たか
たか
2020/12/09
家族が命(すべて)。帰ってきた親父が示した愛と男の生き様。 #完結応援
camera
ものすごいものを読んでしまった…。あまりに良すぎて感想なんて絶対書けないという気持ちになりましたが、世にもっと広めるため書いておこうと思います。 (これから読む方にまっさらな状態で楽しんでほしいので核心に触れるネタバレは避けてあります) https://i.imgur.com/EQuo64z.jpg この漫画を知ったきっかけは、マイページの「おすすめ」にこの『親父』(著: もりやまつる)が表示されていたこと。 強烈な表紙に惹かれ、あらすじにサッと目を通してとりあえず1巻だけ買って読んだんだけど…もう全てが自分の好みの最高の漫画だった。今まで読んだ全ての漫画の中でも一番かもしれない。(読み終わった直後なので興奮冷めやらない) ヤクザ者をボコボコに返り討ちにする桁外れの暴力。 実母と愛娘・愛息子への家族愛と、離れていてもお互いに想い続けた夫婦の純愛。 男らしさが極まりすぎてるがゆえのシンプルな下ネタ。 「暴力・愛・笑い」という、私がエンターテイメントに必須だと思っている要素が全て入っている完璧な物語。 しかも絵もが力強く、それでいて描き込みが細かいから見応え抜群…! 暴力に興奮し、下ネタで笑って、最後には愛の深さに涙が出てて…と、たった3巻の中で感情が目まぐるしく掻き立てられました。 何よりテストステロンが爆発してる親父の見た目と生き様が本っっっ当に途轍もなくかっこいいので、死ぬ前にぜひ一度読んでみてください。 たぶんゴールデンカムイ好きな人は好きだと思います…!
兎来栄寿
兎来栄寿
2020/11/22
新宿中村屋からレトルトまで、カレー愛が吹きこぼれているマンガ
※このマンガを読んだ瞬間にカレー食べたいゲージが120%になるのでご注意ください 皆さんカレーは好きですか? 私も多分に漏れず大好きです。それなりに名店と言われるお店を食べ歩きましたし、今でも週に一度はお店でインドカレーを食べます。巨大なナンのおかわりを執拗に勧めてきて、応じたらとても嬉しそうにして、断ったらちょっと悲しい瞳になるインド人の店員さんが愛おしいです。そんな私から見ても、このマンガの作者さんのカレー愛は素晴らしいなと感じられました。 地方から東京にやってきた春から大学1年生の黒部ちなが、西葛西にある加来井女子大学の寮に入寮する前にたまたま同級生と出逢い、新宿中村屋でカレーもといカリーランチをするところから物語は始まります。 西葛西といえば、実写版の『翔んで埼玉』でも、GACKT様演じる麗の東京の空気テイスティングで 「ツーンと鼻につくスパイシーな臭い。まるで異国の地。インドの香り。あと……ほんのりと潮風の臭いがする。これは、東京で最もインド人が多く住み、なおかつ海が近い場所………西葛西」 と言われたカレー文化において最強の町。 その寮生たちとボルツ、カルカッタ、たいめいけんといった名店からCoCo壱番屋まで実在の名店を楽しく食べ歩く姿、更にはレトルトカレーの奥深い世界までもが描かれます。 ボルツの30辛を食べて「食べるサウナ」ラッシーを飲んで「整った」という表現は秀逸。 ココイチで4人の女子大生がそれぞれのこだわりトッピングでカレーを食べる姿の何と良きことか。「実はナンはインドでは少しお高めの料理で、日本に来て初めて食べたというインド人も多い」といったカレーにまつわる知識も豊富に知ることができます。 今後、神保町や日比谷の某店なども登場するかな? と楽しみです。 お店としては東京中心ではあるものの、レトルト回では関西の名店のものも登場します。 各回の幕間に筆者のカレー愛溢れるコラムもあるのですが、何より素晴らしいと思ったのが「CoCo壱の福神漬けが大好きだけど、それを描きすぎるとカレーマンガではなく福神漬けマンガになるので自重した」というところ。好きなものだけど、いや好きなものだからこそ、丁寧に伝えていきたいという姿勢がとても良いです。 ああ、今日はカレーを食べよう……。
sogor25
sogor25
2021/04/20
死の運命を変えるために 名波くんからの「告白」を回避せよ! #1巻応援
高校2年生の小乾睦樹さんは同級生の名波くんのことが好きだったのですが、あと一歩が踏み出せないまま もうすぐ3年生になろうとしていました。 そんなある日 名波くんに突然呼び出された小乾さんは彼から「付き合ってください」と告白を受けます。 しかしその直後。暴走したトラックが突っ込んできて、小乾さんの目の前で名波くんはそのトラックに轢かれて死んでしまいます。 ところが次の瞬間、彼女はなぜか2年生の春、新学期初日にタイムリープしていました。 その後、彼女をタイムリープさせた張本人である"死神"が登場し、「高校2年生の間に小乾さんに告白すること」が名波くんの死の運命のトリガーであることが判明します。 この作品は名波くんの死を回避するために彼から告白を受けないよう奮闘する 小乾さんの姿を描く作品です。 名波くんに告白をさせないために彼と距離を取ろうとする小乾さんですが、何も知らない友人たちが2人の仲を取り持とうと画策してきたり、小乾さんをタイムリープさせた死神がいたずら心から妨害してきたりとなかなか思い通りに動くことができません。 そんなやり取りをしているで彼女に「名波くんと距離を取りすぎると今度は逆に彼に嫌われてしまうのではないか」という思いが芽生え始めます。 名波くんを守りたい気持ちと彼に嫌われてしまうかもという不安とが小乾さんの中で大きな葛藤となり、運命をさらに狂わせていきます。 果たして小乾さんは無事に2年生を終えて名波くんを守り抜くことができるのか、今後の展開を見守っていきたい作品です。 1巻まで読了
たか
たか
2021/04/14
これで準大賞なの!? ファークライ4やってみてぇ…! #読切応援
ジャンプラでやってた「UBI ゲームマンガ賞」の受賞作品。私はゲームをほとんどやらないので楽しめるかな…と不安でしたが完全に杞憂でした。超〜〜〜おもしろい!! ファークライ4やってみてぇ〜〜! 絵のタッチが素敵なのもさることながら、話の見せ方が無茶苦茶うまくてゲーム未プレイの人間にも作品の設定・悪役の魅力がビシビシ伝わってきました。 作中の悪役・パガンから問いかけられることで、ゲーム世界の主人公とゲームをプレイしてる男の子の自我が混ざり合い2つの世界の境目が曖昧になるところの読み心地がものすごい! 作中の主人公の生き様は母親思いの息子なのか、それとも遺言を言い訳に殺しまくった殺人鬼なのか…。 この読切を読んで、小説やゲームといったフィクションを通じて、今まで自分が考えもしなかったようなことを突きつけられ、深く思考させられる経験ってやっぱいいもんだな…! と思いました。 フィクションを通じて、日常をただ生きてるだけじゃ味わえない体験をすることで、新しい考え方を得たり物事をいろんな角度から見ることができるようになるんですよね。 パガンの問いかけに対して、夜中自分の小さな部屋で「俺も最高に楽しかった!」と楽しそうに答える主人公の姿が大好きです。 ゲームを作業としてするのではなく作品として味わう態度、フィクションだからと冷めるのではなく自分自身のこととしてのめり込んで本気で楽しむ姿勢。 ゲーム・小説・映画・漫画・アニメ、創作物を楽しむならやっぱりこうでなくちゃ! #読切応援 https://shonenjumpplus.com/episode/3269632237320694997 https://twitter.com/FALLBEM/status/1377110748510388230?s=20
ANAGUMA
ANAGUMA
2021/03/31
人喰いの妖と少年が紡ぐ絆 #完結応援
妖(あやし)の起こす問題を解決する「あやしい屋」の少年チキタ・グーグーは人喰いの妖ラー・ラム・デラルとともに暮らしています。人と相容れない存在であるはずのラーが稼業を手伝っているのは彼の目的がチキタと100年間をともに過ごし、美味しくなった彼を食べてしまうことだから。 これだけ書くと『うしおととら』みたいなコンビバトルものっぽいですが、妖と人の命のやり取りがシビアに描かれる『チキタ』の世界はかわいく見えて非常にハードでダークです。 「人喰い」が関わる残酷なシーンがあるほか、主要キャラを巡って精神的にクる展開が容赦なく続くので最初のうちはほわんとした絵柄とのギャップにやられてしまうかも…(もちろんそれも大きな魅力です!) スリリングなエピソードのなかで「100年」とラーの抱える秘密や不死の存在など、ぞわぞわするような謎も解き明かされていくのでどんどん読み進めてしまいました。 両親の仇であるラーと暮らすチキタを筆頭に、作中では度々殺し殺され喰い喰われ…という関係のキャラクターが登場します。誰かが誰かの仇である過酷な間柄ですが、同じ時間を過ごすことで互いの想いが変わっていく過程が丁寧に描かれます。 食うものと食われるもの、許さないことと許すこと、そして生きることと死ぬこと。『チキタ』のキャラクターたちはそれぞれ凄絶な過去を持ちながら、誰かとともに日々を生きることで重厚なテーマに自分なりの答えを出そうとします。 「そうまとめるのか〜!」という最終話がとても好きでした。 チキタとラーが迎える「100年」の旅の決着、読めばきっと心に残るものになると思います。
たか
たか
2021/03/14
青春時代に読んだ至高の学園ラブコメ群像劇! #完結応援
高校生のときに個人サイトで連載されてるWEBマンガにハマってて、クラスの友達に読解アヘンというサイトを教えてもらい読んだのがこのHERO先生の「堀さんと宮村くん」でした。 全く意識していませんでしたが、2007年から連載がスタートしたまさに自分がリアル高校生のときにリアルタイムで読んでいた高校生たちの学園群像劇です。 今のアラサーのオタクで「堀宮」通ってない人は居ないのではというレベルの作品。 もう、絵のスタイルがなにもかも良いんですよね…! スッキリしたデフォルメも、フルカラーのポップな色使いの塗りも、縦長でシンプルなコマ割り…全部好きです。 「ギャルに見えて弟の世話でものすごく家庭的な堀さんと、陰キャに見えて実はタトゥーだらけな宮村くん」という、クラスメイトには見せない顔を持った2人が秘密を共有するというストーリーがとにかくエモい。今思い出してもキュンとします。 クラスメイト、両親、兄弟姉妹。 全員が個性的で魅力的で、そんな登場人物たちが部分的に繋がり合って織りなすシリアスでコメディな人間模様が最高。 メチャクチャ読み返したいけど読み返したら懐かしさでどうにかなってしまいそうで怖くて読めないのがつらい… http://dka-hero.me/
TAT
TAT
2020/05/19
生まれて初めてジャンプを買った話
私は、幼い頃から漫画が好きだった。定かな記憶ではないが、初めて読んだ漫画は星のカービィとポケモンの四コマ劇場だったと思う。その後も、週刊少年ジャンプの漫画を中心に数々の作品に読み触れていった。 私は週刊少年ジャンプを買ったことがなかった。読み始めた小学生の頃から、読むのをやめた高校生の頃までずっと、隣に住む従兄弟のお兄さんに貰って読んでいたのだ。読み始めた頃には、アイシールド21でまだデスマーチが行われていたし、愛染もまだ良い人だと思っていた。テコンドーを題材にした漫画がすぐに打ち切りになってしまったり、リボーンやムヒョ、銀魂、SKET DANCE、ToLOVEる等等の作品が輝きを放っていたりと、沢山の漫画に囲まれていたあの頃を懐かしく思う。成人した今でも漫画は好きで、継続して読んでいる作品も少なくないが、週刊少年ジャンプの世界はもう私の知るところにはなくなってしまっていた。 鬼滅の刃を読もうと思ったのは別に奇跡でも必然でも数奇な巡り合わせでも何でもない。私がこの作品を読み始めた時には既に19巻まで刊行され、TVでは社会現象的な人気と報道されるほどの一大ムーブメントな作品として周知されていた。情けない話だが、私という人間は天邪鬼で人気で話題の作品ほど読むことを躊躇い、敬遠する。いつからこんな厄介な人間性になったのか…… 連休を迎える前、職場の後輩くんが「もうすぐ完結するかも」と、教えてくれたことで今が丁度良い頃合いかもしらんと思い、この度鬼滅の刃を読むに至ったのだ。 私が漫画を読んで泣いたのはこれが二回目だった。 この作品は、鬼狩りと呼ばれる鬼殺隊の青少年たちが、家族や友人の仇となる鬼を殲滅するまでのお話で、各登場人物が信念を胸に文字通り命懸けで鬼に立ち向かっていく。 3巻ほど読み終えた時の印象は、「サンデー作品っぽい」というところだった。想起したのは犬夜叉とうしおととら(こちらは未読)で、"妖怪奇譚"モノという印象を受けた。心地よいコメディ調、可愛らしいデフォルメ顔、インフレを起こさない"考える戦い方"に惹き込まれていった。 少年漫画から暫く距離が空いていた私がこの作品で感じたのは、"敵が強すぎる"ということ。ONE PIECEのアラバスタ編のように味方陣営、敵陣営ともに一人ずつが各人を相手に戦っていくスタイルに馴染みが深かった私は、「上限の鬼強すぎるぞ……」と、登場人物同様に絶望した。鬼滅の刃の戦いは基本的に鬼の首を斬り落とすことに注力して進んでいく。ただ、鬼が強すぎてまぁ斬れない斬れない。そこで現れるのが心強い味方。それも一人じゃなく二人。場合によっては何人でも味方が駆けつけて共闘してくれるのだ。まさに物量作戦!と思ったが、そんな糞みたいな冗談では片せないほどにこの作品のキャラクター達は生命力に溢れていて、強く優しい。どんなにボロボロになっても折れることなく進み続ける。弱きを助け悪しきを挫く彼らのその姿は、私がかつて憧れたジャンプヒーローそのものだった。 主人公・炭治郎は真っ直ぐでクソ真面目でとにかく優しい心の綺麗な少年。共に闘う仲間たちは勿論、命のやり取りをした鬼でさえも、炭治郎の温かな優しさに触れてしまえば、忘れていた大切なことを思い出してしまうのだ。その優しい炭治郎もまた、様々な人の優しさに助けられ、自らを奮い立たせ、どんな窮地でも諦めることを選ばなかった。誰かに守って貰ったように、自分も誰かを守る。優しさの連鎖は絶ち切れることなく繋がっていく。数珠繋ぎになり循環し、滅ぶことはない。 ONE PIECEのチョッパーの出自の話で泣いたのは小学生の頃のこと。齢二十五にもなった自分が漫画を読んで何度も泣いてしまうとは思わなかった。そのことに気恥ずかしさもあるが、少し嬉しくも感じた。素晴らしい少年漫画は、次話を渇望させる。コミックスで読み始めた私が、ジャンプ+のアプリで本誌を購入してまで続きを読んだように。サラリーマンの自分が月曜日を待ち遠しく感じるなんて有り得なかった。人生で最初で最後になるかもしれないが、私は週刊少年ジャンプを買いに行った。 ありがとう鬼滅の刃。 心を燃やせ。赫い刃を。折れない心を。 (204話で完結と思ったら205話で完結だったので結局二回買うことになりました)
pennzou
pennzou
2020/05/04
小さな物語で描くもの
「窓辺の春」は月刊フラワーズ2019年4月号に掲載された鯖ななこ先生による短編読切作品だ。 鯖先生は現状自著の発行がなく、また作品も月刊ないしは増刊フラワーズにしか掲載されていない。そのため、鯖先生を存じない方が多いと判断し、まず鯖先生の経歴を記す。(間違いがあればご指摘頂けると嬉しいです!) 鯖ななこ先生は月刊フラワーズ2017年8月号にて発表された第90回フラワーズコミックオーディションにて金の花賞(賞の位としては第2位にあたるが、金の花賞以上が出ることはそうそうない)を受賞、受賞作「最適な異性となる要因の主観的考察」が増刊フラワーズの同月号に掲載されデビューした。以降より増刊フラワーズでは短編読切を、月刊フラワーズでは定期購読の販促4コマを執筆されていた。初の連載作品は月刊フラワーズ2018年5月号より開始された「きょうのヤギさん」で、現在も続いている。「きょうのヤギさん」は先述の販促4コマの設定を汲んだ4コマショートで、物語形式の作品が月刊フラワーズ本誌に掲載されたのは2018年10月号の短編読切「おとぎの杜」が初めて。以降、いくつかの短編読切と短期連載作品「Hide&Seek」が発表されている。 この経歴は、例えばデビュー当時の岩本ナオ先生も同様に販促4コマ(「町でうわさの天狗の子」の巻末に収録)や短編読切・短期連載(「スケルトン イン ザ クローゼット」に収録)を執筆しているように、フラワーズ生え抜き作家の定番ルートといえる。ただし、4コマショートとはいえかなり早い時期から連載を任されているパターンは珍しく、ここから編集部から特に期待されている(悪い言い方だと囲い込まれてる)のでは?と察することも出来る。 「窓辺の春」に話を戻す。本作は月刊フラワーズで発表された作品としては2作目となる。自分は前作の「おとぎの杜」で鯖先生の読切をはじめて読み、もしかしてこの人のマンガはすごいのでは……?と思いはじめ、本作でそれが間違いでなかったことを確信した。 鯖先生作品では「主人公が失ったものや隠れていたものに気がつき、見方を変える」ということが多く行われる。その変化がもたらす心地よさが魅力だと思う。本作ではその上で主人公の行動が他のキャラクターに伝播していく様子が描かれており、より風通しのよい作品になっている。 個人的にビビっときたのは、(ややネタバレになるが)おじさんが清潔な身なりで出掛けるシーンがあるのだが、なぜおじさんがその格好をしたのかを、後のたった1コマで表していた点だ。そのほんの小さな、しかしあざやかな手腕に惚れ惚れした。 本作は決してスケールの大きい物語ではない。小さな物語だ。しかしながら、岩本先生などフラワーズの先達が描いてきたように、小さな物語によって表せるものはあり、それがフラワーズらしさを形作る要素のひとつだと考えている。その潮流に鯖先生は乗っていると思う。 絵柄については丸みを帯びた親しみやすい画風であるが、大胆なトーンワークなどグラフィカルな要素も多く含まれており、それが鯖先生らしい画面にしている。 先述の通り、鯖先生単独名義の自著は未だに発行されていない状況である。しかし現在も断続的に短編は掲載されており、直近だと月刊フラワーズ2020年7月号に短編「おしゃべりな人魚」を掲載予定だ。これを除いても、単行本一冊分のストックは十分にある。 ただし、フラワーズ新人の初単行本は、めちゃくちゃハードルが高いのか、それはもう全然出ないのだ。最後に出たのは2017年12月の笠原千鶴先生「ボクんちの幽霊」が最後だったはずで、つまりここ2年以上出ていません。 それでも、初の自著が出版されるのを自分は心より待っています……
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し
2020/04/18
その意気や良し
夢枕獏の小説は、漫画化してもあまり売れない…と、昔、知り合いの漫画関係者から聞いたことがある。 いやいやいやいや、岡野玲子との『陰陽師』があるし、谷口ジローとの『神々の山嶺』は名作だし、板垣恵介との『餓狼伝』だって売れたでしょ!…と反論したのだが、先方は「そうなんだけどねえ…」と言葉を濁した。 (ちなみに、この会話は「それに比べると菊地秀行の漫画化は数字的にかなり手堅い」と続いた。その比較について考えるのはとても興味深いのだが、このクチコミと主旨がズレまくるので触れない) 実は彼とは、かつてボクシングについても同じようなやり取りをしたことがある。 ボクシング漫画って売れないんだよねえ…と言われ、いやいやいやいや、『あしたのジョー』や『がんばれ元気』や『はじめの一歩』とか、ド名作があるじゃない!…と反論したのだ。だが彼は「いや、それはそうなんだけどね。でも、漫画家は描きたがるんだけど、かなり実力がある人でも、あまり上手くいかないんだよ」と答えた。 「夢枕獏」や「ボクシング」は、多くの漫画家がそれに魅了され、漫画にしたいと願い、そして実際に挑戦するのだが、作品的にもセールス的にもなかなか送り手が期待するような結果にならない、と言うのだ。 そう考えると、確かに、夢枕の小説が持つ破天荒な面白さを、漫画というフィールドに結実し得た作品というのは、あまり思い浮かばない。 上記三作はそれぞれの漫画家の類い稀な個性によって「面白く」なったのだが、あくまで「例外」ということなのか。 そういう意味では、スティーブン・キングの映画化と近いかもしれない。 (ちなみに、ボクシングについても、「村上もとか『ヘヴィ』や細野不二彦『太郎』といった意欲作が彼らの豊かなキャリアの中でどんな位置か」とか、「明らかにボクシング漫画を指向していたにも関わらず森田まさのり『ろくでなしBLUES』はなぜそのジャンルとして失敗したのか」とか、「車田正美『リングにかけろ』が正統的ボクシング漫画であることを止めてから売れたのはなぜか」とかを考えるのはとても興味深いのだが、これもやはりこのクチコミと主旨がズレまくるので触れない) 前置きが長くなりすぎた。 とにかく、夢枕獏の漫画化は「難しい」のだ。 しかし多くの漫画家や編集者は、この魅力的で危険な「賭け」に、今も挑み続ける。 やまあき道屯『大江戸恐龍伝』は端倪すべからざる作品である。 原作の、江戸期のスター・キャラをズラリ並べて荒唐無稽・縦横無尽に突っ走る面白さに、漫画家は必死に喰らいついている。 構成は少しダイジェスト感があり、いかんせん詰め込みすぎではあるのだが、熱気と主張ある絵柄で美事なコミカライズとなっていると思う。 近年の収穫と呼ぶに相応しい力作だと信じる。