ナベテツ
ナベテツ
2020/09/20
まずは、知ろう#1巻応援
マンガのすばらしさは幾つもありますが、自分の知らない世界を教えてくれる、知見を広げてくれる、という点も挙げられると思います。 AVを見たことのない男性というのは日本にほとんどいないと思いますが、この業界に関して詳細な知識のある男性もまた、ほとんどいないと思います(AV女優や男優、作品レベルの話ではありません)。かくいう自分も、好きな作家のエッセイや漫画で取り上げられたエピソードやインタビュー程度の知識しかありませんが、それでも恐らく世の中の平均的な男性よりは「作品」以外について「知っている」人間になってしまうと思います。 作者の村西てんがさんは、実際に制作会社で働いた経験があり、我々のような無知な人間に、AV業界や撮影というものを、少しずつ見せてくれます。 パッケージングされた作品には、それを作っている人達がいる。至極まっとうなことなのですが、AVに関してはその事が意識する人間は殆どいないように思います。それもまた無知のもたらすものであり、想像力の翼を届かせることのない原因になってしまっているのではないかと思います。 描きたいことが沢山あるんだろうな、というのが1巻を読んで自分が感じたことでした。それは、作者の物語を紡ぎたいという願望と同じくらい、この業界に向けられる「無知」に起因する眼差しを変えたい、という祈りなのではないかと。 世の中には、色んな仕事があるし、そこで働いている人は多分自分とそんなに違わない。彼ら彼女らも自分と同じくらい懸命に毎日を生きている。そんな当たり前のことを教えてくれる、現代の日本で特殊とみられる世界をやさしく教えてくれる作品です。作者が描き切ったと言えるくらい、連載が続くことを祈り、細やかでもエールになればと思います。
ANAGUMA
ANAGUMA
2020/12/16
女子高生が変身して鉄球を振り回す!!!
主人公の女子高生・柚子は髪が光って超人的なパワーを発揮する「ペパーミント」の能力の持ち主。その糧となるのは両親の仇であるMMD団への復讐心! 落ちぶれたパンクロッカー・ハッサクや双子の連続殺人犯ナツミカンミ、正義執行のためなら何でもアリの俺サイコー裁判官ポンカン、AIを搭載したヘリコプターなど個性的すぎるメンバーとともに、崩壊した世界で血塗られた復讐戦争に乗り出すのだった!! まずキャラデザが本当に神。みんなカッコイイしカワイイ。 キャラ以外にも花札のモチーフやミステリーサークルのアイデアなど、見ていてビビッと来るデザイン、ギミックが次々出てきてシビレます。なんといっても主人公の武器が工事用の鉄球ですからね。ちなみにチェンソーで戦ったりもします。 ブッ飛んだキャラクターの魅力とバトルの気持ちよさを両輪にしてパワープレー気味に話が進んでいくのですが、佐藤大作品だけあって終盤は結構エウレカセブンぽいというか、セカイ系的な雰囲気がビシバシ感じられて自分は大好きでした。 軽いノリで人が死にまくったり、設定のボヤかし方(説明しきらないのがクールという思想)とかのポイントで好みは分かれると思いますが「カッコよく盛り上がってたらこまけぇこたぁいいんだよ!感じろ!!」というスタンスのひとには読んでほしい作品です。 ヒロインであるところのヘリの吉田くんのかわいさも目に焼き付けてくれ!
pennzou
pennzou
2020/03/29
人が持つ、しなやかな強さ
『私の保健室へおいで…』は2002年にハヤカワ文庫JAレーベルにて発行された作品集だ。収録作品は81年〜90年作までと年代で見れば幅広いが、版元の紹介文に「スタイリッシュなラヴロマン」と謳われている通り、全作に恋愛要素を含んだ統一感のあるラインナップである。 こう書くと、恋愛最中の高揚感であるとかシャープな駆け引きみたいなのを想像されるかもしれないが、清原先生の作品ではもっと引いた視点から恋愛が描かれる。それが清原なつのシグネイチャーとしか言いようのない個性をマンガに宿している。 清原先生は、思い込みや呪縛などによって凝り固まってしまった心がフッと解きほぐされる瞬間を描く。 そういった人が持つしなやかな強さに触れた時、自分の心も軽やかになった気分になる。 この特色は、恋愛要素を主軸とした本書において特に傾向が強い。清原作品における恋愛は誰かと誰かの交流であり、他者により自己が変化することがあるためだ。それが本書を魅力的なものにしている。「新説 赤い糸の伝説」とか本当に最高…… 本書から清原先生に入門した場合、次に読むのは何がよいだろうか。 発表当時のコミックスは絶版であるが、近年に月刊フラワーズでポツポツと発表されている作品を除けば、ほぼ全作品が文庫などで網羅されている。(電子書籍化も文庫については殆ど為されている状況) そのゆえ間口がとても広いので、コレという名前を挙げるのは難しい。各々の関心領域と描かれている題材がマッチしている作品が適していると考える。 本書から遠くないニュアンスのものを読みたいのなら『春の微熱』、もしSFが好きであるなら『アレックス・タイムトラベル』、歴史物であれば『飛鳥昔語り』、性に纏わる領域に関心があるなら『花図鑑』あたりだろうか。これらをまとめた清原先生の総体と向き合うのなら自選傑作集『桜の森の満開の下』。清原先生が生み出した発明的キャラクター・花岡ちゃんが活躍する『花岡ちゃんの夏休み』もいい。 ちなみに、マイベスト清原なつの作品は『春の微熱』収録「群青の日々」です。
TKD
TKD
2020/09/22
『ジョジョ』の基本思想が詰まった始まりの部
大ヒット漫画『ジョジョ』の 記念すべき開幕を告げる部 ではありますが、 ファンの人でもわざわざ読み返すことは あまりないのではないでしょうか? 私の周りでも「1部が一番好き!」 という人は1人もいません。 確かにその後の部に比べて バトルも地味なものが多く 現代から見ると時代を感じるキャラクターが多いので若い人たちが見ると 物足りなさを感じてしまうのは 仕方ないことだと思います。 しかし、今回久々に読み返して 私はビックリしました! 第1部にはこの後30年近く貫かれ続ける 「ジョジョの基本思想」が 詰まっていたのですッ! それは3巻で語られる ツェペリさんの3つの教えです! ①相手の立場に身を置く思考。 ②「勇気」とは怖さを知ること  「恐怖」我がものとすること。 ③「成長」には犠牲が付き物  「犠牲」成長につなげられる人間こそ   美しい人間である。 おそらく『ジョジョ』はこの3箇条をもとに 作られているのでしょう。 相手の立場に身を置くことで、 敵キャラの造形を 細かく描写することができる。 そして、「恐怖」を我がものとする。 つまり、克服しようとするからこそ 「ホラー映画」に影響を受けた シーンづくりをする。 そして、ジョジョたちが犠牲を成長に つなげていくからこそこの漫画は 「王道」なのだと思います。 これらの基本思想があり、 そして、ジョナサンの正義漢としての描写も 少し過剰ではありますが、 キチンと入っています。 このジョナサンの過剰なまでの 「いい子」「正義漢」描写があったから 後のジョジョはどんなに不良でも ジョナサンの子孫だからという 土台の安定感から ヒーローとして自然に 読者に迎え入れられる のではないでしょうか? そんな感じで、あの『ジョジョ』の 始まりの部がただの旧時代の 漫画の訳がありません。 一回読んだだけで その後読み返してないという人は 是非一度読み返してみてください! 自分の好きな 『ジョジョ』のエッセンスが 生まれた瞬間を 何個も発見できると思います!
sogor25
sogor25
2020/10/05
令和のソーシャルディスタンスラブコメ? #1巻応援
高校2年のJK・長谷川結理は、近くの男子校に通う同学年の男子・葛城慶一郎に告白し、付き合うことになる。その告白の流れで慶一郎にキスをしようとする結理だったが、なぜか慶一郎から拒絶されてしまう。「完全にキスの流れだったじゃん」という結理に対して慶一郎は、告白にOKはしたが「性的な接触については同意していない」という謎の回答をする。 実は慶一郎は祖父・父ともに元内閣総理大臣と言うエリートで、さらに"葛城家のしきたり"として「十八歳まで異性との性的接触を禁止されている」という厳格な家庭に育った人間だった。結理と同い年である慶一郎が18歳になるまではあと1年半。つまりそれまでの間、結理が慶一郎に気安く触れることは許されないらしい。 それからというもの、結理が不意打ちで彼に触れようとしたらまるで痴漢を撃退するかのごとく関節を決められたり、2人でいるときも実は葛城家のSPに監視されているということが判明したりと、なかなか恋人として(物理的に) 距離を近づけることができない。 そんな、恋人同士のイチャイチャに夢を持っていた結理と、何よりも自身の家柄としきたりを重んじる慶一郎との交際を描いた作品。 あらすじを見ると、アプローチを仕掛けて行く結理に対して慶一郎があしらっていくという形のラブコメのように見えるのだが、実際にはそれだけではない作品。というのも、導入部分からは読み取れないのが、読み進めていくと結理が慶一郎のことを好きな以上に慶一郎が結理のことを大好きで、彼自身も結理に近づきたい、触れたいという感情を我慢しながら彼女に接しているということが分かってくる。 そんな彼が、基本的には葛城家のしきたりを第一に行動し結理との距離を保とうとするが、ある時には正攻法で、ある時にはしきたりの隙を突いて結理の期待に応えようとしてくれる、そのギャップが可愛らしい。 ただ、そんな慶一郎の行動が若干的外れだったり、そもそも結理の期待しているようなイチャイチャとはかけ離れていたりして、なかなか結理自身が満足する交際はできない、その様子もラブコメとして楽しい作品。 1巻まで読了
六文銭
六文銭
2020/11/16
全ての創作物に感謝したくなる
話題になって読んだが、特定のコンテンツにのめり込んだような経験がある人にはあるある的な内容だと思います。 自分は創作まではいきませんが、のめり込んだ先に色んな人のレビューや別の角度でとらえた新説なるもののブログ、はては二次創作の作品まで深入りした経験があるので、よりしっくりきました。 さて、本作の内容ですが、二次創作(BLジャンル?)界隈で才能を輝かせる綾城(あやしろ)とそれに触発された読者をオムニバス形式で展開し、加えて「おけけパワー中島」というSNS上で綾城と絡んでくる謎の存在がシリーズ通してでてくるというのが基本の流れ。 綾城という彼女の読者(というか信者)にとっては神的存在に、「おけけパワー中島」が馴れ馴れしく接する姿が、良い感じでイラッとさせるんです。 特に、文面上でしか出てこないという、その不気味さも残しながら人間味もある感じが妙にリアル。 また 「おけけパワー中島」 という、一度聞いたら忘れられないネーミング! たまに、SNS上でセンスフルなネーミングの人いますけど、そういう感じなんだと思います。 綾城に触発され創作意欲を燃やす人、嫉妬する人、綾城に会いたがる人など色んなパターンの悲喜こもごもが描かれ、読んでいて自分の中にある人格の全パターンが網羅されている感じ。 オタクとしては共感の嵐です。 創作の苦しみや喜びを感じるとともに、作家様の創作物を拝ませていただけるということのありがたさを痛感する作品です。
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