吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/03/09
「恋愛」が持つ意味を改めて考えさせられる。
すごく良かった。 すごく良かった! 舞台はそう遠くない近未来である2033年。 主人公の表紙の女性は新聞記者で、とあるテロの被害者たちの追悼記事を書くために故人の遺族や友人・知人に取材してわまっていく。 故人に寄り添った丁寧な取材を通して、この社会における「恋愛」や「結婚」の輪郭を少しずつ捉えていくことになる。 ずっと読みたいと思っていたのに、こんなにいい作品と知ってたらもっと早くに読んでおくんだったと後悔・・。 何がいいって、人物と社会をすごく良く描けてるんですよねー。 それぞれの個人が抱えてる感情や悩みはあくまで秘匿されるべき個人のものなんだけど、それを取材を通していろんな人物の視点からつまびらかにしていくと、それまで外側から見えていた一面的なレッテルでは推し量れない立体的で複雑な人物像が浮き上がってくる。 「恋愛」を"飛ばし"て「結婚」するための出会い目的のシェアハウスでテロが行われるが、同じ目的のもと集まったはずの被害者たちにもそれぞれ全く事情があった。 ここでのテーマは、「恋愛」をダサいもの、古いとする潮流とそれを取り巻くいろんな事情と感情をもった人々、「結婚」、そして「性」だ。 骨太かつ心に優しく触れる繊細な描写に感動した。 恋愛なんてイマドキ流行らないよね、という風潮から逆説的に恋愛の良さ、そして悪さが浮き上がってくるなんて素敵すぎる。 この風潮に救われたように感じる人もいれば、行き場がなくなってしまう人もいる。 いたずらな社会の変化に、もてあそばれてしまった人たちがいる。 確かに、結婚という制度は時代によってどんどん変わってきている。 かつては家同士の政略結婚の意味合いが強かったが、欧米からの流れでトレンディドラマなども流行って恋愛結婚が主流になった。 そして、現代ではこの漫画の設定に少し近い現実的なもの、「婚活」という言葉が示すように就職のような「利」をとった考えで結婚する人が増えている。 恋愛自体が持つ社会における相対的な重要性は目に見えないスピードで日に日に変化していっているけど、実は「恋」の絶対的かつ本質的な部分って変わらないよね、というメッセージを感じた。 「恋」は本質的には「する」ものじゃない。 予期せず落ちるもので、突然で、とても理不尽だ。 社会的恋愛と本質的恋愛を混同するものじゃない。 本質的恋愛は、とてもロマンチックでとても残酷だ。 だから、どの時代においても社会制度が変わっても描かれるのだ。 取材を通して「恋」と一歩距離を置きつつも、「恋」を知り変わっていく主人公が愛しくてしょうがない。 あと、主人公の目が最高。 内容も最高なのだけど、なによりもあのじっとりとした色気のある目。 近年で最推しヒロインかもしれない。 素晴らしい読後感だったので、『ルポルタージュ‐追悼記事‐』での続きを楽しみにしている。
さいろく
さいろく
2020/01/06
自衛艦が"タイムスリップ"したらどうなるのか
本作の主軸となる自衛艦「みらい」は、自衛隊活動としてエクアドルへの遠征の途中で突如タイムスリップ。1942年のミッドウェー海戦のど真ん中にいきなり飛ばされてしまう。 自衛艦っていうのは自衛隊員が乗っているわけなのだが、"自衛隊"を本当の意味で理解していなかったなと深く考えさせられる本作。 同じくかわぐちかいじ著書の超名作「沈黙の艦隊」の主人公:海江田四郎のようにゴリゴリのカリスマが率いるのかと思いきや、自衛隊員としての葛藤を全員が抱えているため割と登場人物が強め。 ちなみに歴史上の実在の人物たちも多く登場している。 「やってみせ言って聞かせてさせてみて~」の山本五十六ぐらいしか私はすぐにわからなかったけど、当時の"大日本帝国"がそのまま存在する設定なので「艦これ」とか好きな人はたまらないのではないだろうか。 私は戦艦も戦争も本当に全く知らなかったけど、それでもストーリーを追っていくだけで考えさせられるシーンが多々あり、感心しながら読み続けられた。長いけど。 読後にWikipediaとかブログとかを探してみたけどやっぱりかなり熟考されてる方がいるようで、実際の史実との差異であったり細かな指摘はあるもののみんなジパング大好きだなーっていうのはよくわかった。 絵がリアルで大人向け感強く見えるかもしれないけどめちゃくちゃ難しい話だけということでもなく、画力と雰囲気とテンポの良さによってかわぐちかいじという稀代の漫画家の実力を知ることが出来る素晴らしい作品だと思う。 かわぐちかいじ先生はきっと若い世代の人たちからすると「沈黙の艦隊」や「太陽の黙示録」「イーグル」そしてこの「ジパング」と戦争や政治ものを描く漫画家というイメージなんじゃないだろーか。 最近はたしかにそんな感じだけど「アクター」とか「ハード&ルーズ」とかみたいな時代の色が強く反映されている作品も多く、こっちの方が個人的に推しだったりもするので是非もっと若い人たちにも読んでいただきたい。 政治とか戦争とかとっつきにくいと思うし(私はそう)
nyae
nyae
2019/06/25
【名作】監察医は死者の心に耳をそばたてて聞く仕事
主人公の天野ひかるは、東京の大学を主席で卒業し、地元の大阪に戻り、監察医として大学病院で働いている。 大学時代は、医学部に属していながら卒業後に進む道を決めかねていたひかるだが、あるショッキングな事件をきっかけに、死者の声を聞くことの意味を知り、監察医になることを決めた。 監察医になってからのひかるは、おっとりして控えめながら、気になったこと・分からないことに対しては納得いくまで調べ尽くさないと気がすまない性格ゆえに、必要以上に事件や事故の内情に入り込んでしまい、無念な死を目の当たりにしては心をすり減らすような日々を送っている。 そんなひかるの人並み外れた観察力と真実を知りたいという執念、どんな人間に対しても死には同じ重みがあると信じる純粋な心が、同僚や警察、被害者の周囲の人間にさまざまな影響を与える。 ストーリーの構成としては2〜3話完結(話によって5話くらい続くことも)で、読み手には最初から犯人がわかっているパターンもあれば、事故か事件かもわからないで進む話もある。 ひかるの身近な人間が事件に関わることも少なくない。 プライベートでは、母親からしつこく受ける見合いの誘いを断りながらも、仕事でよく関わる刑事の森田と恋仲になる。森田に対する自分の気持に気づいてから、何かにつれ顔を赤らめオドオドする様子は、相当な奥手女子であることがわかる。しかし、たまにある超貴重なデート回でも必ず事件や事故に関わることになってしまう運命なのはなんとも残念。 自分はとにかくこの作家の描く人体描写の虜である。 大きい頭になで肩、どんくさそうな脚、…。新作描いてほしいな、と小さな声で言ってみる。 ちなみに、本作の続編である「きらきらひかる2」の新キャラに霊が見える監察医がいるが、なぜかひかると同程度の主役級の扱いになっているうえに、森田の存在感がかなり薄くなっている(恋人同士という設定自体が無くなってる感じ)。 それにかなりのショックを受けたが「きらきらひかる最終章」(未電子化)でそこらへんはしっかり回収されている。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/07/22
ココロとカラダがチグハグな成人漫画
三味線漫画『なずなのねいろ』1巻刊行に合わせて、ナヲコ先生が成人誌で発表して来た作品を纏めたのが、この短編集。まずは掲載誌を列挙する。 ●漫画ホットミルク ●COMICプチミルク ●COMICアリス倶楽部 ●コミックメガキューブ ●ポプリクラブ ●同人誌 大学生から大人×高校生、高校生同士、子供同士、ロリ×ロリ、ショタと多岐に渡る。ショタ以外は性的描写あり。みんなれっきとした、エロ漫画だ。 しかし、はっきり言うと…… 「これでエロいことは出来ねぇ!」 細やかな感覚、しんどい背景、大き過ぎる感情にいちいちグッと来るので、正直この作品達で、ナニも出来ない。絵のエロさに体は反応するのに、圧倒的な感情に心を持っていかれる結果、ココロとカラダは引き裂かれ、読後には重い余韻と少しの罪悪感が残る。 傷付いた心を癒すように体を重ねたり、身体に刻む記憶としての性交だったり、知らない部分を見つけた喜びだったり……痛くて優しい、温かくて切ない、そんな機微をこれでもかと刻み付けてくる。 こんなの、もう忘れられない。 ♡♡♡♡♡ ●マイガール 身体が繋がれば、心は繋がるの? ●ひとつだけ 好きなものを頬張る貴方が好き。 ●大切な人 渇きを潤す様に、体を重ねる小学生達。 ●駅 兄妹と他人を行ったり来たりの二人の子供は、何度目かの停車場に立つ。 ●おねえさん改造計画 24歳に見えないお姉さんは可愛く変身して、秘密のバイト。 ●デュオメイト カワイイあの子と連弾したい女の子。でも相手が来なくなっちゃった……。 ●八月の夢 教師はあの女子生徒に、聖性と劣情を重ねていた。そのバランスが崩れる時……。 ●Brand Mew Menu 喫茶店の子に出前を頼んだら、相手は僕を知っていた。えっ、地味なアイツが? ●明日 2年前の誕生日のイザコザで、絶交していた二人。その理由とすれ違っていた心は……? ●ナキムシのうた 兄弟のように育った幼馴染みと再会。でも何かつれない……。 ●テンション・ナビゲーション 1・サークルの飲み会で万年幹事のハイテンション女子。笑顔以外の顔を見たい。 2・セックスで何が分かる?という先輩と、本心を知りたい後輩。 3・過去の事件のせいで、彼氏から優しくされる女子。でも本当は……。
六文銭
六文銭
2021/04/12
モラハラなのか言葉のDVなのか
読んででシンドイく、かつ こんなのとだったら別れちまえよ!と言いながら、なぜか読んでしまう不思議。 この手マンガがあるあるなのですが、読者に程よくツッコミをさせてくれてつい全部読んでしまいました。 主人公は、婚活最中になぜか新幹線でナンパにあう。 その優しさと真面目な風貌であれよあれよと惹かれて、その男に告白し付き合うことに。 が、付き合った途端、男は豹変する。 俺より先に寝るなとか、連絡が遅かっただけで別れるとか・・・ 極めつけは、初お泊りでウキウキな主人公に、明日仕事だからお弁当をつくってくれと言い、しかも好き嫌いが多いとか、それでも冷凍食品は1品だけにしろとか注文をつけて、結果、つくってくれたお弁当に「キツかった」と言う始末。 自分男なんすけど、女性だったら、この間だけで1万回別れるきっかけがありました。 主人公(著者?)忍耐力すごいな、と関心しました。 それでも、色々ギリギリな主人公は、そんな男でも別れることができず(随所で優しいところが悪いのか?)、ところどころ疑問がありながらも、最終的には結婚までしてしまい・・・という流れ。 最後がちょっとアレでしたが、こんな男もいるんだなぁ、というか、こんな男でも結婚できるんだなぁと謎の関心をしてしまいました。 (いや、自分が立派だとか言うつもりはないんですけどね…。) 結婚=幸せではないので、ご利用は計画的にという感じでございました。
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