くにお
くにお
2020/03/04
時事ネタ、野球などの話題が盛り沢山の忍者コメディ
川三番地のデビュー作「男ぞ!硬介」の次に描かれた1980年代の忍者ギャグ漫画。なぜ主人公を忍者にしたのかわからないほど無秩序でハチャメチャな学園ギャグとなっている。ダジャレの手数は非常に多いのだが、お世辞にもいずれのギャグも面白いとは言い難かった。(時代的な感覚の差もある…)決して「こいつら100%伝説」のような忍者コメディを期待しないように。 なので、ここではギャグ以外の部分で作品の魅力を伝えたいと思う。 (1巻)とにかく時事ネタが多い 80年代初頭に流行った商品や芸能人、スポーツ選手、CMネタなどが大量に使われてるので、時代の流行を感じることができた。(自分は半分ほどしか判らなかったが…) (2巻)アーチストリーグの思い出話、そして野球試合が描かれる アーチストリーグとは、水島新司先生を中心とした漫画家とその関係者の草野球大会の事。作者はもちろん、ちばてつや先生のチーム「ホワイターズ」 に所属していたと思われる。ギャグを交えながらではあるが、試合形式の野球マンガとして描かれている。後の「4P田中くん」「Dreams」など、名作のルーツがここにある。 (3巻)最終話の俯瞰図 最終話では大勢のキャラが登場するのだが、1ページの俯瞰で描くシーンはさすがの一言。大師匠・ちばてつや先生の息吹を感じた場面だった。
すなわ食堂
すなわ食堂
2019/07/12
漫画力の高い漫画
かつて高校球児だった作者さんによる高校野球の話です。決して明るく楽しいだけではない展開になる部分も多々あるのでその辺りはきっとリアルなんだと思います。 でもそんなリアルな雰囲気に気持ちが引っ張られてしまうことはなく、主人公の朝富士大生くんがとにかく前向きなので読んでいて元気になります。 ここからは少しテクニカルな話になります 漫画を読んで「絵がうまいなあ」と思ったことは過去幾度もありますが「漫画を描くのがうまいなあ」と思ったのは高嶋さんの漫画を読んだ時が初めてです。 変則的ながら見やすいコマ割りおよびフキダシの配置、比較的多用されていながらひとつひとつが印象に残る見開き、読み手がテーマ(今回の場合は野球)に造詣が深くなくともスッと入り込んでくるネーム。 漫画だからこその技巧がこれでもかと詰め込まれていて臨場感がすさまじく、時には目の前で試合が繰り広げられているんじゃないかという錯覚に陥ったこともあるので 漫画家志望の人にもぜひ読んでみてほしいです。 3巻の途中でライバル校が出てきてからがそれまでに増して絵も話もグッと良くなります。おすすめです。
兎来栄寿
兎来栄寿
2020/09/04
心も美しくなる女性刑務所の美容室のお話
『ぼくの忘れ物』、『アルティストは花を踏まない』の小日向まるこさんの新作。本作は、桜井美奈さんの小説をコミカライズしたものとなっています。 原作は未読なのですが、女子刑務所内で受刑者が美容師を務める美容室という題材の非日常感で興味深く読めました。受刑者との雑談は禁止であるためお客さんは横につく刑務官としか話してはいけない(でもそれは受刑者を守るためでもある)、900円という料金の安さなどなど初めて知ることが多々ありました。 ただ、何と言ってもこの作品の魅力は人間の繊細な心の機微です。これまでの作品でもそうでしたが、小日向まるこさんは写実的でありながら優しい絵柄があいまって心の奥深くにまで沁みる空気感を醸成してくれます。 本作も、悲しい瞳が印象的な受刑者で美容師の葉留(はる)から発される嫋やかな言葉が、雑多な日々にささくれた心を穏やかに慰撫してくれるようです。 また、刑務官の菅井さんや78歳のお客さん・鈴木さんなど、歳を重ねた登場人物たちのエピソードは絶妙で巧いです。とりわけ、鈴木さんのお話では「生きる」ということそのものを感じさせられ、今後高齢化がますます進行する社会にあって大切なものを描いていると思いました。読む人の年齢によってさまざまな心情を寄せながら読める作品でしょう。 残念なことに短期集中連載のため全1巻なのですが、もっとずっと読んでいたい魅力に溢れていました。 幸いにもTwitterでご本人による1話試し読みが広く拡散され、多くの人が知るところとなりましたが、SNSなど使ったことのないような方、普段マンガを読まないであろう方にもお薦めしたい、優れた作品です。
ナベテツ
ナベテツ
2020/05/31
きっと「青空」は変わらない
アメリカの痛ましいニュースが届いた日に、久々に単行本を手に取りました。黒人が明確に差別されていた時代の伝説のブルース・ギタリスト、ロバート・ジョンソン。 RJが生きた時代のアメリカでは、リンチが普通に行われています。それは人々の差別意識が社会における「常識」だったからです。当然、現代においてそれは否定されるものです。しかし、その意識というのは地下茎のように隠匿されているだけなのかもしれないと、悲報を聞く度に突きつけられているような気にさせられます。 ブルーハーツの永遠の名曲に、「青空」という曲があります。十代の頃にこの曲を聴いて、多少は他人に優しくなれただろうかと、四十代の中年は自省をします。RJの生きた時代も、空はきっと青かったのだろうし、100年先でも空は青いままだろうと。 作品についてあまり触れていないのですが、この作品は音楽マンガとしてもアクションマンガとしても歴史マンガとしても超一級の作品です(描くのが難しい作品であることも容易に想像出来るのですが…)。 どれほどの時間がかかろうと、この作品がきちんと完結することを願っています。 マンガとは関係のない蛇足ではありますが、故・石田長生さんがRJを唄った「汚職」という曲があります。悪魔との取引を「汚職」という言葉に込めた言葉のセンスの素晴らしさがとても光る曲なのですが、トリビュートアルバムでヒロトがカバーしていることも併せて記しておきます(「青空」は石田さんもカバーしてます。以下、本当に蛇足でした)
ふでだるま
ふでだるま
2019/09/28
人生を変えた漫画
好きな漫画はたくさんありますが 僕にとってこの漫画に出会えてよかったと1番思う作品はこの"足洗邸の住人たち。"です。 この漫画に出会って更に漫画が好きになり、そこから漫画を読む数が爆発的に増えてたことで漫画読み人生が始まりました。 平成一の妖怪作家みなぎ得一先生の最長編作品です。 デフォルメが効いた絵柄、洒落の効いた台詞回し、繋がる世界観、個性的なキャラ、深い妖怪知識等々もう全てが好みど真ん中で大好きです。 この話は「災禍の召喚術師」が引き起こした「大召喚」で人間世界と魔界、異界が重なった世界が舞台となってます。 主人公の絵描き田村福太郎が引っ越したアパートは猫又が管理人の足洗い邸。 福太郎と住人が織りなす日常パートと邸を守るバトルパートがメインストーリーとなります。 福太郎に隠された秘密と徐々に判明していく世界の秘密。 妖怪物が好きな方はマストで読んでほしい漫画です。 また、みなぎ先生の特徴としてクロスオーバー作家というのがあります。 デビュー作の『いろは草子』から『大復活祭』『足洗邸の住人たち。』『サクラコード』 現在連載中の『ルート3』まで全て同じ世界で物語が進んでいきます(時代は変わります) どれから読んでも面白いですが、最長編の足洗を基点に読むのもオススメです。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2019/12/27
少女と博士の食卓風土記
母・美哉を亡くした久留里と、彼女を預かる美哉の甥・温巳。彼はかつて美哉に「捨てられた」過去があった……美哉の共通の思い出を「食」に見出しながら、毎日の弁当と食卓を積み重ねて家族になろうとする、二人の日々の営みの物語。 ----- 研究者として職を探す高杉温巳。彼の専攻は「地理学」である。 近代地理学の祖・フンボルトを引き合いに出しつつ温巳は、久留里と美哉を「全部見る」事で、二人ときちんと向き合おうとする。 それはかつて、家族として家事をしてくれていた美哉に甘え、酷い態度を取ってしまった後悔からだった。温巳の頑張りは空回りするが、久留里は彼を信頼し、二人は少しずつ、家族になっていく。 そんな日々を描く本作は、登場人物の姿勢を超えて、作品そのものが、フンボルト的「全部見る」方法論で描かれている。 この作品では ●久留里と美哉と温巳の家族物語 ●久留里の学校、友人、恋愛事情 ●温巳の属するアカデミズム界隈 ●中部地方の地理学的案内 ●高杉家の食卓→弁当のレシピ と、盛り沢山の内容を、有機的に関連させつつ纏めており、一話の内容はかなり濃い。 ほんの六年間でも、毎日の事象を結び付けつつ積み上げる事で、温巳と久留里の絆は、次第に確かなものとして描き出され、読む側は思い入れを増してゆく。 (美少女とひとつ屋根の下的な)ファンタジーなあらすじからは想像のつかない、細やかさと温もりのある「記述」の積み重ねに、強くこころを動かされる、そんな作品。 地理好き、中部地方好き、昆虫食好き、弁当や日常の食卓にアイデアが欲しい等、様々な興味からこの作品に触れて欲しい。
sogor25
sogor25
2020/11/22
兄の罪を「自らの罪」として背負ってしまった少女の物語 #1巻応援
5年前の秋、当時小学生だったわかなの生活は兄の冬真が「同級生を殺害する」という事件を起こしたために一変してしまいます。 "殺人者の家族"ということを隠すため両親は離婚し、わかなは苗字を母方の姓に変え、父親とは離れて暮らしていました。 高校生になった現在、周囲に兄の殺人のことを知っている人はいませんが、それでも事件のせいでわかなは周囲の人と関わることを諦めてしまい、その結果、学校でいじめられてもそれを受け入れてしまっています。 そんなある日いつものように同級生にいじめられていたところを、真歩という女の子に助けられたところから物語が始まります。 この作品、心を閉ざしていた主人公の若菜がひとつの出会いによって変わっていくという少女漫画に近い設定の物語ではありますが、その若菜が心を閉ざした理由が兄の殺人というかなりヘビーな内容になっています。 自分が原因ではないからこそ一度かかってしまった枷は簡単には外れず、さらに一度事件として報道されてしまった以上、いつ何時事件を知っている人物画目の前に現れるかも分からないという恐怖も存在します。 そんな彼女と真歩が出会うことで少しだけわかなの心境に変化が現れます。 ただし その変化というのが良い面だけではなく、ある事実が判明することによりまほとの出会いすらも若菜を苦しめる遠因となってしまいます。 達人の加害者と言うのがテーマの作品なので読んでいて楽しい気分になる作品ではないですが、真歩との出会いで少しだけ変わり始めた若菜の人生が今後どうなっていくのかというのを見守っていきたい、そんな作品です。 1巻まで読了
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