takaaki
takaaki
2020/07/25
鬼太郎にはないテイスト
水木しげるの貸本時代の作品には,何とも言えない独特の没入感がある.画風も,広く知られているいわゆる水木絵とも異なっている. 貸本時代の作品には,ホラー要素の強いかなり不気味なものもいくつかあり,自分が読んだことのある作品の中で,特に怖さを感じるのが本書に収録されている『墓をほる男』である. 話の大筋は,有名なフランスの詩人からしゃれこうべの入手を依頼された三島ユキ夫が,墓から3名のしゃれこうべを盗み出し,デパートでの奇妙な体験の後,使用禁止となっているはずのエレベーターで死亡してしまうというものだ. 話の最後では,しゃれこうべは14年前の同日に同デパートで起きた,エレベーター墜落事故で無くなった3名のものであった…ということが明かされる. ストーリー的に凄くひねられたような展開ではないものの,特に最後の演出がなんとも不気味なのだ. ユキ夫が何気なくエレベーターに乗り,やたら降りていくのが気になってエレベーターガールにどこまで行くのか聞くと,地獄までと告げられ,落下後,死亡事故の新聞記事の内容が淡々と語られるという内容なのだが,見せ方がシンプルでありながら何とも不気味. 今と違ってスクリーントーン等もなく,技術的な見せ方も少なかった約60年前の作品ならではの演出という印象も受ける. 鬼太郎とはまた違う,水木しげる貸本時代の独特の雰囲気と没入感は,ぜひ多くの人に味わってほしいと思う.
天沢聖司
天沢聖司
2020/07/23
「指が6本ある男」を巡る女達の群像劇
camera色気の魔術師(※勝手に命名)・もんでんあきこ先生の新刊ということで購入。町の名士だった影山博人という男が死に、かつて影山に惹かれた女達がひっそりと記憶を分かち合う物語。 この影山がまぁ〜〜〜すごくて。 「暗い過去を背負った陰のあるいい男」なんですよ。 これだけで「そんなの惚れない女いないわ!!」って感じですけど、作中でもまさにその通りで、過去に彼と関係をもった女性たち全員の心の中に、彼の存在が強烈に刻まれ残り続けているんですよね。 https://twitter.com/mondenakiko/status/1283882978381148160?s=20 だんだん明らかになっていく影山の過去も面白かったのですが、女達の間に流れる空気感がすごく素敵でした。 全員にとって影山が特別な男であるということが、不思議な連帯感生み出していて、それがなんかすごくいい…。 若く貧しい6本指の影山と、成功を収めた5本指の影山の両方と寝た有閑夫人。 経済格差が目に見えてわかる閉鎖的な町で出会い、影山が初めての相手だった同級生。 影山が引き取られた店で出会い、母親の葬式に立ち会い指の切断に協力した同僚。 母親の店を存続させるために頼みに行き、「1回分の礼」を受け取った娘。 上巻ではこの4人の女性の口から影山との思い出が語られます。 も〜〜ホントもんでんあきこ先生はナギと嵐とか雪人 YUKITOとか陰のある男書かせたら天下一品だなと実感しました。 影山が死ぬ少し前に、「顔に痣がある女」がすぐそばで仕事を手伝っていて、この身体的コンプレックスのある女性がどう影山とか変わっていたのか、下巻を読むのがすごく楽しみです。 https://twitter.com/mondenakiko/status/1283940341767213056?s=20 (上巻1話の15歳の影山。最の高…)
天沢聖司
天沢聖司
2019/08/29
これ読んだほうがいいよマジで
もしかしたらもう世の中の「〇〇くん、〇〇ちゃん」漫画に飽きてるかもしれないけど、最後にこれだけは読んでほしい。 このマンガはタイトル通り「顔に出る太田が顔に出ない柏田さんをビビらせるだけの話」なんだけど、まあ〜とにかく2人がかわいい…! 太田はいかにも子供っぽい悪ガキで、悪ぶってるけど根がメチャクチャいいやつでそれが顔に出ちゃう。 柏田さんは顔には出ないけど感情豊かで、頻繁に3等身くらいにデフォルメ(真顔)されてお茶目なことして太田をからかう。 **もはや柏田さんが可愛いのか、太田が可愛いのかわからない。** 私はいつの間にからかわれ上手の太田君を読んでいたのか。 https://twitter.com/fukuma333/status/1148480642516017152?s=20 からかい上手の高木さんという同ジャンル・類似作品の金字塔と比較してみると、「高木さん」は高木さんがかなり大人で高度な恋の駆け引きを繰り広げるのに対し、**こちらは2人ともまだまだ子供で純粋に友達同士のふざけ合いをしてるだけ。** 両片思いで、実質カレカノで、実質恋愛をしてる「高木さん」に比べると、太田と柏田さんはまだお互い「ちょっといいな」と気になってるぐらい。そこがいいんだよそこが…!! **まだまだ子供っぽい中学生らしいピュアさに、読んでいてたびたび浄化されそうになる。最高😇** さらに比較すると、基本的に周囲と隔絶された2人きりの世界を描いている「高木さん」に対し、**「柏田さん」は仲良しグループの中に主人公の2人がいるところが特徴。**そこがまた中学生がワチャワチャしてるところが見れて良いんですわ…! ちなみに太田の男友達の名前は「田所と佐田」、柏田さんのことが大好きな委員長(女)の名前は田淵で全員「田繫がり」。 疲れたときに読むと最高に癒やされるので一家に一冊おすすめします。 「顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君」 http://seiga.nicovideo.jp/comic/35172
六文銭
六文銭
2020/07/03
元塾講師が読んでも唸る実録受験マンガ
小生、学生時代に塾講師をしており、そこは本作と同様「中学受験」を中心にした塾でした。 そんな自分がこれを読んで思ったのは、 中学受験、マジでこんな感じです (太字で、最大フォント数にしたい) ということ。 もちろん、マンガなので多少の脚色はあるのですが、ますます加熱している中学受験業界なので、これくらい盛ってもほとんど一致していると言っていいのではないでしょうか? 「中学受験は親の狂気」 と本作で表現してますが、本当にそうなんです。 年端もいかない子供が、自ら勉強なんてやりますか? 絶対やらないですよ。 親が、それこそヒステリックに子供にやらせるんです。 親が全く関与しないパターンもありますが、 自分が見てきたなかで、その場合の生徒の特質は大きく2つ。 超天才か超バカ。 超天才は、勉強自体が好き過ぎて、ほっといてもずっとやるから、親も何も言わないんです。体調の心配くらいしかしない。 逆に、超バカは、塾を時間つぶしか遊び場にしているだけなので、親も勉強が目的ではないから放置なんです。 ただ、これは上位と下位の5%くらい。 残り90%の生徒(ってかほぼ全て)は親の干渉が、ものすっっっっっっっっっごいのです。 というか、親の受験といっていいくらい中学受験は親が主体なんです。 親が子供を徹底的に管理し導いていかないと、12歳くらいの子供は何も判断できないんですよ。 塾の費用も半端ないから(年間100万以上?)、親も気狂ったように子供と塾に圧をかけてくるのです。 それを称して、親の狂気 とはよく言ったものです。 今思うと、ホントにそうでした。 うなりました。 さらに、この作品がすごいのは、親と生徒のパターンが全網羅されていること。 自分も読んでて、つい昔の生徒思い出しましたもの。 このキャラは彼に似ているな、とか、フラッシュバックしましたよ。 ・教育に熱心な親/無関心な親 ・塾に従う親子/従わない親子 ・偏差値や学校のブランドしか興味ない親子 ・なにかのきっかけで成績が伸びる子・落ちる子 ・天才肌の子/努力家の子 ・兄弟で優秀な子と劣等生という差がある子 ・答えをみてズルする子 ・他人の脚を引っ張る子 ・周囲のせいにする子 などなど。 抱えている問題も性格も色々と異なる生徒に塾講師として相対する姿は、純粋に面白いです。 手を変え品を変え相手を説き伏せたり対策していく感じは「こういうやり方で対応するのね」と感服します。 また、主人公黒木は「塾は営利目的」「子供の将来を売る場所」と言いきっていますが、「教育」の名のもとに変に高尚化していないのも良いです。 なんとも、裏表ない感じが好感もてますし、悪態ついてますが、なんだかんだで生徒をよく見ているんですよね。ツンデレですよ。 それにしても、 島津くんは親父に負けず頑張ってほしい! がんばり屋の加藤匠くんと柴田まるみちゃんは、第1志望受かってほしい! カイくんは弟に負けずというか、弟と一緒に頑張ってほしい! と思わず、読んでいて自分も力が入ってしまいました。 生徒の頑張る姿は、いいものです。 受験とはドラマですね。 まだまだ受験は先ですが、これから本番まで生徒たちがどう成長しどんな結果になるのか楽しみです。
ひさぴよ
ひさぴよ
2019/08/13
コミック売り場の悲喜交々
漫画好きにとっては、書店コミック売り場というのは楽園でしかないのですが、実際に働いてる書店員さんたちにとっては、戦場そのものである。という様子をコミカルに描いた作品です。 毎日、押し寄せる新刊(メッチャ重い)を受け取っては、品出しチェックするのは想像以上に体力勝負のようで、腰痛持ちの自分にはとても真似できないお仕事だ、ということがまず分かりました。 それだけでなく、お客さんからさまざまな問い合わせがぶつけられ、まるで作品当てクイズのような質問や、熱量の高い外国人オタクをカタコト英語で案内しなければいけなかったりと、コミュ能力も当然必須・・・!でも、書店員さんたちも万能ではないので、毎度あわてふためきながらも、必死に機転を効かせて、なんとか解決させるというのが面白い所。 主人公・本田さんはなぜ骸骨なのか?は読めば何となくわかるというか…。基本的に書店関係者は被り物をしていて表情はわからないのですが、不思議と喜怒哀楽はちゃんと伝わるんですよね…。こういう部分も何気にスゴイ表現力だと思いますね…!まぁ本田さんは大体ガクガク震えてるので、ガイコツ顔という風貌はこれ以上なくハマっているかと。 また、本屋のバックヤード業務について、かなり突っ込んだエピソードが満載なんですが、こういった業界あるあるは、これまでの本屋系作品では描かれなかった部分じゃないでしょうか。取次さんや、出版社の編集まで登場したりと、売り場に関わるすべての人の想い(怨念?)を惜しみなく暴露しているからこそ、これだけの面白さがあるのだと思います。 個人的に一番お気に入りなのは「”独断と偏見”による版元雑感」のシーン。以下の作者さんのツイートを参照。 https://twitter.com/gai_honda/status/883327424359931904
ひさぴよ
ひさぴよ
2020/07/29
心にいつもニコボール
90年代の少年サンデーで連載していたゴルフ漫画。小さな少年・青葉弾道(通称ダンドー)がド素人の状態からゴルフを始めて成長していく物語です。ゴルフにそれほど詳しくなくても楽しめる作品です。 子供の頃に読んだ時は気付きませんでしたが、原作は風の大地の坂田信弘先生だったんですよね。今にして読むと坂田ゴルフ塾の教えが随所に散りばめられているのが分かります。 ダンドーという主人公は、ある意味、坂田先生の理想の少年像ともいうべき存在かもしれません。 誰よりも他人への思いやりがあり、健気なまでに努力家で、窮地に陥っても絶対に諦めず笑顔を絶やさない。その象徴として、ボールに笑顔を書いた「ニコボール」という存在があります。 試合では対戦相手の嫌がらせを受けたりして、毎度ピンチに陥るんですけど笑、このニコボールに思いを乗せたスマイルショット(ウルトラスーパーショット)を繰り出すのです。 たとえ非現実的なショットであっても、ニコボールという特別な想いの力で納得させてくれるのが最高ですね。こういう所が漫画の素晴らしいところだなあと思うのです。 また、ダンドーと同じくらい魅力的なプレイヤーとの出会いもあります。ダンドーの最初の師匠、新庄さんをはじめ、兄貴的存在の拓さんも忘れられません。拓さんのキャディーをダンドーが務めた全日空オープン編は、何度読んでも感動してしまいます。それと実在のゴルフ界のレジェンド、帝王ジャックニクラウスも登場し、ゴルフの奥深さを見事に示してくれます。 ご都合主義的なところもある漫画でしたけど、最後はダンドーの純粋さが全てをひっくり返してしまうパワーがあって何だかんだ好きな漫画でした。
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/07/05
優しくて切ない天才の短編集
この短編集は、オールカラーである……水彩タッチのとても淡く、優しい色彩と、繊細な描線。 「萌え」という言葉にある程度、揶揄が込められているとすれば、優先生の描く造形は、「萌え」に水彩的な「優しさ」を加えて、誰も揶揄する気になれない程にまで美しく、愛らしく突き詰めた芸術品だ……控えめに言って天才だ、と思っている。 『おおかみこどもの雨と雪』『五時間目の戦争』も美しかったが、優先生の本質はカラーにある……と私が思い込んでいるのは、私がはじめて触れた先生の作品が、この短編集『さよなら、またね。』の表題作だったからだろう。 『季刊GERATINE』というカラー漫画雑誌の2010年秋号に掲載されたこの作品。いつ単行本になるのか……と思っていたら、2017年まで待つことになる。 表題作を始めとして、優しい雰囲気の中に描かれるのは、残酷な状況が多い。もう取り戻せない物、気づいた時には失われている恋、否応ない別れ……余りにも切なくて、私は表題作でいつも手が止まってしまう。 この年、優先生は亡くなられ、もうこの様な作品達は生み出されない……という事情を差し引いても尚、この切ない天才の、決して色褪せない作品に、是非一度触れてみていただきたい。まずはこの短編集がいいだろう。そして『五時間目の戦争』を是非。 ①さよなら、またね。 七年ぶりに化けて出た元クラスメートは、生まれ変わるから挨拶に来た、と言う。 ②なくしたことば 自分を模したAIを載せたサイボーグが、眠りから覚めない……何の夢を見てる? ③はるのはな 遠く離れた兄と妹。レシーバーで偶々の交信。人の体でない兄が向かうのは……。 ④なつのいと 先生は私の名を間違える。私とよく似た、婚約者の名前と。 ⑤おかえりなさい 田舎に帰省する姉は、いつも明るい。俺が望んだのと、違う。 ⑥猫の日 飼い猫を助けてくれた級友に、つい暗い本音を話してしまう。彼の反応は……? ⑦きずあと 切りすぎた前髪を、男の子に見せに行く。彼のせいで、残った痕を、苦しい初恋を。
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