さいろく
2020/09/18
今読んでも1巻の試し読みだけで泣ける
camera姉ちゃん…姉ちゃん;x; 主人公高嶺竜児、ヒロインは実の姉となる高嶺菊。 拳で語るのみの本作だが、この後に控えた聖闘士星矢が小宇宙を燃やしセブンセンシズに目覚めないと超えられないぐらい生身の人間たちが限界を突破しまくる少年漫画の常識を揺さぶりまくったジャンプ黄金期(初期)の代表作。 黄金期に関しては諸説あると思うので正確には未だそこは違う!とかあるかもですがw ギャラクティカマグナムは当時リアルタイムで読んでた世代ならきっと撃ったことがあるだろう(ごっこ遊びで) 自分の場合はペガサス彗星拳でしたが。 必殺技、というのは本当に少年の心をいつの時代も掴んで離さないもので、そのハシリと言っても過言ではないこの作品では主人公やライバルたちが皆超かっこいい必殺技を持っています。 竜児のブーメランフック、河合さんのジェットアッパー、石松のハリケーンボルト(スパイラルタイフーンってどこからだっけ?)、そして志那虎のローリングサンダー。 私は志那虎が好きだったのですが(かっこいい)イケメンは河合さん。 ※志那虎が若かりし頃に狂気じみたマシーンのせいで大怪我をした後、父親にローリングサンダーを見せるところは狂気じみてて素敵なので必見です。 今見るとどこもツッコミ満載な感じで最後まで突っ走りますが、本当に胸アツな彼らの血まみれなボクシングは日本中の少年を虜にしたと聞いています。 リアルタイム世代じゃないのが少し悔しい作品。 2の方にもレビュー書きましたが、今挙げた4人+剣崎は日本を代表とするボクサーなので、是非今の世代のボクシング好きの人たちは一読していただいて、同じくボクシング好きのおっさんたちに話を振ってみるといいと思います。 画像は志那虎の若かりし頃と問題のマシーン。
吉川きっちょむ(芸人)
2018/10/13
閉鎖的な村を描くサスペンス新連載
都市部から遠く離れ、山間に位置して外部との交流がほとんどない村っていう設定だけで、ご飯三杯いけるほど好きな設定。 絶対によそ者には厳しいに決まってるし、隠された因習なんて当たり前。 行動はすべて筒抜けだし、監視されているような気分になる、っていうか、たぶん常時監視されている。 隣近所が無関心な都会から来たのなら余計にそう感じるに違いない。 刺激のなかった村にとって、よそ者など絶好の噂の種だ。 さらに、この話では主人公が警官である。 外部の人間な上に、法律という明確なものさしを持っていて組織に属していて、村の中のヒエラルキーやルール、関係性とはまた違う部分での権力を持った明らかな異物だ。 偏見かもしれないが、こういった村は強烈な内と外の価値観を持っているので、内の人間が何かしでかしても村ぐるみで隠そうとする、らしい、ようなことを聞いたことがある。 警察も抱き込めるのであれば抱き込むし、それが難しければ嫌がらせ、村八分をするだろう。 本当かは分からないが、癒着が危ないので、こういった土地への警官は地元出身の人は絶対に派遣されないようになっていると聞いたことことがある。 さっきからずっとあやふやなのは、すべて又聞きか漫画で得た知識でソースを調べてないからだ。 調べたくない気持ちがあるのは、僕の中でこういった村の存在はファンタジーとして置いておきたい気持ちが少なからずあるから。 だって・・、詳しく知りすぎてないほうが妄想の余地があってワクワクして楽しいじゃない! とまあ、こんな気持ちでとてもワクワクして期待して読むことになりそうで、さっそく一話目からすごくねっとりした感じの村人たちがたまらなく気味が悪くて最高だ。 絶対に何かを隠している。 なんだろう・・。 冒頭に出た「人食い」の話・・まさかねー。 でも、タイトル「ガンニバル」って、あの「ハンニバル」から来てるよね絶対、「羊たちの沈黙」の食人趣味のある猟奇殺人鬼「ハンニバル・レクター」から。 そして癌か、銃か関係してるのか、また別のものか。 そういえば、人を食糧としたり害を成す存在の漫画って面白いものが多い。 特に最近に多いイメージなんだけど、 「寄生獣」 「進撃の巨人」 「テラフォーマーズ」 「東京喰種」 「約束のネバーランド」 「ファイアパンチ」 ゾンビ系の漫画 などなど。 「ハンターハンター」もそうか。 さてさて、この漫画はどう展開していくのか、読むのが楽しみ!
ANAGUMA
2019/05/28
「他者」によって物語られる世界の亀裂
EU域内への難民流入が国際問題として認識され始めてもう5年近くが経とうとしています。もはや日常となってしまった光景の実像が閉じ込められているのが本書です。 ルポライターのアブリルとカメラマンのスポットルノは2014年、モロッコ国境に接したアフリカ大陸のスペイン領メリリャから取材を始めます。 そこから2年のあいだに、いかにして難民という存在がヨーロッパに「定着」していったのか、彼らと国境がせめぎあって生まれた「亀裂」を、全編写真による表現で克明に写し出していきます。 通常マンガを構成しているのは、突き詰めていけば作者ひとりのことばだと言えるでしょう。キャラクターというフィルタを通しこそすれ、絵によって描かれた存在である彼らはあくまで作者の分身です。 「亀裂」の事情が異なるのは、登場する難民や国境警備の兵士、フロンテクスの職員は写真で撮影された実在する「他者」だということです。 しかしながら、カメラに映る人物はフキダシでしゃべることはありません。彼らのことばは、すべてアブリルの目と耳を通して紡がれるナレーションの中に消化されていきます。 写真という他者の絵をそのままに使うようすはドキュメンタリー映画のようでもありますが、「作者」のことばで綴られた紛れもないマンガという形で結実しています。 難民の抱える事情は地域や個々人により千差万別です。 他者の像をそのまま映し出し、それを自らの言葉で解きほぐそうとするアブリルの姿勢は非常に真摯なものと言えます。 本書の刊行は2016年。この3年の間に「亀裂」はより広く、細かく、深いものになっていったことを読後に想像させるに充分な力を持った作品です。
nyae
2019/06/25
【名作】監察医は死者の心に耳をそばたてて聞く仕事
主人公の天野ひかるは、東京の大学を主席で卒業し、地元の大阪に戻り、監察医として大学病院で働いている。 大学時代は、医学部に属していながら卒業後に進む道を決めかねていたひかるだが、あるショッキングな事件をきっかけに、死者の声を聞くことの意味を知り、監察医になることを決めた。 監察医になってからのひかるは、おっとりして控えめながら、気になったこと・分からないことに対しては納得いくまで調べ尽くさないと気がすまない性格ゆえに、必要以上に事件や事故の内情に入り込んでしまい、無念な死を目の当たりにしては心をすり減らすような日々を送っている。 そんなひかるの人並み外れた観察力と真実を知りたいという執念、どんな人間に対しても死には同じ重みがあると信じる純粋な心が、同僚や警察、被害者の周囲の人間にさまざまな影響を与える。 ストーリーの構成としては2〜3話完結(話によって5話くらい続くことも)で、読み手には最初から犯人がわかっているパターンもあれば、事故か事件かもわからないで進む話もある。 ひかるの身近な人間が事件に関わることも少なくない。 プライベートでは、母親からしつこく受ける見合いの誘いを断りながらも、仕事でよく関わる刑事の森田と恋仲になる。森田に対する自分の気持に気づいてから、何かにつれ顔を赤らめオドオドする様子は、相当な奥手女子であることがわかる。しかし、たまにある超貴重なデート回でも必ず事件や事故に関わることになってしまう運命なのはなんとも残念。 自分はとにかくこの作家の描く人体描写の虜である。 大きい頭になで肩、どんくさそうな脚、…。新作描いてほしいな、と小さな声で言ってみる。 ちなみに、本作の続編である「きらきらひかる2」の新キャラに霊が見える監察医がいるが、なぜかひかると同程度の主役級の扱いになっているうえに、森田の存在感がかなり薄くなっている(恋人同士という設定自体が無くなってる感じ)。 それにかなりのショックを受けたが「きらきらひかる最終章」(未電子化)でそこらへんはしっかり回収されている。
熊蔵
2020/05/30
闇カジノをイカサマで食い荒らす #1巻応援
漫画ゴラクらしい、裏社会のギャンブルノワールといった感じで、1話目からずっと緊張感と勢いのある漫画です。大型店舗のカジノではなく、闇カジノと呼ばれる違法賭博店を舞台に、主人公ゲンがディーラーとなり、客や店側をイカサマにかけて金を巻き上げようとするのですが、その場の緊迫感たるや尋常ではありません。ミスれば「死」という状況の中、イカサマをどうやって成立させるか?読者をドキドキさせる演出が抜群にうまいのです。作画・吉田史朗さんの漫画はけっこう好きで、これまで『村上海賊の娘』『甲鉄城のカバネリ』など読んできましたが、いずれの作品でも「雰囲気」を持ってる主人公像が良いんですよねぇ。劇画すぎない、かといって今どきの画とも違う、画力のある作家さんだと思います。覚悟と胆力を感じさせる顔つきだったり、人物の表情が素晴らしいですね。あと、原作者の方も相当凄い人じゃないかと睨んでますが、検索しても情報が一切出てこないので何者なのか気になるところです。(誰かご存知でしたら教えてください) ちなみに、この作品タイトルを初めて見たとき、オッサン的には「女喰い」という往年のエロ作品を連想いたしました。ちょっとしたエロ要素を期待してた部分も正直ありましたが、いい意味で裏切られたというか、本格的なギャンブル漫画で逆に良かった感じがあります。日本でもカジノ法案ができて、これから盛り上がる題材かもしれないので、ヒットしてほしいですね。
たか
2019/06/05
2018年ジャンプで一番おもしろかった読切!!
camera今週からトーキョー忍スクワッドが始まったので去年のはちゃめちゃに面白かった読切を再読。 絵の巧さ・キャラクターの個性・演出・コマ割り・カメラワーク・ストーリー。 どれもずば抜けていて何度読んでも面白い完璧な読切…! なんでこっちで連載しなかったのか謎なくらいひたすら最高。 この読切を読むために250円払って2018年39号を購入しても後悔はないのでぜひポチってください。 https://jumpbookstore.com/item/SHSA_JP01WJ2018035D01_57.html 物語の舞台が、学校から恐ろしい黒猫が現れるトンネルへ移ると、作者の素晴らしい演出で緊張感がグッと高まる。その緊張感が、主人公の能力が明らかになって一気に解放されるのが爽快…! あの猫は一体なぜ七瀬を守ってたのか。 お姉さんは一体何者なのか。 景はなんで電話をするときわざわざ右手で左耳に当てるのか。 景になぜクソやべーやつが憑いているのか。 読切で明かされていない、余白の部分にワクワクして止まらない。 「怪奇ホラー路線が呪術廻戦と被っていなければ、連載に採用されていたんだろうなぁ」と思わずにいられないほどの完成度。 今回読み直してみて、改めて新作への期待が高まりました。 (画像はトンネルに入るシーン。ここで飛び出し坊やをアップにするのすごい好き。このあと急激に緊張が高まってバーン! と景の能力が明かされるのが最高…!) 【追記: 2020/09/02】 連載版の感想はこちら↓ https://manba.co.jp/topics/25125
nyae
2020/09/17
120年の時を経てやっと認知された手記のコミカライズ #1巻応援
決して難しい話ではなくて、漫画としても非常に読みやすく、人種差別を理解するのにとてもふさわしい作品です。この手記が発見された当時、奴隷が書いたにしてはあまりに知的であったためフィクションと誤認された、とあるように(翻訳の際に多少読みやすくしていたとしても)、年齢問わずわかりやすい内容になっています。学校のクラスに1冊ずつ置いても良いかもしれない。 実は「重いかな…」と思って買ってから1ヶ月以上寝かせてしまっていたんですけど、今日こそと思って読んだんです。そしたらあっという間に読み終わってしまいました。 人身売買が当然のように行われる。家族とは簡単に引き離される。人をモノのように扱う。自分の希望など、何ひとつ通らないのがここで描かれる現実です。理不尽に振りかざされる権力には、本当に絶望します。 これを読んで、なにか行動を起こす人もいれば、そうなんだ、で終わる人もいるでしょうけど、黒人差別は当時から、そして現在も無くなることのなくつながっている。それがわかるだけでもこの漫画の存在意義があるんじゃないでしょうか。 そしてこれは1巻完結ではないので、主人公リンダの戦いはまだ続いています。2巻が出た時に、いまより更に多くの人が読んでいでいて、売り切れてしまうくらいになればいいですね。
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/09/17
上司と部下のドタバタ二人生活! #1巻応援
女性二人の同居を描く本作ですが、この二人の関係は、職場の「上司と部下」。しかも立場にかなり隔たりがあります。 ●三十代にして部長を任される、頼れるけれど真面目で堅い東(あずま)さん ●新入社員の明るくゆるふわな西さん どう見ても性格が正反対の二人が、たまたま同居する事に。険悪にならないの?と心配になりますが、実はこの二人、共通点があります。それは…… 生活力が、無い。 驚く程何もできない二人が一緒に住むと、0からじゃなくてマイナスからのスタートになるんですね。最初は結構、酷い日々。 でもそこから、協力しながら生活を共にし、上司の東さんが引っ張るようでいて部下の西さんがいろいろ教えたり、そのうち二人には連帯感が生まれ……。失敗ばかりの日々も、冒険じみていて楽しそう! 西さんのキャラクターが本当に素敵です。普通「部長」に、あんなにフレンドリーに出来ませんよ……「ぶちょー♡」って甘える女子新しいな……。その明るさで、ちょっとぼっちを拗らせ気味の東さんは救われている。 笑いも温かさも沢山の、二人のドタバタ生活は始まったばかり!
あうしぃ@カワイイマンガ
2020/09/12
JK声優、喧嘩しつつ高み目指す! #1巻応援
お仕事漫画でライバル同士が、火花散らしながら高みを目指す物語は、昂るものがあります。アニメの現場はプロ意識の塊のような場所だと思いますが、声優さんも、プロ意識高いですよね。 声優さんの意識が垣間見られる場所として「声優ラジオ」があります。フワフワ喋っているようで、時々生々しい本音でトークをする声優さんが好きです。そんな「声優ラジオ」に、女子高生で、しかも同じ学校・同じクラスの二人が起用される……というのが、このお話。 声優ラジオというと、ふんわりした仲良しトークが普通です。この二人のラジオも表面的には仲良しキャピキャピトークですが、実際の二人は物凄く険悪。方やギャルの陽キャ、方やぼっちの陰キャ。何かというと喧嘩ばかり……ちょっと引く位の刺々しさ、荒み具合。 しかし「アイドル声優」として、可愛さを売りにする為に素の自分を隠しているのは一緒。そして仕事人としての意識が高いのも、共通している。 その上で、ラジオの収録・公録、作品の現場を成功させる為に、互いの意思をぶつけ、苦手なところを支え、相手に負けまいと高みを目指す二人は、次第に互いを理解していく……その過程を追う程に胸高鳴り、のめり込んで読んでしまいます。 陰キャのツンっぷりが物凄くて正直怖いのですが、徹底的なツンの後にポロっと出るデレが、威力抜群!陽キャと一緒に心グラグラ揺れまくりです! こんな二人をアニメ化したら、誰に声を当ててもらおうか……と、かなり真剣にメタな事を考えながら読みました。
ぺそ
2020/08/28
じんわりくる切なくて優しい話 #読切応援
camera鯖ななこ先生ってflowersでヤギの4コマ描いてる人…という認識だったのですが、今回人間の女性が主人公のお話を読んで一気にファンになってしまいました。人間関係と心の動きが繊細に柔らかく描かれていて、もうずっと読んでいたい…! 幼い頃に両親に捨てられた主人公・喜代恵は、祖母のたばこ屋で働きながら日々淡々と生きている。母と一緒に遊園地に行った日に、母が家を出ていき二度と帰らなかったため、喜代恵はうれしいことがあると不安になってしまう。 あるときから、爽やかな青年・壮介が度々やって来るようになり、気づくと彼を家に住まわせてやり、彼の代わりでバイトに行くようになっていた。そんなとき、家に母が尋ねてきて…。 客観的に見れば壮介はヒモで、喜代恵は利用された女で、2人とも出会ったことで人間的に大きく成長したりはしません。 だけど少しだけ変化はあって、引っ張り出してハロ(日暈)を見せてくれた思い出や、お洒落に垢抜けた容姿が今も残り、壮介が去ったあとの喜代恵の日常は今までとは違ったものになっている。 この全くドラマチックじゃない、現実的で静かな変化がとても良くてじんわり来ました。 鯖先生の人間を描いた作品、もっと読みたい…!
t2
2020/05/19
生まれて初めてジャンプを買った話
私は、幼い頃から漫画が好きだった。定かな記憶ではないが、初めて読んだ漫画は星のカービィとポケモンの四コマ劇場だったと思う。その後も、週刊少年ジャンプの漫画を中心に数々の作品に読み触れていった。 私は週刊少年ジャンプを買ったことがなかった。読み始めた小学生の頃から、読むのをやめた高校生の頃までずっと、隣に住む従兄弟のお兄さんに貰って読んでいたのだ。読み始めた頃には、アイシールド21でまだデスマーチが行われていたし、愛染もまだ良い人だと思っていた。テコンドーを題材にした漫画がすぐに打ち切りになってしまったり、リボーンやムヒョ、銀魂、SKET DANCE、ToLOVEる等等の作品が輝きを放っていたりと、沢山の漫画に囲まれていたあの頃を懐かしく思う。成人した今でも漫画は好きで、継続して読んでいる作品も少なくないが、週刊少年ジャンプの世界はもう私の知るところにはなくなってしまっていた。 鬼滅の刃を読もうと思ったのは別に奇跡でも必然でも数奇な巡り合わせでも何でもない。私がこの作品を読み始めた時には既に19巻まで刊行され、TVでは社会現象的な人気と報道されるほどの一大ムーブメントな作品として周知されていた。情けない話だが、私という人間は天邪鬼で人気で話題の作品ほど読むことを躊躇い、敬遠する。いつからこんな厄介な人間性になったのか…… 連休を迎える前、職場の後輩くんが「もうすぐ完結するかも」と、教えてくれたことで今が丁度良い頃合いかもしらんと思い、この度鬼滅の刃を読むに至ったのだ。 私が漫画を読んで泣いたのはこれが二回目だった。 この作品は、鬼狩りと呼ばれる鬼殺隊の青少年たちが、家族や友人の仇となる鬼を殲滅するまでのお話で、各登場人物が信念を胸に文字通り命懸けで鬼に立ち向かっていく。 3巻ほど読み終えた時の印象は、「サンデー作品っぽい」というところだった。想起したのは犬夜叉とうしおととら(こちらは未読)で、"妖怪奇譚"モノという印象を受けた。心地よいコメディ調、可愛らしいデフォルメ顔、インフレを起こさない"考える戦い方"に惹き込まれていった。 少年漫画から暫く距離が空いていた私がこの作品で感じたのは、"敵が強すぎる"ということ。ONE PIECEのアラバスタ編のように味方陣営、敵陣営ともに一人ずつが各人を相手に戦っていくスタイルに馴染みが深かった私は、「上限の鬼強すぎるぞ……」と、登場人物同様に絶望した。鬼滅の刃の戦いは基本的に鬼の首を斬り落とすことに注力して進んでいく。ただ、鬼が強すぎてまぁ斬れない斬れない。そこで現れるのが心強い味方。それも一人じゃなく二人。場合によっては何人でも味方が駆けつけて共闘してくれるのだ。まさに物量作戦!と思ったが、そんな糞みたいな冗談では片せないほどにこの作品のキャラクター達は生命力に溢れていて、強く優しい。どんなにボロボロになっても折れることなく進み続ける。弱きを助け悪しきを挫く彼らのその姿は、私がかつて憧れたジャンプヒーローそのものだった。 主人公・炭治郎は真っ直ぐでクソ真面目でとにかく優しい心の綺麗な少年。共に闘う仲間たちは勿論、命のやり取りをした鬼でさえも、炭治郎の温かな優しさに触れてしまえば、忘れていた大切なことを思い出してしまうのだ。その優しい炭治郎もまた、様々な人の優しさに助けられ、自らを奮い立たせ、どんな窮地でも諦めることを選ばなかった。誰かに守って貰ったように、自分も誰かを守る。優しさの連鎖は絶ち切れることなく繋がっていく。数珠繋ぎになり循環し、滅ぶことはない。 ONE PIECEのチョッパーの出自の話で泣いたのは小学生の頃のこと。齢二十五にもなった自分が漫画を読んで何度も泣いてしまうとは思わなかった。そのことに気恥ずかしさもあるが、少し嬉しくも感じた。素晴らしい少年漫画は、次話を渇望させる。コミックスで読み始めた私が、ジャンプ+のアプリで本誌を購入してまで続きを読んだように。サラリーマンの自分が月曜日を待ち遠しく感じるなんて有り得なかった。人生で最初で最後になるかもしれないが、私は週刊少年ジャンプを買いに行った。 ありがとう鬼滅の刃。 心を燃やせ。赫い刃を。折れない心を。 (204話で完結と思ったら205話で完結だったので結局二回買うことになりました)
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し
2020/04/18
その意気や良し
夢枕獏の小説は、漫画化してもあまり売れない…と、昔、知り合いの漫画関係者から聞いたことがある。 いやいやいやいや、岡野玲子との『陰陽師』があるし、谷口ジローとの『神々の山嶺』は名作だし、板垣恵介との『餓狼伝』だって売れたでしょ!…と反論したのだが、先方は「そうなんだけどねえ…」と言葉を濁した。 (ちなみに、この会話は「それに比べると菊地秀行の漫画化は数字的にかなり手堅い」と続いた。その比較について考えるのはとても興味深いのだが、このクチコミと主旨がズレまくるので触れない) 実は彼とは、かつてボクシングについても同じようなやり取りをしたことがある。 ボクシング漫画って売れないんだよねえ…と言われ、いやいやいやいや、『あしたのジョー』や『がんばれ元気』や『はじめの一歩』とか、ド名作があるじゃない!…と反論したのだ。だが彼は「いや、それはそうなんだけどね。でも、漫画家は描きたがるんだけど、かなり実力がある人でも、あまり上手くいかないんだよ」と答えた。 「夢枕獏」や「ボクシング」は、多くの漫画家がそれに魅了され、漫画にしたいと願い、そして実際に挑戦するのだが、作品的にもセールス的にもなかなか送り手が期待するような結果にならない、と言うのだ。 そう考えると、確かに、夢枕の小説が持つ破天荒な面白さを、漫画というフィールドに結実し得た作品というのは、あまり思い浮かばない。 上記三作はそれぞれの漫画家の類い稀な個性によって「面白く」なったのだが、あくまで「例外」ということなのか。 そういう意味では、スティーブン・キングの映画化と近いかもしれない。 (ちなみに、ボクシングについても、「村上もとか『ヘヴィ』や細野不二彦『太郎』といった意欲作が彼らの豊かなキャリアの中でどんな位置か」とか、「明らかにボクシング漫画を指向していたにも関わらず森田まさのり『ろくでなしBLUES』はなぜそのジャンルとして失敗したのか」とか、「車田正美『リングにかけろ』が正統的ボクシング漫画であることを止めてから売れたのはなぜか」とかを考えるのはとても興味深いのだが、これもやはりこのクチコミと主旨がズレまくるので触れない) 前置きが長くなりすぎた。 とにかく、夢枕獏の漫画化は「難しい」のだ。 しかし多くの漫画家や編集者は、この魅力的で危険な「賭け」に、今も挑み続ける。 やまあき道屯『大江戸恐龍伝』は端倪すべからざる作品である。 原作の、江戸期のスター・キャラをズラリ並べて荒唐無稽・縦横無尽に突っ走る面白さに、漫画家は必死に喰らいついている。 構成は少しダイジェスト感があり、いかんせん詰め込みすぎではあるのだが、熱気と主張ある絵柄で美事なコミカライズとなっていると思う。 近年の収穫と呼ぶに相応しい力作だと信じる。
pennzou
2020/05/04
小さな物語で描くもの
「窓辺の春」は月刊フラワーズ2019年4月号に掲載された鯖ななこ先生による短編読切作品だ。 鯖先生は現状自著の発行がなく、また作品も月刊ないしは増刊フラワーズにしか掲載されていない。そのため、鯖先生を存じない方が多いと判断し、まず鯖先生の経歴を記す。(間違いがあればご指摘頂けると嬉しいです!) 鯖ななこ先生は月刊フラワーズ2017年8月号にて発表された第90回フラワーズコミックオーディションにて金の花賞(賞の位としては第2位にあたるが、金の花賞以上が出ることはそうそうない)を受賞、受賞作「最適な異性となる要因の主観的考察」が増刊フラワーズの同月号に掲載されデビューした。以降より増刊フラワーズでは短編読切を、月刊フラワーズでは定期購読の販促4コマを執筆されていた。初の連載作品は月刊フラワーズ2018年5月号より開始された「きょうのヤギさん」で、現在も続いている。「きょうのヤギさん」は先述の販促4コマの設定を汲んだ4コマショートで、物語形式の作品が月刊フラワーズ本誌に掲載されたのは2018年10月号の短編読切「おとぎの杜」が初めて。以降、いくつかの短編読切と短期連載作品「Hide&Seek」が発表されている。 この経歴は、例えばデビュー当時の岩本ナオ先生も同様に販促4コマ(「町でうわさの天狗の子」の巻末に収録)や短編読切・短期連載(「スケルトン イン ザ クローゼット」に収録)を執筆しているように、フラワーズ生え抜き作家の定番ルートといえる。ただし、4コマショートとはいえかなり早い時期から連載を任されているパターンは珍しく、ここから編集部から特に期待されている(悪い言い方だと囲い込まれてる)のでは?と察することも出来る。 「窓辺の春」に話を戻す。本作は月刊フラワーズで発表された作品としては2作目となる。自分は前作の「おとぎの杜」で鯖先生の読切をはじめて読み、もしかしてこの人のマンガはすごいのでは……?と思いはじめ、本作でそれが間違いでなかったことを確信した。 鯖先生作品では「主人公が失ったものや隠れていたものに気がつき、見方を変える」ということが多く行われる。その変化がもたらす心地よさが魅力だと思う。本作ではその上で主人公の行動が他のキャラクターに伝播していく様子が描かれており、より風通しのよい作品になっている。 個人的にビビっときたのは、(ややネタバレになるが)おじさんが清潔な身なりで出掛けるシーンがあるのだが、なぜおじさんがその格好をしたのかを、後のたった1コマで表していた点だ。そのほんの小さな、しかしあざやかな手腕に惚れ惚れした。 本作は決してスケールの大きい物語ではない。小さな物語だ。しかしながら、岩本先生などフラワーズの先達が描いてきたように、小さな物語によって表せるものはあり、それがフラワーズらしさを形作る要素のひとつだと考えている。その潮流に鯖先生は乗っていると思う。 絵柄については丸みを帯びた親しみやすい画風であるが、大胆なトーンワークなどグラフィカルな要素も多く含まれており、それが鯖先生らしい画面にしている。 先述の通り、鯖先生単独名義の自著は未だに発行されていない状況である。しかし現在も断続的に短編は掲載されており、直近だと月刊フラワーズ2020年7月号に短編「おしゃべりな人魚」を掲載予定だ。これを除いても、単行本一冊分のストックは十分にある。 ただし、フラワーズ新人の初単行本は、めちゃくちゃハードルが高いのか、それはもう全然出ないのだ。最後に出たのは2017年12月の笠原千鶴先生「ボクんちの幽霊」が最後だったはずで、つまりここ2年以上出ていません。 それでも、初の自著が出版されるのを自分は心より待っています……