ひさぴよ
ひさぴよ
2020/06/27
大長編の異色作「夢幻三剣士」
大長編ドラえもんのシリーズ14作目。 > 夢はいいなあ・・・。 > 現実の世界はどうしてこんなにつらくきびしいのだろう・・・。 日々の現実がイヤになったのび太は、ドラえもんに懇願し、思い通りの夢を見ることができる道具「気ままに夢見る機」を未来デパートから取り寄せてもらう。自分の思うがままに夢を楽しむのび太だったが、現実世界に謎の使者トリホーが現れ、『夢幻三剣士』という夢カセットを見るようすすめられる。その夢の内容は、RPGゲームのような剣と魔法の世界だった。”ユメミル王国”を侵略しようとする妖霊大帝オドロームと戦うことになり…。はじめは、小説『三銃士』を題材とした冒険活劇かと思いきや、一気にシリアスな流れへと変わってゆく。 他の大長編と比べると、 ・夢の中が舞台なので、現実世界の動きがほとんど無い ・ジャイアンとスネ夫の影が薄い(のび太の夢の中に出てくる人格に過ぎない) ・しずかちゃん本人も夢の中の人格として現れる ・仮想世界でも死ぬと本当に死ぬ ・トリホーの目的、ラストシーンの意味が謎のまま終わる などなど、他の大長編シリーズと比べると異色の設定です。 非日常が日常を侵食する怖さ、みたいな不気味さは今までのシリーズでもありましたが、読み終えたときの違和感みたいなものは、子どもの頃からずっと残っています。 此処ではないどこかへ行きたい、別世界で活躍したいという願望というのは、誰しも抱いてる思うのですが、それを仮想現実という舞台で見せてくれました。 子ども向けとはいえ、現実と虚構の境界をまざまざ見せつけられたようで、その境界線について考えまくった覚えがあります。 ラストシーンを読み返すたびに、「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」という言葉が浮かびます。
たか
たか
2019/08/26
笑いのセンスが新しい読切!
結論から言うとめっっっちゃ良かった…!(同じWJ39号から新連載の夜桜さんちの大作戦より断然こっちが好き) 可愛らしくて柔らかいタッチ 独特のノリとテンション 癖のあるセリフ 特に見所のない作品も多い中で、とにかく個性が光っていて気づくとドハマりしてました…! https://i.imgur.com/Ztz5hDP.png https://i.imgur.com/Yt30JJa.png (△『ボーンコレクション(読切)』雲母坂盾) 「ふふっ…何か“ハムナプトラ”っぽいな」 「田舎に引っ越せばいいんだああああ」 「北陸とかいいね!! 福井とか石川とかさ!!!」 「こんな短時間で2回も緊縛されることなんてある?」 「触ってないしキッモ」 いや、本当セリフがよすぎる…!! 読み始めてすぐは「骨で戦う」という設定が、NARUTOの君麻呂と被ってて引っかかったのですが、読んでいくうちに「サバけたヒロイン、ゆるいお色気、シリアスな笑い」が渾然一体となった、他にない独特の味が好きになっていました。 読み味が従来のジャンプっぽくない笑いのセンスが新しい読切。連載で2人の結末を見てみたい…!! 【週刊少年ジャンプ2019年39号】 http://jumpbookstore.com/item/SHSA_JP01WJ2019035D01_57.html (追記: 2020/04/27) ▼連載版の感想スレはこちら▼ https://manba.co.jp/topics/22714
ANAGUMA
ANAGUMA
2019/08/27
メダロットが「生きてる」…
原作ゲームにハマった時期にボンボンを買って読んでたんですが、結構読むのが怖かった思い出があります。 このマンガのメダロットは攻撃されると腕がちぎれて関節の被覆が裂けるし、ボディを撃たれればオイルが血しぶきのように飛ぶし(効果音は「ゴプッ」!)、殴り合えば顔のシェードが破損しアイカメラが露出します。 フェティッシュと言えるほどに破壊の表現が緻密で、機械であるメダロットが、まるで生きた肉体を持っているかのように痛々しく傷ついていくのです。 ビーストマスターがメタビーの半身を吹き飛ばす表現は今でも脳裏にこびりついていて、トラウマものです…。 ゲームボーイの画面では、ロボトルで戦うメダロットはパーツが壊れて戦闘不能になるあくまでロボットっていうイメージがやっぱり強くて、それがマンガになるととたんに生々しくなって「実際はこんな壮絶なことが起きているんだ…」とビビリまくりましたね。 (メダロット2、3になると色がついたり、表現力が増してもっと生き生きした感じになりますが…) この破壊の表現やリアリズムがあってこそ、人間の相棒であるメダロットへの愛着、キャラクターとしての個性がより際立ち、児童マンガの域を超えたストーリーの緊張感が保障されていました。メダロットの神秘性や出自の設定など、SFとしての見せ方もめちゃくちゃレベルが高い。 『ポケスペ』なんかもそうなのですが、子ども向けのゲームをネタに「そこまでやるのか???」という気合がビシバシ伝わってくるわけです。 特に3巻のセレクトビルでの攻防は『デビチル』のマーブルランド戦争編と並び立つ珠玉の名勝負だと思います。 限られた表現でつくられたゲームの魅力を、想像力を爆発させてマンガでブーストしていたんだなぁと思います。おかげでいい子ども時代を送れました。 この時代のボンボンマンガを代表する気迫溢れる一作なので、ゲームをやったことがない人にもぜひ読んでほしいですし、出来たらゲームもプレイしてそのギャップも味わってほしいですね。
たか
たか
2019/07/02
丸の内OLになりたかった女は必読
cameraひぇ〜!!最高の新連載が始まっていた…!佐々木倫子や絹田村子っぽい笑いとヤマシタトモコっぽい線がたまらない。 「実力はあるのに初対面の人からはそう見られない鶸田(ひわだ)は、ITコンサルの面接会場で鷹野ツメ子に出会う。公共放送のアナウンサーのようなスマートな身のこなしで一見『デキる人』の彼女だが、その正体はとんでもない無能だった」というあらすじ。 https://kisscomic.com/c/munounotaka.html **鷹野の常識はずれの無能ぶり**(動画を観ながらホチキス止めしてるのには笑うしかない)も面白いが、なにより素晴らしいのは**その「鷹野の見た目」を有効活用**するところ! **一見『デキる人』なのに実際は無能な鷹野を、実力があるのに見た目で『無能』判定されてしまう鶸田と組ませる**ことで、「外面と中身の両面」からクライアントの印象を良くして仕事をもぎ取るのには唸る…!! たしかに常日頃、私たちは実力の有無ばかりに注目しがちですが、実力を披露するにためには、その前に『有能そう』と思ってもらうことが不可欠。 ビックリするほどな〜〜んにも出来ない無能な鷹野。 だけどその彼女が唯一持っているのが、「初対面の人間に『有能そう』と思ってもらえる能力」という設定が本当に見事…! 1話の最後、契約を獲ってビルの外で2人が握手を交わすシーンは、まるで鷹野が本物のデキるOLのようで格好いいやら笑えるやらで最高でした。 **令和のお仕事ギャグマンガの金字塔になってほしい!** Kiss 2019年8月号から隔月掲載中です!ウェブで1話読んでみてください…! https://kisscomic.com/c/munounotaka.html (画像は1話より。志望動機が自分と全く一緒で感動しました)
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2019/07/04
見守りたい短期集中新連載
『豪雨』http://www.moae.jp/comic/morningzero_gouu 『固定編成』http://www.moae.jp/comic/chibasho_koteihensei 桃山アカネの短期集中新連載。 過去2作の読切はどちらも考えさせられる素晴らしい読切で、絵も漫画の描き方もどんどん上手くなっている。 今回の『海の境目』は前作の『固定編成』の状況をや取り巻く環境を少し変えつつ掘り下げる形、もしくは前日譚的な立ち位置になっていると思う。 事後そして解決をロードムービー的に描く『固定編成』に対して、そこに至るまでも描く『海の境目』。 読切を読んだときも感じたのは、こんな作品を20歳、21歳で描けるのはとんでもないなということ。 ゴロッとした自分の中で処理しきれないような感情、どうしようもなく忘れたい記憶、逃げ出したくてもその糸口さえ見えない日常、どこまでいってもつきまとう血縁、家族ということ、親ということ、無力な子供ということ。 誰にも言えない、理解されえない、逃げられない「孤独」。 登場人物の息苦しさや生きづらさが生々しく表現されているのは今作にも共通する。 ふと、松本剛を思い出した。 短期集中連載のまだ1話目。 これから冒頭で明かされた結末へ向けて物語はどう進むのか。 どうか、由美子にも時田にも救いがあってほしい。 終わっている家族に何を想うか。 怖いもの見たさで楽しみだ。
たか
たか
2020/06/08
読むと救われる話
前回の読切『アキレア降る世界』に引き続きちょっと変わった少年少女たちのボーイ・ミーツ・ガールで、とても救いのあるお話でした。 両親が離婚し母と暮らしている少女・かすみと、ロリータファッションブランド「ネオンドワーフレインボー」を手掛ける有名デザイナーを母に持つ先輩。 ある日、バスの中でかすみが「ネオン」の古いムック本を読んでいたのを見た先輩は、ある条件と引き換えに「ネオン」のアイテムを譲ると言う。 その条件とは週に一度「ネオン」のファッションに身を包み、先輩の話をただ聞くこと。 ロリータ姿になったかすみは先輩が持つ人形にそっくりで、先輩はかすみのことを「ヨウコさん」と呼び、嬉しそうに他愛のないことを語りかける…というあらすじ。 先輩は母に顧みられず、置き去りにされ放って置かれている。 かすみは両親の愛情を受けて育つも、父が他の女の元へ去っていった(その後の父との関係は意外と悪くない)。 短い読み切りながら、かすみと先輩の平坦でない生い立ちがしっかりと描かれている。だからこそ、最後に2人がただ取引するだけの間柄でない、友人のような血の通った温かい会話を交わしてくれてなんだかホッとした。 相澤先生の優しい線で描かれるロリータアイテムがとても素敵なので、ぜひ読んでみてほしいです。(いずれ単行本化してくれ〜〜!!) 【余談】 父が言う「最近の子ってシンプルなものが好きだよね」という妙にリアルなセリフが好き。 本編と全然関係なく「いや本当にそうだよなぁ」と、深く頷いてしまいました。 ガラケーに無駄にじゃらじゃらストラップ付けまくり、可愛い子は髪を染めてるのが当たり前時代に女子高生だった身としては、今の10代の子たちの落ち着きぶりには驚かされます。
ANAGUMA
ANAGUMA
2019/08/20
超絶スリリングな卓球復讐マンガ!
天才アスリートって親御さんから激烈な教育を受けてたりしますよね。 オリンピック出るような選手だったら親と二人三脚で…みたいなエピソードはほとんど鉄板な気がしますけど、『スリースター』は「親とスポーツ」が持つ負の側面から物語が始まります。 幼い司は天性の動体視力を武器に卓球を始めますが、その才に魅入られたプロ選手の父親から過酷な練習を強いられ、家庭の崩壊を招くことになってしまいます。 父を狂わせ、母を傷つけたことで、大好きだったはずの卓球が憎しみの象徴と化してしまう過程は真に迫るものがあります。 そして成長した司が父親への復讐の手段として、大嫌いな卓球を再び選び取る瞬間には否応なくゾクッとしてしまう…。 才能というものの功罪、父への愛憎、卓球を楽しむこと…などなどパンチのあるテーマがバシバシ繰り出されるので毎話の読み応えがすごい。 ツカミの変化球っぷりに加えて、王道スポーツマンガの熱さもしっかり併せ持っているのでドンドン読めます。 令和に新たな『巨人の星』が誕生した…んじゃないか!?ってくらい僕はグッと来てしまいました。 今から読んでおいたら間違いなく楽しめるマンガだと思います!
天沢聖司
天沢聖司
2020/07/01
全2巻に仕事と恋がギュッと詰まったベーカリーラブ!
camera今夏の漫画原作メディア化作品をチェックしていたところ、表紙だけは知っていたこの『マイ ベイカー』の名があり、Kindle Unlimited作品だったので読んでみました。 ちっちゃいけど綺麗でパワフルな店長と、でかくて寡黙な6歳年下の新人バイト・北くん。 憧れる人は多いものの、実際は5時起き21時就寝、何十kgもある粉を運び、熱い天板でやけどし、食品を扱うため衛生管理も厳格で超過酷な仕事場である『パン屋』が舞台。 ガタイのいい北くんは、見た目に反してパンを可愛く仕上げる才能があり、しかも実は店長のことを昔から知っていて…というあらすじ。 https://twitter.com/comicgene_line/status/992238458725789697?s=20 そこで2人の距離が縮まっていくわけですが、この過程がすごくリアル! 絵柄は少女漫画っぽいですが、流石女性漫画だけあって恋の描写がくどくない。いい…! 学生が主人公の少女漫画は頻繁に『トゥンク』したり『カアァァ』ってなったりして、初恋に揺れる感情にページを割きがちですが、働く大人の女性(しかも店長)のお話なので、ラブは見せ場を絞って投入している程度に留めていて、そこが大人の恋愛という感じがしていい。 というか、どちらかというとトゥンクしてるのは北くんの方ですね…それもまたいい。 混入を防ぐため販売員でもシャープペンの使用はNGとか、蛍光灯替えると粉が降ってくるとか、焼きたてのパンを手で触るやばいババアがいるとか、パン作り以外の仕事の苦労も描かれていてとても勉強になりました。 ちっちゃい体でガンガン重たい荷物を運び、火傷にもへこたれずいつも笑顔で働いている店長。「ああ、仕事に情熱がある人ってこうだよなぁ」と、清々しい気持ちになれる素敵なお仕事ラブです! (画像は『マイ ベイカー』らくだ1巻より。このクリームがコマをまたぐ演出めっっちゃ好き)
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