アオバノバスケ

戦術とチームワークがテーマかな(4巻までの感想)

アオバノバスケ
alank
alank

バスケはやる方はちょっとだけだっものの観るのは今でもずっと好きで、バスケマンガはスラムダンクが金字塔過ぎてそれ以外はしっかり読まずなんとなく避けてきました。黒子のバスケもあひるの空もチラ見だけでした。(deep3はしっかり読んだw) 本作も気が進まなかったものの、ふとしたきっかけで読み始めたら、とても面白い! まっすぐで才能豊かな主人公とか、チームの絆とかもテーマとして感じられますが、個人的には戦術面やプレー中の思考に関する描写が充実していてすごく良いです。 野球のようにワンプレーずつセットプレーが行われるスポーツにくらべて、バスケは流れの中で進みしかも攻守の交代が激しいため、素人目には技術あるプレーヤーが目立つスポーツで戦術や判断より力よりもその場の感覚がものを言う世界のように見えがち。が、実は采配や各シチュエーションでの判断が多くの情報の上になされていることがよく理解できて、スポーツとしバスケをより楽しめます。アオバノバスケを読んだ後に実際の試合観戦したら、今まで以上に楽しめるんじゃないかと思います。その辺はスラダンにはなかった要素かなと。 Aチーム昇格に向けたチームメイトとの熾烈なライバル競争のリアリティはわからないですが、八村塁が大学でぶつかった壁や、渡邊雄太がサンズで味わった緊張感と通ずるものがありそうです。 日本バスケ盛り上がってますし、元々のバスケ好きだけでなく、ちょっと興味あるなくらいの人も、これを読めばいっそうバスケを楽しめるようになると思います。 コミックDAYSからマガポケに移ったとのことで先行き気になりますが、長く続いて欲しいです。 おすすめです。ぜひ読んでみてください。

この世界の片隅に

漫画と映画を久しぶりに見返した!

この世界の片隅に
かしこ
かしこ

2025年のお正月にNHK広島放送で映画「この世界の片隅に」が放送されたのは、今年で原爆投下から80年が経つからだそうです。この機会に私も久しぶりに漫画と映画をどちらも見返してみました。 やはり漫画と映画の一番の違いはリンさんの描き方ですよね。漫画では夫である周作さんとリンさんの関係について触れられていますが、映画ではありません。とくに時限爆弾によって晴美さんと右手を失ったすずさんが初めて周作さんと再会した時に、漫画ではリンさんの安否を気にしますが、映画ではそれがないので、いきなり「広島に帰りたい」という言葉を言い出したような印象になっていました。映画は子供のまま縁もゆかりもない土地にお嫁に来たすずさんが大人になる話に重点を置いているような気がします。それに比べると戦時下無月経症なので子供が出来ないとはっきり描いてある漫画はもっとリアルな女性の話ですよね。だから漫画の方が幼なじみの海兵さんと2人きりにさせた周作さんに対して、あんなに腹を立てたすずさんの気持ちがすんなり理解することが出来ました。個人的には男性達に対してだけではなく、当時の価値観で大事とされていた後継ぎを残せない自分に対しての悔しさもあるのかもしれないと思いました。けれどもあえて女性のリアルな部分を描きすぎない選択をしたのは、原作である漫画を十分に理解してるからこそなのは映画を見れば明らかです。 久しぶりに漫画と映画を見返してどちらも戦争が普通の人の生活も脅かすことを伝えているのはもちろん、すべてを一瞬で無いものにしてしまう核兵器の恐ろしさは動きのある映画だから強く感じた喪失がありました。そして漫画には「間違っていたら教えて下さい 今のうちに」と巻末に記載されていることに初めて気づきました。戦争を知らない私達が80年前の出来事を想像するのは難しいですが、だからこそ「この世界の片隅に」という物語があります。どんなに素晴らしい漫画でもより多くの人に長く読み続けてもらうのは大変なので映像化ほどの後押しはないです。これからも漫画と映画どちらも折に触れて見返したいと思います。

ダイヤモンドの功罪

最新話で綾瀬川が覚醒したぞ!!

ダイヤモンドの功罪
かしこ
かしこ

最新話でついに!綾が覚醒をしましたね!エヴァで言うところの覚醒と同じ意味なので心配ではありますが、これから益々タイトル通りの「功罪」っぷりを発揮してくれることでしょう。 ということで単行本を読み返してみました。運動神経だけではなく、身体能力、そして頭脳と、スポーツをする為の全てに恵まれた小学5年生の綾瀬川。U12の日本代表でもエースに選ばれ、他の代表選手からも「俺の世代にはずっとコイツがいるんだ…」と恐れられる程の逸材っぷり。しかし綾瀬川の本心は只々みんなと楽しく野球がしたいだけ。そう、綾本人も自分の才能に傷ついているのです。でも誰もそれを知らない。いてもイガくらいかな? 私は野球に関して全くの無知なんですがそれでもハマるのは、これが「才能」の話だから。やはり圧倒的な才能は人を翻弄するんですよ!!恐ろしやです。 日本代表の並木監督があのまま綾の面倒を見てくれたらよかったけど、このまま足立フェニックスで限界まで投げ続けたらプロになる前に選手生命が絶たれそうで心配ですね。ストーリーの冒頭で何回か高校球児になった綾が出てくるけど「この試合で壊れてもいい…!」と言ってたのが気になる。それがどういう意味なのか。やけっぱちなんだろうか。今のところ理解者になりそうな人が大和しかいないけど、東京と大阪で距離もあるし、大和もプレイヤーになりたそうだし、どうなっちゃうんだろう…。 将来は大谷さんのようになってくれたらいいのにな〜と思うのも綾にとっては大きなお世話なんだよね。とにかくハッピーエンドであってくれ!!と願いながら読んでます。

白竜

気が付けばシリーズ累計100巻以上

白竜
ピサ朗
ピサ朗

ちっぽけな組に過ぎない黒須組に、ある日白竜の異名を持つ若頭が台頭してからあれよあれよと裏社会で頭角を現していく、揉め事の解決は暴力やダーティーな手段だったりの、良くも悪くも普通のヤクザ漫画。 …だったのは初期の話、天王寺大氏が実際の事件を広げたネタを扱う事も多かったので、ゴルゴ13のような「実はあの事件の裏には白竜が関与していた!」オチのネタが結構あったりする。 シリーズ後半ではその手のネタが増えて行くが、この第一シリーズである無印は比較的そういうネタは薄め、なんだかんだ危険な香り漂う裏社会でのし上がっていく姿は正直ワクワクする部分も有り、強引すぎたりアレな解決も「こまけえことはいいんだよ!」の精神で十分楽しめる。 …後のシリーズでは陰謀論を加速させかねない色々と不幸で幸運な現実に見舞われたりしてるけど、それも割り切れば作品の魅力。 組のメンツも少人数な分、上も下も描きやすいのか、若頭主人公だが下っ端から組長まで交流があり、それなりにキャラを立たせつつキャラ被りも無しと、今見ると設定時点でなかなか秀逸。 ヤクザ漫画としては、シノギの描写が意外と広く、これもまた第2シリーズ以降の時事ネタを扱うのに違和感が無い要因だろうけど、解決手段はシンプルに非合法だったりで「できるか んなもん!」な、描写がてんこ盛りで、これをツッコミどころとするか、展開が早くて良いとできるかで面白いと感じられるかは分かれそうな気がする。 とはいえシリーズ累計で100巻以上を成し遂げてしまってるように、こういう作品が好きな男自体はなんだかんだ根強く存在している事も実感するが。 実際のあれこれをネタにしている部分とか、多々あるツッコミどころにせよ、素直に名作と認めたくはないが読んでて楽しい部分も有るのは確か。 作風が完全に確立したのは第2シリーズのLEGENDだが、その移り変わりも含めタバコと酒臭さが似合う漫画ゴラクの象徴の一つ。

ドカ食いダイスキ! もちづきさん

女の子が自殺してる姿なんて見たくない

ドカ食いダイスキ! もちづきさん
ピサ朗
ピサ朗

可愛い女の子が底辺おじさんがハマるような趣味をやってるという、最近の流行である作風なのだが 「食」という生活に密着してハードルの低い分野で、注意書きも一切無いので正直恐怖の方が勝る。 自分も結構食べる方だが、30越えてからは多少なりとも控えめになったが、21で運動量も少ない女性がこんなん10年後に一気に来るというのが容易に想像できてしまう。 ハッキリ言えばもちづきさんがやっているのは「緩やかな自殺」レベルの暴食なので、ここまで来てるとむしろ中年男性がやってる方が遠慮なく笑える。 ひでえ事言ってるけど、「中年男性の自殺姿は笑えても、かわいい女の子の自殺姿を見て笑うことはできない」のだ。 とはいえ暴食に心を囚われ不健康な生活を送ってる人にとって、ここまでではないにしても己を顧みる切っ掛けになりえる狂った生活描写は見事で、逆説的に食事に対する節制や再考を推奨していると言えなくもない。 そういう方向性ならむしろ吾妻ひでお氏のアル中病棟のように、数年後に作者が死亡するか、もちづきさんが入院して暴食を強制的に楽しめない終わりが似合うだろうけど、流石にそんなもん見たくないので、どういう終わりを迎えるのかすごく気になってる。

イムリ

頭おかしくなるくらい圧倒的に壮大なSFファンタジー

イムリ
ピサ朗
ピサ朗

地球とは異なる惑星で暮らす、奴隷民族であるイコル、支配民族であるカーマ、そして先住民にしてタイトルのイムリ、これらの戦争が描かれていくのだが、 三民族それぞれの文化、いわゆる魔法に相当する技術、支配種族の権力闘争、逆転に次ぐ逆転が続く展開、とにかく徹底して「世界」のディテールが細かく濃い。 ハッキリ言ってこのディテールの細かさは間違いなく人を選ぶ。 巻末で登場人物紹介や用語解説が掲載されているが、独自用語で耳慣れない単語が多いもんだから、別ウインドウ表示か小冊子にして読みながら確認させてくれと言いたくなるし、世界設定の説明や大まかな登場人物紹介と序章に当たるストーリーに3巻を費やしていので、ストーリーが動き出すまでも遅く、正直序盤はじれったい。 しかしほとんど説明なのにめちゃくちゃ中身が濃いし、後から見るとこれでも足りないくらいで、スケールのデカさに戦慄する。 最低3巻読まないと殆どストーリーが動かないという展開の遅さなのに、一度物語が動き始めてからは息をもつかせぬ急展開の連続で、疲労感すら漂う重い展開の嵐だが、ある種の絶叫マシンに乗ったような気持ちよさもあり、それぞれの戦いの方法も見応えがあり、胸を打つ場面も多い。 序盤の展開の遅さとオリジナリティの高さ故の入りにくさはあるが、描かれていく世界史と陰謀、英雄譚に和平は非常に読みごたえがあり、間違いなくハマれる人はハマれるタイプの作品。

ダンピアのおいしい冒険

未知を既知にするのは何時だって機知に富んだ無知な奴ら

ダンピアのおいしい冒険
ピサ朗
ピサ朗

17世紀の海賊の航海日誌を膨らませた「事実を基にしたフィクション」の伝記漫画なのだが、とても素晴らしい。 昔の学習漫画のようなシンプル絵柄だが、当時の海賊という事情からも病気や戦闘などのともすればグロテスクな部分も読みやすく、またダンピアも実年齢より若々しく感情移入がしやすいし、異常なまでの参考資料から読み取ったであろう先住民や欧州、東南アジアなど各々の文化を、しっかり漫画に落とし込み、題材となった人物をしっかり主人公として魅力的に描くのは相当な筆力を感じる。 英国生まれの青年ダンピアは、貧困と教育を軽んじる当時の価値観から大学に通えず、紆余曲折の果て、はみ出し者だらけの海賊船に流れ着いた、当初は悲観していたが、誰も知らない事の発見者になれる喜びを噛みしめ、未だ未知なる事に溢れた太平洋の冒険に胸を躍らせる。 当時航海も盛んになっていたとはいえ、人々にとっては日々を生きるのが精一杯というのは珍しくもないだろうし、ダンピアのような青年はきっと多かっただろうけど、どんな状況にあろうと好奇心と探求心に満ち溢れ、恐れず行動し、海賊というヤクザ稼業をすらチャンスとして学ぶダンピアが実に魅力的。 「おいしい冒険」の名の通り、食事に関する描写が豊富だが、当時誰も食べたことの無い未知の食材を調理するその風景は、その航路からも正に「先駆者であることの歓喜と偉大さ」を訴えかけてくる。 しかし食事だけでなく、授業料の無いフィールドワーク、税金にせよ犯罪にせよ許され、実力勝負故に人種差別の薄い海賊という職業、それらもひっくるめてのダンピアの「おいしい冒険」であるのも面白い。 危険に溢れた海賊稼業が「おいしい」と言えるかは人によるだろうけど、職業選択の自由もない時代で、海賊以上に劣悪な環境の海軍の事情なども併せて語っているのでダンピア達にとっては正においしい冒険だったのだというのが伝わってくる。 教科書には載らなくとも歴史を彩る偉人の生涯を実に魅力的に描いていて、とても良い読後感を得られる名作。

ダイヤモンドの功罪

めっちゃ現代的な梶原一騎

ダイヤモンドの功罪
ピサ朗
ピサ朗

小学五年生で運動に異常な才能を持つが心はエンジョイ勢な主人公が、野球と出会う事で巻き起こしてしまう波乱とドラマなのだが、滅茶苦茶梶原一騎作品の様な雰囲気がある。 物理法則こそねじ曲がっていないのだが、主人公が競技をやるのが競技が好きで自発的というより、周囲に才能を見込まれ運命というか半ば強制的に競技をすることになってたり、主人公が強すぎて勝負という形にはなってないのだが、競技よりもそこから生じる人間ドラマの方を主軸としてたり、全体的に漂う陰鬱で重い悲劇的な雰囲気は、かなりあしたのジョーや巨人の星とかの60年代スポ根ドラマに通じるものがある。 とはいっても、基本的にキャラデザはイケメン少年で、物理法則が現実そのものという点でやはり現代スポーツ漫画らしい部分も多い。 ただそういうストーリーの為とはいえ、主人公である綾瀬川の運動能力が完全に人間離れしていて、受け入れられるよう慎重に書いているにせよ、もはやゲームやギャグ漫画に片足突っ込んでるレベルで尋常ではなく、冷める人も相当居そうに思う。 しかしそういう並外れた才能だからこそ、勝負を通じたスポーツマンシップの美しさの裏にある残酷さ、才能に振り回される大人も含めた周囲、エンジョイ勢とガチ勢の溝などと言ったストーリーが映える部分も多く、特にその才能に魅せられてしまう大人というのは野球という競技と、主人公の圧倒的な運動能力から強烈な生々しさが漂っている。 主人公以外のキャラも弱小チームにせよ強豪チームにせよ、それぞれの年齢や居場所に合わせたメンタリティをしているために抱く苦悩も描かれているが、主人公自身もその能力の高さゆえに馴染めない苦悩も描かれていて、強烈な負の面白さが出ている。 この手の「才能により歪んでしまう」スポーツ漫画としては黒子のバスケとかが記憶に新しいが、そういう才能が複数人居たお陰でバトル漫画的になっていたあちらに比べると、たった一人だけそういう才能を持っている事により周りが一般人である分、その人間ドラマが際立っている。 プロトタイプに当たる読み切り(高校・プロ年代)も幾つか存在するが、こちらはあくまでプロトタイプとして別物と思っていて、こちらで描かれた未来に収束するかは未知数。 野球を題材としてはいるが、才能により才能の持ち主も含め全てが振り回されるドラマは非常に生々しくも強烈で面白い。 幸か不幸か大谷翔平という、一昔前なら漫画でしかありえなかった活躍をする人間が現れていて、ギリギリでリアルとファンタジーのバランスはとれているように思うが、主人公が本当にゲームかギャグ漫画並に突出した運動能力があるので、ココで脱落する人もいるように思う。

聖戦記エルナサーガ

ド直球のヒロイックハイファンタジー

聖戦記エルナサーガ
ピサ朗
ピサ朗

誰もが魔法を使える世界で、唯一魔力を持たないアーサトゥアル国の姫エルナと、戦争中のアンサズ国の王子シャールヴィが出会い、各々の思惑により逃避行に身を投じ、怒り悲しみ成長し、やがて戦争を終わらせようと戦い抜く、超が付くほど真っ当すぎるファンタジー漫画。 固有名詞の多くは北欧神話モチーフだが、内容は独自性が強くしっかりとした世界を描いている。 作者が「女の子が世界を救う物語」を描きたいと思った事もあるだろうが、主人公のエルナは女らしさの塊のような女性で、力は弱く誰もが魔法を使えるこの世界で唯一魔法が使えず、目の前で剣を取らねばならぬ時も戦えず、敵の死にも涙を流し、優しく弱く迷い状況に翻弄され、理想主義的で、正直やきもきするのだが、体内の魔法に反応して強力な殺傷力を発する封魔剣を唯一扱えるという特性と、そうして無力な身から悩み学んだ事から成長し自分の意思を世界に示す姿が実にカッコいい。 もう一人の主人公である王子シャールヴィは、猛々しく雑兵をなぎ倒し、魔法も強く、上の兄王子達に考える事は任せていて、戦争を終わらせるなら母国アンサズの勝利で終わらせるという事がエルナを連れていく動機だったが、戦乱の中でも平和を求め、甘いと感じていたエルナの優しさを目の前で見続け、徐々に彼女を守ろうと命を預け、国ではなく彼女の為に戦う事を決めるなど、良い意味で男らしさの権化である。 この二人が共に世界を巡り、様々な出会いと成長を繰り返し、やがては滅びに向かう世界を救おうと戦いに向かう。 出会う人々も市井の人一人一人に物語が見え隠れして、世界は狭いのだがとても深みがある。 モンスター的な存在は居るが、実際は正真正銘のモンスターは伝説の魔獣くらいで、異形の姿と化した狂戦士も元は人間で、空馬等の架空生物は使役動物であり、あくまで人間の領土を巡る戦争が出発点なのも見応えがあり面白い。 男女問わず読んで欲しい一作、お薦め。

創作文芸サークル「キャロット通信」の崩壊

なぜ人は物語を綴るんだろう?

創作文芸サークル「キャロット通信」の崩壊
toyoneko
toyoneko

「今年読んでよかったマンガリスト」を作ったときに、今年読んだ読み切りで何が良かったかな…と思いだす中で、真っ先に思い出したのが本作だったんですよね というか、「ゼロ災でいこうっ」のシーンが思い浮かんだ(添付) 衝撃的なシーンでした 大人になっていく中で、飛行機事故を契機に、自分の「核」が創作ではなくなっていたということ(又は、自分の「核」は最初からそんなところにはなかったということ)、そして、現実を前に情熱は失われてしまっていたこと、そのことを自覚する物語 それが、本作に対する私の印象でした …が、読み返してみると、実はそうではなかった だって、主人公は、そのことを自覚しながら、それでも、創作をやめられないから 「他の選択肢がない」という理由で、やはり創作を辞めることができない 別の人生を歩めるなら歩みたいと泣くのに、それでも辞めることができない それどころか、キャロット通信は解散し、仲間もいなくなり、 誰も読んでくれない、読者すらいないのに、辞めることができない 「にもかかわらず…私は…懲りもせず」 「また繰り返す…どうして?」 「なぜ??」 たぶん、このセリフこそが、この作品の核心なのでしょう 主人公にとって、創作は、苦痛なのでしょう でも、主人公の救いは、もはや創作しかない だから、主人公は、創作に向き合い続ける 「赤羽」に登場するペイティさんが、 「やはり創らないと気が狂いそうだから創るってコトですね…」 と言ってました(増補改訂版4巻、ボーナストラック9話)、 「創作」というのは、もともと、そういうものなのかもしれないです あ、ところで、そんなふうに「創作」をやめることのできない綿本おふとん先生ですが、トーチwebで新連載とのこと!みんなで応援しようね! https://x.com/offton_w/status/1873197901478019149

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~

「チー付与」ってなあに?

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~
toyoneko
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未読者向けに「チー付与」の話をしましょう 知ってますか?「チー付与」。まぁ私も知ったのは最近なのですが… タイトルをみれば分かるとおり、本作は、いわゆる「なろう」系を原作にしています 原作の方は、わりとタイトル通りの内容で、あまり癖はなく、読みやすいです(なお、単行本2巻まで出てますが、未完で、現在も「なろう」連載中) https://ncode.syosetu.com/n7050gs/ 「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」という長いタイトルですが、略して「チー付与」 ところで、「なろう」系のコミカライズには、当たりハズレがあります つまり、技量の高い漫画家さんがコミカライズするか、そうではない漫画家さんがコミカライズするかで、面白さが全然違ってしまうのです たとえば、「絵が上手いか否か」は分かりやすい でも、それだけでなく、同じ文章を原作としていても、それを漫画としてどう落とし込むのか、エピソードの取捨選択、コマ割りや構成を中心とした漫画力の違いなどで、全然違う作品になってしまいます では、本作は? これは、まぁ、「当たり」か「ハズレ」かでというと、おそらく「当たり」です 絵も上手いし、漫画も読みやすい。漫画としての完成度が高い ただ、普通の「当たり」作品は、基本的には原作に忠実にコミカライズします ところが本作は、全然忠実ではないです いや、初期は(比較的)忠実だったのですが、途中から異常な改変が加えられ、結果として、他に類をみない怪作に仕上がっています その結果、一部のマニアにはメチャクチャ好評で、「このマンガがすごい!(2025)」では、オトコ編21位に入りました ストーリーの話をしましょう ただ、これは、基本的にはタイトルのとおりです。「追放」モノですね 剣と魔法のファンタジー異世界が舞台になっていて、「王獣の牙」というギルドに所属する強化付与魔術師(武器とか防具を強化する)が主人公です。名前は「レイン」 彼が、「もうお前はいらない」とギルドから追放されるところから物語が始まります レインは、付与した「強化ポイント」を全部回収し、自分の武器とか防具に付与することで、圧倒的な戦闘力を得ることになり、別のギルド(青の水晶)で活躍を始めます そんな中で、世界の危機に立ち向かったりとか、まぁそういう話 原作と漫画版のストーリーは、いろいろな設定の違いはあるものの、最初の頃は、大筋では一致していました ただ、完全に世界観を壊すような描写がされてから、雲行きが怪しくなってきます 具体的には、燐光竜という強い竜があらわれて、レインらがそいつを倒すのですが、死んだと思った燐光竜が、実はサブマシンガンを隠し持っていて、レインらを射殺しようと画策していたことが分かる、というシーンなのですが…(添付) サブマシンガン? もちろん、剣と魔法のファンタジーにサブマシンガンが存在してよいはずもありません 一応、この時点ではシュールなギャグの一種として処理されたのですが、そのほかにも、平然とパチンコが出てきたりとか、「皇帝の盾」というギルドは「CEO」と呼ばれるギルドマスターがいて、構成員全員が普通にスーツを着ていたりとか、ブラック企業みたいに全員でギルド訓唱和を始めたりとか、どんどん世界観が壊れ始めます まぁこれはもう、そういう作品なんだな、シュールコメディの一種なんだろうと読んでました。この時点では 同時並行で、作品の方向性も変わっていきます 「王獣の牙」には、「グレンダ」という幹部がいて、まぁこいつは死んでしますのですが(ちなみに原作では死なない)、それを契機として、グレンダを慕う一団が王獣の牙を脱退し、反社のような存在になっていきます この集団の代表は、「俺の半分はグレンダでできている」が口癖で、「半分」と名乗っています グレンダを慕う「半分」とその一団は、こう呼ばれるようになりました 「半グレ」 そして、レインの能力を知った「半グレ」は、レインを仲間に取り込もうと画策するようになり、「半グレ」との戦いが始まります ところが、恐ろしいことに、「半グレ」は原作には存在しません(なお、ほかに、「暗殺の母」という人気キャラもいますが、こいつも原作にいない) このあたりで、原作との乖離が決定的になったように思います そして、それなのに、「半グレ」編が圧倒的に面白い 「半グレ」の一団は、かなり戦闘力も高く、「魔法」も使えます すなわち、冒険者は「魔力」を使って戦うのですが、「魔力」は身体強化に使えるほか、それぞれが固有の「魔法」を使って戦います。ただし、どんな「魔法」を持っているかは、切り札なので、みな秘密にしている つまり、「冒険者」同士の戦いは、モンスター相手の戦いとは違って、対人頭脳戦の様相を呈してくるわけです さらにその過程で、魔力と文明の関係が明らかにされたり(先ほど言及したサブマシンガンやパチンコと世界観の関係が(後付けかもしれませんが)説明されます)、レインの付与能力が、「どのような意味で」チートなのかが明らかにされたりとか、世界観や設定がどんどん拡張されていくのです 「半グレ」連中の造形も良くて、こいつらは悪事ばかり働くロクデナシなのですが、友情はすごく大事にしていて、それがどこか魅力的でもあります 作品が進んでいくにつれ、こいつらの性格も見えてきて、どんな魔法を使うのかも分かってきて、そして、だからこその、半グレ編の「あの終わり方」は本当に衝撃的でした(47話) そして、それまで、コメディ寄りだった作風は、半グレ編のなかで、かなりシリアス寄りに変化していきます(…と思ったら、半グレ編が終わった次の話はヤケクソみたいなコメディだった) あと、テーマ的なお話を 本作は、いわゆる「ざまぁ」ではありません。いや、原作はその要素が強いのですが、コミック版は、おそらく敢えて、その要素を排除している その代わりにテーマとなっているのが、「セカンドライフ」です いろいろな事情で、第二の人生に踏み出さざるを得ないということは、多々あります 主人公のレインはそうですし、そのほかの仲間たちも、さらには「王獣の牙」のギルマスですらギルド崩壊後の、第二の人生を踏み出します 因果応報を前提に据えつつも、どのようにセカンドライフを踏み出すのか、第二の人生をどう生きる(べき)かということが、本作のテーマになっているようです 実は、根本では結構まじめな作品なんですね 一方で気になるのは、原作との関係 いや、普通はここまで改変したら原作者は怒るはず(というか許可しないはず)なんですよね ところが本作では、原作者である六志麻あさ先生は、むしろ積極的に本作を応援していて、更新のたびにツイートしてくれます 内心ではちょっと思うところはあるのかもしれませんが、何にせよ、原作者がこんなに堂々と推してくれるなら、読者としても堂々と応援できるというもの なお、さんざん改変の話をしましたが、実は、地味に原作要素は拾っているんですよね… 保持者(ホルダー)、天の遺産(レリクス)、光竜王とか、「この先の原作展開」につなげる要素が拾われていて、大筋は外さないようにしているところが伺えます あと、この漫画家さん、何者なのか?という話 コミカライズを担当した業務用餅先生は、覆面作家。これ以外にどんな作品を書いているのかとか、出自とか、全然明らかになっていません このへん、メタ的に、これがこの漫画家さんの「セカンドライフ」そのものなのかも、という感じもするところです そうすると、その正体を暴くのはヤボな気もしますが、いろいろ調べている人たちもいるので、気になればそちらから探してみてください たとえば以下のスレからとか https://itest.5ch.net/medaka/test/read.cgi/ymag/1692975216 本作は、イカれた怪作でもありますが、同時に、圧倒的な漫画力を誇る名作です 年末年始、ぜひ読んでみてください!

みやこまちクロニクル

「好日(前編)」そして…

みやこまちクロニクル
toyoneko
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ちほちほ先生は、岩手県宮古市在住の漫画家です 主として日常エッセイ漫画を描いています 私が先生の作品に初めて触れたのは、「好日(前編)」という短編エッセイでした ツイッターで話題になってたのかな…?当時はpixivで読めました 内容は、東日本大震災の話です 宮古市は、津波でかなりの被害を受けた地域。そこにいた人のエッセイ漫画というと、やはり、ものすごくドラマティックなというか、衝撃的なというか、そういうものを、読み手としては期待してしまう でも、そういうものではありませんでした ちほちほ先生の描く震災は、当事者目線でありながら、どこか乾いた感触で、淡々としていて、でもだからこそ、ものすごくリアルだった もちろん、これは、ご自宅も家族も無事だったからこそ、という背景があると思うのですが、それにしても、「震災をこういうふうに描ける」というのは、かなりの衝撃でした 実は私、東日本大震災のときには気仙沼に住んでました 幸いにして、自宅は無事、身内で亡くなった人もいなくて、被災者のような被災者でないような、不思議な立場でした そんな立場の人間の感じる、震災に対する距離感というか、視線というか、そういったものも、見事に描写している作品でした 3.11当日、テレビでは、火の海に包まれた気仙沼の空撮映像を流し、「気仙沼市全滅!」みたいな報道をしていたそうです しかし、現地にいた私は、テレビもうつらないし(停電)、携帯電話も繋がらないし(基地局が潰れた)、仕方ないから、懐中電灯の明かりの中で、自宅で「バイオレンスジャック」を読んでました(でも怖いから10分おきに外に出て津波の様子を確認していた) そして、ああいう災害を経験すると感じるのは、災害と日常は地続きなのだということ そこにははっきりした境は無くて、災害はいつ起きるか分からないし、災害と日常は、実は、同居しうるものであるということ この作品を読むと、そのことも思い出されます ところで、ちほちほ先生は、「好日(前編)」を含む作品群をコミティアで発表していたのですが、その後いろいろあってトーチで賞を貰い、さらにはトーチで連載を持ち、コミックが3冊発売されました。それが本作「みやこまちクロニクル」です 私、「好日(前編)」を読んだあとは、恥ずかしながらちほちほ作品を追ってなかったのですが(『「好日(前編)」は良かったけど、それ以外は読まなくてもいいかな…』とか思ってた)、現在、リイド社の電子書籍がセール中とのことで、せっかくなので全部買って読んでみました 1冊目(震災・日常編)は、コミティアで発表していた作品群の再録。「好日(前編)」もタイトルを変えて収録されています 2009年~2016年まで描かれており、震災の話、復興の話、そしてその中での日常が描かれます 2冊目と3冊目はトーチ連載分。「コロナ禍/介護編」「父ありき編」です 2019年~2023年まで描かれています。内容は、主として、親の話。ちほちほ先生は、両親と同居して暮らしているのですが、特に父親について、介護が必要になって、次第に、状態が悪くなっていく描写が描かれます 正直、かなり重い話です でも、不思議と暗くはない。また、やはり描き方は淡々としているので、比較的あっさり読めてします でも実は激重なので、読んでいると、気づかない間に、どんどん心が重くなっていく 変な例えですが、「軽く飲めるのにアルコール度数高いお酒」みたいな作品…というか また、これは私の個人的な問題なのかもしれませんが、非常に強く感情移入できてしまう ちほちほ先生と自分は、きっと、似た感性をしているのだろうなとか、私も同じ状況に置かれたら、きっと私もちほちほ先生のように感じるんだろうなとか、そんな気持ちになってくるのです 思考がトレースできるとか、人生を追体験できるとまで言うと大げさですが、それにしても、あまりにも強く共感しすぎてしまう 作中で、登場人物(特に親)が、強めの訛りを使うのもポイントですね。私も岩手出身なので、登場人物が、何を言っているか、どういうアクセントなのか、はっきりわかってしまう。ちょっと、リアルすぎる 私は、結局、東北を離れ、今は関東で暮らしています この作品を読んでいると、これは、「もし自分が東北に残ったら」という、ifの物語なのかもしれない、とも思えてきて、他人事とは思えなくなってしまうのです あと、うちの親はまだ元気ですが、将来の親との関係も考えなくちゃいけないなとか、そういうことも考えさせれました。まぁこれを言い出すと今度は「父を焼く」の話になるのですが、ここでは触れません 何を言いたいのかというか、この作品は傑作だということです 「好日(前編)」だけでも傑作だったのですが、「コロナ渦/介護編」「父ありき編」は、別ベクトルで傑作です そして、この作品は、私にとっては、忘れられない作品になりました 3巻の「続き」はまだ描かれていないようです。続きを読める日を待ち続けたいと思います

母性天使マザカルカノン

何だこの漫画は!

母性天使マザカルカノン
toyoneko
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まずはこちらのツイートをご覧ください https://x.com/sleepfool/status/1834185604302864508 私のタイムラインにこの投稿が流れてきてですね 何だこれは、素晴らしい作品だ、ぜひ読まなければならない!と感銘を受け、即購入したのが本作「母性天使マザカルカノン」です(この画像は55話の一部。2巻に収録) 本作は、エッチな漫画雑誌(ホットミルク)に載っている、エッチじゃないコメディです エッチな漫画雑誌に載っているエッチなじゃないコメディの中には、わりと有名な作品もあります Gヒコロウ先生の作品とか、道満晴明先生の作品とか、ゲノムとか、ギニャーズとか、火鳥先生の作品とか、櫻井エネルギー先生の作品とか、縁山先生の作品とか、私が思いつくだけでもいろいろ こういう、エッチな漫画雑誌に載っているエッチなじゃないコメディには、やたらと破壊力が大きい作品もあって、先ほど挙げた作品群はわりとみんな破壊力が大きいですね 破壊力が大きいというのはどういうことかというと、たとえば一番最初に挙げたツイートの画像は破壊力が大きいです さて、本作「マザカルカノン」のストーリーは、小学生女子である城ケ崎花音(8さい)が、迷える(顔の濃い)オッサンたちの悩みを解決するため、母性天使マザカルカノンに変身して活躍する!というものです 1話あたりわずか4頁というスピード感(コミック1冊あたり30話収録)とテンションの高さが魅力! 途中でキャラが強めの漫画家(準レギュラー)が出てきてからは(11話)、変な方向にさらにテンションが高くなり、お絵かきのスピードをアップする話(16話)、10連休の話(20話)、コアマガジン社の話(22話)、30歳になる話(30話)とか、ヤバくてテンションの高い話がどんどん増えていきます(以上は1巻収録) 2巻になってからヤバさはさらに加速し、コミケに行く話(31話)、エビをさばく動画を撮影する話(32話)、いいねの数だけ腕立て伏せする話(34話)、またコアマガジン社に行く話(55話)を筆頭に、酒を飲んでストーリーを考えたとしか思えないようなお話が目白押し!になります テンション高めのヤバいギャグを読みたい人におすすめです 画像は、10連休の話の一部

空が灰色だから

気づけば10年

空が灰色だから
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気づいたら「空が灰色だから」の最終巻が出てから10年以上が経っているんですよ えっ…?10年…? ひょっとして「空灰」を読んでない漫画好きって結構いるのでは…? もしかしてこの傑作が忘れられてしまう危険性もあるのでは…? と危惧し、ここに改めて紹介するものです まずは作者の阿部共実先生の話をしましょう 阿部先生は週刊少年チャンピオンでデビューした漫画家です デビュー作は「破壊症候群」 タイトルはヤバいですが、内容は、ポップで明るいアクションです。「斬り介とジョニー四百九十九人斬り」をポップにした感じ、というか この作品は短編集(大好きが虫はタダシくんの)に収録されています ちなみに、阿部先生は、昔はブログで漫画を発表しており、 短編集表題作の「大好きが虫はタダシくんの」は、 そこに掲載されていた作品でした 以下のアーカイブから辿れます https://web.archive.org/web/20120915070936/http://blog.livedoor.jp/ikaruga99999/ その後、週刊少年チャンピオンで始まった連載が、「空が灰色だから」です 最初は短期集中連載だったのですが(3話まで)、 その後本格連載になりました 基本的には、連作短編集です 決まった主人公やキャラクターはほとんどおらず、毎回、異なる話が描かれます 女の子が主人公の話が多いです コメディのこともあるし、ホラーのこともあるし、恋愛要素もあったり、なんだかよく分からない話もあります しかしまぁ、やはりこの作品の魅力は何といっても、このキャッチーな絵柄で描き出される地獄でしょう 心の柔らかな部分、忘れていた学生の頃の あの感情を的確にエグってくる作品群がとにかく印象的です 具体的には以下の話ですね ・ 9話 夏がはじまる(1巻) ・ 18話 信じていた(2巻) ・ 27話 4年2組熱血きらら先生(3巻) ・ 35話 別に大丈夫やけどな(3巻) ・ 45話 名乗る名もない(4巻) ・ 最終話 歩み(5巻) それ以外にも私は以下の話が好きです ・ 2話 お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い(1巻) この話を読んでこの作品の虜になりました 試し読みできるよ! https://www.akitashoten.co.jp/comics/425321715X ・ 12話 ガガスバンダス(1巻) 不思議系の話でありながら、無限に読み込んで考察できるのがたまらない 「おばあちゃん」を「ランドセル」で炊いてガガスバンダス ・ 17話 こわいものみたさ(2巻) とれちゃった ・ 21話 こんなにたくさんの話したいことがある(2巻) イメージの洪水から「星なんてひとつもなくて」に繋がるのが美しい ・ 22話 ニッポン嗚呼、人情カツアゲ傷害ウルトララプソディ(2巻) 漫才みたいでありながらホラーで落とす手法の見事さ ・ 29話 少女の異常な普通(3巻) その二面性は普通じゃないよ!…いや、よく考えたら普通か? ・ 36話 ただ、ひとりでも仲間がよしい(3巻) 今でもたまに「きょう気」という表現使ってます ・ 39話 世界一我侭な私から世界一ブスなお前に(4巻) 泣ける ・ 40話 マシンガン娘のゆうつつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつ(4巻) 最終頁、セリフのないコマが怖すぎる これも試し読みできます https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253217184 ・ 55話 さいこうのプレゼント(5巻) これは別途コメ欄に 試し読みできますのでまずはこちらをドウゾ https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253217192 ・ 57話 マルラマルシーマルー(5巻) トランシーバー効果でもいいと思いますよ 連載は約1年、後半はややテンションが落ちてきたようにも思いますが、最後の最後にこれでもかという話をぶちこんで(「歩み」)、見事に全5巻で完結しました 週刊連載とは思えないほどのクオリティで、本当に毎週楽しみに読んでいたものです 試し読みをいくつか貼りましたので、読んだことがない人はまずはそちらから! チャンピオンクロスでもかなり読めると思います なお、このあとに発表した「ちーちゃんはちょっと足りない」も大傑作でした こちらは「このマンガがすごい!」で1位をとった作品でもあります なお以下の画像は、好きな話には挙げていないけど好きなコマ

対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~

「対ありでした」6巻について"語"るゼ…!

対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~
toyoneko
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「対ありでした」は、フラッパー連載中の「お嬢様が格闘ゲームをする」系漫画です 「ゲーミングお嬢様」と同種の漫画ですね! ほぼ同時期に連載開始した両作品ですが、「ゲーミングお嬢様」はコメディ色が強く、「対ありでした」は百合要素が強い、という感じで、それぞれ特色を持っており、読者層も異なるものだったように思います 当時、私は、「ゲーミングお嬢様」の方が好みでした …と思っていたのですが、あるとき、ふとフラッパーを読んでいると、 「対ありでした」の30話が目に飛び込んできました そこには、私の知っている「対ありでした」とは、異なる漫画がありました 30話のストーリーというのは、主人公の「白百合さま」が格ゲーの大会に出て、怒り顔の幼女と熱いバトルを繰り広げる、というものなのですが、何というかものすごーく熱血!な漫画と化していました お前…百合漫画じゃなかったのか…? 30話にあらわれるセリフを抜粋します 「"ここが強い"と明確に言えるってことは」「"対策できる"ってことやろ」 「"ようわからんけど強い"は」「"究極"…!」 「"獣"」「"獣"を"解放"しやがった」 「闘争本能という名の獣」 「まるで"世界中"に」「"響"きそーな台パンじゃん?」 「馴れ合ってる奴らなんかに負けるわけない」 「というような考えは一旦」「捨てる」「お前を認める」 「お前に勝つために」「お前を認める」 「あと少し」「もてば」「いい…」 「私のすべてをお前にぶつける」 「パナしたァーーーッッ」 なお、添付画像は「"獣"を"解放"しやがった」のシーン これを見てもらえば分かるように、文法的には完全にバトル漫画なんですよね 又は熱血スポーツ漫画。スラムダンクとか灼熱カバディに近い しかも、ものすごくクオリティが高い そして、「対ありでした」の6巻は、 1巻丸ごと、「白百合さまVS幼女(通称「メスガキさん)」のバトルなのです! 戦闘シーンはカッコいいし、 心情描写はド派手だし、 セリフ回しはキマってるし、 ギャラリーが解説して大盛り上がりするし、 何言ってるのかよく分からん格ゲー用語もミステリアスでワクワクするし、 全体的に演出がハマりまくっていて、最高です 「なんだかよく分からないけどとにかくカッコいい」の連続! あまりに良すぎて全巻揃えましたが、個人的には6巻がとにかく良すぎます いや、別に、何か特殊なことをやっているわけでは無いんですよ バトル漫画としてみた場合、わりと、「お約束」の積み重ねのようにも思える それなのに、こんなにも面白く読めるのは作者の力量としか言えないところです ということで強くおススメです いきなり6巻から読んでもいいと思います なお、7巻以降も、ちょっと先が読めないストーリが続いており、そちらもおススメです なお、この格ゲーの大会、どう見ても所十三漫画の住民が登場してるのですが(しかもチョイ役ではなく重要キャラ)、なぜか誰もツッコまないんですよね… 画像はコメント欄に添付します

刃牙らへん

バキのレビュー…考えてみたら初めての体験…

刃牙らへん
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正直言うとですね、「バキ道」を最後まで読んで、あぁこれはもうダメかな、と思ったんですよね 連載開始のタイミング的に、「バキ道」は、「鮫島」への追悼の意味もある作品かと思っており、それなりに期待していたんですが、バキの世界観だと、力士との闘いというのは遥か昔に終わっている話でして、まぁ案の定というか、結局、何だかあまり盛り上がりも無く終わった、という印象でした 私は、バキシリーズ大好きですし、チャンピオン読者としてずーっと追っていたシリーズなんですが、チャンピオンの購読をやめて、「バキ道」も読まなくなりました そんな中、ふと漫画喫茶で「バキ道」を最終巻まで全部読んで、あぁこれはもうダメかな、と思ったのです(ついでに、「ゆうえんち」の方が遥かに面白いな、とも) ということで「バキ道」に見切りをつけたのですが、今度は「バキらへん」というヤケクソみたいなタイトルの連載が始まるというので、あぁこれはもう本格的にダメだなと思って、初回からノーチェックでした とはいえ、一応気になって、コミック1巻はとりあえず買ってみたのです そうするとこれが…意外と面白い バキシリーズには、面白い部分と、つまらない部分があります 特に「つまらない部分」は分かりやすくて、 ・ 刃牙の戦い ・ 現実にいそうな「強者」との闘い は、基本的につまらないです(一部例外はある) いや、「グラップラー」の頃の刃牙の戦いは面白かったと思うのですが、SAGAを経験したあたりから刃牙の性格がねじまがっていって、それに加えて非常に強い主人公補正もかかるようようになり、「主人公が出てくるとつまらなくなる」という、不思議な現象が起きるようになり、刃牙の戦いは、つまらなくなりました 現実にいそうな「強者」との戦いは、これも、「グラップラー」の頃は良かったのですが、どんどん強さがエスカレートしてしまい、普通にバキワールドの人間が勝つだけになってからは、つまらなくなりました 「バキ道」なんかはこれにあたると思います(ただ、烈海王ボクシング編とかは、意外と面白かった) いずれにも共通するのは、結果がみえている、ということ 読んでいてのワクワクがありません そのうえで、「バキらへん」ですが、 これは、この「つまらない部分」を排除してるんですね つまり、「バキらへん」は、 ・ 刃牙は(今のところ)戦わない ・ バキワールドの住人同士で戦う という話のようなので、戦いの勝敗が読みにくく、それが面白さに繋がっているように思います まぁバキワールドの住人同士でも優劣関係はあるので、ある程度勝敗予想できますが、それでも充分に面白く仕上がっています バキシリーズを見切ってしまった方には是非お勧めしたい作品です …と言いつつ、まだ2巻までしか出てないので、今後どうなっていくかはまだ不安ですが… なお2巻のハイライトは、ジャックと勇次郎がご飯を食べるシーン(添付)

キン肉マン

キン肉マン初心者講座

キン肉マン
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キン肉マンの完璧超人始祖編アニメが始まりました 大変すばらしい出来なのですが、 キン肉マンって割とハードルが高いので、初心者講座と題して、少し解説します ★ かつて「キン肉マン」が大好きだったけど、新しく再開したこのシリーズは読んでないな…という方へ 読みましょう。というかアニメを見ましょう EDを見るだけでも、どれだけの超クオリティか分かりますので、まずはこちらをドウゾ https://youtu.be/u0dgneH1D_4?si=V5yVPSqqGm1xNiZh あと、昔のねとらぼの記事もよかったので、こちらもドウゾ https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1712/29/news003.html ★ 「キン肉マン」?昔の漫画でしょう。ちょっと気になるけど、よく分からないな…という方へ まずは基礎知識。「キン肉マン」は、黄金期の週刊少年ジャンプに連載された、ヒーローバトル漫画です 一時代を築いた超ヒット作品です。当時の男子小学生はみんな大好きだった(はず) 長期連載の末、大人気のままに完結。コミックは36巻までが発売されました その後、少し時間をあけてプレイボーイにて「キン肉マン二世」が連載されたあと(タイトルどおりの「二世」モノ)、短編集(37巻)が発売されたのち、何と旧シリーズの「キン肉マン」の「続き」がweb連載で始まりました これが「完璧超人始祖編」であり、コミックでいうと38巻~60巻がこれにあたります 「完璧超人始祖編」は、旧シリーズの「キン肉マン」の続きなので、旧シリーズを読んでおくと、とても楽しめます…が、正直言うと、今さら旧シリーズの「キン肉マン」を読むのは、あまりおすすめしません いや、読んでもいいのですが、旧シリーズの「キン肉マン」ってもともとわりと低年齢向けの作品でして、小学生が読む分には良いのですが、マンバ読者が今さら読んだときに面白いかというと、まぁ、たぶん面白くないです というか私も、子どもの頃にアニメを見ていた記憶はあるのですが、漫画は読んでなかったので、大学生の頃に漫画版のキン肉マンを読んだら、「なんかこれはちょっと違うな…」と思って、途中で読むのを辞めたことがあります(その後、相当後になってから再読) とはいえ、全然基礎知識が無い状態で完璧超人始祖編を読んだり、アニメを見るのは、ちょっと勿体ない その場合、とりあえず、完璧超人始祖編(アニメ)の第0話を視聴しておくのが良いかと思います 旧シリーズのストーリーが、比較的わかりやすくまとまっています ただ、少々端折りすぎていて、初めて見る人にはわかりにくいかも その場合、公式が配信している「3分でわかるキン肉マン」シリーズが、 短いながらもかなり詳しくまとまっていて、おすすめです(ただしまだ途中まで) https://youtu.be/-kTkQL7uHP4?si=dXqwHuNCzndwJ0yt 次に、「キン肉マン」の魅力について これはいろんな意見があるところだと思いますし、そもそも、旧シリーズと完璧超人始祖編は、正直言って別物なので、一概には言えないのですが、完璧超人始祖編に限って言うと、私は、扱われているテーマ/関係性そのものが大好きです ・ かつて夢見た理想と現実のギャップ ・ 袂を分かった友人たちとの関係性 ・ 道を違えた師弟の決着 などがテーマとしてガッチリ描かれていて、もうたまりません 「えっ…キン肉マンでこんなテーマを扱うの?」みたいな驚きもありましたし、その描かれ方も、スケール的には壮大でありながらも、登場人物の心の機微は繊細に描かれていて、泣けるんですよね。キン泣きです。凄いことですよコレは 先ほど書いたように、旧シリーズの「キン肉マン」は、低年齢向けです でも、完璧超人始祖編は、低年齢向けではありません いや、低年齢が読んでも面白いとは思うのですが、むしろ、現実を味わった大人が読んでこそ、非常に強く染みる作品なのです だから、「キン肉マンだから」という理由で読まず嫌いしている人にこそ、是非読んで欲しい(ただし前述のようにハードルは高い) あと、最後に注意点 キン肉マンは、「ドラゴンボール」とか「北斗の拳」と同じくジャンプ作品ですが、その大きな特徴として、「戦いは全部プロレス」というのがあります 「キン肉マン」ファンは、これはもう当然のことだと思ってるので、誰も教えてくれませんが、初めて読むとき、これは結構面食らうと思います。というか私は面食らいました。 悪魔とかが攻めてきてるのに、なんでプロレスやってるんだ?と 一応、作中でいろいろ設定はあるのですが、あまり気にしなくていいです そういうものだと思ってください。そういう作品なんです ですので、登場人物は、気功砲とか撃ちませんし、一撃で相手を殺したりもしません(一部例外はある) 基本的に、プロレス技で戦います(ただし人間には不可能な技の場合が多い) 戦いの舞台は全部、リング上です 後楽園とか、東京ドームとかで戦います。荒野で戦ったりもしません というか、荒野で戦う場合でも、荒野にリングが設置されて、そこで戦います 地下からリングがせり上がってきたりします 多対一の戦いとかもありません(タッグ戦はある) あと、観客と実況とレフェリーがいます。パイプ椅子とかあります 何なら煽りVTRとかもあります 決着は、カウントとか、場外とか、そういう感じで決まります。プロレスですからね 以上、キン肉マン初心者講座でした。気になった方は是非この機会に、キン肉マンの世界に触れてみてください あと、「完璧超人始祖編」を最後まで読んだら、「本田鹿の子の本棚」の、この作品も読んでおきましょう https://leedcafe.com/webcomic/%e6%9c%ac%e7%94%b0%e9%b9%bf%e3%81%ae%e5%ad%90%e3%81%ae%e6%9c%ac%e6%a3%9a%e3%80%80%e7%ac%ac46%e8%a9%b1/

徳田虎雄物語 トラオがゆく

超パワフル自伝漫画

徳田虎雄物語 トラオがゆく
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最近、都知事選がありました 私はいわゆる泡沫候補が好きなんですが(又吉イエスとか外山恒一とか)、 いろいろ調べていたところ、「日本インディーズ候補列伝」という 泡沫候補へのインタビューなどをたくさん収録したノンフィクション(又はエッセイ)が存在することを知り (なお作中では「インディーズ候補」という呼び方をしています)、 さっそく購入、少しずつ読み進めていました https://www.amazon.co.jp/dp/B077TJC94J 良い本でした 山口節生、羽柴秀吉など、その筋には有名な人を取り上げてもいますし、 泡沫かと思われたが見事当選してしまった、そのまんま東とか田中康夫とかも取り上げられており、 バラエティに富んだパワフルな候補者たちの話は、読むだけで元気になってきます そして、その中の一人として登場するのが、徳田虎雄です 肩書は「医療法人徳洲会の創設者」 あぁ先日亡くなったということでニュースでやってた人だ、 この人泡沫候補だったのか?と思って読み進めてみると、まぁとんでもない人でした エピソードはこんな感じ ・ 24時間体制の病院を作った ・ 小さな島にも総合病院を作った(徳田虎雄の出身地は鹿児島県の徳之島) ・ 全国各地に100か所以上の病院や診療所を作り、徳洲会を日本最大の医療法人、医療事業グループにした ・ 銀行がお金を貸してくれないので高額な生命保険に入って(最終的には27億3000万円)、受取人を銀行にした ・ 全国に病院を作ろうと思うと医師会の反対があるので、選挙に出て、国会議員になった ・ 自民党に誘われたが、医師会の反対で3日で追い出された ・ 仕方が無いので自分で自由連合という政党をつくり、100人以上の候補者を擁立して、ほとんど落選した ・ 自由連合の候補者は、堀田祐美子(プロレスラー)、佐山サトル(初代タイガーマスク)、山口節生、羽柴秀吉など まぁ泡沫候補といえば泡沫候補なんですが、 やっていることがあまりにも凄すぎて冗談にしか聞こえません。何この人 しかも「トラオがゆく」という自伝漫画を出しているということで、 さっそく買ってみました。それがこの作品です 内容は… とにかく絵も内容も濃い!です 何もかもが濃い 正直、エピソードの繋がりとか変ですし、 ちょっと絵も荒れてますし、 あまり読みやすいタイプの漫画ではないのですが、 込められた情念が強すぎるので読めてしまいます 何度か「生か死かだ!!」みたいなセリフが発せられます(添付) 世の中には、こういうことを言う人は存在します でもほとんどの人は、そんなこと本気では思ってない しかし、どうも徳田虎雄はこれを本気で有言実行しており、 だからこそ、日本一の医療法人グループを作り上げることができたのだと思います 医師会が徳田虎雄のやり方に反対するのも、正直分かるんですよ おそらくほとんどの医師は、患者の生命を救いたいし、そのための努力はしている でも、一方で、普通に休んだりもしたいし、遊んだりしたいとも思っている しかし徳田虎雄は、「生か死か」の精神で、 自分の命すら掛金にして、24時間体制の病院を作り上げ、 理想に向かって邁進し続けている これは怖い。当時、医師会からは徳田虎雄が異常者に見えていたのではないかと思います 「理想」をとるか、「現実」をとるか 私は「現実」をとったので、「理想」をとった徳田虎雄の生き様は、 輝かしいと感じると同時に、負い目をも感じてもしまいます そういうエネルギーに満ちた作品です ちなみに、別の人の作画で、 「明日はいい日だ」「生命だけは平等だ」という自伝漫画も存在するようです(読んでない) 電子版は、kindleにはありませんが、イーブックジャパンなどにはあります