた親しみやすい画風であるが、大胆なトーンワークなどグラフィカルな要素も多く含まれており、それが鯖先生らしい画面にしている。 先述の通り、鯖先生単独名義の自著は未だに発行されていない状況である。しかし現在も断続的に短編は掲載されており、直近だと月刊フラワーズ2020年7月号に短編「おしゃべりな人魚」を掲載予定だ。これを除いても、単行本一冊分のストックは十分にある。 ただし、フラワーズ新人の初単行本は、めちゃくちゃハードルが高いのか、それはもう全然出ないのだ。最後に出たのは2017年12月の笠原千鶴先生「ボクんちの幽霊」が最後だったはずで、つまりここ2年以上出ていません。 それでも、初の自著が出版されるのを自分は心より待っています……
まるまる
まるまる
2019/07/02
人が生まれてきた意味を知る少年少女たちのドラマ
小学生が主役の学園漫画と侮るなかれ。 主人公、紗南の太陽ような底抜けの明るさが周りの人間を巻き込み、心に傷を負った人間は「自分はなんのために生まれてきたのか」を問い、そして知るというかなり重厚なテーマを持った作品です。 学級崩壊といじめ、羽山の家庭問題から始まり、紗南の失恋、出生の秘密と、次から次へと試練が止みませんが、乗り越える度に登場人物たちの絆が強くなっていきます。 中学生編では、紗南の役者としての人気が上がったことで生まれた芸能界特有の根も葉もない噂のせいで、羽山の心が再び荒れるという事態に。 親友・風花との間にできた溝や羽山とのすれ違いの生活の中で、仕事に生きると決めた紗南の、強いはずの心にも少しずつ無理が出てきて…という、人間の光と影の部分を丁寧に書き出しているのがこの作品の魅力です。 作中、羽山は「紗南に出会った自分はツイている」と言います。 最後に、生まれてこなければよかったと心閉ざしていた自分を救ってくれた紗南が、心を病み以前の明るい紗南ではなくなってしまった時の羽山の涙には、もらい号泣必至です。 大人になった今読んでも間違いなく面白いのですが、 いたいけな子どもがこんなにも汗と涙と血を流し、命をかけて自分の大事なものを守ろうとしているのに自分は…ッ!となる場合も?笑 Deep Clear 「Honey Bitter」×「こどものおもちゃ」小花美穂 特別番外編 に大人になった紗南と羽山が描かれているのでこどちゃファンは必読ですよ!
banner
banner
banner