寄生獣

不徹底と言う名の慈悲

寄生獣
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

「人間が何故泣くのか分かった。俺には涙は流せないが」-『ターミネーター2』  再読して思ったがつくづく不思議な漫画だ。今現在の漫画は『童夢』を一つの里程標として映画的な立体を備えた場面や編集(コマ割)で事件を描きその「アクション」で以てテーマを射影するのであるが、『寄生獣』はそれに比べると余白が多い。ならば、手塚治虫のような捲し立てる戯曲風かと言えば、やはりあの余白やコマの多さを考えるとそうでもない。  モノローグの豊かさや情報の緩急のコントロールは正しく他の作家の系譜と言い切れない、アラン・ムーアやフランク・ミラーとかとは意味が異なるが正しく「グラフィック・ノベル(絵のついた小説)」とでも言うべきものだった。  この作品の「結論」が出るのは恐らく「田村玲子」の死亡からだと思う。田村は一種の心尽くしとして拳銃弾の雨に背を穿たれている最中に、回避、防御され二の次にしながら新一の亡くなった母の顔を模し彼に「不格好でもパラサイトも他人を慮れる」事を示しその心を解し、ミギーを驚愕させる。即ち、パラサイトが「人間味を持てる」事を示したのだが、その反対に市長の広川(パラサイトと共存していない純粋な人間)はディープ・エコロシー(敢えてこう言えば地球と言う自然全体の保護のために人間の淘汰さえ辞さない発想)に基づく、或いはナチス・ドイツさえ彷彿とさせる虐殺と管理を提唱し、人間でありながらパラサイトと誤認される。  要するに、「相手に対する慮り」こそが「人間」の得難い性癖であるが、それは人間の条件や特権ではないと言う事、それを元に環境を考えなければならない事がこの作品のテーマだと思う。  恐らく、最初は広川的なディープ・エコロジーこそが結論だったのかも知れないが、彼の示す如き全体主義を現出させる事に気づき、涙ながらに後藤を殺める新一が新たに象徴として浮き上がったのだろう。  私はこの変遷を見て『ターミネーター2』を思い出した。この映画も「歪な生き物」が現代社会に登場し、人間の過ちや罪深さを浮き彫りしていくのだが、ターミネーターが「命の大切さ」を学んだ事―又はこれを通してサラが未来の為と言って他人を殺める事は出来なかった―で黙示録を回避できるのではないかと言った希望が紡がれる所で終わる。  広川やスカイネット的な計画と管理ではなくこの「感情」を軸にした他者へのシンパシー、自己の尊重こそが世界的な終末を避けると言う結論はあるいは失敗するかもしれないが、岩明やキャメロンのようにそれに賭けるべきなのかもしれない。その面でもいい漫画だと思う。 P.s 投稿より約9時間後、「「相手に対する慮り」こそが「人間」の得難い性癖であるが、それは人間の条件や特権ではないと言う事」、「広川やスカイネット的な~」との文言を追加、編集

ワタリ

僕は第三部、好きだけどね

ワタリ
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

 『ワタリ』が教育=洗脳論である事、終盤の流れが寺子屋から近代的な学校に移っていく時代の流れなどは善悪を超えた社会論、教育論として興味深く、特に0の忍者の持つMKウルトラ作戦的なSF性や神話に纏わる寓話性がある。  この作品には一つの曰くがあって、最終部となる第三部が著書・白土三平による選集に収録されていなかった。これは第二部を執筆後の白土が急病に倒れ、全体的な完成に関与できなかった故に自作ではないとの判断により除かれたのである。  実際第三部は変装のトリックがクドいほど多いなどの欠点が無いとはいえないが、それでも0の忍者が単なる暗示による超人忍者計画ではなくて、寧ろ無限に代替を生成する究極の身代わりの術―あたかも、アラビア数字の位が0で増える様な簡単さで己の複製が出来ていく、全ての基礎のような術―であると示される様は圧巻であり、それに白土が何処までタッチしていたかは不明だがそのエッセンスをある程度以上の水準で連載させて完結させた姿を見ると、当時の赤目プロが単なる職業集団では無くてワタリたちが理想としていた思想を共有し独立した生活単位を営む渡一族に見えてくる。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN

モデルを持たない僕達の、たとえ稚拙な芝居でも…

機動戦士ガンダム THE ORIGIN
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

2024年3月17日 「また、死ぬよ!」(伝説の大根役者ロバート・コーツの「迷演技」,リーダーズダイジェスト『世界不思議物語』より引用)  安彦良和による表情がコミカルでいいんだけど、一年戦争後期のギレンとかシャアが中々しやがらないんだ、これが。仏頂面や一物抱えた薄笑いばっかりでさも自分等をアレクサンダー大王やナポレオンと思ってるんだろうね。あの芝居がかった態度は。それが大変不気味であるんだが、不気味ゆえに彼らは強い。彼らの心持はナポレオン、カエサルであるからだ、英雄は容赦を知らない、それ故負けも知らない。  それに比べるとホワイトベースの乗組員はケツの青いひよっこもイイとこ。たかが仲間が将軍を尻に敷くと言う粗相をした程度で目を丸くして開いた口が閉まらない。彼らの振る舞いもまた芝居がかってるが、ギレンやシャアと違ってそこには英雄を憑依させた凄みなんか無い。あるのは一身上の苦悩と戦場での生の証を立てようと足掻く青臭さ、それだけだ。  然し、彼らはハムレットやヒットラーを憑依させて何かしらの大物になろうとしているシャアやギレンと違って自分を生きている。彼らが英雄にのめり込み過ぎて自分でも何でもない暴力の化身になり果てているのに対し、ホワイトベースの乗組員はちっぽけな自分でしかないが、それを貫徹していく最中に英雄に届かなくても何かしら自分を語るヒストリーを身に着けた。詰り立場は逆転したのだ、余りにも豊かな教養とバックボーンにより得た資格で歴史に寄り過ぎた男たちは、逆説的に歴史の中での自分の立ち位置を忘れて骸か神か以外の自分の存在を忘却した。これは結局誰よりも歴史と己の対比に自覚的であり、メタ的にシャアやギレンの思想的師となっていたマ・クベが結局不出来な部下一人教育できず、歴史のダイナミズムを意識したアムロたちに敗北を喫した(『アムロ0082』)姿を見ても窺えよう。  『ガンダム』は45年続くロングランのシリーズだ。その中で築き上げられた設定や歴史はとてつもなく膨大で長くそれを専ら漁るファンも大勢いる。然しそのような流れの中に於て『THE ORIGIN』はフラットな設定に紐づいた歴史に異を唱えるように、そこでの「健全なダイナミズム」を描き出す。勿論、これは安彦良和の一存の作品であり、とても「粛清」の域に至らないのであるが、それでよいではないか(安彦もそこまで考えてはいない)。  結局、こういう作品が打切にならず大団円を迎えた辺りに「ガンダム」は恵まれた作品であり、我々はそれを盲信の観念を払拭して健全に引き継がねばならない。これは『ガンダム』の意匠を用いた歴史漫画であり、この歴史に『ガンダム』が含まれているとの告白だろう。 P.S:  或いはジオンが、事故演出家した歴史とするなら彼らはヨーロッパで、逆に自分を規定する歴史を持たず力で押しがちな連邦はアメリカなのかもしれない。然し少なくとも作品の後者には、己を語る語彙を得ようとするチャンスがあるのだ。作品ラストにジオンの残党が連邦で再就職するオチは「何物でもない」余地、ナポレオンでもヒットラーでもないモデルをさがす余地をアメリカに求めた隠喩なのかもしれない。これは余談の通り、根拠の無いトンチキ歴史観だ。忘れてくれて結構。

夏の終点

予想通りの展開と予想を上回る情緒

夏の終点
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

この作品のストーリー展開は基本的に予想通り進んでいく 読んでいて思わず「ホントにこうなるのかよw」と ツッコんでしまったほどだ。 例を挙げると、 「休日にお出かけしてたら、気になる男の子の相原くんが 知らない綺麗な女の人と歩いてる!」 「ショック〜!でも、怖がらずに彼女のこと相原くんに聞いてみよう! もしかしたら私の勘違いかもしれないし!」 「相原くん、昨日一緒に歩いてた女の人って…」 「え??あ〜!なんだお姉ちゃんだったんだ〜!」 「な〜んだよかった!一安心!」 「ん?でもお姉ちゃんって言っても義理って言ってたような…」 「まさか!そんなわけないよね〜」チラッ 「いや、コイツッ!お姉ちゃんのことを話す時だけ 見たことないくらい優しい顔をしてやがるッ! 絶対異性として見てるじゃねぇか!」とこんな感じで かなりキツめの意訳をしてしまったが 概ねこんな半世紀近く擦り倒されてきた展開を この漫画は真正面から全力でやっている ただ、王道というのは長い年月を得ても変わらずに面白い普遍性が あるから王道と呼ばれるのであって、取り扱い方さえ工夫すれば 現代でも切実感のあるリアルな物語として描くことができる。 この作品はその「取り扱い」が非常に美味かった。 決して先に僕が書いたような80年代的なバグったテンションでは 描いておらず、むしろ正反対な柔らかく、澄んだ空気感で描かれている セリフを最小限に抑えつつ、 絵でキャラクターの感情のわずかな機微を描いていおり、 読んでいると本当に予想通りのことしか起きないにも関わらず、 どんどんキャラクターの内面に引き込まれていってしまうのだ。 この引き込み方が他の漫画と比べてちょっと度を越していて 本当にセリフが全くないまま感情や状況の変化が起こるので 読んでいると、紙面全体からキャラクターたちの声のない切実な訴えが 表情や演出から聞こえてくるのだ。 もちろん、そのために使われる演出は瞬時にわかるような平易なものが多いが 作者特有の絵柄やコマ割りも含めた作品全体の雰囲気づくりのお陰で チープなものという印象は受けず、むしろ逆にリッチなものにすら感じる このあまりにも尖った作劇法でも読者を置いてきぼりにしないために あえてストーリー展開は擦り倒されたものにしているのだろう。 ただ、このストーリー展開でここまで読者をのめり込ませるというのは 本当にすごいことだと思う。 磨き上げられた独自の画風と漫画的なセンスの賜物だ。 過去の読み切りを見ると叙述トリックを使ったどんでん返し(少女と毒蜘蛛)や 読者の解釈に委ねるようなラスト(さみしがりやな僕ら)なども書いていたので この作風のまま作者独自のストーリー展開を見せる漫画も見てみたい

東京ヒゴロ

松本大洋ここにきての最高傑作!?

東京ヒゴロ
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

『鉄コン筋クリート』やスポーツ漫画の大傑作『ピンポン』を送り出した 漫画界の生きるレジェンド松本大洋待望の最新作 物語は主人公塩沢が30年務めた出版社を退職し漫画編集者として引退したところから始まり、彼が辞めたことで起こる周りの担当作家や編集者達の変化を丁寧に描写していきます。 私が個人的に松本大洋作品前作で通底して素晴らしいと思う点は『人間の暗い部分弱い部分を逃げずに描写するところ』で、例えば大傑作『ピンポン』でも類稀な才能を持ちながら高い壁にぶつかり一度は卓球から逃げ出してしまうペコという場面で自尊心が打ち砕かれた人間の脆さをしっかりと描写しています。 もちろん今作でもそう言った要素が見事に描かれており 例えば、一度は大ヒットを生み出しながらも長い漫画家生活の中で情熱が擦り切れてしまったベテラン作家長作が様々な葛藤を抱えながらもう一度奮起して漫画に向き合う姿が情感たっぷりに描写されており、 私個人としては「もしかしたらそう言った描写に関してはこれまでの作品の中でも一番なんじゃ?」と思っています。 というのも、今作は漫画に関わる人々というおそらく松本先生から見て最も身近なところに生きる人々を書いているので、人間描写がこれまで以上に切実感とリアルさを持っているのではないかと思います。 ここからは読んだ人向けですが、長作が爆音で包まれるパチンコ屋の中で涙を流すシーンには思わずこちらも涙を流してしまいました。

バガボンド

不器用な生き方しかできない人に読んでほしい侍漫画

バガボンド
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

「ジブン不器用ですから」 日本人ならば誰もが一度は聞いたことのあるであろうこの台詞は1980年代放送された日本生命のCMで故・高倉健さんが放ったものだ。 僕はこのCMを一度も見たことがないし、実際に高倉健さんがこのセリフを言っているところを見たこともないが、自分を含めた多くの日本人男性の気質を言い当てた見事なセリフだと感じるのと同時にこの台詞が残り続けてしまうところに日本人男性の生来の生き辛さと悩みが集約されているように思う。 そして、そんな不器用な日本男性の頂上決戦漫画がこの『バガボンド』なのかもしれない。 なにせ、登場する侍達がみな周囲から誤解されながらも実直に己の剣を磨き続けることしか出来ない不器用な男達ばかりなのだから。 おそらく、多くの人はこの漫画を主人公宮本武蔵が『ドラゴンボール』の孫悟空よろしく「強ぇやつ戦いてぇ」と様々なライバル達と死闘を繰り広げるチャンバラ漫画だと思っているであろう。 確かにその認識は全く間違っていないし、大まかに理解するとそう言った作品だと思う。 しかし、今回初めて読んだ僕が最も心震えたのはかっこいい剣劇シーンではなかった。むしろかっこいいとは正反対とさえ言える不器用な生き方しかできない男達の姿に心が震えたのだ。 僕自身もそうであるように多くの日本人男性は陽気ではないし、無口であることが多い、それ故に誤解されやすくそのことを気にしていないふりをしながらもやはり心の奥底では寂しさを抱えている そんな男達の理解されないことの苦しさと その救済を真正面から描いているのがこの作品だと私は思う。 天下無双を目指す主人公宮本武蔵は両親からの愛情を受けることができなかったという生い立ちから自分の感情を表に出すことができないキャラクターだ。 だからこそ彼は相手を打ち負かすための斬り合いという方法でしか自分の内面を表に出すことができない。 自分の経験や考えというものを言葉ではなく剣でしか伝えることができないのだ。 そんな武蔵の剣と相対する敵キャラクター達も彼に負けず劣らず不器用な人たちばかり、そんな剣でしか自分の気持ちを面に出すことができない男達が「斬り合い」というコミュニケーションという言葉からは大きくかけ離れた場所でお互いの気持ちを探り合うのがこの漫画の本質のように不器用なまま20年以上生きてきた僕なんかは感じてしまう。 ネタバレになってしまうから明言はしないが、武蔵のライバルとして有名な佐々木小次郎もそこに本質があるからこそあのアレンジがされているのであろう。 こうして生まれた豊かな交流とつながりも自らが相手を斬ることで断たなければならないという残酷な結末を迎えたとき その言葉を介さない濃密で一瞬の交流に最上級のロマンを感じ僕は震えた 「あぁ!この繋がりをこの豊かで濃密な時間を相手を斬り自ら断ち切らなければならないのか武蔵は!こんな不器用な生き方があるだろうか!?いや!ない!」 とこんな具合に脳内で熱い実況解説をしながら読んでしまい、しばらく『バガボンド』の世界から帰ってこれなくなってしまった。 いい年した男の脳内をこんな風に真っ赤に燃え上がらせるというところに この漫画に込められた熱量を察してもらえれば幸いだが この熱量はどこから生まれているのだろうか? おそらく、それは作者の井上雄彦先生自身の性格からだと私は思う 以前、井上先生のドキュメンタリー見たことがあるが 「なんだか不器用な人だな」というのが全体を通しての感想だった。 おそらく先生自身も武蔵の剣よろしく漫画でしか自身を表現することができない人なのであろう。 その不器用さ故に書かれた漫画は読者を作者と感性をぶつけ合わせる「真剣勝負」の場に誘い、その末に読者は井上先生の実直な漫画に感銘を受けてしまうのであろう。 だからこそ、この作品は20年以上多くの読者を魅了し続けられたのだろう。 不器用もここまで来ればあっぱれとしか言いようがなく、僕自身井上先生や武蔵のように磨き上げた何かで人に衝撃を与えてみたいと一瞬思ってしまった。 まだ、完結はしていない今作だが、井上先生にはどうかこのスタイルのまま本作を描き切ってほしいと勝手ながら願うばかりである。

ジョジョの奇妙な冒険 第1部 カラー版

『ジョジョ』の基本思想が詰まった始まりの部

ジョジョの奇妙な冒険 第1部 カラー版
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

大ヒット漫画『ジョジョ』の 記念すべき開幕を告げる部 ではありますが、 ファンの人でもわざわざ読み返すことは あまりないのではないでしょうか? 私の周りでも「1部が一番好き!」 という人は1人もいません。 確かにその後の部に比べて バトルも地味なものが多く 現代から見ると時代を感じるキャラクターが多いので若い人たちが見ると 物足りなさを感じてしまうのは 仕方ないことだと思います。 しかし、今回久々に読み返して 私はビックリしました! 第1部にはこの後30年近く貫かれ続ける 「ジョジョの基本思想」が 詰まっていたのですッ! それは3巻で語られる ツェペリさんの3つの教えです! ①相手の立場に身を置く思考。 ②「勇気」とは怖さを知ること  「恐怖」我がものとすること。 ③「成長」には犠牲が付き物  「犠牲」成長につなげられる人間こそ   美しい人間である。 おそらく『ジョジョ』はこの3箇条をもとに 作られているのでしょう。 相手の立場に身を置くことで、 敵キャラの造形を 細かく描写することができる。 そして、「恐怖」を我がものとする。 つまり、克服しようとするからこそ 「ホラー映画」に影響を受けた シーンづくりをする。 そして、ジョジョたちが犠牲を成長に つなげていくからこそこの漫画は 「王道」なのだと思います。 これらの基本思想があり、 そして、ジョナサンの正義漢としての描写も 少し過剰ではありますが、 キチンと入っています。 このジョナサンの過剰なまでの 「いい子」「正義漢」描写があったから 後のジョジョはどんなに不良でも ジョナサンの子孫だからという 土台の安定感から ヒーローとして自然に 読者に迎え入れられる のではないでしょうか? そんな感じで、あの『ジョジョ』の 始まりの部がただの旧時代の 漫画の訳がありません。 一回読んだだけで その後読み返してないという人は 是非一度読み返してみてください! 自分の好きな 『ジョジョ』のエッセンスが 生まれた瞬間を 何個も発見できると思います!

バオー来訪者

荒木飛呂彦 格闘の歴史②

バオー来訪者
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

『ジョジョ』の荒木飛呂彦先生の連載2作目の今作 イタリア旅行で肉体美にこだわった ルネサンス美術に出会い、 そしてリドリー・スコット監督の 『エイリアン』を見て究極生物という 概念に気づき作り上げられた作品です! バオーという寄生虫みたいな生物に寄生され超人的な生物に変身できるようになった育郎を主人公に小さな女の子を助けるために戦う超王道ストーリーです! 『エイリアン』のイメージを少年漫画的な フォーマットに昇華させた見事な作品です。 当時B級と呼ばれながらも画期的なアイデアが詰まったホラー映画のエッセンスを 少年漫画の中に持ち込むという 革新的な荒木流創作術が開花した 荒木先生の歴史の中、そしてマンガの歴史の中でも大きな転換点となる作品だと思います ので、荒木ファンだけでなく全マンガファン必見の作品ではないでしょうか? 主人公の育郎が戦闘中は喋れないので、 代わりにナレーションが心情などを説明してしまうので感情移入がしにくいという問題点があるからか、打ち切りとなってしまった 作品ですが、この打ち切りは後の『ジョジョ』での大爆発に繋がるので、 意義のある打ち切りだったと思います。

イエスタデイをうたって

全てのキャラが独り言で会話するラブコメディ

イエスタデイをうたって
TKD@マンガの虫
TKD@マンガの虫

デッサン風で統一された絵柄や 情感たっぷりのようでどこか乾いた 雰囲気作りは見事としか 言いようがありません。 ここまで自分の世界観を貫いて作品を 描いている漫画家も 珍しいのではないでしょうか? 連載後期になると羽海野チカや浅野にいお などの後輩漫画家の影響をダイレクトに 受けながらも自分の世界に咀嚼してから 出している辺りも素晴らしいと思います。 そして、なんといっても鬱々とした 若者の描写ですね。 ほとんど全てのキャラが若い自分では どうしようもできない問題を抱えていて、 それを消化できないまま他人と接するので、会話が一方通行を通り越してほぼ独り言に なっています。 しかし、そこが素晴らしい! 普通は会話として成立するようにセリフを 整理するのですが、あえてそれをやらない ことで青い時期を過ごすキャラたちを 描写しています。 そこに共感できてしまう人は この作品にとことんハマってしまう と思います。 あと、この作品を批判するコメントで よく見るのが「恋愛模様が進展しない」 というものです。 しかし、そんなことは当たり前です! どのキャラも自分のことで精一杯で 他人に構っている暇なんてないんですから。 それでも、好きな人と付き合いたいという 欲望は抑えられない。 そんな時期の若者を見事に描き切った 傑作だと思います。

ヤンキー君と白杖ガール

目からの情報過多な世の中

ヤンキー君と白杖ガール
ゆゆゆ
ゆゆゆ

登場するヤンキーは顔の傷がなくて、服の趣味が良ければ、ものすごく人が良くて純愛している好青年。 弱視の女の子に「ポエマー」と言われるほど、大好きなユキコさんの前では好青年。 一線を越えると黒豹に戻るようだけど、ユキコさん第一なので基本は好青年。 コミュニケーションお化けのようなユキコさんも、見えないからそう変わらざるを得なかったとあって、相当な苦労の上であの人となりができていて、結果が一話冒頭の白杖ケツアタックなんだなぁと思った。 コメディになる部分は、NHKの番組バリバラでみた、障害者コントを思い出させた。 障害は触れるのを避けるべきことでもなく、彼女たちには当たり前なことで、その中でのからかいや日常の楽しみ、苦労が興味深く描かれている。 もちろんコメディ要素だけでなく、しれっとヤングケアラーとなっているきょうだい児の話や、人は年を取ればいずれ見えなくなることが描かれていて、でも重たい話のはずがドロドロしておらず、あっという間に読み終えてしまった。 視力がオレサマはなるほどなと思ってしまった。 かき氷シロップはオレサマを感じさせてくれる食べ物。食品に絞ると、嗅覚が2番手のオレサマ。 ちなみに登場キャラクターのなかでは、高校生男子らしくムラムラ大好きな青野くんがとても好きだ。

ワタシってサバサバしてるから

広告で見たことがあるやつだ

ワタシってサバサバしてるから
ゆゆゆ
ゆゆゆ

主人公が「私ってサバサバしてるから〜」っていうタイプの人間でした。 「みんな私のこと「かわいい」って言ってくれるけど本命にはしてくれないね?」で知ったのですが、主人公を「うわー何こいつ」って言いたくなるキャラクター(悪役)にして、当人が落ちていくさまを眺めるジャンルっていうのがあるんですね。 身近にいたら、さりげなくフェードアウトしたくなるタイプの性格ですが、「女の敵は女」というあたりはリアルです。 そして、男の中で生きようとしているわけでなく、同性と仲良くするわけでなく、人がいっぱいいるところに飛び込んでいるのに、孤高です。 読んでいて、どうしてそういう考えに?と思ってしまい、主人公なのについていけません。 本編を悪役サイドで見ている気持ちです。 とはいえ、ライバル視されている本田さんが主人公だと、「私ってメンタル強めだから〜」と、メンタルの強さを過剰に見せつけてくるキャラクターに改変されてしまいそうで、そんな本田さんは見たくないなと思ってしまいます。 よくよく考えれば、周囲がこれほどひいた反応を取っていてもへこたれず、ゴーイングマイウェイでいられる主人公の網浜奈美は非常にメンタルが強いです。 ビジュアルが本田さんと主人公が入れ替わっていたら、どんな感想になっていたんでしょう。

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか

殴るためのお肉

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか
ゆゆゆ
ゆゆゆ

このタイトルで、この絵柄で、いわば北斗の拳。 いや、くにおくんかもしれません。 陰湿なイジメが繰り広げられる恋愛モノかと思えば、メリケンサックが出てくるタイプの恋愛モノでした。 メリケンサックと恋愛モノって、同時に存在しうるんですね。 「パワー・アントワネット」と違い、ムキムキでもなく、筋肉でもなく。 公爵令嬢として腐った世の中を正すため、いや殴りたいから主人公は暴力をふるいます。 ストッパーが無くなった彼女は強いです。 ターゲットの名前がいつの間にか「肉」呼ばわりになっていて、こうやって人でないから殴ってよしと正当化するのかなとチラと思えば、その肉がことごとく、言い訳できないレベルの悪役たちで、世直しのためには、殴っとこうかという気持ちを読者に湧き立てさせます。 そして、時の女神の力を借りて、倍速やらなんやらブーストさせて、「ボンボコボンボコ」殴って蹴って。 暴力シーン(連続)もこのきれいな絵柄のママ繰り広げられ、「創竜伝」の龍堂兄弟のようなめちゃくちゃな振る舞いも、このきれいな絵柄のママ繰り広げられます。 とりあえず公爵令嬢なので、一線は越えていないそうです。不殺です。 すべて峰打ちなので大丈夫らしいです。さすがです。 暴力で解決はよくないけれど、早いんだということはよくわかります。

異世界で 上前はねて 生きていく~再生魔法使いのゆるふわ人材派遣生活~(コミック)

みんな良い人

異世界で 上前はねて 生きていく~再生魔法使いのゆるふわ人材派遣生活~(コミック)
ゆゆゆ
ゆゆゆ

再生魔法って、響きからしてチートな魔法なのに不遇らしい。 いやいや…と思うけども、そういう文化だからと言われたら、仕方ないのかなと思えなくもない。 ・魔法を使えるのは基本的に貴族。 ・男は攻撃魔法を使えてこそ! このルールに外れた場合、とてつもなく不遇らしい。 たまにいる、平民で魔法が使える人でも、男で攻撃魔法が使えない場合は、就職先すら危ういようだ。 世知辛い世界。 主人公はそんな偏見も酷い中、再生魔法を趣味のように研究し、あれやこれや発明。 病気や怪我などで働けなくなった奴隷を魔法で再生して、衣食住を手厚く保障して働かせて、お金をウハウハ稼いでいる。 劇場を建てる資金確保といいながら、気がついたら事業拡大して、結婚して、奴隷だらけのプール遊びや運動会。なんだか日々が充実している。 裏切りや悲劇も起こらないので、とても安心。 ちなみに、男は攻撃魔法至上のようにあったけど、出会う奴隷という奴隷、学校内は同級生と先生以外は女なので、前提の「男は黙って攻撃魔法」のような考えがあることを忘れてしまう。 主人公はそれだけ、世界の仕組みとは別枠の仕組みを作り上げたということだろうか。

特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」

「ヒロシマのおばちゃん」を読みたくて購入

特装版「女が叫ぶとき~戦争という地獄を見た~」
ひさぴよ
ひさぴよ

https://www.shogakukan-cr.co.jp/book/b110795.html 『漫画が語る戦争 焦土の鎮魂歌』(小学館クリエイティブ)で読んだ曽根富美子の短編「ヒロシマのおばちゃん」が衝撃的だったので、もう一度読みたいと思って電子書籍版を探してたら、この短編集に収録されていた。 「ヒロシマのおばちゃん」以外の短編は、戦争の話というよりちょっと昼ドラっぽい話が多いものの、それでも表題作を読むためだけに買っても損はないと思う。 作品の詳しい時期は分かってないのだが、状況からして1990年代頃の設定と思われる。広島での戦争体験を語り継ぐの”一人のおばちゃん”を通して、戦時中の自身の半生を振り返るところから物語は始まる。巧みな語り口と、曽根先生お得意の、不幸で陰湿な心理描写にグイグイと引き込まれてゆく。そしておばちゃんは不幸のドン底と同時に、原爆の日を迎えるのだが…。 変わり果てた広島の街を、怨念そのものとも言える鬼気迫るタッチで描き出し、一度目にしたら忘れられないような光景がこの漫画にはある。おばちゃんは最後に「あれは地獄だったよ」とだけ語る。と同時に、この出来事が教科書の中のたった数行に収まってほしくない、と願うのだった。 個人的には「はだしのゲン」と同じく、ぜひ読み継がれてほしい戦争漫画の一つだ。

機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト

何度読み返しても面白いクロボンシリーズ屈指の神作品 #完結応援

機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト
カワセミ㌠
カワセミ㌠

前作にあたる【機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人】から約17年後のUC:153が舞台となっており、あのVガンダムと同時間軸の作品が誕生した事により ・Vガン本編とどう絡ませるのか? ・一応は完結したクロボンシリーズをどう復活させるのか? ・あの名作鋼鉄の7人のハードルを前にどんな作品を見せてくれるのか? 等読む前から様々な疑問や不安そして期待を持たれたガノタや長谷川先生ファンは多かったかと思いますが読めば読む程 ①Vガンダム要素(ザンスカール帝国の組織図やゾロ系MSの魅力に加えリガミリティアとの関わり合い)の取り入れ方 ②再建した木星圏ならびに新主人公フォント君の人間臭さや兄貴分カーティスさん等各陣営キャラの魅せ方の素晴らしさ ③無印~鋼鉄の敷居の広さを活かした旧陣営キャラの再登場やMS類の発展や海賊らしい戦法や武装等読めば読む程ファンが感動や脱帽する場面の嵐が巻き起こる 等々これでもかと言わんばかりの長谷川先生が送る熱量や画力が展開され様々な考えていた感じた気持ちを良い意味で覆した神作品に仕上がっている神作品だと強く実感した作品なんですよね

まちの本屋の御書山さん

本屋さんのあれやこれやを描いたドタバタお仕事系作品 #1巻応援

まちの本屋の御書山さん
カワセミ㌠
カワセミ㌠

図書館で働く司書さん達や紙や本等の印刷物を扱う印刷業界作品等最近本や紙に携わるお仕事系作品が増えあの人達はこんな仕事をしている・こんなトラブルやあるあるに対して奮闘しているんだと言う姿への理解や関心が高まって来ていますが、その例に漏れず本作品も大変素晴らしいお仕事系作品に仕上がっており中々に楽しめましたね そんな本作ですが、ざっくり説明しますととある感情的トラブルが原因で漫画本を汚してしまいその本の弁償をするべく大学生主人公が本屋を訪れ、本とは漫画本とは何たるかをとある書店員さんから説かれ感銘を受けた結果その本屋さんで働く事を決意した所から物語が始まります そして本や読者や同僚への思いやりや苦労からなる主人公の心境の変化は勿論ですが、書店員さんの仕事内容のリアルさ・多忙さや実りある成果から来る楽しさに加え、個性豊かな登場人物が生き生きとしたキャラクター性等他のお仕事系作品にも通ずるストーリー性や見せ方がしっかりと練られておりこう言った素晴らしいお仕事系作品がまた1つ増えた喜びを強く実感できましたので気になって方は一度読まれてはいかがでしょうか?

解体屋ゲン

これぞ、お仕事系のお手本と言っても過言ではない知る人ぞ知る神作品

解体屋ゲン
カワセミ㌠
カワセミ㌠

「派手な発破や重機をガチガチに使った珍しいお仕事系作品」 「あるあるネタからトレンドや風刺ネタに加え異世界ネタまでありとあらゆる引き出しが用意された圧倒的ボリューム」 「稀に一冊辺り5~11円で買える破格の大セールを仕掛けてくるメチャクチャな作品」 etc……… 調べれば調べる程気になって来る情報しかない上に丁度11円セールが始まっていたので既巻100巻を購入し、最近は解体屋ゲンばかり読み進んでおりましたが上記の情報に偽り無しと強く実感した神作品でしたね そんな神作品をざっくり説明しますと日本では珍しい爆薬を使った発破解体等を生業とする主人公:朝倉巌【通称解体屋ゲン】が様々な建築物や大自然はたまた黒い噂のある大企業等々を相手に奮闘するお仕事系作品になりますが、どの物語も練りに練られた内容に仕上がっており ・同僚や仲間との成長やすれ違いや恋愛事情からなるエピソード ・主人公ゲンの過去や知識力から生まれた奥深いエピソード ・財政や地方特有+人には言えない程の事情を抱えた問題絡みのエピソード ・談合や違法な取引等を汚職まみれの企業を相手に死闘を繰り広げるエピソード ・この仕事をしていて良かったと思わせる涙無しには語れない心暖まるエピソードetc… 読めば読む程お仕事系のお手本と言わんばかりのエピソードが盛りだくさんとなっておりますので少しでも気になった方は大セール期間問わずご購入されてはいかがでしょうか?

女騎士とケモミミの子

魅力が溢れ刺さりに刺さりまくった話題の百合ファンタジー作品 #1巻応援

女騎士とケモミミの子
カワセミ㌠
カワセミ㌠

この物語はガチガチの鎧を身に纏った女騎士【オリビア】とその女騎士の弟子にして獣人の【ノア】の二人が共に成長し絆を深めていく旅路を描いた物語となっておりますがその1つ1つの描写や書き込みの情報量に加え独特なファンタジー世界の設定がTwitterやpixiv等で話題となり書籍化まで果たした話題の作品なんですよね そんな作品の特徴としまして普通のファンタジーや百合作品とは一味も二味も違った点が多く ・鎧や甲冑の重装備のガチガチの騎士や中世要素 ・獣人×年のさ×主従等の百合要素の塊 ・禍々しい魔物や独特な生き物達がいる広大な世界観 ・二人の心暖まる日常回や営みの数々 ・2刀流の構えが岸田◯ル先生のあの構え etc… と言った数々の要素が混ざりありながらもどれもが洗練されたシーンと呼べる程の高水準となっております そんな神作品を私は書籍化になる前の頃からSNS上で齧り付くようにイラストを拝見していましたが改めて1話1話を手に取って読むと鍛練や日々の営みと言った日常回は尊くも百合に彩られ、禍々しい魔物と戦う様や剣術の動きやアクションや独特なファンタジーの世界観に至るまで何もかもが素晴らしい完成度を誇っていると再認識した作品となっておりますので皆さんも一度手に取って読まれてはいかがでしょうか?

対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~

「対ありでした」6巻について"語"るゼ…!

対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~
toyoneko
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「対ありでした」は、フラッパー連載中の「お嬢様が格闘ゲームをする」系漫画です 「ゲーミングお嬢様」と同種の漫画ですね! ほぼ同時期に連載開始した両作品ですが、「ゲーミングお嬢様」はコメディ色が強く、「対ありでした」は百合要素が強い、という感じで、それぞれ特色を持っており、読者層も異なるものだったように思います 当時、私は、「ゲーミングお嬢様」の方が好みでした …と思っていたのですが、あるとき、ふとフラッパーを読んでいると、 「対ありでした」の30話が目に飛び込んできました そこには、私の知っている「対ありでした」とは、異なる漫画がありました 30話のストーリーというのは、主人公の「白百合さま」が格ゲーの大会に出て、怒り顔の幼女と熱いバトルを繰り広げる、というものなのですが、何というかものすごーく熱血!な漫画と化していました お前…百合漫画じゃなかったのか…? 30話にあらわれるセリフを抜粋します 「"ここが強い"と明確に言えるってことは」「"対策できる"ってことやろ」 「"ようわからんけど強い"は」「"究極"…!」 「"獣"」「"獣"を"解放"しやがった」 「闘争本能という名の獣」 「まるで"世界中"に」「"響"きそーな台パンじゃん?」 「馴れ合ってる奴らなんかに負けるわけない」 「というような考えは一旦」「捨てる」「お前を認める」 「お前に勝つために」「お前を認める」 「あと少し」「もてば」「いい…」 「私のすべてをお前にぶつける」 「パナしたァーーーッッ」 なお、添付画像は「"獣"を"解放"しやがった」のシーン これを見てもらえば分かるように、文法的には完全にバトル漫画なんですよね 又は熱血スポーツ漫画。スラムダンクとか灼熱カバディに近い しかも、ものすごくクオリティが高い そして、「対ありでした」の6巻は、 1巻丸ごと、「白百合さまVS幼女(通称「メスガキさん)」のバトルなのです! 戦闘シーンはカッコいいし、 心情描写はド派手だし、 セリフ回しはキマってるし、 ギャラリーが解説して大盛り上がりするし、 何言ってるのかよく分からん格ゲー用語もミステリアスでワクワクするし、 全体的に演出がハマりまくっていて、最高です 「なんだかよく分からないけどとにかくカッコいい」の連続! あまりに良すぎて全巻揃えましたが、個人的には6巻がとにかく良すぎます いや、別に、何か特殊なことをやっているわけでは無いんですよ バトル漫画としてみた場合、わりと、「お約束」の積み重ねのようにも思える それなのに、こんなにも面白く読めるのは作者の力量としか言えないところです ということで強くおススメです いきなり6巻から読んでもいいと思います なお、7巻以降も、ちょっと先が読めないストーリが続いており、そちらもおススメです なお、この格ゲーの大会、どう見ても所十三漫画の住民が登場してるのですが(しかもチョイ役ではなく重要キャラ)、なぜか誰もツッコまないんですよね… 画像はコメント欄に添付します

刃牙らへん

バキのレビュー…考えてみたら初めての体験…

刃牙らへん
toyoneko
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正直言うとですね、「バキ道」を最後まで読んで、あぁこれはもうダメかな、と思ったんですよね 連載開始のタイミング的に、「バキ道」は、「鮫島」への追悼の意味もある作品かと思っており、それなりに期待していたんですが、バキの世界観だと、力士との闘いというのは遥か昔に終わっている話でして、まぁ案の定というか、結局、何だかあまり盛り上がりも無く終わった、という印象でした 私は、バキシリーズ大好きですし、チャンピオン読者としてずーっと追っていたシリーズなんですが、チャンピオンの購読をやめて、「バキ道」も読まなくなりました そんな中、ふと漫画喫茶で「バキ道」を最終巻まで全部読んで、あぁこれはもうダメかな、と思ったのです(ついでに、「ゆうえんち」の方が遥かに面白いな、とも) ということで「バキ道」に見切りをつけたのですが、今度は「バキらへん」というヤケクソみたいなタイトルの連載が始まるというので、あぁこれはもう本格的にダメだなと思って、初回からノーチェックでした とはいえ、一応気になって、コミック1巻はとりあえず買ってみたのです そうするとこれが…意外と面白い バキシリーズには、面白い部分と、つまらない部分があります 特に「つまらない部分」は分かりやすくて、 ・ 刃牙の戦い ・ 現実にいそうな「強者」との闘い は、基本的につまらないです(一部例外はある) いや、「グラップラー」の頃の刃牙の戦いは面白かったと思うのですが、SAGAを経験したあたりから刃牙の性格がねじまがっていって、それに加えて非常に強い主人公補正もかかるようようになり、「主人公が出てくるとつまらなくなる」という、不思議な現象が起きるようになり、刃牙の戦いは、つまらなくなりました 現実にいそうな「強者」との戦いは、これも、「グラップラー」の頃は良かったのですが、どんどん強さがエスカレートしてしまい、普通にバキワールドの人間が勝つだけになってからは、つまらなくなりました 「バキ道」なんかはこれにあたると思います(ただ、烈海王ボクシング編とかは、意外と面白かった) いずれにも共通するのは、結果がみえている、ということ 読んでいてのワクワクがありません そのうえで、「バキらへん」ですが、 これは、この「つまらない部分」を排除してるんですね つまり、「バキらへん」は、 ・ 刃牙は(今のところ)戦わない ・ バキワールドの住人同士で戦う という話のようなので、戦いの勝敗が読みにくく、それが面白さに繋がっているように思います まぁバキワールドの住人同士でも優劣関係はあるので、ある程度勝敗予想できますが、それでも充分に面白く仕上がっています バキシリーズを見切ってしまった方には是非お勧めしたい作品です …と言いつつ、まだ2巻までしか出てないので、今後どうなっていくかはまだ不安ですが… なお2巻のハイライトは、ジャックと勇次郎がご飯を食べるシーン(添付)

キン肉マン

キン肉マン初心者講座

キン肉マン
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キン肉マンの完璧超人始祖編アニメが始まりました 大変すばらしい出来なのですが、 キン肉マンって割とハードルが高いので、初心者講座と題して、少し解説します ★ かつて「キン肉マン」が大好きだったけど、新しく再開したこのシリーズは読んでないな…という方へ 読みましょう。というかアニメを見ましょう EDを見るだけでも、どれだけの超クオリティか分かりますので、まずはこちらをドウゾ https://youtu.be/u0dgneH1D_4?si=V5yVPSqqGm1xNiZh あと、昔のねとらぼの記事もよかったので、こちらもドウゾ https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1712/29/news003.html ★ 「キン肉マン」?昔の漫画でしょう。ちょっと気になるけど、よく分からないな…という方へ まずは基礎知識。「キン肉マン」は、黄金期の週刊少年ジャンプに連載された、ヒーローバトル漫画です 一時代を築いた超ヒット作品です。当時の男子小学生はみんな大好きだった(はず) 長期連載の末、大人気のままに完結。コミックは36巻までが発売されました その後、少し時間をあけてプレイボーイにて「キン肉マン二世」が連載されたあと(タイトルどおりの「二世」モノ)、短編集(37巻)が発売されたのち、何と旧シリーズの「キン肉マン」の「続き」がweb連載で始まりました これが「完璧超人始祖編」であり、コミックでいうと38巻~60巻がこれにあたります 「完璧超人始祖編」は、旧シリーズの「キン肉マン」の続きなので、旧シリーズを読んでおくと、とても楽しめます…が、正直言うと、今さら旧シリーズの「キン肉マン」を読むのは、あまりおすすめしません いや、読んでもいいのですが、旧シリーズの「キン肉マン」ってもともとわりと低年齢向けの作品でして、小学生が読む分には良いのですが、マンバ読者が今さら読んだときに面白いかというと、まぁ、たぶん面白くないです というか私も、子どもの頃にアニメを見ていた記憶はあるのですが、漫画は読んでなかったので、大学生の頃に漫画版のキン肉マンを読んだら、「なんかこれはちょっと違うな…」と思って、途中で読むのを辞めたことがあります(その後、相当後になってから再読) とはいえ、全然基礎知識が無い状態で完璧超人始祖編を読んだり、アニメを見るのは、ちょっと勿体ない その場合、とりあえず、完璧超人始祖編(アニメ)の第0話を視聴しておくのが良いかと思います 旧シリーズのストーリーが、比較的わかりやすくまとまっています ただ、少々端折りすぎていて、初めて見る人にはわかりにくいかも その場合、公式が配信している「3分でわかるキン肉マン」シリーズが、 短いながらもかなり詳しくまとまっていて、おすすめです(ただしまだ途中まで) https://youtu.be/-kTkQL7uHP4?si=dXqwHuNCzndwJ0yt 次に、「キン肉マン」の魅力について これはいろんな意見があるところだと思いますし、そもそも、旧シリーズと完璧超人始祖編は、正直言って別物なので、一概には言えないのですが、完璧超人始祖編に限って言うと、私は、扱われているテーマ/関係性そのものが大好きです ・ かつて夢見た理想と現実のギャップ ・ 袂を分かった友人たちとの関係性 ・ 道を違えた師弟の決着 などがテーマとしてガッチリ描かれていて、もうたまりません 「えっ…キン肉マンでこんなテーマを扱うの?」みたいな驚きもありましたし、その描かれ方も、スケール的には壮大でありながらも、登場人物の心の機微は繊細に描かれていて、泣けるんですよね。キン泣きです。凄いことですよコレは 先ほど書いたように、旧シリーズの「キン肉マン」は、低年齢向けです でも、完璧超人始祖編は、低年齢向けではありません いや、低年齢が読んでも面白いとは思うのですが、むしろ、現実を味わった大人が読んでこそ、非常に強く染みる作品なのです だから、「キン肉マンだから」という理由で読まず嫌いしている人にこそ、是非読んで欲しい(ただし前述のようにハードルは高い) あと、最後に注意点 キン肉マンは、「ドラゴンボール」とか「北斗の拳」と同じくジャンプ作品ですが、その大きな特徴として、「戦いは全部プロレス」というのがあります 「キン肉マン」ファンは、これはもう当然のことだと思ってるので、誰も教えてくれませんが、初めて読むとき、これは結構面食らうと思います。というか私は面食らいました。 悪魔とかが攻めてきてるのに、なんでプロレスやってるんだ?と 一応、作中でいろいろ設定はあるのですが、あまり気にしなくていいです そういうものだと思ってください。そういう作品なんです ですので、登場人物は、気功砲とか撃ちませんし、一撃で相手を殺したりもしません(一部例外はある) 基本的に、プロレス技で戦います(ただし人間には不可能な技の場合が多い) 戦いの舞台は全部、リング上です 後楽園とか、東京ドームとかで戦います。荒野で戦ったりもしません というか、荒野で戦う場合でも、荒野にリングが設置されて、そこで戦います 地下からリングがせり上がってきたりします 多対一の戦いとかもありません(タッグ戦はある) あと、観客と実況とレフェリーがいます。パイプ椅子とかあります 何なら煽りVTRとかもあります 決着は、カウントとか、場外とか、そういう感じで決まります。プロレスですからね 以上、キン肉マン初心者講座でした。気になった方は是非この機会に、キン肉マンの世界に触れてみてください あと、「完璧超人始祖編」を最後まで読んだら、「本田鹿の子の本棚」の、この作品も読んでおきましょう https://leedcafe.com/webcomic/%e6%9c%ac%e7%94%b0%e9%b9%bf%e3%81%ae%e5%ad%90%e3%81%ae%e6%9c%ac%e6%a3%9a%e3%80%80%e7%ac%ac46%e8%a9%b1/

徳田虎雄物語 トラオがゆく

超パワフル自伝漫画

徳田虎雄物語 トラオがゆく
toyoneko
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最近、都知事選がありました 私はいわゆる泡沫候補が好きなんですが(又吉イエスとか外山恒一とか)、 いろいろ調べていたところ、「日本インディーズ候補列伝」という 泡沫候補へのインタビューなどをたくさん収録したノンフィクション(又はエッセイ)が存在することを知り (なお作中では「インディーズ候補」という呼び方をしています)、 さっそく購入、少しずつ読み進めていました https://www.amazon.co.jp/dp/B077TJC94J 良い本でした 山口節生、羽柴秀吉など、その筋には有名な人を取り上げてもいますし、 泡沫かと思われたが見事当選してしまった、そのまんま東とか田中康夫とかも取り上げられており、 バラエティに富んだパワフルな候補者たちの話は、読むだけで元気になってきます そして、その中の一人として登場するのが、徳田虎雄です 肩書は「医療法人徳洲会の創設者」 あぁ先日亡くなったということでニュースでやってた人だ、 この人泡沫候補だったのか?と思って読み進めてみると、まぁとんでもない人でした エピソードはこんな感じ ・ 24時間体制の病院を作った ・ 小さな島にも総合病院を作った(徳田虎雄の出身地は鹿児島県の徳之島) ・ 全国各地に100か所以上の病院や診療所を作り、徳洲会を日本最大の医療法人、医療事業グループにした ・ 銀行がお金を貸してくれないので高額な生命保険に入って(最終的には27億3000万円)、受取人を銀行にした ・ 全国に病院を作ろうと思うと医師会の反対があるので、選挙に出て、国会議員になった ・ 自民党に誘われたが、医師会の反対で3日で追い出された ・ 仕方が無いので自分で自由連合という政党をつくり、100人以上の候補者を擁立して、ほとんど落選した ・ 自由連合の候補者は、堀田祐美子(プロレスラー)、佐山サトル(初代タイガーマスク)、山口節生、羽柴秀吉など まぁ泡沫候補といえば泡沫候補なんですが、 やっていることがあまりにも凄すぎて冗談にしか聞こえません。何この人 しかも「トラオがゆく」という自伝漫画を出しているということで、 さっそく買ってみました。それがこの作品です 内容は… とにかく絵も内容も濃い!です 何もかもが濃い 正直、エピソードの繋がりとか変ですし、 ちょっと絵も荒れてますし、 あまり読みやすいタイプの漫画ではないのですが、 込められた情念が強すぎるので読めてしまいます 何度か「生か死かだ!!」みたいなセリフが発せられます(添付) 世の中には、こういうことを言う人は存在します でもほとんどの人は、そんなこと本気では思ってない しかし、どうも徳田虎雄はこれを本気で有言実行しており、 だからこそ、日本一の医療法人グループを作り上げることができたのだと思います 医師会が徳田虎雄のやり方に反対するのも、正直分かるんですよ おそらくほとんどの医師は、患者の生命を救いたいし、そのための努力はしている でも、一方で、普通に休んだりもしたいし、遊んだりしたいとも思っている しかし徳田虎雄は、「生か死か」の精神で、 自分の命すら掛金にして、24時間体制の病院を作り上げ、 理想に向かって邁進し続けている これは怖い。当時、医師会からは徳田虎雄が異常者に見えていたのではないかと思います 「理想」をとるか、「現実」をとるか 私は「現実」をとったので、「理想」をとった徳田虎雄の生き様は、 輝かしいと感じると同時に、負い目をも感じてもしまいます そういうエネルギーに満ちた作品です ちなみに、別の人の作画で、 「明日はいい日だ」「生命だけは平等だ」という自伝漫画も存在するようです(読んでない) 電子版は、kindleにはありませんが、イーブックジャパンなどにはあります

トーマの心臓

「トーマの心臓」初読感想

トーマの心臓
toyoneko
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私は、自分では漫画オタクのつもりなのですが、結構読んでない作品はあります。特に萩尾望都作品。 大学の漫研で萩尾望都を知って、いろいろ人に勧められましたし、私の嫁も萩尾望都が大好きですし、以前在籍していた職場の上司も萩尾望都が好きでしたし、その他にも、業界での圧倒的な評価とか、「漫勉」のときのTwitterの盛り上がりとか、そういういろいろがあって、知識としては、凄いというのは分かってました。 でも、ほとんど触れてこなかった。 以前、「ポーの一族」を少しだけ、あと「半神」を読んで、良いには良いのだけど、それほどのものかな…?と感じて、それっきりでした。 「百億の昼と千億の夜」は好きでしたが、でもこれはどちらかというと光瀬龍作品でしょうか。 ところで、最近、「トーマの心臓」のプレミアムエディションが発売されました。 https://shogakukan-comic.jp/book?isbn=9784091793799 雑誌サイズでカラーも完全収録の凄いやつですが、これを嫁が買ってきたんですよね。 ということで、いい機会だから、遂に「トーマの心臓」を読んでみた、という話です。 そのうえで、感想ですが… 凄かった。これは凄かったです。まごうことなき名作でした。 まずストーリー展開やキャラクター造形が上手い。単純に面白い。 しかしそれ以上に、「愛される資格」とか、「愛に殉ずること」とか、重すぎるけど一方で青臭くもあるテーマを、 ギムナジウムという世界観を中心に据えることで繊細に描ききるという手腕が衝撃でした。 今読んでもこんなに衝撃なのだから、直撃世代がどれほどの衝撃を受けたのかがわかります。 やはり萩尾望都作品はいろいろ読まなけばならないと思い知らされました…。読みます!とりあえず一度ポーの一族を読みます! 読んだことない方もこれを機に是非…! でも幾つか注意点があります。 1 絵は大変綺麗ですが、さすがに古いです。最初は面食らうかもしれません。 2 この時代の少女漫画はみんなそうだと思うのですが、少年愛(BL)は「当然のもの」として描かれます。 これはもう、そういうもんだと思ってください。 3 プレミアムエディションはとても良い本ですが…これでもかというくらい、でかくて重いです。百科事典みたいです(それでも一気に読み切ってしまうほど面白かったのですが。)。 正直、コレクション用です。最初に読むなら、電子版とか文庫版をおすすめまします。

人形紳士 少女探偵・火脚葉月 最後の事件

根本尚先生の話

人形紳士 少女探偵・火脚葉月 最後の事件
toyoneko
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根本尚先生は、秋田書店系の雑誌にギャグマンガを執筆している漫画家です。 週刊少年チャンピオンを長年読んでいた方でしたら、「現代怪奇絵巻」は印象に残っていることと思います。 なお現代怪奇絵巻は単行本化未了でしたが(厳密には、一部の話のみ、シーモア限定で読めます。ただし携帯電話用のものなので、パソコンからは読めない。)、連載終了後の書下ろし部分は、最近kindleにまとまりました。 https://manba.co.jp/boards/196294 長らく不遇の時代が続いていたのですが、趣味で描いてコミティアで売っていた本格ミステリの「怪奇探偵・写楽炎」シリーズが、ミステリマニアとミステリ作家にウケて、非常に高く評価されたことから(具体的には、芦辺拓・有栖川有栖・二階堂黎人)、文春デジタル漫画館のラインナップに加わることとなりました。 https://manba.co.jp/boards/102998 …が、私が語りたいのは、「それ以外の作品」の話です。 まず私が好きなのは、「札幌の六畳一間」シリーズ。 https://manba.co.jp/boards/177553 エッセイ漫画です。具体的には、貧乏漫画家である主人公(根本先生)が苦労する様を赤裸々に描くコメディエッセイです。 皆さん好きでしょう、漫画家が貧乏生活を送るエッセイ! 「札幌の六畳一間」「続・札幌の六畳一間」「札幌の六畳一間 無料編」などがありますが、アンリミ又は無料で全部読めます。 ここから派生して、「競売物語」もあります。これはツイッターでそこそこバズってました。 https://note.com/nemotosho/n/nd6099a76df12 根本先生のエッセイ漫画は非常に面白く、「90年代ミステリ漫画講座」も良くできています。私はこれを読んで「監察医SAYOKO」を買いました(でもまだ読んでない。)。 https://note.com/nemotosho/n/n576e649d2598 https://note.com/nemotosho/n/nd98daacdbcd6 次に、「タイムスリップ・コレクター」。 https://manba.co.jp/boards/196295 初出はコミティアらしいのですが、最近電子化されて普通に読めるようになりました(これもアンリミで読めます。)。 根本先生は古書が趣味らしいのですが、「過去にタイムスリップして、現在ではプレミアがついている本を入手できたら…」という着想から生まれたと思われる作品です。 アイデアそのものはそれほど革新的というわけではないのですが、「実際にそうなった場合に直面するであろう苦労」が様々に描かれていて、楽しい作品です。 そして最後に、今回何より紹介したかったのが、「人形紳士」です! https://manba.co.jp/boards/196296 もともとは、今年の3月ころ、根本先生が272頁を一気に書き下ろして(ただしサインペン一発書きでネーム状態)、noteに発表した作品なのですが、私は存在自体を知りませんでした。 知るきっかけとなったのは、以下のツイートです。 https://twitter.com/mysteryEQ/status/1725849354626613601 ミステリ好きが選ぶ年間ランキングで、この作品が1位(ただし非小説作品内での1位)に選ばれた、という内容です。 へーそうなんだあ、しかも無料なんだ読んでみるか、と手を出してみたのですが…いやあ… 傑作でしたよ!! 根本先生の「怪奇探偵・写楽炎」シリーズはですね、マジで「本格」なんですよね。 つまり、トリック重視で、ある意味で、ドラマ部分はそれほど重視されない。まぁ変な犯人はいますが、主人公側のキャラクターは弱い。 これに対して、「人形紳士」は、トリックも良いのですが、それよりもとにかくドラマ部分、特に、主人公たちの関係性が良いんですよ。まさかの青春ミステリ!エモい! 根本先生がこういう作品を描けるというのは本当に新鮮な喜びなんですが、贔屓目なしでも名作であり、是非もっとたくさんの人に読まれてほしい作品です。 noteでも、kindleでも無料で読めますので、皆さんガンガン読んでください! なお、発表当時のツイッターでの反応が以下にまとまっています。 https://togetter.com/li/2099294 ぜひまたこういう方向性の作品を発表してほしい(なおそのときには普通にお金を払わせてほしい。)。 なお、サインペン一発書きで、ちょっと読みづらいところもありますので、ぜひ別の人の作画で読んでみたい作品でもあります。 どこかの編集部の方、よろしくお願いします!

MOGUMOGU食べ歩きくま

ナガノはちいかわ作家じゃない。

MOGUMOGU食べ歩きくま
アフリカ象とインド象
アフリカ象とインド象

ナガノ氏のすごいところは、そのバランス感覚だと思う。 「ちいかわ」で言うなら、 万人受けするかわいいキャラクターと、 少し毒のある世界観の両立。 「自分ツッコミくま」LINEスタンプで言うなら、 気軽な使いやすさと、 我を出しすぎないちょうどいい面白さ。 需要と表現の間を完璧にとらえる客観性。 そのバランス感覚がこそが氏の突出した部分である。 そしてそんなバランス感覚は本書「MOGUMOGU食べ歩きくま」でも、 遺憾なく発揮されている。 本文で語られることはあくまで作者視点の体験である。 エッセイである以上、主人公は作者自身であり、 そこで描かれる思想はストーリー漫画よりも直接的に読者に伝わり、 大なり小なり読者の思想との相違がある。 それがエッセイ漫画のクセであり味であるはずなのだが、 本作ではそういった作者の「クセ」にさえ共感してしまう。 高級店で食事をした時に隣の人を見てマナーを真似したり、 コース料理をアトラクションの楽しさに例えたり。 誰もが感じたことがあっても言葉にはしていなかった 「ちょうどいいあるある」が作中の節々でビシビシと投げられる。 それらはあくまで淡々と、しかし感情豊かに。 この落ち着いたテンポの良さに、読んでいて安らぎを感じる。 違和感なく自然に読めるのに、 「気持ちのいい引っ掛かり」は「作品のクセ」と理解した上で、 小気味よく用意されている。 究極の自己プロデュース力を持った作家、それがナガノ。 我々は常に彼の手のひらで転がされているのである。