ANAGUMA
ANAGUMA
2019/12/24
果たしてひとは「ヒーロー」になれるのか?
民間人が犯罪者を逮捕し、その場で判決を下すっていう裁判員的な制度「徴正令」がテーマの本作。 徴正令の対象者に選出され「強制的に」ヒーローをやる羽目になった冴えないサラリーマン・青田とともに、読者は毎話さまざまな悪事を通じて善悪と正義について考えていくことになります。 なんといっても本作の魅力はとにかく地味ィ〜〜〜〜なこと!(※褒めてますよ!!!) 出てくる悪事はチカンとか下着ドロとか生活に密着したショボいものが多くて、だからこそ、そのしょーもない罪を犯したおそらく自分たちと大して差がないであろうひとの人生を、自分たちの意思で左右していいものかどうかがズッシリと(地味に)響いてきます。 なかでも、青田が大学時代好きだった先輩の結婚式で酔っ払って醜態を晒すっていう最悪のエピソードが僕は一番好きで。この回は本当にどうしようもない展開になっていくんですが、情けなさのリアリティが真に迫ってるんですよね…。 青田も主人公だからといってヒーローや「正義」にふさわしい人間では決してないんです。 登場人物全員、等身大のダサさと魅力を持っているので、読めば読むだけ親近感が湧いてきて、そんな彼らがなけなしの勇気を出して何かを決断した時、本当の意味でヒーローに「なろうとする」ときのカッコよさのギャップがじ〜んと沁みてくるんですよね。 3巻と短いですが、読み通せば「正義ってなんなんだろな〜」ということを薄ぼんやり日常の色んなシーンで考えるようになる…かもしれません。
pennzou
pennzou
2020/05/04
小さな物語で描くもの
「窓辺の春」は月刊フラワーズ2019年4月号に掲載された鯖ななこ先生による短編読切作品だ。 鯖先生は現状自著の発行がなく、また作品も月刊ないしは増刊フラワーズにしか掲載されていない。そのため、鯖先生を存じない方が多いと判断し、まず鯖先生の経歴を記す。(間違いがあればご指摘頂けると嬉しいです!) 鯖ななこ先生は月刊フラワーズ2017年8月号にて発表された第90回フラワーズコミックオーディションにて金の花賞(賞の位としては第2位にあたるが、金の花賞以上が出ることはそうそうない)を受賞、受賞作「最適な異性となる要因の主観的考察」が増刊フラワーズの同月号に掲載されデビューした。以降より増刊フラワーズでは短編読切を、月刊フラワーズでは定期購読の販促4コマを執筆されていた。初の連載作品は月刊フラワーズ2018年5月号より開始された「きょうのヤギさん」で、現在も続いている。「きょうのヤギさん」は先述の販促4コマの設定を汲んだ4コマショートで、物語形式の作品が月刊フラワーズ本誌に掲載されたのは2018年10月号の短編読切「おとぎの杜」が初めて。以降、いくつかの短編読切と短期連載作品「Hide&Seek」が発表されている。 この経歴は、例えばデビュー当時の岩本ナオ先生も同様に販促4コマ(「町でうわさの天狗の子」の巻末に収録)や短編読切・短期連載(「スケルトン イン ザ クローゼット」に収録)を執筆しているように、フラワーズ生え抜き作家の定番ルートといえる。ただし、4コマショートとはいえかなり早い時期から連載を任されているパターンは珍しく、ここから編集部から特に期待されている(悪い言い方だと囲い込まれてる)のでは?と察することも出来る。 「窓辺の春」に話を戻す。本作は月刊フラワーズで発表された作品としては2作目となる。自分は前作の「おとぎの杜」で鯖先生の読切をはじめて読み、もしかしてこの人のマンガはすごいのでは……?と思いはじめ、本作でそれが間違いでなかったことを確信した。 鯖先生作品では「主人公が失ったものや隠れていたものに気がつき、見方を変える」ということが多く行われる。その変化がもたらす心地よさが魅力だと思う。本作ではその上で主人公の行動が他のキャラクターに伝播していく様子が描かれており、より風通しのよい作品になっている。 個人的にビビっときたのは、(ややネタバレになるが)おじさんが清潔な身なりで出掛けるシーンがあるのだが、なぜおじさんがその格好をしたのかを、後のたった1コマで表していた点だ。そのほんの小さな、しかしあざやかな手腕に惚れ惚れした。 本作は決してスケールの大きい物語ではない。小さな物語だ。しかしながら、岩本先生などフラワーズの先達が描いてきたように、小さな物語によって表せるものはあり、それがフラワーズらしさを形作る要素のひとつだと考えている。その潮流に鯖先生は乗っていると思う。 絵柄については丸みを帯びた親しみやすい画風であるが、大胆なトーンワークなどグラフィカルな要素も多く含まれており、それが鯖先生らしい画面にしている。 先述の通り、鯖先生単独名義の自著は未だに発行されていない状況である。しかし現在も断続的に短編は掲載されており、直近だと月刊フラワーズ2020年7月号に短編「おしゃべりな人魚」を掲載予定だ。これを除いても、単行本一冊分のストックは十分にある。 ただし、フラワーズ新人の初単行本は、めちゃくちゃハードルが高いのか、それはもう全然出ないのだ。最後に出たのは2017年12月の笠原千鶴先生「ボクんちの幽霊」が最後だったはずで、つまりここ2年以上出ていません。 それでも、初の自著が出版されるのを自分は心より待っています……
ふでだるま
ふでだるま
2019/09/28
人生を変えた漫画
好きな漫画はたくさんありますが 僕にとってこの漫画に出会えてよかったと1番思う作品はこの"足洗邸の住人たち。"です。 この漫画に出会って更に漫画が好きになり、そこから漫画を読む数が爆発的に増えてたことで漫画読み人生が始まりました。 平成一の妖怪作家みなぎ得一先生の最長編作品です。 デフォルメが効いた絵柄、洒落の効いた台詞回し、繋がる世界観、個性的なキャラ、深い妖怪知識等々もう全てが好みど真ん中で大好きです。 この話は「災禍の召喚術師」が引き起こした「大召喚」で人間世界と魔界、異界が重なった世界が舞台となってます。 主人公の絵描き田村福太郎が引っ越したアパートは猫又が管理人の足洗い邸。 福太郎と住人が織りなす日常パートと邸を守るバトルパートがメインストーリーとなります。 福太郎に隠された秘密と徐々に判明していく世界の秘密。 妖怪物が好きな方はマストで読んでほしい漫画です。 また、みなぎ先生の特徴としてクロスオーバー作家というのがあります。 デビュー作の『いろは草子』から『大復活祭』『足洗邸の住人たち。』『サクラコード』 現在連載中の『ルート3』まで全て同じ世界で物語が進んでいきます(時代は変わります) どれから読んでも面白いですが、最長編の足洗を基点に読むのもオススメです。
hysysk
hysysk
2020/03/26
バブル後期の日本の恋愛観や仕事観そして人生観
ドラマが1991年だから自分は当時小学校4年生くらいか。当然原作を読んでる訳はなく、ドラマを観る習慣もなかったのだけど、あの当時としては衝撃的なセリフ「セックスしよ!」をクラスのお調子者がふざけて真似していたり、物真似やパロディや懐かしのドラマを振り返る的な番組で見かけたりして、断片的な知識だけはあった。 するとなんとこの4月から現代版としてリメイクしたドラマが始まるとのこと!これって今の10代からしたらおじいちゃんとかおばあちゃんの世代(30年前の20代)の話でもおかしくない訳だよね? https://www.fujitv.co.jp/tokyolovestory/ 柴門ふみが「スタバもユニクロも無かった時代」って言ってるのがうけた(ださくて質が低いとされてたけどユニクロはあったよ!)。 ぜひリメイクドラマと91年版ドラマと原作を比較して楽しみたいのだけど、始まる前の期待としては、赤名リカは今の時代にすごく合ったキャラクターとして描き直せるんじゃないかな、ということ。あとがきによれば「作品の成功はリカが受け入れられるかどうかにかかっていた」とのことで、当時としては賭けだったようだけど、今ならむしろ普通の感覚として受け入れられるような気がしている。帰国子女の外資系バリキャリみたいな人も増えたはずだし。 くっついたり離れたりすれ違ったりまた戻ったり辛気くせえ〜と思うのと、ところどころ現代(2020年)の感覚と合わずに「うわっ」となるところはある。けれどもあの時代にしては新しい(自分の親はほぼ柴門ふみと同世代だけどこんなにリベラルじゃない)考え方や生き方を肯定しているし、新旧の価値観のぶつかり合いに、まさに今リアリティを持って考えたい問題が見えてくる。この作品が生まれた時代(恋愛至上主義的な価値観)含めて乗り越えられるべき名作だと思う。
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