あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/06/18
「眼差し」と「間」で描く恋愛の強度
かずまこを先生の作品は、登場人物の強い「眼差し」にやられることが多い。 『純粋アドレッセンス』のななおの向こう見ずさ、『ディアティア』の睦子の、純粋に相手を知りたい感情、『さよならフォークロア』の二人の、現状を乗り越える意思etc……彼女達の「眼差し」が伝える強い感情に胸を打たれ、動悸が止まらなくなる。 彼女達に見つめられた者は、時に目を逸らし、時に見つめ返す。表情を僅かに変えながら、その「間」で思考を巡らせ、言葉を返す。 交わす気持ちの、伝わらなさがもどかしかったり、ふと通じる瞬間にときめいたり……いずれにしても、二人の「間」そのものが愛おしい。 かずまこを先生の作品の描く「眼差し」と「間」は、この短編集『名前はまだない』の各掌編に端的に描かれている。 まずこの短編集で、かずまこを先生の「眼差しと間の強度」を知るのもいいと思う。連載作品にも全く同じ強度があるという、その贅沢さをお伝えしておきたい。 ●3秒ルール 相手の言葉に、返事するまで3秒以内。言葉に詰まったら負け。 ●uracoi 睨んでからコミュニケーションする女子の、佇まいに惚れる。でも告白してくれたら、眼を逸らすなんて……。 ●恋はお静かに わたしが頭を打ったら、寡黙な委員長の饒舌な脳内がダダ漏れ? ●消し去る恋と願いごと 片想いしている先輩が、急に明日スイスに引っ越し!?先輩は私の秘密の願いを知りたがる。 ●名前はまだない(recalculation、interim solution含む) 本心を隠して周囲との距離を楽しむ優等生女子は、ぶっきらぼうな孤独女子が気になる。気を引き、距離を縮め、駆け引きするも、彼女はなかなか厄介で……。 ●匿名プロローグ 保健室の先生と女子生徒の恋物語『純粋アドレッセンス』の冒頭エピソード。
sogor25
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2019/08/14
これは"天才"の物語ではない
「平成最後の天才が現れた。」 単行本1巻の帯に大きく書かれた一文。これを見た瞬間、私は『あ、これって"響~小説家になる方法~"のような作品なのかな?』と思いました。実際、主人公・戸田セーコは才能があるものの失語症気味でコミュニケーションに難のある人間として描かれており、1巻の前半まではセーコとその担当編集・タナカカツミを中心に描かれ、1巻後半では2人目のマンガ家・NORuSHとその担当編集・西との読み切りの人気アンケート対決へと話が進んでいきます。 このまま"セーコの物語"として、セーコの才能を描いていく物語なのかなと思いながら読み進めていましたが、2巻に入った辺りから徐々にその雰囲気が変わってきます。 1つのターニングポイントは2巻の冒頭、セーコがNORuSHに誘われてコミケに参加する所にあります。コミケを描くこと自体はマンガではよくあることですが、今作では新人とはいえプロの作家であるセーコが同人活動という形で他者の作品に触れ、影響を受けていくという形で描かれていきます。この段でセーコが"完全なる天才"ではなくなり、才能を持っていながら未完成で今後成長を控えている人間だということがはっきりと示されます。 また、物語が進むにつれて徐々にカツミやNORuSHの描かれ方も変わってきたように思います。カツミは1巻ではセーコとの関係性を中心に描かれていましたが、徐々に対戦相手である西や他の編集との関わり、そしてコミケで自ら発掘した新人マンガ家との関係が描かれていきます。また、NORuSHはセーコとの対決の中で、自らの創作活動との向き合い方、そして進んでゆく道について悩む様が描かれていきます。 つまり、この作品は「周囲に影響を与える"1人の絶対的な天才"の物語」ではなく、「1人のマンガ家とその周囲の人々が共に切磋琢磨しながら成長する"群像劇"」なのではないかと思うのです。 マンガ好きの中では話題になっている作品の1つだとは思いますが、あらすじや帯コメントなどの外からの情報ではなかなかそういう所まで見えてこないので、実際に読んでみて面白いかどうか判断してほしいと思う作品の1つです。 2巻まで読了
sogor25
sogor25
2019/07/17
誰もが悩みを抱えながら生きている
主人公のアオイは傍から見れば美人の美大生、しかし実は自分に自信がなく、我が身を取り繕う皮として女装をする男性であった。女装することで自らの内面を包み隠し他人と関わることが出来ていたアオイが、美大の中で友人たちと心を通わせる内に、化粧と服装で覆った内側の自分自身と向き合っていく物語。主人公視点でいうと「着たい服がある」などが近しい作品かもしれない。 しかしながらこの作品は主人公アオイの視点だけではなく、アオイの友人、またその友人と視点主を移しながら進んでいく。そしてその誰もが何かしらの悩みを抱えていて、その悩みを他者との関わりの中で少しずつ解消していく。 登場人物の悩みはアオイのようにジェンダーに関連の深いものもあれば、純粋な将来への不安や恋愛関係など様々。ジェンダーに悩みを抱える登場人物の物語は最近増えてきているが、表現の仕方によっては作品の中の人物と"当事者"ではない読者との間に距離が生まれ、どこか別の世界の物語を見ているような感覚を覚えることがある。しかし、この作品はより読者にも身近な悩みを持つキャラクターも織り交ぜながら描くことによって、本来読者が知り得ない悩みを持つアオイのような登場人物にも親近感を持って触れることができる。 また、本来"多様性"の塊のような空間である美大を舞台にすることで、その"多様性"の中でも色々な悩みを抱えながら日々の生活を送るアオイたちに共感しやすくなっている。 先に挙げた「着たい服がある」や「コンプレックス・エイジ」、もしくは「青のフラッグ」のような群像劇の要素も含んだ物語が好きな方にはオススメしたい作品。 2巻まで読了。
兎来栄寿
兎来栄寿
2020/06/02
完璧な読切がここにありました。
現在、マンガワンで『暑がりヒナタさんと寒がりヨザキくん』を連載中のますだ悠さんによる読切です。こちらの作品で「第1回YGマンガ大賞]入選&審査員特別賞」を獲ったそうですが、さもありなん。あまりにも完璧な読切で身震いしました。もう大好きです。 “今思うとずっと姪のことを憐れんでいたと思う” という手書きのモノローグから始まるこの物語は、物書きになりたいという夢を果たせずOLとして無感情に働くさゆりと、彼女の姪であり夢を追いギターの弾き語りをするゆづはの二人に焦点が当てられ進行していきます。 さゆりが如何にして夢を抱き、それを叶える為に周囲の反対も跳ね除けて努力し続けて、そして結果的に挫折するに至ったか。それは悲しい物語ですが、夢を持ちながら叶えられなかった多くの人が共感する在り方でしょう。 姪には自分と同じような想いを味わって欲しくないと思いながらも、渦中のゆづはは目を輝かせながら夢を叶える為に邁進していく。その時の複雑な胸中が見て取れます。それはやがて今の自分のようになってしまう可能性が高いという単純な心配や憐憫だけではなく、もしかしたら嫉妬のような感情も入り混じるものだったかもしれません。 最後まで連綿と続く手書きのモノローグと、「姪っ子の歌」というタイトルが重なった時、破れた夢の果てに生まれた物を目の当たりにした時、最大の感動が押し寄せました。かつて自分から生じた情熱が今は冷めてしまっていても、往時には新たな土で萌芽を誘っており、そこで咲いた小さな花が再び冷めた自分にも熱を灯す。そんな在り方に尊さを覚えました。 二人の絆に胸が暖かく、熱くなる素晴らしい物語でした。会社が違うので難しいかもしれませんが、『暑がりヒナタさんと寒がりヨザキくん』が単行本化される際などに収録して欲しいなぁと思います。話題にならずに埋もれてしまうにはあまりにも惜しい作品です。
たか
たか
2019/08/22
Aセクシャルと孤独と家族
無性愛者(Aセクシャル)とは、**「他者に対して恋愛感情を寄せることや、性的な欲求を感じることがまったくない性的指向をもつ人」**のこと。(日本大百科全書の解説より) 来世ではちゃんとしますの梅ちゃんもこのタイプ(たぶん)。 漫画家で無性愛者の主人公・厚樹は、性的な関心が無いため周囲と馴染めなかったり、作品に色がない(魅力がない)と言われたり生きづらさを抱えている。そんなときに、10年近く会っていなかった親友から助けを求める電話が入って…というあらすじ。 https://twitter.com/young_jump/status/1164199780722999297?s=20 物語後半の、 「恋なんかしなくても子供の頃は寂しくなかっただろ?」 「なんで大人は発情しないと孤独になっちゃうんだよ…」 という厚樹の本音のセリフがとても印象に残った。 そして最後は、**「性的欲求などなくても、バラバラの人間が一緒に暮らせばそれだけで家族になる(孤独じゃなくなる)」**というシンプルな事実を示唆するとてもハッピーな終わり方でよかった。 (忘れがちだけど同居する義理の両親や甥姪は、血も性的な繫がりがなくてもちゃんと家族で、それは寄せ集めの同居人同士でも同じことが言えるはず) 大人になるにつれ子供の頃のような「性的な関心抜き」の純粋な関係というのは失われていく(ストレンジャー・シングスのシーズン3とかまさにそう)ことが当たり前だと思っていた自分にとって、この作品は視野を広げる機会をくれたいい読切だった。 【ヤングジャンプ 2019 No.38 掲載】 http://jumpbookstore.com/item/SHSA_ST01M02817101934_57.html
たか
たか
2020/06/15
ついにレッサーくん爆誕!! 【本好き第三部3巻の感想】
camera最近コミカライズを全然追えてなくて久々に読んだのですが、いややっぱおもしれぇ〜〜!! も〜語りたい部分が多すぎるので、とりあえず3巻で面白かったところや気になったところをひたすら順に挙げていこうと思います!!   ◇ ◇ ◇ ・ゲオルギーネ様がシルエットで初登場 ・ア◯パンマンの歌が情熱的な愛の歌へ…そして男女9人無差別攻撃/// ・髪飾り職人との対面😭 ・絵本眺めてるカミル😭 ・ランプレヒト兄様って初対面のとき以外にも抱っこしてくれてたっけ?(漫画オリジナルの演出…?) ・食い気味で移動してくるお母様狂おしいほどすこ ・フェルディナンド様の騎獣ヴァッッッッッッッッッ(尊死)いやいやいやカッコ良すぎるでしょ…!!! ファンタジーっぽさと美しさに胸がギュンとなりました。 ・ローゼマインの美的感覚に顔が死んでいくフェルディナンド様すこ ・ローゼマインがデフォルメしたライオン、BLEACHに出てきそう ・今更だけど「車」で空を飛ぶってあの超有名魔法映画が元ネタか…! ・ブリギッテとダームエル、2人の普通の騎獣に挟まれると乗り込み型、というかレッサーくんのデフォルメ具合がヤバいくらい浮いてて吹いた😂   ◇ ◇ ◇ というわけで、個人的3巻のベストシーンは「神官長の騎獣シーンで」した。 そして騎獣の魔石って、かごの中から取り出す必要はなく、手をかざすと(モンスターボールからポケモンが出てくるときみたいに)光ってスーッと出ていくんだな…なるほど…! あと神官長がたくさん重ね着して重そうなのメッチャかっこよくていい…後ろ姿のシルエットとかたまらない。 本好きはしばらく離れていようといつ読んでも新鮮に面白いのがやっぱ最高ですね! (▽『本好きの下剋上第三部』3巻 椎名優/香月美夜/波野涼より)
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