兎来栄寿
兎来栄寿
2019/08/29
不登校、いじめ、先生の当たり外れ。環境に大きく左右される子供の話
いじめを受けるその前段階に存在する名状し難い大きなストレス。それによって不登校に至る感覚というものを、これだけ端的に言語化して見せたマンガはそうそうありません。 筆者の実体験を元に描かれた本作は、一つ一つの主人公の心理の動きに非常にリアリティがあり説得力を持って語られます。 また、心に傷を負った経験があってもちょっとした切っ掛けで自分がいじめを行う側に回ってしまう、誰しもが立場や環境次第でそういった行為に容易く及んでしまうという現実にも触れられています。 人生では多くの先生に出逢いますが、そこには自分で選べない「当たり外れ」があります。本作では良い意味でも悪い意味でも「この先生に会わなければまったく別の人生を送ることになったのではないか」という数多くの先生との出逢いと交流が描かれます。全くもって理不尽なことですが、先生は自分で選ぶことが極めて難しいのに対して人生に与える影響は絶大です。なので、先生もそれ以外の部分も含めてあまりに酷い環境にある場合は逃げることはむしろ推奨されると個人的には考えています。 かつて自分が師事を受けていた先生のことや、子供の頃の感情を読みながら喚起させられずにはいられませんでした。その時に覚えた苦味は大人になった今、子供たちに伝えていくべきものなのでしょう。 筆者は幸いなことに、大好きなドラゴンボールの作者である鳥山明先生が母親と同級生だったという縁で鳥山先生に会い、自分の描いたマンガを見て褒めてもらうという掛け替えのない経験を果たします。私も幼少期はドラゴンボールに没頭していたので、その時に鳥山先生にもし直接会えていたらどれだけ興奮しただろうと大きな共感を覚えながら読みました。 「おおげさじゃなくて 生まれてきて良かったと思った」 最終的にそんな言葉が筆者の口から出てきたことには心から安堵しました。人生は辛いことも多いですが、生きていればそうした無上の幸福を感じる瞬間も訪れることがあるものだと思います。 今現在不登校であったり、それに準じた状況にあったりする子が読めば大いに勇気付けられる部分のある作品です。そうでなくとも、様々な示唆に富んでおり一読の価値がある素晴らしいマンガですのでぜひこの機会に一人でも多くの方に読んで頂きたいと思います。
ANAGUMA
ANAGUMA
2019/09/27
コミックボンボンの伝説的ハードボイルドアクションマンガ
「ボンボンのベルセルク」とはよく言ったもので、およそ児童マンガとは思えぬハードな表現と展開で当時の小学生をビビらせつつも興奮させまくった本作。 原作は女神転生シリーズを子ども向けにリメイクした同名のゲームボーイソフトですが、原作プレイヤーが「なにかの手違いかな?」と思うほどのハードボイルドが盛られていることで有名です。 なんなら本家女神転生よりタフかもしれない。 主人公の甲斐刹那は小学5年生にしてデビルの使役者「デビルチルドレン」に選ばれ、魔界の騒乱に巻き込まれますが、巻き込まれ方からすごい。 自室が吹き飛び悪魔の召喚銃デビライザーを謎の配達屋から押し付けられたかと思うと、その配達屋が目の前で速攻息絶えます。いきなりハード過ぎる。小5ですよ? 基本このマンガでの「死」は身体が消えるとかファンタジーなやつじゃなく超フィジカルに訪れるので、現実的な死の感覚が子ども心に強烈に刻まれたわけです。(実際最初は怖くて読めなかった) 連載はじめの頃はキャラクターの頭身も子ども向けっぽいデフォルメが効いた感じなのですが、ふとした瞬間から筋肉が盛りに盛られたゴージャスな作画に吹っ切れていきます。 絵柄の変化と同時進行で周囲のキャラが次々に壮絶な最後を遂げ、主人公(※小5)の目がどんどん据わっていくのはマジの迫力。マーブルランド編に突入して刹那が再登場したときのゾクゾク感はそうそう味わえるものではないです。 『ベルセルク』と喩えられる最大の理由はおそらく同戦争編だと思いますが、こちらも出色の出来で、ラセツ族の兵士が自分のちぎれた腕を抱えて狂気の笑いを浮かべていたのをよく覚えています。大人になった今だからこそ「あ、それ描いちゃうんだ?」っていう凄まじさが分かりますね。 手加減無しで徹頭徹尾リアルに描写されたキャラクターの生と死、痛み、苦しみがあるからこそ、物語とキャラクターの生きざまに説得力があって、今でも十分楽しめるのはそういう理由なんだと思います。 子ども向けなのに云々を超えた重厚なドラマ、是非味わってほしいです。
六文銭
六文銭
2020/07/27
はずれお妃様のシンデレラストーリー※転生はしません
WEB広告でよく見るので購入。 少女マンガ的恋愛モノって私苦手なんですが、これはすごく気持ちよく読めました。 最近流行りの乙女ゲーム内に転生かな?とか思いましたが、転生ではなかったです。 内容は、とある国の村娘だった主人公が31番目のお妃に選ばれたという話。 村娘がなぜ?と思うが、この国の規則で、暦の日付どおりでしか王様は会いにいけないというルールがある。 つまり、31番目=31日なので、3ヶ月に1度しか会うことができないので、貴族階級の子女はなりたがらないため、主人公のような平民が選ばれたのだ。 本作が面白いのは、そんな環境下でも主人公はふてくされたり、もっといえば、他のお妃を亡き者にして自分が頂点にといった成り上がり的な話ではなく、ごく自然体で過ごすところ。 もう、ホント、村娘出身らしく自然に過ごす。 侍女もつけず(正確には意地悪でつけられなかった)後宮内で、作物つくったり、パンつくったり、およそお妃とは無縁の生活をする。 他のお妃や女官長の嫌味も嫉みなんのその。 そんな彼女の自然体に、日頃から政治的背景で求婚されている王様も惹かれていきます。 美貌と体で選ばれるのでなく、肝がすわって男に頼らない態度で女性が自立していく姿は見ていて清々しいです。 少しづつ、主人公も王様とも恋愛モードになってきて、それがまた良いです。 31番目をどう覆し選ばれるのか、今後が楽しみです。
sogor25
sogor25
2019/08/12
様々な角度から楽しめるヒューマンドラマ
地球と宇宙上の軌道ステーションとを結ぶ"東京軌道エレベーター"が存在する世界。エレベーターの登場者と、案内を務めるエレベーターガール・石刀伊奈との物語。 見かけ上はエレベーターというクローズドな空間で起こる一話完結型のヒューマンドラマ。なんだけど、その密室空間自体が一歩出ると宇宙空間という場所にあるため、例えば隕石が流れ着くことがあるかもしれないし、宇宙人がいたりするかもしれない。そういう不確定要素を多く孕んだ密室空間のため、単純な密室劇では作れないような様々なバリエーションを生むことができる。また、"Another story"という形で後日談が描き下ろされている話もあり、そちらもいい味を出している。 そして、実はこの物語はそれだけでは終わらない。何故この"軌道エレベーター"という超技術が成立しているのか。そして"石刀伊奈"とは何者なのか。一話完結の物語の裏でこの世界全体の謎についても語られる。 一話完結の各物語、世界全体に関わる大きな物語、そしてその両要素が交わる物語もあり、様々な角度から楽しめる物語。 1巻まで読了。
たか
たか
2020/07/15
親目線で見るインターナショナルスクール
camera「へぇ、帰国? インター?」という会話を大学時代100回は聞いた。純ジャパにはわからない彼らだけが共有できる世界がそこにはあって、自分がそちら側に行くことは決して叶わない。このフレーズを聞くたびに、虚しさと妬ましさが混じり合う複雑な気持ちになった。 そもそも大学に入って初めて、私立でも公立でもなく、インターナショナルスクール育ちの日本人がいるということに気がついた。そのくらいインターは自分にとって遠い存在だった。なので、インターにはメチャクチャ興味がある。こんな面白い学校、もし幼稚園の自分が知っていたら間違いなく通いたがった自信がある。 というわけで、ネットのバナー広告を見てソッコーでポチった。 https://dokusho-ojikan.jp/serial/detail/t77215 今まで留学体験記などは読んだことはあっても、それを支援する母親目線で描かれたものは読んだことがなかったのでとても新鮮だった。 駐車場に止まってる車の外車率の高さや、ヘルシーな手作り弁当の持参率の高さなど。インターのことをタイトルで「セレブ学校」と称するだけあって、庶民親ならではの目の付け所が面白い。 学校行事や授業などは、まさに欧米の小学校という感じでやっぱりねという感じ。 一方で「さすが!」と感心したのは、低学年のときのバレンタインときに、お菓子と一緒に韻を踏んだメッセージを贈っていたところ。「こんなちっちゃい子がvalentines quotesを…!」とテンションがあがった。 また、学年が上がるにつれて様々な理由でクラスメイトが退学して減っていくというのは意外だったが、よりよい教育を受けさせようと思えば当然の判断だなと納得した。 トーコちゃんがグレード4のときに、英語力強化のために家で英語のDVDを観ることになったとき、「字幕がなきゃ話がわからない」といって字幕をつけていた話が好き。4年間毎日英語漬けでもこうなんだから、自分が海外ドラマを聞き取れなくても当然だと元気が出た。 読み終わって気づいたけど、表紙に描かれているような外国の生徒の話はほとんど出てこない。ほとんどが日本人の裕福な家庭の子のエピソードに費やされている。 また、家族3人でギリギリの家計を協力して乗り越えている姿も印象的だった。 トーコちゃんが自転車通学をやめ徒歩にしたり、丈の短くなったブレザーを着ないでいつもカーディガンだったり…。トーコちゃん自身に通いたいという強い意志があるからこそ、みんな厳しい状況を耐えることができたんだろうなと思う。 最後に。この作品を読んでみて一番感じたのが、「作者性格キツいなぁ」だった。内容自体は面白いけど、作者のものの言い方がいちいち攻撃的・挑発的に感じられ、そこが気に障って純粋に楽しめなかった。物言いに、朗らかさや余裕がまったくない。それだけ普通の親がインターに通わせるのは厳しいということなんだけど、読むのが結構しんどかった。 …と思ったら、東條さち子さんて海外でゲストハウスはじめましたの人だったのか!! (納得) あの妙な思い切りの良さと気の強さ、言われてみればという感じ。 あちらのお話では娘さんは冒頭の一コマでしか出てなかった(たぶん)ので、この方が一児の母であるということを完全に失念していた…凄まじい人だな。 ちなみに中学生になったトーコちゃんですが、「ゲストハウス」によるとフィジーに留学していたとのこと。すごい。 http://sonorama.asahi.com/series/guesthouse-hazimemasita.html いろいろ書きましたが、インターナショナルスクールという遠い世界の話を、気取ったところのない、庶民の目線で超身近に感じられる1冊なのでおすすめです。
ひさぴよ
ひさぴよ
2019/08/27
夏の夜に読みたくなるマンガ
双子の高校生、藤木輝と香夜は夏休みに入った日、祖父に呼び出され、隕石の落下地点に行くことになった。その目的は隕石を人に変えることだと祖父は言う…。 正直、あらすじだけでは何を言ってるのか訳がわからないと思うが、この物語は実際そういう話だ。 この世界では、「落ちてきた星(隕石)を人に変える」という世にも不思議な仕事があり、お祖父さんはその役目を担う一人だったのだ。 人に変えられた星たちは、見た目は人間と変わらないがスーパーマン(表立っては活動したりはしない) のような存在に近く、考え方のスケールは、ヒトとは全く異なる存在だ。 星を人に変えた者は、願いを一つだけ何でも叶えてくれるという約束があり、お祖父さんは、その役目を主人公たちに託す。しかし輝と香夜は願いを決めることがなかなかできない。 実は主人公一家は、過去にとてつもない理不尽な目にあっていて、「いま何を願うか」と星から問われ、それぞれが葛藤しながら田舎での日々を過ごす…。 この漫画の魅力のすべてを言葉で説明することは難しい。まぁ全体的に優しい人間しか登場しないので、ほのぼのSFな雰囲気なのだけど、双子の男女それぞれの目線で、過去の喪失であったり、やり場のない憎しみと向き合い成長する姿に一番心を動かされた。この1冊の中に、ちょっと詰め込みすぎかな?と思ったけど、最後はどうなるんだ!?というところで、駆け抜けるようなラストの終わり方が好き。
マンガトリツカレ男
マンガトリツカレ男
2020/07/07
大河ドラマっぽい
巻数が進むにつれ内容が随分違うので分けて書く 1〜4巻 「序章火乃家の兄弟」と副題が付いているだけあって、士官候補生の兄である火乃直彦と中学生の火乃正人の二人が主人公として始まる。舞台は戦前で実録の軍記物のように現実の話とリンクしながら、火乃直彦と水上明子の愛や火乃正人へ先生への憧れや原作者である梶原一騎のエピソードの込みで進んでいく。直彦の壮絶な死に方やその後の正人が特攻隊に行くが生き残る。 4巻から6巻ぐらい 特攻隊帰りのステゴロ火乃正となるが、途中で水上明子と兄の子である水上直樹と会い、影から二人を助けていくが途中で火乃正人は刑務所に行く。 6巻から10巻 東甲賀組の二代目・甲賀魔子との因縁や兄の子の直樹のクズエピソードなどがありつつ、眉間に星がある鬼門竜二と喧嘩してたりしていた。 10巻〜11巻 鬼門竜二の腹違いの兄妹である女子プロレスラーのブラックローザ・ユキを使い火乃正人や甲賀魔子を殺そうとする。色々あってまた火乃正人は姿を消す。 ブラックローザ・ユキはブラックローザ・スペシャルは某超人の必殺技にそっくりで年代的にはこっちの方が先なのかな? 12巻 火乃正人はマンションの管理人をしながら直樹の息子である孫の正樹を溺愛して,色々あり最後に火山に飛び込む おそらく内容はあっているはずです。マジでいい漫画なんだけどすごい説明しづらいし読む人を選ぶと思う。 梶原一騎原作の漫画は自分の調子を測るのにちょうどよくて、文字が多く読みづらくて気力が萎えそうになったらあんまり調子がよくないを実感する。
六文銭
六文銭
2020/07/21
妻が妻じゃなくなるときは存外「単純な理由」
5年位前だが「ハッピーアワー」という映画が、自分の界隈で話題だった。 http://hh.fictive.jp/ja/ ざっくりいうと、それぞれ性格も価値観も異なる妻(一人はバツイチ)たちが、色んな理由で旦那から離れていく(離れていった)というのを描いた作品。 演技経験がない女性をキャストに使ったことで、逆にリアリティが強く、自分は今でもこの映画がすごい印象に残っている。 本作「金魚妻」を読んで、まずこの映画が思いだされた。 本作も端的にいうと、妻が不倫・浮気する瞬間をオムニバス形式で描いている。 巻数を重ねるごとで関連性も出てくるが、基本的には1話完結で色んな家庭環境の妻を描いている。 作者である黒澤Rは女性であることも存分にあると思うのだが、目線というか、女性的な着眼点、ふとした瞬間に起こる衝動的なところが、男子目線で読んでてハラハラさせてくれる。 特に、心が離れる要因として、物理的なDVなどはわかりやすいのだが、そうでない所の描きが秀逸なのだ。 ちょっとした不満の蓄積(えてして価値観に軽微な影響を与え続けるもの)、旦那が何もフォローもしない無関心な様子だったり、退屈だったり、結局わかりあえない関係性を身近な他人とのセックスで満たそうとする流れが、理解できそうで、理解できない。 この感じが、もどかしく男女間の違いなのだろうと読むたびに痛感させられる。 エロスな面が強調されるが、こうした男女の機微も味わい深い作品です。 特に、上記の映画を知っている人は、ハマるかと思います。
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