sogor25
sogor25
2019/08/14
これは"天才"の物語ではない
「平成最後の天才が現れた。」 単行本1巻の帯に大きく書かれた一文。これを見た瞬間、私は『あ、これって"響~小説家になる方法~"のような作品なのかな?』と思いました。実際、主人公・戸田セーコは才能があるものの失語症気味でコミュニケーションに難のある人間として描かれており、1巻の前半まではセーコとその担当編集・タナカカツミを中心に描かれ、1巻後半では2人目のマンガ家・NORuSHとその担当編集・西との読み切りの人気アンケート対決へと話が進んでいきます。 このまま"セーコの物語"として、セーコの才能を描いていく物語なのかなと思いながら読み進めていましたが、2巻に入った辺りから徐々にその雰囲気が変わってきます。 1つのターニングポイントは2巻の冒頭、セーコがNORuSHに誘われてコミケに参加する所にあります。コミケを描くこと自体はマンガではよくあることですが、今作では新人とはいえプロの作家であるセーコが同人活動という形で他者の作品に触れ、影響を受けていくという形で描かれていきます。この段でセーコが"完全なる天才"ではなくなり、才能を持っていながら未完成で今後成長を控えている人間だということがはっきりと示されます。 また、物語が進むにつれて徐々にカツミやNORuSHの描かれ方も変わってきたように思います。カツミは1巻ではセーコとの関係性を中心に描かれていましたが、徐々に対戦相手である西や他の編集との関わり、そしてコミケで自ら発掘した新人マンガ家との関係が描かれていきます。また、NORuSHはセーコとの対決の中で、自らの創作活動との向き合い方、そして進んでゆく道について悩む様が描かれていきます。 つまり、この作品は「周囲に影響を与える"1人の絶対的な天才"の物語」ではなく、「1人のマンガ家とその周囲の人々が共に切磋琢磨しながら成長する"群像劇"」なのではないかと思うのです。 マンガ好きの中では話題になっている作品の1つだとは思いますが、あらすじや帯コメントなどの外からの情報ではなかなかそういう所まで見えてこないので、実際に読んでみて面白いかどうか判断してほしいと思う作品の1つです。 2巻まで読了
たか
たか
2020/08/05
懐かしい…!
小学生のときに通っていたピアノの教室に、話したことのない女子高生のお姉さんがいつも少女コミックを置いてくれていて、それを読むのが楽しみでした(漫画がだめな家庭だったので)。 客観的にみて、ちゃお・りぼん・なかよしをすっ飛ばして少コミから読むとはなかなか歪なのですが、当時はそんなこと全く感じずただ楽しくで読んでいました。 天然はちみつ寮。、覇王・愛人、僕は妹に恋をする、ありす19th、蜜×蜜ドロップス、天は赤い河のほとり…いろいろ載っていましたが、中でもこの『ガ・マ・ンできない』はかなり印象に残っています。 主人公の名前が湊、彼氏の名前が千尋と、どちらも中性的な名前なのが好きでした。 恋愛もので男の子のほうが年下という設定のお話を初めて読んだのがこの作品で、年下彼氏というと千尋を真っ先に思い出します。 またアラサーになった今あらためて読んでみて一番衝撃だったのが、大人になった今読んでも充分刺激的に感じる内容だったことですね。 「キュートでちょっぴりHなラブコメディー」とあらすじにありますが、どう考えてもちょっぴりHどころじゃない!! PTAの「子どもに読ませたくない雑誌」第1位に選ばれたのも納得です。 雑誌で読んでいたため、そもそも単行本の表紙からしてこんなにエロかったのかと驚きました。これを当時本屋で買うのは相当勇気が要っただろうな…。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/07/15
音楽表現と和楽器JKのブレイクスルー!
音楽の表現に「擬音」を使わない事。これがこの作品の最大の特徴である。 擬音による音楽表現は、分かりやすい反面、表現できない事も多い。例えば音色は、伝えたい音を擬音で描いても(ポンとかガーッとか)結局は読者の脳内補完が頼り。正確な伝達とは言えない。また、合奏での、旋律やリズムが絡む感覚は表現しにくい。 『なでしこドレミソラ』では、流水紋で旋律の雰囲気、和柄で和楽器らしさを仄めかすのみ。絵で魅了したら、音は完全に読者の想像に委ねる、割り切りの良さ。しかし流水紋は音楽が流れる時間・空間感覚となり、それを重ねる事で各パートが混ざり合い、響き合う表現となっていて、今までに無い「穏やかな」ゾクゾク感がある。 かつて音楽漫画が発想しなかった「音楽表現」のブレイクスルーを、音楽漫画が好きな方には、ぜひ読んでいただきたい! ♫♫♫♫♫ 物語は、地味な自分を変えたい主人公・美弥を始め、和楽器同好会に集まったメンバー四人の、様々な「ブレイクスルー」の過程が描かれる。分かりやすい子から一見分かりにくい子まで、自分の拗らせを知り、悩み、殻を破って成長する物語は明るく、清々しい。 これは、四人が対等な関係で互いの音を聴き、自分の音を重ねる真の「合奏」を目指す物語。そしてそれは音楽を越えて人間関係でも、自分から動く事と、相手を見る事のどちらも大事だという「個性と調和」の物語になっていく。 少し拗らせていた女子高生達が、真に自立したメンバーの一員として舞台に立つ終幕は、とてつもない歓びに満ちている!
ななし
ななし
2019/08/20
ワンピース感とオリジナリティ
まずカラー絵がすごく良い。なんとなく五十嵐大介っぽさを感じる。 そして本編の絵の線の感じや白黒ハッキリした塗りは尾田栄一郎や吾峠呼世晴っぽい。 けど描き文字やキャラデザはオリジナリティがある。 物語は、「残虐なヴァイキングに統治された「兵士か奴隷」しかいない町・ギブロン。主人公・バトロは「ギブロンで1番偉い奴に会いに来た」と、少年漫画の主人公らしいセリフで兵士をぶっ倒すが、ゾゲボ(1番偉い奴)が町に戻ってくるまで奴隷として過ごすことに決める」というあらすじ。 この主人公・バトロには「ゾゲボが戻るまでビビらず仲良くしてくれよな」と言ったりするところがあり、こういう強い力を持ちながら「お前が言うな」というボケをカマすところはルフィーに似ているなと思った。 もしここで周囲の人間が極度にデフォルメされた変顔になってツッコミを入れたら、それはもうワンピースでしかないが、群青のバトロはそういうことはしない。 ルフィーはシリアスに振る舞うこともあるけれど、基本的に無邪気に喜怒哀楽をハッキリ示し、熱く怒ったりする。一方、バトロはもう少しクールな男で、笑ったりスッとぼけはするけれど、激しい怒りや熱は内側に隠し、淡々と振る舞っているような印象を受けた。 最初から最後までスラスラ読めたし、最後のオチには笑った。 ファンタジー少年漫画として大きな瑕疵のない、完成された作品だと思う。 個人的には、「バトロが伝説の男と似ている」という設定がうまく活かせていないように感じた。本来だったらもっとワクワクできる設定なんだけど、あとづけ感・蛇足感が強くて「バトロかっけー」とはならなかった。 ワンピースのようなヒット作の要素を、うまく自分のものにすることが出来るのは本当にすごい才能だと思う。ポテンシャルをビンビン感じるので、このままさらにオリジナリティを磨いていって超面白い作品を描いてほしい。 『週刊少年ジャンプ 2019年38号』 http://jumpbookstore.com/item/SHSA_JP01WJ2019034D01_57.html
ぺそ
ぺそ
2020/07/31
3組の研修医&指導医の小児医療ドラマ
「表紙が優しくていいなぁ」と眺めているときに、「そういえば面白くない医療漫画ってないな」と思い立ち買いました。大変なことばかりの厳しい研修医生活を描きながら、表紙どおり温かさのある素敵なお話でした! ほのぼの天然研修医・美貴先生。 エリートで自信満々で超優秀な指導医・名越先生。 小児科医1年目の指導医で幼馴染・ひかる先生(年下) 勉強熱心で優秀で何でもソツなくこなす研修医で幼馴染・健太郎先生(年上)。 怖い指導医にまいっている研修医・しんのすけ先生。 名越と仲が悪くて気難しい高城先生。 美貴先生のド天然っぷりが最高でした…! こういう先生が病院にいたら安心できますよね。 そして幼馴染コンビの関係にはすっごくキュンとしました。「私はいつの間にBLを…!?」と錯覚するほど素敵な関係でした。 タイトルの意味がわからなかったので調べてみたら、 「ネーベン(ねーべん)とは、研修医のことである。ドイツ語のNebenより。 ネーベンに対し、指導する立場の医師のことをオーベンという。」 https://bit.ly/39GBugI とのこと。テーマそのままズバリのタイトルだった。 6人の先生が出てくるのですが、1巻では最初の2組にフォーカスが当たっていたので、早くしんのすけ先生回が見たいです。2巻も楽しみにしています! https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CB01201123010000_68/
sogor25
sogor25
2020/11/22
転校した先は乙女ゲームの主人公!? #1巻応援
父親の転勤で引っ越した結果、新しい学校に転校することになった主人公の中野千夜子。 中学から女子校に通っていたため全く出会いがなかったのですが、今回転校したのは共学の高校。 もしかしたら新しい出会いがあるかもと思っていた登校初日、曲がり角で早速イケメンとぶつかりそうになります。 しかし、次の瞬間、謎の効果音とともに目の前に乙女ゲーのような会話の選択肢が現れます。 何かよくわからないけれどもとりあえず選択肢の中の一つから会話を続けると、次は好感度のパラメーターのようなものが現れて、相手の男の子の好感度が上がったらしいということがわかります。 その後も男子との会話が発生するたびに自分にしか見えない選択肢やパラメータが現れます。 そんな乙女ゲームのヒロインに転生したような状態になってしまった主人公・千夜子の物語です。 この作品、千夜子が沢山の男の子と出会い選択肢に従って会話をし好感度を上げることで、ハーレムラブコメのような展開に進んでいきます。 なぜ目の前に選択肢が現れるようになったのかは現段階で不明なのですが、この状況に対する千夜子の順応がとても早く、選択肢を利用してどんどんいろんな男子との仲を深めていきます。 ただ、これはそんなハッピーな展開だけが溢れている作品ではありません。 乙女ゲームのような状況ということは、選択肢を間違えれば当然相手の好感度 を下げるということ。 そしてその相手は二次元の存在ではなく実際に目の前にいる同級生、ということから生まれる葛藤、さらに、現状はハーレム状態ですが実際に誰かとの恋が成就したり逆にバッドエンドになってしまった場合にどうなってしまうのか、そのあたりも1巻のなかで少しずつ描かれます。 全然先の読めない作品ではありますが、単純な少女マンガではない面白さのある作品です。 1巻まで読了
ANAGUMA
ANAGUMA
2019/08/27
メダロットが「生きてる」…
原作ゲームにハマった時期にボンボンを買って読んでたんですが、結構読むのが怖かった思い出があります。 このマンガのメダロットは攻撃されると腕がちぎれて関節の被覆が裂けるし、ボディを撃たれればオイルが血しぶきのように飛ぶし(効果音は「ゴプッ」!)、殴り合えば顔のシェードが破損しアイカメラが露出します。 フェティッシュと言えるほどに破壊の表現が緻密で、機械であるメダロットが、まるで生きた肉体を持っているかのように痛々しく傷ついていくのです。 ビーストマスターがメタビーの半身を吹き飛ばす表現は今でも脳裏にこびりついていて、トラウマものです…。 ゲームボーイの画面では、ロボトルで戦うメダロットはパーツが壊れて戦闘不能になるあくまでロボットっていうイメージがやっぱり強くて、それがマンガになるととたんに生々しくなって「実際はこんな壮絶なことが起きているんだ…」とビビリまくりましたね。 (メダロット2、3になると色がついたり、表現力が増してもっと生き生きした感じになりますが…) この破壊の表現やリアリズムがあってこそ、人間の相棒であるメダロットへの愛着、キャラクターとしての個性がより際立ち、児童マンガの域を超えたストーリーの緊張感が保障されていました。メダロットの神秘性や出自の設定など、SFとしての見せ方もめちゃくちゃレベルが高い。 『ポケスペ』なんかもそうなのですが、子ども向けのゲームをネタに「そこまでやるのか???」という気合がビシバシ伝わってくるわけです。 特に3巻のセレクトビルでの攻防は『デビチル』のマーブルランド戦争編と並び立つ珠玉の名勝負だと思います。 限られた表現でつくられたゲームの魅力を、想像力を爆発させてマンガでブーストしていたんだなぁと思います。おかげでいい子ども時代を送れました。 この時代のボンボンマンガを代表する気迫溢れる一作なので、ゲームをやったことがない人にもぜひ読んでほしいですし、出来たらゲームもプレイしてそのギャップも味わってほしいですね。
兎来栄寿
兎来栄寿
2020/07/20
君はコオロギの闘いを観戦したことがあるか
日本人にはあまり馴染みがないですが、中国ではコオロギ同士を戦わせる「闘蟋」は唐の時代から大人気で、現代でも夢中になっている人が多くいる歴史あるものだそうです。 映画『ラストエンペラー』でも、闘蟋の戦士であるコオロギがラストシーンで紫禁城の玉座から印象的に登場していました。 本作は、まさかのそんな「闘蟋」をテーマにしたマンガ! 改めてマンガの「何でもあり」な懐の深さを感じる作品です。『少年の名は』ではイギリスの寄宿学校を、『ギャラクシートラベラーズ』では宇宙の旅を描いた渡邉紗代さんがどうして「闘蟋」に行き着いたのか興味も尽きませんが…… ともあれ、やはり全然知らない世界のお話というのはそれだけで興味深いものです。「闘蟋」という競技に生活や命を賭けている者たち、強いコオロギの見分け方、それを育てて管理する者、実際の蟋蟀同士の迫力溢れる闘いの様子など、この作品でしか見られないシーンが目白押しです。 また、主人公である青年・バービーの悪漢ぶりも本作の特色。バービーには蟋蟀に対するリスペクトなど一切なく金蔓としか思っておらず、「クソ虫」と罵り惨殺します。また、虫だけでなく人間に対しても私利私欲を満たすための道具として利用するだけ利用します。酒と女と金が大好きでありながら、女の子から好意でもらったアイスクリームを悪びれず道に捨てるなどサイコパス的言動のオンパレード。しかしそんな一貫したクズっぷりが不思議と魅力的でもあります。 バービー以外のサブキャラクターたちも魅力的で、香港という都市の猥雑な空気感も見事に表現されている一作です。
banner
banner
banner