2024年に読み逃していた作品。何かの賞にノミネートされて気になったはずなんだけど、調べても分からなかったので記憶違いかも…。 著者の野原広子さんって「妻が口をきいてくれません」で有名になりましたが、最近では「消えたママ友」が話題になりましたよね。今回の作品は40代女性の最後の恋の話だと聞いたのでキュンキュンするつもりで読んだのですが、やっぱり人間の裏側とかサスペンス要素がありましたね。もしも主人公と自分が同じ年代だったらもっとキュン的に感情移入したかもしれないです。 主人公がマッチングアプリで知り合った男性から約束をすっぽかされたりするのが読んでるだけでしんどかった。でも彼女が出会った最後の恋はそういう風に人間を値踏みするようなものじゃなくて救われました。
タイトルでは「友だち」と名付けられてますが友情よりも人間愛がテーマの短編集ではないでしょうか。掲載誌や時期はバラバラですが性別やセクシャリティを超えて人を愛することが一貫して表現されているように思います。このマンガがすごい!2025でオンナ編3位にランクインした「ボールアンドチェイン」のプロトタイプとも言える短編「サファイア」も収録されていますが、個人的に一番好きなの「キリフィッシュ」ですね。ゲイの男性と女性画家の話ですが読んでいて心が解放されました。南Q太先生が一時的にドイツに移住していた頃の手記も収録されているのでファンは必見の一冊です!
最新話でついに!綾が覚醒をしましたね!エヴァで言うところの覚醒と同じ意味なので心配ではありますが、これから益々タイトル通りの「功罪」っぷりを発揮してくれることでしょう。 ということで単行本を読み返してみました。運動神経だけではなく、身体能力、そして頭脳と、スポーツをする為の全てに恵まれた小学5年生の綾瀬川。U12の日本代表でもエースに選ばれ、他の代表選手からも「俺の世代にはずっとコイツがいるんだ…」と恐れられる程の逸材っぷり。しかし綾瀬川の本心は只々みんなと楽しく野球がしたいだけ。そう、綾本人も自分の才能に傷ついているのです。でも誰もそれを知らない。いてもイガくらいかな? 私は野球に関して全くの無知なんですがそれでもハマるのは、これが「才能」の話だから。やはり圧倒的な才能は人を翻弄するんですよ!!恐ろしやです。 日本代表の並木監督があのまま綾の面倒を見てくれたらよかったけど、このまま足立フェニックスで限界まで投げ続けたらプロになる前に選手生命が絶たれそうで心配ですね。ストーリーの冒頭で何回か高校球児になった綾が出てくるけど「この試合で壊れてもいい…!」と言ってたのが気になる。それがどういう意味なのか。やけっぱちなんだろうか。今のところ理解者になりそうな人が大和しかいないけど、東京と大阪で距離もあるし、大和もプレイヤーになりたそうだし、どうなっちゃうんだろう…。 将来は大谷さんのようになってくれたらいいのにな〜と思うのも綾にとっては大きなお世話なんだよね。とにかくハッピーエンドであってくれ!!と願いながら読んでます。
後書きによると「小学生の出産」というテーマは編集部からの打診だったらしいですね。2003年に休刊したアクションが翌年に復刊する際に、社会派な作品を扱う漫画誌にリニューアルしたい意向が編集部にあったというのを、同時期にモリのアサガオを連載してた郷田マモラ先生のインタビューで読んだばかりでした。 幼馴染とのくっつけあいっこにより無自覚に妊娠してしまった小学5年生の春菜。紆余曲折ありますが最終的には大人に悟られることなくクラスメイト達の力を借りて子供だけで出産します。 この漫画のすごいところは、性愛による妊娠ではないのと大人の目線が排除されることで、純粋に生命の誕生として出産を見られるところですね。途中で産婦人科医が「すべての赤ん坊には後光がさしてるんだ」と語りますが、産んだ後の春菜も輝いてた。そう考えると将来ああいう仕事をするのも納得かな。 担任の先生が革新的な人で、性教育の延長としてジェンダーについて教えようとするんだけど、他の先生から理解を得られなくて失敗するところも当時のリアルだと思いました。
押見修造先生の最新作。新たな代表作である「血の轍」も出身地の群馬県が舞台になっていて実体験がベースにあるような気がしましたが、今作「ひろみ」はよりそれを感じました。ペンタッチがいい意味で力が抜けているのも、頭の中の朧げな記憶をそのまま描き表したい意図があるように思えました。すでに「血の轍」の時点で、研ぎ澄まされた心理描写は誰も真似できない地点にありましたが、押見先生の表現がこれから更に進化することを予感させられますね。物語の展開としてもちろん後編が気になりますが、その前に子供である主人公に罪悪感を植え付けた女教師はマジ許すまじ…!
カラシユニコさんの新作読切だ〜!ますます漫画が面白くなってる! 今回はパソコンが壊れた男の話です。完全に壊れて画面が真っ黒になる前に今まで自分が検索した画面がドドドドと流れてくる不具合が発生。それがまるで走馬灯のようだった。その中にはパソコンを買った7年前、仕事を辞めてフリーランスになった頃に行きたかったタヒチ島の画像が出てきて…。 個人的にはパソコンを人間扱いするリサイクルショップの店員が最高でした!早くまた新連載して欲しいな〜。
原克玄先生のヤンマガ初連載作です。今までの原克玄作品にもエロはありましたがそれはあくまでもギャグとして。今作はとにかくエロ描写に気合いが入っているのでうっかり電車で読むのは危険なくらいです。しかし、ただのエロで終わらせず、人間の愚かさや滑稽さを肯定する人間讃歌になっているところが先生らしいです。1巻のアダム徳永と田代まさしの登場回はまさにそれ。エロを通して人間の奥深さを垣間見ることができます。悲しいことに本誌掲載ではなくWeb連載となってしまいましたが、最新19話が死後に両想いだったと判明する今までにないヒューマンドラマな展開だったので、これからの作品の発展にますます期待が大きくなりました!!
パーキンソン病に効果がある薬があり、それを飲んだら症状が劇的に改善したので本人は病気を自覚するんですが、どこの病院のお医者さんも作者がパーキンソン病だと認めないのが変だった。確かに判定するのが難しい病気らしいですが、正しい病名が付かないと具体的な治療も出来ないし、この期間は本人にとって辛かったと思う。作中では気持ちが弱っていた時期もあったけど、こういった闘病記を描き切るくらい回復されたようでよかった。ただこれを読んだだけでも症状には個人差があることが分かったので、他のパーキンソン病に関する本も読んでみたいと思う。
モリのアサガオを読んでから死刑制度について考えるようになったのですが、死刑制度と切っても切り離せない問題が冤罪ですよね。この「デコちゃんが行く」は袴田巖さんのお姉さんの半生を描いた漫画です。ニュースで報道される袴田事件はどこか対岸の火事のように捉えてしまいますが、この漫画は中学生が読んでも理解できるくらい分かりやすいので、自分に起きた出来事のように考えるきっかけになりました。まず無実の罪で投獄されるなんてあってはならないことです。そして日本では死刑当日に本人に告知されることになっていて、そうした常に明日にも死ぬかもしれない状況下にいることで拘禁症状が出てしまった巖さんの悲痛を思うと胸が張り裂けそうになりました。しかしお姉さんは弟の無実を信じて行動を続けるのです。60年も。けれどもこの漫画を読んで感動したで終わらせてはいけません。もう二度とこんなことが起きないようにするにはどうすればいいかを一人一人が考えることが大事なんだと思いました。
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ ここ数年で打ち切りにガッカリした漫画といえばこれかもしれません。映画監督として落ちこぼれだった主人公のキナコがひょんなことからAVを撮ることになる話です。女性がAV監督になる話だと聞くと身構えてしまう方もいるかもしれませんが、女性らしいエロスとか官能の話ではありません。色気よりもコメディ重視の作品だと私は思っているので、男女共にオススメです!! ・特に好きなところは? 撮影クルーの味噌原さんが代役として男優になる展開が面白すぎるし、最終的に超スペクタクルなAVが完成するところ。 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 完結3巻が出ていない&作者さんがnoteとKindleで続編を描くとおっしゃっていたけど、あれからどうなったんだろう。どこかで移籍連載してくれたら一番いいのにな〜。
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 道原かつみ版の銀河英雄伝説はキルヒアイスのところで終わったと思っていたが、昔の少年キャプテンをしらべていやた続きがあったことを知ったので読んだがなんか中途半端なところで終わっていたな ・特に好きなところは? シェーンコップの日の回。これ原作にあったっけ ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 俺は懐かしい気持ちにはなったが今現在どういう人に進めていいかはわからないな
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ スピンオフのキャラがだんだんマニアックになっていくな。そんなに期待しないで読み始めたが面白い ・特に好きなところは? 2巻の名前を忘れたのを思い出そうとする対決。シリアスとギャグのバランスがちょうどいい ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 「天」を熟読してから読むのがいいと思います
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ だいぶ前に気になって読もうと思っていたがずっと読めていなかったが今回読んでみた。今更だがイリオスの作者と同じなんだな。 ・特に好きなところは? 色々謎があったがある程度回収されていい感じに終わっているところ ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 絶妙に嫌な人間模様などが表現してあり俺は好きかな
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 本棚の読みたいを整理していて見つけたので今回読んでみたが凄い中途半端なところで終わってるな ・特に好きなところは? 2巻の最後。えっ続きないの?って気分になる ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 連載中にあの終わり方だったのかそれとも続きがあるのかが気になるところです
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 最初の数話は面白いがそれ以降は面白い時とそうでもない時が続く ・特に好きなところは? 桑田の父親の送迎のシーンと最終回の李さん一家みたいな終わり方 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! ナニワ金融道が大好きだったらおすすめです
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 連載当時も読んでいたけど、今読み返すと当時わからなかったネタとか今になってわかって面白いな ・特に好きなところは? 一つに絞るとしたら、「呉智英に褒められた漫画家」だな。これに尽きる ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! なんか元ネタが分かりそうなものあるけど単純に楽しむのが一番だと思いますね 43話はなんとも言えん・・・
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 昔読んだことは確実にあるのだがいつも通り内容を完璧に忘れていたのでものすごく楽しめた。ラストシーンに近い「ニヤリ」はもっと大きなコマだった気もするが勘違いかな ・特に好きなところは? いろんな要素が混じり合っているがどれをとっても面白いところだな ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 文庫版でも充分に楽しめると思いますが、こっちのバージョンもぜひ読んでみたいところです。 https://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=68326575
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ これももう何回も読んでいて読んでいる時は最高に楽しくて読み終えた瞬間にやっぱり「楳図かずお」はすごいなと思ってしまうマンガだ。錆びたハサミの開始数ページでこれを楽しめるかどうかはわかると思うね。錆びたハサミ、消えた消しゴム、女王蜘蛛の舌、黒い絵本、影亡者のどれが一番好きかと聞かれたら「影亡者」かな ・特に好きなところは? 後先考えない子供の残虐性が出ているところ。「これは夢だから殺す」とかね。 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! これを読むのがいいと思います。まさにこれ https://manba.co.jp/topics/17226
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ 最初から不穏な感じがしていたけど最後までなんとも言えんかったな ・特に好きなところは? 度々出てくる後悔の表現 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! このタイプのマンガは好きなのだが一概に面白いとはいいにくいね 本宮ひろ志の「白い夏の日」を思い出したよ
・読んだ直後に思ったこと ※一番大事!※ もう何回も読んでるが毎回面白い。安定して面白いというのではなく毎回新鮮な気持ちで楽しんでる。テーマ性とか時代性とか考えればキリがないが、今回は楳図かずおのラブコメというのを意識して読んだ。 この記事を参照 https://manba.co.jp/manba_magazines/22572 ・特に好きなところは? 奇蹟は 誰にでも 一度おきるだが おきたことには誰も気がつかない ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! なんかものすごいものを読みたい気持ちになりたい時に読むのがおすすめですがこれ以上になんかすごいものを読みたい場合のこれを読んだ後に難度が上がりすぎるのが難点。
※ネタバレを含むクチコミです。
ちっぽけな組に過ぎない黒須組に、ある日白竜の異名を持つ若頭が台頭してからあれよあれよと裏社会で頭角を現していく、揉め事の解決は暴力やダーティーな手段だったりの、良くも悪くも普通のヤクザ漫画。 …だったのは初期の話、天王寺大氏が実際の事件を広げたネタを扱う事も多かったので、ゴルゴ13のような「実はあの事件の裏には白竜が関与していた!」オチのネタが結構あったりする。 シリーズ後半ではその手のネタが増えて行くが、この第一シリーズである無印は比較的そういうネタは薄め、なんだかんだ危険な香り漂う裏社会でのし上がっていく姿は正直ワクワクする部分も有り、強引すぎたりアレな解決も「こまけえことはいいんだよ!」の精神で十分楽しめる。 …後のシリーズでは陰謀論を加速させかねない色々と不幸で幸運な現実に見舞われたりしてるけど、それも割り切れば作品の魅力。 組のメンツも少人数な分、上も下も描きやすいのか、若頭主人公だが下っ端から組長まで交流があり、それなりにキャラを立たせつつキャラ被りも無しと、今見ると設定時点でなかなか秀逸。 ヤクザ漫画としては、シノギの描写が意外と広く、これもまた第2シリーズ以降の時事ネタを扱うのに違和感が無い要因だろうけど、解決手段はシンプルに非合法だったりで「できるか んなもん!」な、描写がてんこ盛りで、これをツッコミどころとするか、展開が早くて良いとできるかで面白いと感じられるかは分かれそうな気がする。 とはいえシリーズ累計で100巻以上を成し遂げてしまってるように、こういう作品が好きな男自体はなんだかんだ根強く存在している事も実感するが。 実際のあれこれをネタにしている部分とか、多々あるツッコミどころにせよ、素直に名作と認めたくはないが読んでて楽しい部分も有るのは確か。 作風が完全に確立したのは第2シリーズのLEGENDだが、その移り変わりも含めタバコと酒臭さが似合う漫画ゴラクの象徴の一つ。
可愛い女の子が底辺おじさんがハマるような趣味をやってるという、最近の流行である作風なのだが 「食」という生活に密着してハードルの低い分野で、注意書きも一切無いので正直恐怖の方が勝る。 自分も結構食べる方だが、30越えてからは多少なりとも控えめになったが、21で運動量も少ない女性がこんなん10年後に一気に来るというのが容易に想像できてしまう。 ハッキリ言えばもちづきさんがやっているのは「緩やかな自殺」レベルの暴食なので、ここまで来てるとむしろ中年男性がやってる方が遠慮なく笑える。 ひでえ事言ってるけど、「中年男性の自殺姿は笑えても、かわいい女の子の自殺姿を見て笑うことはできない」のだ。 とはいえ暴食に心を囚われ不健康な生活を送ってる人にとって、ここまでではないにしても己を顧みる切っ掛けになりえる狂った生活描写は見事で、逆説的に食事に対する節制や再考を推奨していると言えなくもない。 そういう方向性ならむしろ吾妻ひでお氏のアル中病棟のように、数年後に作者が死亡するか、もちづきさんが入院して暴食を強制的に楽しめない終わりが似合うだろうけど、流石にそんなもん見たくないので、どういう終わりを迎えるのかすごく気になってる。
鳥山先生の全てはこの作品に詰まっています。 本当はいっぱい書きたいこともあるんですが、今、何を書いてもきっと本当のこの作品の面白さを伝えることもできないと思います。 ただ、人間のかっこよさも醜さもワクワクするデザインも、全てが鳥山明という漫画家の作家性の全てが発揮されています。 どうか一度でいいので余計な事を考えずにお読みください。
地球とは異なる惑星で暮らす、奴隷民族であるイコル、支配民族であるカーマ、そして先住民にしてタイトルのイムリ、これらの戦争が描かれていくのだが、 三民族それぞれの文化、いわゆる魔法に相当する技術、支配種族の権力闘争、逆転に次ぐ逆転が続く展開、とにかく徹底して「世界」のディテールが細かく濃い。 ハッキリ言ってこのディテールの細かさは間違いなく人を選ぶ。 巻末で登場人物紹介や用語解説が掲載されているが、独自用語で耳慣れない単語が多いもんだから、別ウインドウ表示か小冊子にして読みながら確認させてくれと言いたくなるし、世界設定の説明や大まかな登場人物紹介と序章に当たるストーリーに3巻を費やしていので、ストーリーが動き出すまでも遅く、正直序盤はじれったい。 しかしほとんど説明なのにめちゃくちゃ中身が濃いし、後から見るとこれでも足りないくらいで、スケールのデカさに戦慄する。 最低3巻読まないと殆どストーリーが動かないという展開の遅さなのに、一度物語が動き始めてからは息をもつかせぬ急展開の連続で、疲労感すら漂う重い展開の嵐だが、ある種の絶叫マシンに乗ったような気持ちよさもあり、それぞれの戦いの方法も見応えがあり、胸を打つ場面も多い。 序盤の展開の遅さとオリジナリティの高さ故の入りにくさはあるが、描かれていく世界史と陰謀、英雄譚に和平は非常に読みごたえがあり、間違いなくハマれる人はハマれるタイプの作品。
17世紀の海賊の航海日誌を膨らませた「事実を基にしたフィクション」の伝記漫画なのだが、とても素晴らしい。 昔の学習漫画のようなシンプル絵柄だが、当時の海賊という事情からも病気や戦闘などのともすればグロテスクな部分も読みやすく、またダンピアも実年齢より若々しく感情移入がしやすいし、異常なまでの参考資料から読み取ったであろう先住民や欧州、東南アジアなど各々の文化を、しっかり漫画に落とし込み、題材となった人物をしっかり主人公として魅力的に描くのは相当な筆力を感じる。 英国生まれの青年ダンピアは、貧困と教育を軽んじる当時の価値観から大学に通えず、紆余曲折の果て、はみ出し者だらけの海賊船に流れ着いた、当初は悲観していたが、誰も知らない事の発見者になれる喜びを噛みしめ、未だ未知なる事に溢れた太平洋の冒険に胸を躍らせる。 当時航海も盛んになっていたとはいえ、人々にとっては日々を生きるのが精一杯というのは珍しくもないだろうし、ダンピアのような青年はきっと多かっただろうけど、どんな状況にあろうと好奇心と探求心に満ち溢れ、恐れず行動し、海賊というヤクザ稼業をすらチャンスとして学ぶダンピアが実に魅力的。 「おいしい冒険」の名の通り、食事に関する描写が豊富だが、当時誰も食べたことの無い未知の食材を調理するその風景は、その航路からも正に「先駆者であることの歓喜と偉大さ」を訴えかけてくる。 しかし食事だけでなく、授業料の無いフィールドワーク、税金にせよ犯罪にせよ許され、実力勝負故に人種差別の薄い海賊という職業、それらもひっくるめてのダンピアの「おいしい冒険」であるのも面白い。 危険に溢れた海賊稼業が「おいしい」と言えるかは人によるだろうけど、職業選択の自由もない時代で、海賊以上に劣悪な環境の海軍の事情なども併せて語っているのでダンピア達にとっては正においしい冒険だったのだというのが伝わってくる。 教科書には載らなくとも歴史を彩る偉人の生涯を実に魅力的に描いていて、とても良い読後感を得られる名作。
小学五年生で運動に異常な才能を持つが心はエンジョイ勢な主人公が、野球と出会う事で巻き起こしてしまう波乱とドラマなのだが、滅茶苦茶梶原一騎作品の様な雰囲気がある。 物理法則こそねじ曲がっていないのだが、主人公が競技をやるのが競技が好きで自発的というより、周囲に才能を見込まれ運命というか半ば強制的に競技をすることになってたり、主人公が強すぎて勝負という形にはなってないのだが、競技よりもそこから生じる人間ドラマの方を主軸としてたり、全体的に漂う陰鬱で重い悲劇的な雰囲気は、かなりあしたのジョーや巨人の星とかの60年代スポ根ドラマに通じるものがある。 とはいっても、基本的にキャラデザはイケメン少年で、物理法則が現実そのものという点でやはり現代スポーツ漫画らしい部分も多い。 ただそういうストーリーの為とはいえ、主人公である綾瀬川の運動能力が完全に人間離れしていて、受け入れられるよう慎重に書いているにせよ、もはやゲームやギャグ漫画に片足突っ込んでるレベルで尋常ではなく、冷める人も相当居そうに思う。 しかしそういう並外れた才能だからこそ、勝負を通じたスポーツマンシップの美しさの裏にある残酷さ、才能に振り回される大人も含めた周囲、エンジョイ勢とガチ勢の溝などと言ったストーリーが映える部分も多く、特にその才能に魅せられてしまう大人というのは野球という競技と、主人公の圧倒的な運動能力から強烈な生々しさが漂っている。 主人公以外のキャラも弱小チームにせよ強豪チームにせよ、それぞれの年齢や居場所に合わせたメンタリティをしているために抱く苦悩も描かれているが、主人公自身もその能力の高さゆえに馴染めない苦悩も描かれていて、強烈な負の面白さが出ている。 この手の「才能により歪んでしまう」スポーツ漫画としては黒子のバスケとかが記憶に新しいが、そういう才能が複数人居たお陰でバトル漫画的になっていたあちらに比べると、たった一人だけそういう才能を持っている事により周りが一般人である分、その人間ドラマが際立っている。 プロトタイプに当たる読み切り(高校・プロ年代)も幾つか存在するが、こちらはあくまでプロトタイプとして別物と思っていて、こちらで描かれた未来に収束するかは未知数。 野球を題材としてはいるが、才能により才能の持ち主も含め全てが振り回されるドラマは非常に生々しくも強烈で面白い。 幸か不幸か大谷翔平という、一昔前なら漫画でしかありえなかった活躍をする人間が現れていて、ギリギリでリアルとファンタジーのバランスはとれているように思うが、主人公が本当にゲームかギャグ漫画並に突出した運動能力があるので、ココで脱落する人もいるように思う。
誰もが魔法を使える世界で、唯一魔力を持たないアーサトゥアル国の姫エルナと、戦争中のアンサズ国の王子シャールヴィが出会い、各々の思惑により逃避行に身を投じ、怒り悲しみ成長し、やがて戦争を終わらせようと戦い抜く、超が付くほど真っ当すぎるファンタジー漫画。 固有名詞の多くは北欧神話モチーフだが、内容は独自性が強くしっかりとした世界を描いている。 作者が「女の子が世界を救う物語」を描きたいと思った事もあるだろうが、主人公のエルナは女らしさの塊のような女性で、力は弱く誰もが魔法を使えるこの世界で唯一魔法が使えず、目の前で剣を取らねばならぬ時も戦えず、敵の死にも涙を流し、優しく弱く迷い状況に翻弄され、理想主義的で、正直やきもきするのだが、体内の魔法に反応して強力な殺傷力を発する封魔剣を唯一扱えるという特性と、そうして無力な身から悩み学んだ事から成長し自分の意思を世界に示す姿が実にカッコいい。 もう一人の主人公である王子シャールヴィは、猛々しく雑兵をなぎ倒し、魔法も強く、上の兄王子達に考える事は任せていて、戦争を終わらせるなら母国アンサズの勝利で終わらせるという事がエルナを連れていく動機だったが、戦乱の中でも平和を求め、甘いと感じていたエルナの優しさを目の前で見続け、徐々に彼女を守ろうと命を預け、国ではなく彼女の為に戦う事を決めるなど、良い意味で男らしさの権化である。 この二人が共に世界を巡り、様々な出会いと成長を繰り返し、やがては滅びに向かう世界を救おうと戦いに向かう。 出会う人々も市井の人一人一人に物語が見え隠れして、世界は狭いのだがとても深みがある。 モンスター的な存在は居るが、実際は正真正銘のモンスターは伝説の魔獣くらいで、異形の姿と化した狂戦士も元は人間で、空馬等の架空生物は使役動物であり、あくまで人間の領土を巡る戦争が出発点なのも見応えがあり面白い。 男女問わず読んで欲しい一作、お薦め。
「今年読んでよかったマンガリスト」を作ったときに、今年読んだ読み切りで何が良かったかな…と思いだす中で、真っ先に思い出したのが本作だったんですよね というか、「ゼロ災でいこうっ」のシーンが思い浮かんだ(添付) 衝撃的なシーンでした 大人になっていく中で、飛行機事故を契機に、自分の「核」が創作ではなくなっていたということ(又は、自分の「核」は最初からそんなところにはなかったということ)、そして、現実を前に情熱は失われてしまっていたこと、そのことを自覚する物語 それが、本作に対する私の印象でした …が、読み返してみると、実はそうではなかった だって、主人公は、そのことを自覚しながら、それでも、創作をやめられないから 「他の選択肢がない」という理由で、やはり創作を辞めることができない 別の人生を歩めるなら歩みたいと泣くのに、それでも辞めることができない それどころか、キャロット通信は解散し、仲間もいなくなり、 誰も読んでくれない、読者すらいないのに、辞めることができない 「にもかかわらず…私は…懲りもせず」 「また繰り返す…どうして?」 「なぜ??」 たぶん、このセリフこそが、この作品の核心なのでしょう 主人公にとって、創作は、苦痛なのでしょう でも、主人公の救いは、もはや創作しかない だから、主人公は、創作に向き合い続ける 「赤羽」に登場するペイティさんが、 「やはり創らないと気が狂いそうだから創るってコトですね…」 と言ってました(増補改訂版4巻、ボーナストラック9話)、 「創作」というのは、もともと、そういうものなのかもしれないです あ、ところで、そんなふうに「創作」をやめることのできない綿本おふとん先生ですが、トーチwebで新連載とのこと!みんなで応援しようね! https://x.com/offton_w/status/1873197901478019149
未読者向けに「チー付与」の話をしましょう 知ってますか?「チー付与」。まぁ私も知ったのは最近なのですが… タイトルをみれば分かるとおり、本作は、いわゆる「なろう」系を原作にしています 原作の方は、わりとタイトル通りの内容で、あまり癖はなく、読みやすいです(なお、単行本2巻まで出てますが、未完で、現在も「なろう」連載中) https://ncode.syosetu.com/n7050gs/ 「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」という長いタイトルですが、略して「チー付与」 ところで、「なろう」系のコミカライズには、当たりハズレがあります つまり、技量の高い漫画家さんがコミカライズするか、そうではない漫画家さんがコミカライズするかで、面白さが全然違ってしまうのです たとえば、「絵が上手いか否か」は分かりやすい でも、それだけでなく、同じ文章を原作としていても、それを漫画としてどう落とし込むのか、エピソードの取捨選択、コマ割りや構成を中心とした漫画力の違いなどで、全然違う作品になってしまいます では、本作は? これは、まぁ、「当たり」か「ハズレ」かでというと、おそらく「当たり」です 絵も上手いし、漫画も読みやすい。漫画としての完成度が高い ただ、普通の「当たり」作品は、基本的には原作に忠実にコミカライズします ところが本作は、全然忠実ではないです いや、初期は(比較的)忠実だったのですが、途中から異常な改変が加えられ、結果として、他に類をみない怪作に仕上がっています その結果、一部のマニアにはメチャクチャ好評で、「このマンガがすごい!(2025)」では、オトコ編21位に入りました ストーリーの話をしましょう ただ、これは、基本的にはタイトルのとおりです。「追放」モノですね 剣と魔法のファンタジー異世界が舞台になっていて、「王獣の牙」というギルドに所属する強化付与魔術師(武器とか防具を強化する)が主人公です。名前は「レイン」 彼が、「もうお前はいらない」とギルドから追放されるところから物語が始まります レインは、付与した「強化ポイント」を全部回収し、自分の武器とか防具に付与することで、圧倒的な戦闘力を得ることになり、別のギルド(青の水晶)で活躍を始めます そんな中で、世界の危機に立ち向かったりとか、まぁそういう話 原作と漫画版のストーリーは、いろいろな設定の違いはあるものの、最初の頃は、大筋では一致していました ただ、完全に世界観を壊すような描写がされてから、雲行きが怪しくなってきます 具体的には、燐光竜という強い竜があらわれて、レインらがそいつを倒すのですが、死んだと思った燐光竜が、実はサブマシンガンを隠し持っていて、レインらを射殺しようと画策していたことが分かる、というシーンなのですが…(添付) サブマシンガン? もちろん、剣と魔法のファンタジーにサブマシンガンが存在してよいはずもありません 一応、この時点ではシュールなギャグの一種として処理されたのですが、そのほかにも、平然とパチンコが出てきたりとか、「皇帝の盾」というギルドは「CEO」と呼ばれるギルドマスターがいて、構成員全員が普通にスーツを着ていたりとか、ブラック企業みたいに全員でギルド訓唱和を始めたりとか、どんどん世界観が壊れ始めます まぁこれはもう、そういう作品なんだな、シュールコメディの一種なんだろうと読んでました。この時点では 同時並行で、作品の方向性も変わっていきます 「王獣の牙」には、「グレンダ」という幹部がいて、まぁこいつは死んでしますのですが(ちなみに原作では死なない)、それを契機として、グレンダを慕う一団が王獣の牙を脱退し、反社のような存在になっていきます この集団の代表は、「俺の半分はグレンダでできている」が口癖で、「半分」と名乗っています グレンダを慕う「半分」とその一団は、こう呼ばれるようになりました 「半グレ」 そして、レインの能力を知った「半グレ」は、レインを仲間に取り込もうと画策するようになり、「半グレ」との戦いが始まります ところが、恐ろしいことに、「半グレ」は原作には存在しません(なお、ほかに、「暗殺の母」という人気キャラもいますが、こいつも原作にいない) このあたりで、原作との乖離が決定的になったように思います そして、それなのに、「半グレ」編が圧倒的に面白い 「半グレ」の一団は、かなり戦闘力も高く、「魔法」も使えます すなわち、冒険者は「魔力」を使って戦うのですが、「魔力」は身体強化に使えるほか、それぞれが固有の「魔法」を使って戦います。ただし、どんな「魔法」を持っているかは、切り札なので、みな秘密にしている つまり、「冒険者」同士の戦いは、モンスター相手の戦いとは違って、対人頭脳戦の様相を呈してくるわけです さらにその過程で、魔力と文明の関係が明らかにされたり(先ほど言及したサブマシンガンやパチンコと世界観の関係が(後付けかもしれませんが)説明されます)、レインの付与能力が、「どのような意味で」チートなのかが明らかにされたりとか、世界観や設定がどんどん拡張されていくのです 「半グレ」連中の造形も良くて、こいつらは悪事ばかり働くロクデナシなのですが、友情はすごく大事にしていて、それがどこか魅力的でもあります 作品が進んでいくにつれ、こいつらの性格も見えてきて、どんな魔法を使うのかも分かってきて、そして、だからこその、半グレ編の「あの終わり方」は本当に衝撃的でした(47話) そして、それまで、コメディ寄りだった作風は、半グレ編のなかで、かなりシリアス寄りに変化していきます(…と思ったら、半グレ編が終わった次の話はヤケクソみたいなコメディだった) あと、テーマ的なお話を 本作は、いわゆる「ざまぁ」ではありません。いや、原作はその要素が強いのですが、コミック版は、おそらく敢えて、その要素を排除している その代わりにテーマとなっているのが、「セカンドライフ」です いろいろな事情で、第二の人生に踏み出さざるを得ないということは、多々あります 主人公のレインはそうですし、そのほかの仲間たちも、さらには「王獣の牙」のギルマスですらギルド崩壊後の、第二の人生を踏み出します 因果応報を前提に据えつつも、どのようにセカンドライフを踏み出すのか、第二の人生をどう生きる(べき)かということが、本作のテーマになっているようです 実は、根本では結構まじめな作品なんですね 一方で気になるのは、原作との関係 いや、普通はここまで改変したら原作者は怒るはず(というか許可しないはず)なんですよね ところが本作では、原作者である六志麻あさ先生は、むしろ積極的に本作を応援していて、更新のたびにツイートしてくれます 内心ではちょっと思うところはあるのかもしれませんが、何にせよ、原作者がこんなに堂々と推してくれるなら、読者としても堂々と応援できるというもの なお、さんざん改変の話をしましたが、実は、地味に原作要素は拾っているんですよね… 保持者(ホルダー)、天の遺産(レリクス)、光竜王とか、「この先の原作展開」につなげる要素が拾われていて、大筋は外さないようにしているところが伺えます あと、この漫画家さん、何者なのか?という話 コミカライズを担当した業務用餅先生は、覆面作家。これ以外にどんな作品を書いているのかとか、出自とか、全然明らかになっていません このへん、メタ的に、これがこの漫画家さんの「セカンドライフ」そのものなのかも、という感じもするところです そうすると、その正体を暴くのはヤボな気もしますが、いろいろ調べている人たちもいるので、気になればそちらから探してみてください たとえば以下のスレからとか https://itest.5ch.net/medaka/test/read.cgi/ymag/1692975216 本作は、イカれた怪作でもありますが、同時に、圧倒的な漫画力を誇る名作です 年末年始、ぜひ読んでみてください!
ちほちほ先生は、岩手県宮古市在住の漫画家です 主として日常エッセイ漫画を描いています 私が先生の作品に初めて触れたのは、「好日(前編)」という短編エッセイでした ツイッターで話題になってたのかな…?当時はpixivで読めました 内容は、東日本大震災の話です 宮古市は、津波でかなりの被害を受けた地域。そこにいた人のエッセイ漫画というと、やはり、ものすごくドラマティックなというか、衝撃的なというか、そういうものを、読み手としては期待してしまう でも、そういうものではありませんでした ちほちほ先生の描く震災は、当事者目線でありながら、どこか乾いた感触で、淡々としていて、でもだからこそ、ものすごくリアルだった もちろん、これは、ご自宅も家族も無事だったからこそ、という背景があると思うのですが、それにしても、「震災をこういうふうに描ける」というのは、かなりの衝撃でした 実は私、東日本大震災のときには気仙沼に住んでました 幸いにして、自宅は無事、身内で亡くなった人もいなくて、被災者のような被災者でないような、不思議な立場でした そんな立場の人間の感じる、震災に対する距離感というか、視線というか、そういったものも、見事に描写している作品でした 3.11当日、テレビでは、火の海に包まれた気仙沼の空撮映像を流し、「気仙沼市全滅!」みたいな報道をしていたそうです しかし、現地にいた私は、テレビもうつらないし(停電)、携帯電話も繋がらないし(基地局が潰れた)、仕方ないから、懐中電灯の明かりの中で、自宅で「バイオレンスジャック」を読んでました(でも怖いから10分おきに外に出て津波の様子を確認していた) そして、ああいう災害を経験すると感じるのは、災害と日常は地続きなのだということ そこにははっきりした境は無くて、災害はいつ起きるか分からないし、災害と日常は、実は、同居しうるものであるということ この作品を読むと、そのことも思い出されます ところで、ちほちほ先生は、「好日(前編)」を含む作品群をコミティアで発表していたのですが、その後いろいろあってトーチで賞を貰い、さらにはトーチで連載を持ち、コミックが3冊発売されました。それが本作「みやこまちクロニクル」です 私、「好日(前編)」を読んだあとは、恥ずかしながらちほちほ作品を追ってなかったのですが(『「好日(前編)」は良かったけど、それ以外は読まなくてもいいかな…』とか思ってた)、現在、リイド社の電子書籍がセール中とのことで、せっかくなので全部買って読んでみました 1冊目(震災・日常編)は、コミティアで発表していた作品群の再録。「好日(前編)」もタイトルを変えて収録されています 2009年~2016年まで描かれており、震災の話、復興の話、そしてその中での日常が描かれます 2冊目と3冊目はトーチ連載分。「コロナ禍/介護編」「父ありき編」です 2019年~2023年まで描かれています。内容は、主として、親の話。ちほちほ先生は、両親と同居して暮らしているのですが、特に父親について、介護が必要になって、次第に、状態が悪くなっていく描写が描かれます 正直、かなり重い話です でも、不思議と暗くはない。また、やはり描き方は淡々としているので、比較的あっさり読めてします でも実は激重なので、読んでいると、気づかない間に、どんどん心が重くなっていく 変な例えですが、「軽く飲めるのにアルコール度数高いお酒」みたいな作品…というか また、これは私の個人的な問題なのかもしれませんが、非常に強く感情移入できてしまう ちほちほ先生と自分は、きっと、似た感性をしているのだろうなとか、私も同じ状況に置かれたら、きっと私もちほちほ先生のように感じるんだろうなとか、そんな気持ちになってくるのです 思考がトレースできるとか、人生を追体験できるとまで言うと大げさですが、それにしても、あまりにも強く共感しすぎてしまう 作中で、登場人物(特に親)が、強めの訛りを使うのもポイントですね。私も岩手出身なので、登場人物が、何を言っているか、どういうアクセントなのか、はっきりわかってしまう。ちょっと、リアルすぎる 私は、結局、東北を離れ、今は関東で暮らしています この作品を読んでいると、これは、「もし自分が東北に残ったら」という、ifの物語なのかもしれない、とも思えてきて、他人事とは思えなくなってしまうのです あと、うちの親はまだ元気ですが、将来の親との関係も考えなくちゃいけないなとか、そういうことも考えさせれました。まぁこれを言い出すと今度は「父を焼く」の話になるのですが、ここでは触れません 何を言いたいのかというか、この作品は傑作だということです 「好日(前編)」だけでも傑作だったのですが、「コロナ渦/介護編」「父ありき編」は、別ベクトルで傑作です そして、この作品は、私にとっては、忘れられない作品になりました 3巻の「続き」はまだ描かれていないようです。続きを読める日を待ち続けたいと思います
まずはこちらのツイートをご覧ください https://x.com/sleepfool/status/1834185604302864508 私のタイムラインにこの投稿が流れてきてですね 何だこれは、素晴らしい作品だ、ぜひ読まなければならない!と感銘を受け、即購入したのが本作「母性天使マザカルカノン」です(この画像は55話の一部。2巻に収録) 本作は、エッチな漫画雑誌(ホットミルク)に載っている、エッチじゃないコメディです エッチな漫画雑誌に載っているエッチなじゃないコメディの中には、わりと有名な作品もあります Gヒコロウ先生の作品とか、道満晴明先生の作品とか、ゲノムとか、ギニャーズとか、火鳥先生の作品とか、櫻井エネルギー先生の作品とか、縁山先生の作品とか、私が思いつくだけでもいろいろ こういう、エッチな漫画雑誌に載っているエッチなじゃないコメディには、やたらと破壊力が大きい作品もあって、先ほど挙げた作品群はわりとみんな破壊力が大きいですね 破壊力が大きいというのはどういうことかというと、たとえば一番最初に挙げたツイートの画像は破壊力が大きいです さて、本作「マザカルカノン」のストーリーは、小学生女子である城ケ崎花音(8さい)が、迷える(顔の濃い)オッサンたちの悩みを解決するため、母性天使マザカルカノンに変身して活躍する!というものです 1話あたりわずか4頁というスピード感(コミック1冊あたり30話収録)とテンションの高さが魅力! 途中でキャラが強めの漫画家(準レギュラー)が出てきてからは(11話)、変な方向にさらにテンションが高くなり、お絵かきのスピードをアップする話(16話)、10連休の話(20話)、コアマガジン社の話(22話)、30歳になる話(30話)とか、ヤバくてテンションの高い話がどんどん増えていきます(以上は1巻収録) 2巻になってからヤバさはさらに加速し、コミケに行く話(31話)、エビをさばく動画を撮影する話(32話)、いいねの数だけ腕立て伏せする話(34話)、またコアマガジン社に行く話(55話)を筆頭に、酒を飲んでストーリーを考えたとしか思えないようなお話が目白押し!になります テンション高めのヤバいギャグを読みたい人におすすめです 画像は、10連休の話の一部
気づいたら「空が灰色だから」の最終巻が出てから10年以上が経っているんですよ えっ…?10年…? ひょっとして「空灰」を読んでない漫画好きって結構いるのでは…? もしかしてこの傑作が忘れられてしまう危険性もあるのでは…? と危惧し、ここに改めて紹介するものです まずは作者の阿部共実先生の話をしましょう 阿部先生は週刊少年チャンピオンでデビューした漫画家です デビュー作は「破壊症候群」 タイトルはヤバいですが、内容は、ポップで明るいアクションです。「斬り介とジョニー四百九十九人斬り」をポップにした感じ、というか この作品は短編集(大好きが虫はタダシくんの)に収録されています ちなみに、阿部先生は、昔はブログで漫画を発表しており、 短編集表題作の「大好きが虫はタダシくんの」は、 そこに掲載されていた作品でした 以下のアーカイブから辿れます https://web.archive.org/web/20120915070936/http://blog.livedoor.jp/ikaruga99999/ その後、週刊少年チャンピオンで始まった連載が、「空が灰色だから」です 最初は短期集中連載だったのですが(3話まで)、 その後本格連載になりました 基本的には、連作短編集です 決まった主人公やキャラクターはほとんどおらず、毎回、異なる話が描かれます 女の子が主人公の話が多いです コメディのこともあるし、ホラーのこともあるし、恋愛要素もあったり、なんだかよく分からない話もあります しかしまぁ、やはりこの作品の魅力は何といっても、このキャッチーな絵柄で描き出される地獄でしょう 心の柔らかな部分、忘れていた学生の頃の あの感情を的確にエグってくる作品群がとにかく印象的です 具体的には以下の話ですね ・ 9話 夏がはじまる(1巻) ・ 18話 信じていた(2巻) ・ 27話 4年2組熱血きらら先生(3巻) ・ 35話 別に大丈夫やけどな(3巻) ・ 45話 名乗る名もない(4巻) ・ 最終話 歩み(5巻) それ以外にも私は以下の話が好きです ・ 2話 お前は私を大嫌いなお前が大嫌いな私が大嫌い(1巻) この話を読んでこの作品の虜になりました 試し読みできるよ! https://www.akitashoten.co.jp/comics/425321715X ・ 12話 ガガスバンダス(1巻) 不思議系の話でありながら、無限に読み込んで考察できるのがたまらない 「おばあちゃん」を「ランドセル」で炊いてガガスバンダス ・ 17話 こわいものみたさ(2巻) とれちゃった ・ 21話 こんなにたくさんの話したいことがある(2巻) イメージの洪水から「星なんてひとつもなくて」に繋がるのが美しい ・ 22話 ニッポン嗚呼、人情カツアゲ傷害ウルトララプソディ(2巻) 漫才みたいでありながらホラーで落とす手法の見事さ ・ 29話 少女の異常な普通(3巻) その二面性は普通じゃないよ!…いや、よく考えたら普通か? ・ 36話 ただ、ひとりでも仲間がよしい(3巻) 今でもたまに「きょう気」という表現使ってます ・ 39話 世界一我侭な私から世界一ブスなお前に(4巻) 泣ける ・ 40話 マシンガン娘のゆうつつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつ(4巻) 最終頁、セリフのないコマが怖すぎる これも試し読みできます https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253217184 ・ 55話 さいこうのプレゼント(5巻) これは別途コメ欄に 試し読みできますのでまずはこちらをドウゾ https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253217192 ・ 57話 マルラマルシーマルー(5巻) トランシーバー効果でもいいと思いますよ 連載は約1年、後半はややテンションが落ちてきたようにも思いますが、最後の最後にこれでもかという話をぶちこんで(「歩み」)、見事に全5巻で完結しました 週刊連載とは思えないほどのクオリティで、本当に毎週楽しみに読んでいたものです 試し読みをいくつか貼りましたので、読んだことがない人はまずはそちらから! チャンピオンクロスでもかなり読めると思います なお、このあとに発表した「ちーちゃんはちょっと足りない」も大傑作でした こちらは「このマンガがすごい!」で1位をとった作品でもあります なお以下の画像は、好きな話には挙げていないけど好きなコマ
「対ありでした」は、フラッパー連載中の「お嬢様が格闘ゲームをする」系漫画です 「ゲーミングお嬢様」と同種の漫画ですね! ほぼ同時期に連載開始した両作品ですが、「ゲーミングお嬢様」はコメディ色が強く、「対ありでした」は百合要素が強い、という感じで、それぞれ特色を持っており、読者層も異なるものだったように思います 当時、私は、「ゲーミングお嬢様」の方が好みでした …と思っていたのですが、あるとき、ふとフラッパーを読んでいると、 「対ありでした」の30話が目に飛び込んできました そこには、私の知っている「対ありでした」とは、異なる漫画がありました 30話のストーリーというのは、主人公の「白百合さま」が格ゲーの大会に出て、怒り顔の幼女と熱いバトルを繰り広げる、というものなのですが、何というかものすごーく熱血!な漫画と化していました お前…百合漫画じゃなかったのか…? 30話にあらわれるセリフを抜粋します 「"ここが強い"と明確に言えるってことは」「"対策できる"ってことやろ」 「"ようわからんけど強い"は」「"究極"…!」 「"獣"」「"獣"を"解放"しやがった」 「闘争本能という名の獣」 「まるで"世界中"に」「"響"きそーな台パンじゃん?」 「馴れ合ってる奴らなんかに負けるわけない」 「というような考えは一旦」「捨てる」「お前を認める」 「お前に勝つために」「お前を認める」 「あと少し」「もてば」「いい…」 「私のすべてをお前にぶつける」 「パナしたァーーーッッ」 なお、添付画像は「"獣"を"解放"しやがった」のシーン これを見てもらえば分かるように、文法的には完全にバトル漫画なんですよね 又は熱血スポーツ漫画。スラムダンクとか灼熱カバディに近い しかも、ものすごくクオリティが高い そして、「対ありでした」の6巻は、 1巻丸ごと、「白百合さまVS幼女(通称「メスガキさん)」のバトルなのです! 戦闘シーンはカッコいいし、 心情描写はド派手だし、 セリフ回しはキマってるし、 ギャラリーが解説して大盛り上がりするし、 何言ってるのかよく分からん格ゲー用語もミステリアスでワクワクするし、 全体的に演出がハマりまくっていて、最高です 「なんだかよく分からないけどとにかくカッコいい」の連続! あまりに良すぎて全巻揃えましたが、個人的には6巻がとにかく良すぎます いや、別に、何か特殊なことをやっているわけでは無いんですよ バトル漫画としてみた場合、わりと、「お約束」の積み重ねのようにも思える それなのに、こんなにも面白く読めるのは作者の力量としか言えないところです ということで強くおススメです いきなり6巻から読んでもいいと思います なお、7巻以降も、ちょっと先が読めないストーリが続いており、そちらもおススメです なお、この格ゲーの大会、どう見ても所十三漫画の住民が登場してるのですが(しかもチョイ役ではなく重要キャラ)、なぜか誰もツッコまないんですよね… 画像はコメント欄に添付します
正直言うとですね、「バキ道」を最後まで読んで、あぁこれはもうダメかな、と思ったんですよね 連載開始のタイミング的に、「バキ道」は、「鮫島」への追悼の意味もある作品かと思っており、それなりに期待していたんですが、バキの世界観だと、力士との闘いというのは遥か昔に終わっている話でして、まぁ案の定というか、結局、何だかあまり盛り上がりも無く終わった、という印象でした 私は、バキシリーズ大好きですし、チャンピオン読者としてずーっと追っていたシリーズなんですが、チャンピオンの購読をやめて、「バキ道」も読まなくなりました そんな中、ふと漫画喫茶で「バキ道」を最終巻まで全部読んで、あぁこれはもうダメかな、と思ったのです(ついでに、「ゆうえんち」の方が遥かに面白いな、とも) ということで「バキ道」に見切りをつけたのですが、今度は「バキらへん」というヤケクソみたいなタイトルの連載が始まるというので、あぁこれはもう本格的にダメだなと思って、初回からノーチェックでした とはいえ、一応気になって、コミック1巻はとりあえず買ってみたのです そうするとこれが…意外と面白い バキシリーズには、面白い部分と、つまらない部分があります 特に「つまらない部分」は分かりやすくて、 ・ 刃牙の戦い ・ 現実にいそうな「強者」との闘い は、基本的につまらないです(一部例外はある) いや、「グラップラー」の頃の刃牙の戦いは面白かったと思うのですが、SAGAを経験したあたりから刃牙の性格がねじまがっていって、それに加えて非常に強い主人公補正もかかるようようになり、「主人公が出てくるとつまらなくなる」という、不思議な現象が起きるようになり、刃牙の戦いは、つまらなくなりました 現実にいそうな「強者」との戦いは、これも、「グラップラー」の頃は良かったのですが、どんどん強さがエスカレートしてしまい、普通にバキワールドの人間が勝つだけになってからは、つまらなくなりました 「バキ道」なんかはこれにあたると思います(ただ、烈海王ボクシング編とかは、意外と面白かった) いずれにも共通するのは、結果がみえている、ということ 読んでいてのワクワクがありません そのうえで、「バキらへん」ですが、 これは、この「つまらない部分」を排除してるんですね つまり、「バキらへん」は、 ・ 刃牙は(今のところ)戦わない ・ バキワールドの住人同士で戦う という話のようなので、戦いの勝敗が読みにくく、それが面白さに繋がっているように思います まぁバキワールドの住人同士でも優劣関係はあるので、ある程度勝敗予想できますが、それでも充分に面白く仕上がっています バキシリーズを見切ってしまった方には是非お勧めしたい作品です …と言いつつ、まだ2巻までしか出てないので、今後どうなっていくかはまだ不安ですが… なお2巻のハイライトは、ジャックと勇次郎がご飯を食べるシーン(添付)
キン肉マンの完璧超人始祖編アニメが始まりました 大変すばらしい出来なのですが、 キン肉マンって割とハードルが高いので、初心者講座と題して、少し解説します ★ かつて「キン肉マン」が大好きだったけど、新しく再開したこのシリーズは読んでないな…という方へ 読みましょう。というかアニメを見ましょう EDを見るだけでも、どれだけの超クオリティか分かりますので、まずはこちらをドウゾ https://youtu.be/u0dgneH1D_4?si=V5yVPSqqGm1xNiZh あと、昔のねとらぼの記事もよかったので、こちらもドウゾ https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1712/29/news003.html ★ 「キン肉マン」?昔の漫画でしょう。ちょっと気になるけど、よく分からないな…という方へ まずは基礎知識。「キン肉マン」は、黄金期の週刊少年ジャンプに連載された、ヒーローバトル漫画です 一時代を築いた超ヒット作品です。当時の男子小学生はみんな大好きだった(はず) 長期連載の末、大人気のままに完結。コミックは36巻までが発売されました その後、少し時間をあけてプレイボーイにて「キン肉マン二世」が連載されたあと(タイトルどおりの「二世」モノ)、短編集(37巻)が発売されたのち、何と旧シリーズの「キン肉マン」の「続き」がweb連載で始まりました これが「完璧超人始祖編」であり、コミックでいうと38巻~60巻がこれにあたります 「完璧超人始祖編」は、旧シリーズの「キン肉マン」の続きなので、旧シリーズを読んでおくと、とても楽しめます…が、正直言うと、今さら旧シリーズの「キン肉マン」を読むのは、あまりおすすめしません いや、読んでもいいのですが、旧シリーズの「キン肉マン」ってもともとわりと低年齢向けの作品でして、小学生が読む分には良いのですが、マンバ読者が今さら読んだときに面白いかというと、まぁ、たぶん面白くないです というか私も、子どもの頃にアニメを見ていた記憶はあるのですが、漫画は読んでなかったので、大学生の頃に漫画版のキン肉マンを読んだら、「なんかこれはちょっと違うな…」と思って、途中で読むのを辞めたことがあります(その後、相当後になってから再読) とはいえ、全然基礎知識が無い状態で完璧超人始祖編を読んだり、アニメを見るのは、ちょっと勿体ない その場合、とりあえず、完璧超人始祖編(アニメ)の第0話を視聴しておくのが良いかと思います 旧シリーズのストーリーが、比較的わかりやすくまとまっています ただ、少々端折りすぎていて、初めて見る人にはわかりにくいかも その場合、公式が配信している「3分でわかるキン肉マン」シリーズが、 短いながらもかなり詳しくまとまっていて、おすすめです(ただしまだ途中まで) https://youtu.be/-kTkQL7uHP4?si=dXqwHuNCzndwJ0yt 次に、「キン肉マン」の魅力について これはいろんな意見があるところだと思いますし、そもそも、旧シリーズと完璧超人始祖編は、正直言って別物なので、一概には言えないのですが、完璧超人始祖編に限って言うと、私は、扱われているテーマ/関係性そのものが大好きです ・ かつて夢見た理想と現実のギャップ ・ 袂を分かった友人たちとの関係性 ・ 道を違えた師弟の決着 などがテーマとしてガッチリ描かれていて、もうたまりません 「えっ…キン肉マンでこんなテーマを扱うの?」みたいな驚きもありましたし、その描かれ方も、スケール的には壮大でありながらも、登場人物の心の機微は繊細に描かれていて、泣けるんですよね。キン泣きです。凄いことですよコレは 先ほど書いたように、旧シリーズの「キン肉マン」は、低年齢向けです でも、完璧超人始祖編は、低年齢向けではありません いや、低年齢が読んでも面白いとは思うのですが、むしろ、現実を味わった大人が読んでこそ、非常に強く染みる作品なのです だから、「キン肉マンだから」という理由で読まず嫌いしている人にこそ、是非読んで欲しい(ただし前述のようにハードルは高い) あと、最後に注意点 キン肉マンは、「ドラゴンボール」とか「北斗の拳」と同じくジャンプ作品ですが、その大きな特徴として、「戦いは全部プロレス」というのがあります 「キン肉マン」ファンは、これはもう当然のことだと思ってるので、誰も教えてくれませんが、初めて読むとき、これは結構面食らうと思います。というか私は面食らいました。 悪魔とかが攻めてきてるのに、なんでプロレスやってるんだ?と 一応、作中でいろいろ設定はあるのですが、あまり気にしなくていいです そういうものだと思ってください。そういう作品なんです ですので、登場人物は、気功砲とか撃ちませんし、一撃で相手を殺したりもしません(一部例外はある) 基本的に、プロレス技で戦います(ただし人間には不可能な技の場合が多い) 戦いの舞台は全部、リング上です 後楽園とか、東京ドームとかで戦います。荒野で戦ったりもしません というか、荒野で戦う場合でも、荒野にリングが設置されて、そこで戦います 地下からリングがせり上がってきたりします 多対一の戦いとかもありません(タッグ戦はある) あと、観客と実況とレフェリーがいます。パイプ椅子とかあります 何なら煽りVTRとかもあります 決着は、カウントとか、場外とか、そういう感じで決まります。プロレスですからね 以上、キン肉マン初心者講座でした。気になった方は是非この機会に、キン肉マンの世界に触れてみてください あと、「完璧超人始祖編」を最後まで読んだら、「本田鹿の子の本棚」の、この作品も読んでおきましょう https://leedcafe.com/webcomic/%e6%9c%ac%e7%94%b0%e9%b9%bf%e3%81%ae%e5%ad%90%e3%81%ae%e6%9c%ac%e6%a3%9a%e3%80%80%e7%ac%ac46%e8%a9%b1/
最近、都知事選がありました 私はいわゆる泡沫候補が好きなんですが(又吉イエスとか外山恒一とか)、 いろいろ調べていたところ、「日本インディーズ候補列伝」という 泡沫候補へのインタビューなどをたくさん収録したノンフィクション(又はエッセイ)が存在することを知り (なお作中では「インディーズ候補」という呼び方をしています)、 さっそく購入、少しずつ読み進めていました https://www.amazon.co.jp/dp/B077TJC94J 良い本でした 山口節生、羽柴秀吉など、その筋には有名な人を取り上げてもいますし、 泡沫かと思われたが見事当選してしまった、そのまんま東とか田中康夫とかも取り上げられており、 バラエティに富んだパワフルな候補者たちの話は、読むだけで元気になってきます そして、その中の一人として登場するのが、徳田虎雄です 肩書は「医療法人徳洲会の創設者」 あぁ先日亡くなったということでニュースでやってた人だ、 この人泡沫候補だったのか?と思って読み進めてみると、まぁとんでもない人でした エピソードはこんな感じ ・ 24時間体制の病院を作った ・ 小さな島にも総合病院を作った(徳田虎雄の出身地は鹿児島県の徳之島) ・ 全国各地に100か所以上の病院や診療所を作り、徳洲会を日本最大の医療法人、医療事業グループにした ・ 銀行がお金を貸してくれないので高額な生命保険に入って(最終的には27億3000万円)、受取人を銀行にした ・ 全国に病院を作ろうと思うと医師会の反対があるので、選挙に出て、国会議員になった ・ 自民党に誘われたが、医師会の反対で3日で追い出された ・ 仕方が無いので自分で自由連合という政党をつくり、100人以上の候補者を擁立して、ほとんど落選した ・ 自由連合の候補者は、堀田祐美子(プロレスラー)、佐山サトル(初代タイガーマスク)、山口節生、羽柴秀吉など まぁ泡沫候補といえば泡沫候補なんですが、 やっていることがあまりにも凄すぎて冗談にしか聞こえません。何この人 しかも「トラオがゆく」という自伝漫画を出しているということで、 さっそく買ってみました。それがこの作品です 内容は… とにかく絵も内容も濃い!です 何もかもが濃い 正直、エピソードの繋がりとか変ですし、 ちょっと絵も荒れてますし、 あまり読みやすいタイプの漫画ではないのですが、 込められた情念が強すぎるので読めてしまいます 何度か「生か死かだ!!」みたいなセリフが発せられます(添付) 世の中には、こういうことを言う人は存在します でもほとんどの人は、そんなこと本気では思ってない しかし、どうも徳田虎雄はこれを本気で有言実行しており、 だからこそ、日本一の医療法人グループを作り上げることができたのだと思います 医師会が徳田虎雄のやり方に反対するのも、正直分かるんですよ おそらくほとんどの医師は、患者の生命を救いたいし、そのための努力はしている でも、一方で、普通に休んだりもしたいし、遊んだりしたいとも思っている しかし徳田虎雄は、「生か死か」の精神で、 自分の命すら掛金にして、24時間体制の病院を作り上げ、 理想に向かって邁進し続けている これは怖い。当時、医師会からは徳田虎雄が異常者に見えていたのではないかと思います 「理想」をとるか、「現実」をとるか 私は「現実」をとったので、「理想」をとった徳田虎雄の生き様は、 輝かしいと感じると同時に、負い目をも感じてもしまいます そういうエネルギーに満ちた作品です ちなみに、別の人の作画で、 「明日はいい日だ」「生命だけは平等だ」という自伝漫画も存在するようです(読んでない) 電子版は、kindleにはありませんが、イーブックジャパンなどにはあります
社交的な友人のおかげで世界が広がっていく。そして自分なりのカメラレンズの向け方、人物の切り取り方を身につけていく。眩しいほど素直で、恥ずかしげなく人間のまっすぐさを描いたお話。
2巻まで。洋画や洋ゲーで見たような展開、セリフが続いて好きな人は楽しめると思う。タツキフォロワーっぽい絵柄(主に女性キャラ)。
ホラーとラブとコメのバランスがいい塩梅だ。見守っていきたくなる関係性。
オムニバス形式で主人公と街にまつわる話を描きたいというのは分かるんだけど、いかんせんスロースタートであるのとノイズが多すぎて頭に入って来ない。全編通して優しいお話ではある。
世界を巻き込むデカい話と今更!?ホントに!?と思うような厨二設定で姉妹百合をやろうとしており、期待
ゆるふわハードSF。ふわふわなぬいがポストアポカリプス世界を旅したら面白いよね…という話?なのか??分かんない。キュートアグレッション的な方向に行くのかもしれない。
マリコ タマキ・ジリアン タマキのタッグが描く新作。前作「THIS ONE SUMMER」ではティーンが主人公だったが、こちらは成人に上がる年代の女子大学生3人のお話。 やはり、決定的な関係性の変化が起こる…かもしれない!というハラハラの描き方が上手い。 と同時に、舞台となるニューヨークの街並みと、都市の中に放り出された3人のキャラの描き分けが秀逸。赤・青・白の線で描かれる誌面は3人のそれぞれを表しているよう。
表題作は3話で完結。「慕っていた先輩が消えた」ミステリーを後輩が解き明かしていく流れだが、謎の解明=「先輩→自分の矢印への気付き」と「自分→先輩の矢印の自覚」を同時にやっていて、王道で綺麗にまとまっている。美先輩の「琴さん」呼びが萌。 原案が花ゆめ編集部なのはどういうこと?
最初から最後まで舞台が変わらず、登場人物も(ほぼ)2人きり。切実さ、説得力を持った絵。終わり方がカッコいい。
入れ替わって人になった犬の視点、犬になった人間の視点のそれぞれの立場から見た描き方が面白い。犬可愛い〜ってだけじゃなく、犬の世界に事情があって、ペットに対する人間の身勝手さについても、さりげなく気付かせてくれる。ワイド版サイズで100ページちょっとの長さで、こういう本は紙で買って家庭に一冊あると良い。
マンバの新刊ページを眺めていて目に止まり、なんとなく縄文に興味があったので買って読んでみたら非常におもしろかった。縄文遺跡の発掘アルバイトに携わる作者が、考古学関係者や縄文フリークな人々への取材をもとに、最新の考古学的知見を織り交ぜながら、縄文当時の暮らし方を想像力豊かに描いたエッセイマンガ。 1万年も続いた縄文時代の中でも、年代によって文化や生活スタイルの変化だったり、縄文人のに長けているセンスに驚かされる。発掘品から、現代の科学の力で当時の生活がかなり正確に推測できるようになってきたことも解説されていてとても興味深い。作中では学術的な説明が多いものの、堅苦しさを感じさせない構成で読みやすかった。 この作品を読むまで、作者さんのことは全く存じ上げなかったけど、元々コミティアで作品を発表されていた方だそうで、過去の同人作品や書籍なども機会があれば読んでみたい。 ちなみに本屋で購入する際は、マンガ棚に置かれてない可能性が高い(自分が訪れた大型書店では、日本史コーナーに置いてあった)ので、探すのに苦労するかも。
戦国時代を舞台にした、主君に仕える鬼の一族と人間たちの主従の絆を描いた漫画。全3巻完結で、それぞれ主人公が異なるオムニバス形式となっている。話全体はどちらかというと悲劇的で、歴史に消えていった者たちの哀しきストーリーが中心。だが美しい作画で描かれる戦国時代の動乱だったり、華のあるアクションシーンや登場人物たちの巧みな心理描写が相まって、とても心を揺さぶられる場面が多い。それにしても著者の琥狗ハヤテさん、こんなに恰好良い活劇も描けるお人なのか!というのが個人的には良い驚きだった。
人生を変えるスーパーアイテムを販売する「楽園市場」(楽天じゃないよ) が人々の心のスキマを突く、世にも奇妙な短編ストーリー。 アイテムはどれも夢グループで通販してそうなチープな外観でツボだったけど、オチのインパクトは今ひとつだと感じてしまうのは、どうしても「笑ゥせぇるすまん」「Y氏の隣人」などのレジェンド作品と比べてしまうからだろうか。 けっこう見た目の不快な描写が多いのでルッキズムとか気にする人は読まない方が良いです。
・読んだ直後に思ったこと 先入観なしで読んだけど、思った以上に良いマンガだった。「ネコノヒー」みたいな、ゆるい感じを想像してたがダークファンタジーな世界観で驚かされたというか、良い意味で予想を裏切られた作品。 ・特に好きなところは? 一品系の料理マンガかと思いきや、シコちゃんと蓮の関係がどんどん深まっていき、いつの間にかドラマチックな展開に持っていかれる。シリアスな場面でもコミカルな部分を保ち続けている所も好き。 ・作品の応援や未読の方へオススメする一言! 作中に登場する「ヨモツカレー」を始めとした料理には、レシピが掲載されており再現可能。フルカラーなのでイメージもしやすい。一味変わった料理マンガを探している人におすすめ。
名作「ギャラリーフェイク」がなんとフルカラーで縦スクロールになっているだけでも驚きなのに、主人公のフジタを女性化して、悪女設定にするという魔改造がすぎる笑。しかも描いているのが細野不二彦先生ご本人だというのだから、これまたビックリ。恐る恐る読んでみたら、しっかりと「ギャラリーフェイク」らしさがあってこれはこれで良いかも…?
https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。
最近になって、原作を初めて読んでみたけど、めっちゃ良い漫画だった…。想像以上にファンキーで可愛くて、パワフルさがあって驚いた。幼少期に読んでいたらドラえもんくらい夢中になってたと思う。なぜこんな良い漫画が長年封印されてたのか…。70年代生まれの人は、アニメや漫画をリアルタイムで知ってるかと思うけど、自分が物心ついた頃には、テレビ放送はもちろん、本もどこにも無くて(少なくとも自分の周りでは) 「ちびくろさんぼ」と同様、差別的でイケナイからそういう本は置いちゃダメなんだ、と思っていた所がある。2010年からは全集で読めるようになり、さらに2021年に電子化もされて今は読めるハードルは下がった。表現の改訂は最小限に留めているとのことだけど、特に差別的な意識は特に感じられなかった。作品自体が封印されていた期間が20年もあったというのは本当に勿体無いことだ。
マンバ通信の記事きっかけで読んだ。想像以上に異端な酒マンガだった笑 豪快でスケールのデカいシェイクから、美しいカクテルが生み出され、細かなウンチクによって納得させられてしまう説得力がある。あと意外とエロい回が多いのはドカコックと一味違う良さがあった。とにかく最初から最後までボルテージの高い一冊だった。 あと巻末の読切「美獣R(ビジュアル)」は、シラフの状態で読むと、正直どうかしてる漫画としか思えないのだが、バッカスでハイになった感覚を持ってすれば最高のエンタメだと感じるから不思議。
絶対は面白い。 薬屋のひとりごとが大好きなので、似た匂いを感じる。 けど、展開がスローすぎて…脱落しそうかな。2巻は一旦お預けにしよう。
5巻まで読破。 転生悪役令嬢系ではなく、心優しい令嬢が10年間身体をのっとられ、その間悪女が如くの振る舞いをされていた。…が突然、元の身体に戻れた!けど婚約破棄をされるタイミングでもあった…! 何故こんなことになったのか、黒幕は?理由は?を追い求めるミステリー要素が詰まった作品。 5巻までで黒幕も見える展開はさくさく進んで読みやすいです。
婚約破棄ロマンスを読み漁っていたら、こちらに。 タイトルに婚約破棄は入っていますが、そのネタが関われているのは第一話とちょっとぐらいでどちらかと言うと追放×ギャフン系漫画でした。 2巻までは面白かったけど、3巻はかなり駆け足でついていけなかった。 3巻完結です。
第一部のギャフンストーリーは3巻でおわり、4巻からは結婚後の幸せストーリーをベースに事件が起こっていく感じ。 あっさりしているので読みやすいけど、5巻以降読まなくてもいいかな。
自分を卑下しまくる性格がこじらせ、こじらせ…これじゃぁ現実世界ではうまくいかないなぁ、、と若干感情移入できず。 5巻終了時にやっと、呪いみたいな卑屈な性格を乗り越えて、7巻で第一部完!みたいな流れです。 婚約式も無事に終わったし、、 もう続きはいいかな。
4巻まで。 前世が魔王のアビゲイルが突然、追い出されるように政略結婚させられることに。 ボケボケした天然で素直な性格が好感持てる。 でも感情移入はできないので、日常コメディを傍らで見ている気分。 面白いけど次が見たい!!っていう感じではないかな。
2巻でドロップ。 ストーリーの描き方が上手くなくてひきこまれない。 キャラもなんだか微妙なのかな。。 頑張っても読めなかった。
最初、ストーリー展開がブツブツしていて、読み返すことが多かった。 キャラが表面的で感情移入するのに時間がかかるが、7巻あたりでやっと面白くなってきたかな?という感じ。 ラーヴェ様が可愛い❤️ 竜帝との恋は、恋とは言えないような変な感じ。
あーこれ、めっちゃ好きなヤツだ(笑) お互い大切に想っているのに、どこまでいってもかみ合わない双子。うまく意思疎通できなくても、やはり双子だな〜と思える瞬間も多々あって、読んでて妙に微笑ましく感じた。はやく気持ちが通じあえるとイイね!…と思う一方で、もうしばらくこのすれ違いを楽しみたい自分もいる(笑)
冒頭1分くらいでやってくる衝撃シーンにド肝を抜かれ(笑)、その後も畳み掛けるように次々と訪れるド派手な◯に様に、恐怖を感じるというより爆笑してしまった(あ、いい意味でね)。こういうアトラクション的なホラーは嫌いじゃないのよ。まだまだ謎多きひとでちゃんだけど、今後もどんどんブチかましていって欲しいぞ(笑)。
トンデモない勘違い(笑)により、拗らせてしまった両片思いラブコメで「とっとと告っちゃえよ。笑」と何度も突っこみつつ全2巻読了。後半は若干駆け足ぎみだったものの、非常に読みやすく最後まで楽しめた。 マコトはめっちゃイケメン(♀だけど)で中身可愛いし、桔平は細マッチョボディで大型犬っぽい愛嬌があるし、2人とも好感が持てるキャラだったのも良かった。
2巻まで読了。歌も踊りも下手クソなポンコツ地下アイドル[うるみん]と、そんな彼女を一途に推し続けるたった1人のファン[キミヤ]の日常を描いた物語である。 あまりのポンコツっぷり(笑)にダメ出ししながらも大きな愛で推し続ける[キミヤ]と、素直になれず強気な態度だがホントは翻弄されまくっている[うるみん]。…実はこの2人、プライベートでいつバッタリ会ってもおかしくない状況なのだが、そのことにお互いまだ気付いていない。 これからこの関係がどう変化していくのか(…いかないのか?笑)、私も楽しみながら2人の行く末を追いかけていきたい。
読み終わって真っ先に思ったこと。あー今すぐ馬刺しが食べたい!…いやマジで(笑) というか馬刺しだけじゃなく、作中かえでが描く絵が、どれもこれも美味そうで食欲をそそられる。最初は軽いギャグ漫画かと思ったが、実は登場人物の心情やバックボーンが丁寧に描かれており、全1巻ながら読み応えのある良作だった。
まずは一言いわせてくれ…お嬢様、お前チョロ過ぎだろ(笑)!…という訳で、この物語は宇宙人のお嬢様が父親から[スイーツで地球を侵略すること]を命じられ、偵察のために現地のスイーツを食べてみることにした…というトンデモ設定(笑)。作中に登場するのは[シャトレーゼの北海道産バターどら焼き]をはじめとする身近なスイーツばかりで、食べた瞬間のお嬢様の恍惚とした表情と決めゼリフ(笑)は必見だ。
上下巻読了。これぞ等身大の日常をリアルに描いた青春ラブストーリーだ。 ヒロインは明るく元気な女子高生。ある日偶然入ったコンビニで、それまで接点の無かった無口な同級生男子がバイトするのを見かけて声を掛ける。この出来事をきっかけに、2人は週に一度のわずかな時間、クラスメイトに知られる事なく、コンビニで話をするようになるのだ。特に劇的な出来事が起こる訳では無いが、ささいな喜びやドキドキ、時にチクッとした胸の痛みを共有しながら、いつの間にか互いにかけがえの無い存在になってゆき…。田舎町を舞台にした優しい物語で心が温かくなった。
2巻まで読了。この話かなり好きかも…。 男性アイドルおたくのリーマンがイケメンホストと出会って仲良くなる話…というあらすじや、タイトルだけで敬遠するのは勿体ないと思うぞ〜(笑)。これは、環境も立場も性格も全く違う者同士が、少しずつ相手を理解し、友情を深めていく良質な人間ドラマなのだ。
恥ずかしながら“ヴンダーカンマー”という言葉はまったく聞いた事が無く、色々と検索してしまった(笑)。なるほど…標本、絵画、剥製、アクセサリーなど、世界中から集められた怪奇珍品を飾るコレクションルームで「驚異の部屋」と呼ばれ、近世ヨーロッパで流行したものらしい。なかなかに不気味で興味深い。 そんなヤバい代物を、なぜか現代に蘇らせようとする少女が惨殺されるところから物語は始まる。 いったい誰が彼女を殺したのか?まだまだわからない事だらけだが、その謎が解き明かされるとき、彼女が目指していた目的もわかるのだろうか?
漫画家としての作者の実力はここで記述するまでも無い程に圧倒的なのは周知の事実である。しかし、この作品においては、その実力を発揮しきれていない。サスペンスにも関わらずコマ割りが細かくテンポ良く進むため、サスペンスが必要な箇所でなんてこと無い日常の様に進んでいってしまう。ましてや大ゴマにする必要の無い箇所で大ゴマにしてしまっている。絵の造形も不気味な雰囲気が失われギャグのキャラ造形になっている為、ここでもサスペンスが失われる。sinkで出来ていたことが何故出来ていないのだろうか?
現在の大友の絵的な主題は、緻密な世界観を一度構築して、崩壊する様を描くことにある。AKIRAがそうであり、同タイトルの映画ショートピースで江戸という世界観が燃え上がる、スチームボーイでも蒸気機関の世界が崩壊していく。しかしそれはAKIRA以後の話で、それ以前の大友の絵的な主題は昭和を描くことにあった。如何に昭和をリアルに描くか、さらにはそこに生きる末端の人間を描くかが初期の大友克洋である。ページをめくるたびに、昭和に生きていない筈の私が何故か懐かしさを感じてしまう。色気のある線で描かれた風景が昭和の空気や匂いまでも思い起こさせる
例えば、小畑健の様な卓越した絵柄で同じ面白さが獲得できただろうか?もしくは、高橋留美子の様な可愛いらしい絵柄だとどうか?また、萩尾望都の様な豪華絢爛な美しい絵では?はたまた、諫山創の様なバトル漫画でしか機能しないタイプの粗さでは?この作者は確かにまだ、技術は拙いが、どこか主人公の青臭さ満載の行動や表象と、筆者のガサツな青臭さ、技術不足が妙にマッチしていて、(たかだか漫画の絵)にも関わらず、ここまで重苦しい痛みが、紙面を越えて我々の肉体に突き刺さる。内容が重いから苦手などという愚かな感想は置いといて、ここまで重苦しさを線の集積で伝えられるのはしっかりと評価しなければならないのではないだろうか?
この作者は漫画の物語やフリ、サスペンス、盛り上げ、伏線、葛藤などのシーンは退屈と思いながら漫画を読んできたのではと思わされるくらい、バトルシーンしか存在しない。ある意味チェンソーマンよりチェンソーマンしている。とにかく目まぐるしくキャラを取り巻く時間と空間が飛ばされアクションのみに傾倒したような荒ぶるような線が、空間をバトルシーンを物語を歪めていく。 この70年代後半から80年代前半の様な絵柄も漫画史的な愛も感じる。荒削りな部分がまだまだあるが、この段階で連載させた編集者にも感心する。 個人的に好みではないが、近年の中でも最も期待を込めたい作品の一つである。
大友以前、大友以後という言葉が存在する様に、多くの漫画家に影響を与え続けてきたAKIRAだが、それは未だその影響は衰えていない。それは結局のところ少年漫画、青年漫画においてこの漫画の描き込みや、リアリズム、デザインセンス、構図、存在しない背景の描写の技術力に追いついていないからである。確かに大友の絵の影響はあらゆる漫画から腐る程感じるのだが、AKIRAを一つも凌駕してはいない。真似しようとしてどの漫画家も挫折しただけだ。ナルトも攻殻機動隊も亜人も引き画の大ゴマや人間や機械の描写力がAKIRAより簡単である。そして何より誰も大友の絵を真似ても、大友の線の魅力を再現出来ていない。彼の1〜5巻における艷やかで艶めかしい色気漂う線が、この漫画のオリジナリティを保持している。大友の線を細く均一などと表現するのを時々見るが、それは違う。実は細い線の中にも止め跳ね払いが存在する。但し6巻はアニメという線に作家性を出さない媒体を挟んだからか、最早情念すら感じない。前時代の崩壊と新世代による復興というテーマは現在だからこそ読む意味がある様に感じる。
漫画はそもそも荒唐無稽な内容や寓話を簡潔にまとめられた線の集積で、描かれたカリカチュアである。これは日本の漫画の歴史の始まりとして、鳥獣戯画が上げられることからもよく分かる。 今作はニコラ・ド・クレシーの中でも最も軽やかな線の集積で描かれており、情報量の多いバンド・デシネが苦手な人にはこの作品からオススメしたい。 まさに戯画的な動物である主人公が自分の大切な人を探し求め旅をするのだが、愛おしいい展開がテンポ良く進んでいくので、ニコラ・ド・クレシーの異常な絵の上手さを忘れてしまう所である。
アメコミが苦手な人、読み慣れていない人に是非私は、この作品を推薦します。 補足しておくと、アメコミは発行形式が日本とは違い1巻完結であるため、細かいキャラクターの表象表現や大ゴマのバトルシーンがあるわけではないと言っておきます。 では、アメコミの面白さは何なのか?それはどちらかと言うと小説を読んでる感覚に近く、小説に優れた線の快楽が感じられるテンポの良いビジュアルが提示されていく所だと思う。 小説の様な物語をいかに優れた線を描いていくか、 アメコミはキャラで選ぶのでなく、作家で選ぶべきなのです。
斎藤環もそう寄稿しているけれど、3DCGのオブジェクトを使った漫画なので、「絵の巧さ」が即ち構図に集約される。そして、それが端的に現れているのが有名なミームの5億年ボタンの元ネタ「アルバイト」。 この漫画は基本的に、最初に示される哲学的な話題(『ドラえもん』のひみつ道具みたいなネタの一つ程度の意味だけど)の提起や会話、構図まで大変「やかましい」(フルカラーなのもそれを助長する)漫画だけれど、「アルバイト」の謎の空間に於ける贅沢なコマの使い方はそれと対比的でかなり印象に残るし、それが人間的な喜悲劇(記憶が無いならどんな苦心も功績も無意味だし、100万円で分かりきってる苦痛を選ぶ愚かしさ、記憶の無いプロセスを知るとそれを勿体無く感じる、5億年の苦悩を奪われたような感覚など)を示唆している。 基本エログロナンセンスな作品だけれど「5億年ボタン」の元ネタが気になるような人は読んでみたらどうだろうか?
江戸時代は遥かに自由な時代だった。下手人は指紋やDNA、目に見えない血痕や油脂、デジタルデータのような生理的、物理的な物証からすら自由だった、取りも直さず、犯行の証拠の所在は現代に比べると(拷問などは有れど)ずっと内心の自由に委ねられていた。 そして、その自由は放置と表裏一体だった。『佐武と市捕物控』に於いては多くの身障者、精神的な苦悩を抱えた下手人が出てくるが、彼らが福祉や行政に救われる事は殆ど無く、それ故に犯罪に追い込まれる様が一種同情するように描かれている。殺人者らの境遇は人間の業に纏わる必然として江戸の花鳥風月と混然一体と物として映る。 然し、主人公の一人、(松の)市はそのような状況における盲人でありながら剣技、頭脳、人柄、どれをとっても申し分無い傑物として終始活躍し続けている、ある意味迫害や無理解により憎悪と貧窮を募らせ零落するという「自然」に逆らうような人物だ。では、何故他の犯罪者と違って市は差別する社会に対する憎しみなどを乗り越え、あれほどの人物と成れたのか。 この答えは市の心理を追った一遍「刻の祭り」にあるように思える。詰り、粗筋の紹介はここでは省くが、残虐な盗賊として集う身体障碍者に対する叱咤「盗みや人殺しが悪いことじゃない……?笑わせるな!!(中略)あたしだって…、目が見えないことを、笑われたことは何度もある。そりゃあその時はくやしい そいつも盲人にしてやりたいとも思った。し、しかし、…いちいちそんなことをしていたら……、世のなかに五体満足はいなくなっちまう……。苦しむのはあたしたちだけでたくさんだ」に隠されてる。 ここで市は率直に世の中への憎悪を語る。しかるに、その憎悪の炎を自然生成され、自然に他人を傷つけるべき物と彼は捉えていない。即ち、それが自然である以上に「盗みや人殺しはどんな場合でも正義にはなり得ない」と言う社会の掟こそを優先すべきと見做している節があり、それで己を律する事で憎悪の炎と向き合わせる。 そしてその格率が彼の憎悪のはけ口に単なる暴力や略奪ではないより高度な技法や思想に彼を追いやっている、それが市の人格の秘密である(余談であるが、このような精神のプロセスをフロイトは防衛機制の内の昇華と定義した)。これはある意味では精神の枷であるが、昇華により市の身心は飛躍し、憎悪と貧窮と言う自然の漆喰から自由になる事が許されたと言う側面もある、パラドキシカルな物言いだが、人を憎まないと言う倫理的な枷が寧ろ彼を自然のままの運命から解き放ったのだろう。 私はそこに「自由主義者」石ノ森章太郎の姿を見た。彼は、どの作品でも身体の桎梏を抱えながらも自由を希求する主人公を何度も描いてきた。そして彼にとって自由は単に与えられる物ではない、寧ろ人間を縛っているのは環境が影響することは有れその人間の憎悪や強迫観念であり、自由はそれとの内なる煩悶の繰り返しでしかないと言う事を、石ノ森は描いてきたのだ。 然し、それは何処までも己で闘い勝ち取ると言う世界観の称揚な以上、ややもすると現代的な福祉への批判に結び付きかねない。実際『仮面ライダー』では国家と言う概念≒ショッカーと言う公式がこそがライダーより弱者を生存させ得たかもしれないと言うアイロニーで幕を閉じている。そのような描写は常に存在し、『仮面ライダーBlack』でそれは極北に達した。その作品はゴルゴムと言う無形で無限大の、グロテスクなオカルトとナーバスな陰謀論の沼にヒーローを引きずり込んでいった。そこにある種の苛烈さを見出さない事は許されない。 上記を踏まえて幾らか不謹慎な発想をするならば、石ノ森の自由主義は戦後日本のリベラルを超えて、どこか今のシリコンバレーの大物に通底するより徹底した自由主義と一脈通じているのではないか?石ノ森章太郎が政府の調整効果を強く敵視していた訳はないだろうが、作品に於いてはそれに近い不信感や抵抗が見られない事の方がむしろ少ないように感じられる。それは市のような確固とした自己を形作るが、同時に『仮面ライダーBlack』の魔王のような存在に人を変えかねない。そのような可能性の光と影が石ノ森の作品には渦巻いており、その二元論的な世界観が彼の作品の基調となっている部分もあるように思える。尤も、単なる自由主義的なヒーロー像だけでは彼の作品が今でも注目を浴びることは無かっただろう、そのような自由の希求と危惧の狭間でそれでも善を求めて戦い、己を擲つ事さえ時には厭わずが欲を否定せず認める、そのストイックさがあって初めてヒーローが暴力的なイデオロギーの奴隷の身分から解放されること事を石ノ森は知っていた筈だ。 そぞろな文章を長々と書いたが、江戸に仮託した人間の自然状態からの脱却による自由を希求した『佐武と市捕物控』は正しくその自由の希求により確かに石ノ森章太郎的なのだと繰り返してこのレビューを閉じさせていただく。 余談: ・実際読んだのは90年代に出た小学館文庫版と笠倉から出た『縄と石捕物控』の文庫版だ。文庫をかなり探し回り、最終的に通販を使った都合上こっちの方が入手自体は簡単だと鑑み、このバージョンでレビューさせてもらった ・『佐武と市捕物控』に関しては、夏目房之介の文章(「『佐武と市捕物控』―青年マンガの革命児」-『別冊NHK 100分de名著 果てしなき石ノ森章太郎』収録)が大変すばらしかったので一読をお勧めします。正直、「刻の祭り」に着目したのは夏目に倣ったからです。私は同じ主題の描かれた珠玉の掌編として「北風のみち」もおすすめします。 ・このレビューのタイトルは吉田拓郎の『今日までそして明日から』の一節のパロディですが、今気に入ってると言うだけで、大した意味は無いです
「人間が何故泣くのか分かった。俺には涙は流せないが」-『ターミネーター2』 再読して思ったがつくづく不思議な漫画だ。今現在の漫画は『童夢』を一つの里程標として映画的な立体を備えた場面や編集(コマ割)で事件を描きその「アクション」で以てテーマを射影するのであるが、『寄生獣』はそれに比べると余白が多い。ならば、手塚治虫のような捲し立てる戯曲風かと言えば、やはりあの余白やコマの多さを考えるとそうでもない。 モノローグの豊かさや情報の緩急のコントロールは正しく他の作家の系譜と言い切れない、アラン・ムーアやフランク・ミラーとかとは意味が異なるが正しく「グラフィック・ノベル(絵のついた小説)」とでも言うべきものだった。 この作品の「結論」が出るのは恐らく「田村玲子」の死亡からだと思う。田村は一種の心尽くしとして拳銃弾の雨に背を穿たれている最中に、回避、防御され二の次にしながら新一の亡くなった母の顔を模し彼に「不格好でもパラサイトも他人を慮れる」事を示しその心を解し、ミギーを驚愕させる。即ち、パラサイトが「人間味を持てる」事を示したのだが、その反対に市長の広川(パラサイトと共存していない純粋な人間)はディープ・エコロシー(敢えてこう言えば地球と言う自然全体の保護のために人間の淘汰さえ辞さない発想)に基づく、或いはナチス・ドイツさえ彷彿とさせる虐殺と管理を提唱し、人間でありながらパラサイトと誤認される。 要するに、「相手に対する慮り」こそが「人間」の得難い性癖であるが、それは人間の条件や特権ではないと言う事、それを元に環境を考えなければならない事がこの作品のテーマだと思う。 恐らく、最初は広川的なディープ・エコロジーこそが結論だったのかも知れないが、彼の示す如き全体主義を現出させる事に気づき、涙ながらに後藤を殺める新一が新たに象徴として浮き上がったのだろう。 私はこの変遷を見て『ターミネーター2』を思い出した。この映画も「歪な生き物」が現代社会に登場し、人間の過ちや罪深さを浮き彫りしていくのだが、ターミネーターが「命の大切さ」を学んだ事―又はこれを通してサラが未来の為と言って他人を殺める事は出来なかった―で黙示録を回避できるのではないかと言った希望が紡がれる所で終わる。 広川やスカイネット的な計画と管理ではなくこの「感情」を軸にした他者へのシンパシー、自己の尊重こそが世界的な終末を避けると言う結論はあるいは失敗するかもしれないが、岩明やキャメロンのようにそれに賭けるべきなのかもしれない。その面でもいい漫画だと思う。 P.s 投稿より約9時間後、「「相手に対する慮り」こそが「人間」の得難い性癖であるが、それは人間の条件や特権ではないと言う事」、「広川やスカイネット的な~」との文言を追加、編集
絵柄がアニメにも原作にも似てない、細い線だったから新鮮だった(これがデビュー作だというのだから驚く)。 話の展開的には軍人だったなコイツらと言ったカッコよさと『ケロロ』らしいコミカルさがあったが、冒頭で日向家が接収されてフェードアウトしてしまった辺りで家やノスタルジー(記憶)と家族を重視する吉崎観音とは決定的に違うなと感じた。 この漫画終盤と本編で活劇「ケロロとフユキ…」のシリーズが始まっていて、ベテランと新人がアクションシーンで競い合ってる形になってる風でちょっと笑った
ユングの集合的無意識とそれによる成長、挫折というのが教科書的な筆致で描かれているが、如何せん教科書は本旨からズレるコラムが面白い。この作品も人間を成長させる集合的無意識に巣食い、逆に人間により変容する白薔薇が出てきて急に面白くなってきた
前にも書いたけど第一、『魔獣戦線』というタイトルがいいやね。戦線という極めて流動的で抽象的な単語を用いたタイトルでなのに、見事それが当てはまる止まる事を知らない激しい運動・戦闘が描かれている。こんな漫画を描けるのは石川賢だけかもしれない。
『ワタリ』が教育=洗脳論である事、終盤の流れが寺子屋から近代的な学校に移っていく時代の流れなどは善悪を超えた社会論、教育論として興味深く、特に0の忍者の持つMKウルトラ作戦的なSF性や神話に纏わる寓話性がある。 この作品には一つの曰くがあって、最終部となる第三部が著書・白土三平による選集に収録されていなかった。これは第二部を執筆後の白土が急病に倒れ、全体的な完成に関与できなかった故に自作ではないとの判断により除かれたのである。 実際第三部は変装のトリックがクドいほど多いなどの欠点が無いとはいえないが、それでも0の忍者が単なる暗示による超人忍者計画ではなくて、寧ろ無限に代替を生成する究極の身代わりの術―あたかも、アラビア数字の位が0で増える様な簡単さで己の複製が出来ていく、全ての基礎のような術―であると示される様は圧巻であり、それに白土が何処までタッチしていたかは不明だがそのエッセンスをある程度以上の水準で連載させて完結させた姿を見ると、当時の赤目プロが単なる職業集団では無くてワタリたちが理想としていた思想を共有し独立した生活単位を営む渡一族に見えてくる。
なりたい私がテーマの作品だけど、それが他人を排斥したり競争で勝つ事と排斥ではなく、離別した相手の苦しみを受け入れる為に王になる、仲間を、優しかった敵を救う為に、悪意に塗れているが苦しむ周りを救う為に少女はなりたい私の力を爆発させる… この辺りの自己の実現と利他が共存するテーゼは興味深いし、それがファンタジー(想像力)になっている辺りが少女漫画的な軽やかさになってる。 然し『ローゼンメイデン』とかに比べるとそれがある種の制約になってるのかなと思う。
2024年に読み逃していた作品。何かの賞にノミネートされて気になったはずなんだけど、調べても分からなかったので記憶違いかも…。 著者の野原広子さんって「妻が口をきいてくれません」で有名になりましたが、最近では「消えたママ友」が話題になりましたよね。今回の作品は40代女性の最後の恋の話だと聞いたのでキュンキュンするつもりで読んだのですが、やっぱり人間の裏側とかサスペンス要素がありましたね。もしも主人公と自分が同じ年代だったらもっとキュン的に感情移入したかもしれないです。 主人公がマッチングアプリで知り合った男性から約束をすっぽかされたりするのが読んでるだけでしんどかった。でも彼女が出会った最後の恋はそういう風に人間を値踏みするようなものじゃなくて救われました。