野愛
野愛
2020/12/01
絵から音楽が聞こえる
音楽を題材にした漫画は多数あるので忘れてしまいがちだけれど、漫画で音楽を表現するのって物凄いことじゃないですか? なずなのねいろ、物凄い漫画に出会ってしまった気がしています。 ギター少年の伊賀が三味線を弾く少女なずなに出会い、三味線を教わろうとするところから物語は始まります。 なずなの三味線に感動し、自らも三味線の魅力に引き込まれていく…のは間違いないのですが、一筋縄ではいかないのがこの作品。 なずなには三味線を弾かなければならない理由と、三味線を弾くことができない理由がありました。 何故なずなは三味線を弾くのか、何故なずなは三味線を弾けないのか、なずなが抱えているものは何なのか。 多くは語られないまま、揺れ動くなずなの心だけをたっぷり描写して物語は進んでいきます。 真実が明らかになり、動き出したなずなの音色は静寂を切り裂くように鳴り響きます。 漫画だから音が聞こえることはありません。それでも、自分自身の音を見つけたなずなの姿が心を震わせる音楽そのものに見えました。 なずなが子どものような容姿で描かれているのにもしっかり意味があって驚きました。何から何までよくできている…。 本当に本当に出会えてよかった作品です。ぜひ多くの人に読んでほしい!
sogor25
sogor25
2019/09/06
圧倒的筆致で描かれる、AIと一人の男との闘いの物語
「高度な知能を持ったアンドロイドやAIが人類に対して反逆を企てる」というお話は、割ともう手垢が付いてきているように思う。私が最初に思いついたのはウィル・スミス主演の映画「アイ,ロボット」なのだが、Wikiを見るとその原点はアイザック・アシモフとのことなので、アイディアとしてはかなり古くから用いられていたのだろう。 今作も大まかなプロットはそこから大きく外れてはないのだが、異なる部分があるとすれば主人公のアイデンティティである。 主人公・保はアンドロイド製造会社の社員であったが、とある"事故"により重症を負ったため、緊急措置でそのアンドロイドに用いているものと同じ基盤・義体を移植される。辛うじて一命を取り留めた保つであったが、果たして身体の大半を機械に置換された人間が、アンドロイドの暴走が始まった時にどういう行動を起こすのか…。 時系列は飛び、それから1年後、街はアンドロイドの反乱により壊滅状態となり、保は記憶を失いただ憎悪のままにアンドロイドを破壊し続ける存在となっていた。彼が謎の少女・鳩と出会ったところから、物語は再度動き始める。 この物語は、アンドロイドの反乱に決死の対抗を行う者たちの物語であると同時に、主人公・保が"人間だった頃の記憶"を取り戻していく物語である。 下敷きとなるプロットは使い古されてたものだとしても、様々な要素の組み合わせ、キャラクターに対する物語の付与、そして圧巻の画力を持ってすればここまで読ませる作品になる、というのを感じられた一作。 1巻まで読了。
たか
たか
2019/08/07
Final Phaseは2つある
cameraこちらの青い表紙はFinal Phaseの『出版社ビーグリー版』です。Final Phaseはこの他に赤黒いダークな表紙の『PHP研究所版』もあるのですが、**作品の内容は全く一緒**です。 ▼ビーグリー版のPHP版との違い ・表紙が違う ・標題紙がない ・絵のコントラストが強い **・扉絵と目次・人物紹介がない** **・「特別収録 羽貫ファイル」がない** 自分は断然PHP版の方が好きですね。 コントラストが丁度いい感じで、色がきれいで見やすいです。ビーグリー版は、妙に色が濃くて主線が浮いている感じがしました。 そしてなんと言っても扉絵(目次)と巻末の特別収録…!! 羽貫が過去に発生した疫病についてまとめた(という体の)資料は、現実で発生した感染症で読み応えがありますし、これを**『本編を読み終わった余韻に浸りながら読むところまで作品の一部』**と言って過言ではないと思います。 そして読後に気づいたのですが、巻頭の扉絵と目次も非常に素晴らしいんです…!**『目次の扉絵から、実は物語は始まっている』という演出がニクい。**巻末の特別収録がないため目次も削除したのでしょうが…だったらせめて扉絵だけでも残してほしかったです。 あえてビーグリー版の良いところを探すとしたら、ページ数が少ない分200円ほど値段が安いところでしょうか…。作品を120%楽しむならPHP版(赤い表紙の方)をオススメします。 ▼PHP版(赤い方)の配信元 ・Kindle ・honto ・BookLive ・BOOKWALKER ・紀伊國屋書店 ・ブックパス ▼ビーグリー版(青い方)の配信元 ・ebookjapan ・まんが王国 ・シーモア (画像はビーグリー版とPHP版の比較画像)
たか
たか
2019/08/26
笑いのセンスが新しい読切!
結論から言うとめっっっちゃ良かった…!(同じWJ39号から新連載の夜桜さんちの大作戦より断然こっちが好き) 可愛らしくて柔らかいタッチ 独特のノリとテンション 癖のあるセリフ 特に見所のない作品も多い中で、とにかく個性が光っていて気づくとドハマりしてました…! https://i.imgur.com/Ztz5hDP.png https://i.imgur.com/Yt30JJa.png (△『ボーンコレクション(読切)』雲母坂盾) 「ふふっ…何か“ハムナプトラ”っぽいな」 「田舎に引っ越せばいいんだああああ」 「北陸とかいいね!! 福井とか石川とかさ!!!」 「こんな短時間で2回も緊縛されることなんてある?」 「触ってないしキッモ」 いや、本当セリフがよすぎる…!! 読み始めてすぐは「骨で戦う」という設定が、NARUTOの君麻呂と被ってて引っかかったのですが、読んでいくうちに「サバけたヒロイン、ゆるいお色気、シリアスな笑い」が渾然一体となった、他にない独特の味が好きになっていました。 読み味が従来のジャンプっぽくない笑いのセンスが新しい読切。連載で2人の結末を見てみたい…!! 【週刊少年ジャンプ2019年39号】 http://jumpbookstore.com/item/SHSA_JP01WJ2019035D01_57.html (追記: 2020/04/27) ▼連載版の感想スレはこちら▼ https://manba.co.jp/topics/22714
sogor25
sogor25
2019/08/28
頽廃(たいはい)した世界で生きる少女と"ガーディアン"の兄の物語
どうやら世界は人類のせいで滅びかけているらしい。そんな世界の中で人類以外の種族は身体を腐敗させながら何とか生活をしている。人類はというと、滅びてはないようだが他の種族からの迫害や虐殺に怯えながら細々と生き長らえているらしい。 そんな頽廃した世界で生きる人間の少女・ネコと街を外敵から守る傭兵"ガーディアン"のグアルディングリーの兄妹の物語。 ツイ4連載のため基本はコメディチックだが、ところどころにこの世界に影を落とす闇の部分が垣間見える。それは人類への迫害の様子などという直接的なものもあるが、例えば作中では直接提示されないが幕間の設定画で書かれる"腐敗進行度"の情報、人類は勿論のこと住人に頼りにされているガーディアンすらも固有名詞を用いて呼ばれることがないという様子など、間接的にも否応なく示される。 全てが緩やかに朽ちてゆく世界、でもそれと不釣り合いなほどの気丈さを見せるネコと、そんなネコとの生活を生き甲斐に任務へと赴くグアルディングリー。しかしその生活も長くは続かず、物語は一つの結末へと向かってゆく。 物語の結末は印象的で、(短期集中連載で尺が決まってたということも多少関わってくるのだろうが)見せられる部分を敢えて見せず、その結果として非常に余韻が深く、かつ遠くに未来への希望も見出すことの出来る結末となっている。 全1巻と非常に読みやすい長さでもあるので、特に「少女終末旅行」などのポストアポカリプスを描く作品が好きな方には全力でオススメしたい作品。 全1巻読了。
兎来栄寿
兎来栄寿
2020/11/19
「失敗」の意味を知る物語
史群アル仙改め七野ワビせんさんがTwitterで2018年〜2020年にかけて描いていたシリーズが単行本化されたものです。古き良きを感じさせてくれる可愛らしい絵柄で、心の奥深くに響くものがある作風は健在。 本作では世界征服を目論む博士が作った自分のクローンと二人暮らしをしていた過去の失敗の日々を最期に回想するという設定で進行していきます。 クローンは生まれたての赤ん坊と同様で、シングルファザーとして子育てに勤しみ喜怒哀楽にまみれる姿は半ば子育てエッセイのよう。子供が見せる純朴な姿に心を奪われたり感心したり、一方で子育ての大変さに心身を窶してストレスが爆発したり……。 博士がお土産にもらったかわいいウサギの置物を壊されてしまった時の、「誰も悪くないけれど大切な人に大切なものを壊されてしまった時のやり場のない感情」をマンガに落とし込む巧さは流石だと思いました。 偏屈で人間嫌いな博士と、無垢に色んなものに触れて育っていくクローン、博士の発明に目を付けているハリスら中心となるキャラクターが立っており、彼らのストーリーは無限に生み出せそうなほど。単体でも関係性でも好きになる要素が豊富にあります。 脇役の犬猿も絶妙。特に猿社会でも人間社会と同様のストレスを抱えて自分で処理していることが見受けられる猿に心を寄せてしまいます。 七野ワビせんさんのマンガは本当に愛おしいですし、スランプに陥ってしまったそうですがこれからも無理のないペースで執筆を続けて欲しいです。
banner
banner
banner