2018年の1月に亡くなったマンガ原作者、狩撫麻礼(かりぶ・まれい)氏。
漫画原作者の狩撫麻礼(土屋ガロン、ひじかた憂峰)さんが逝去されました。弊誌では、漫画アクション50周年にお祝いのコメントを頂いたのが最後の原稿となりました。担当になってから22年、沢山の事を教えていただきました。感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございました。(編集長・H)
— 漫画アクション編集部 (@manga_action) January 15, 2018
1979年『East of The Sun, West of The Moon』(画・大友克洋)でマンガ原作者としてデビューして以降、『青の戦士』(画・谷口ジロー)、『迷走王ボーダー』(画・たなか亜希夫)、『ハード&ルーズ』(画・かわぐちかいじ)など多くの作品の原作を手がけてこられました。90年代半ばには「マンガ原作者、狩撫麻礼」の名前を捨て、土屋ガロン、ひじかた憂峰など数多くの別名で活動していた作家としても知れています。
狩撫氏が得意としていた泥臭いハードボイルドな作風は俳優や映像業界のファンも多く、これまで多くのマンガ作品が映像化されてきました。
例えば、『ア・ホーマンス』(画・たなか亜希夫)が松田優作監督・主演で映画化、『オールド・ボーイ』(画・嶺岸信明)がパク・チャヌク監督、スパイク・リー監督でそれぞれ映画化(パク監督作は第57回カンヌ国際映画祭グランプリ)、『湯けむりスナイパー』(画・松森正)が大根仁演出・遠藤憲一主演でドラマ化などなど……マンガを読んだことなくても、これらの映像作品を観たことあるという人も多いでしょう。
さて、ここからが本題なのですが、昨年の11月、狩撫氏のファンサイト「ツキノウタゲ」に「狩撫麻礼追悼本が双葉社から刊行される見込みです。複数の出版社の合同企画にて、多くの関係者が寄稿されます。時期はまだ不明。」という書き込みがされて以来、今か今かと待っていたファンみなさん……
ついにぃ〜〜〜〜〜7月23日に発売されるそうですよ〜〜〜〜〜〜!!!!
タイトルは『漫画原作者・狩撫麻礼 1979-2018《そうだ、起ち上がれ!! GET UP,STAND UP!!》』、満を持して双葉社より発売ですっっっっ!!!!!
狩撫氏といえば、これまで双葉社、小学館、KADOKAWA、日本文芸社など多くの出版社から作品を出してきました。今回なぜ双葉社からこの追悼本がでることになったのか? マンバ通信はこの追悼本の編集を担当された双葉社の平田昌幸さんにお話を伺いました。
昨年1月に狩撫さんが亡くなった際、双葉社、小学館、KADOKAWA、日本文芸社の各社の担当者が集まり、今後の事を話し合った結果、四社共同で7月に「狩撫麻礼さんを偲ぶ会」を開催しました。
その際、狩撫さんのデビューが双葉社というお付き合いの長さから、双葉社が代表を務めさせていただきました。
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追悼本を出そうという構想は亡くなった直後から考えてはいたのですが、当初は双葉社単独で編集する予定で、手伝ってもらえるフリーの編集者さんを探していたところ、ある版元(漫画を出している版元ではありません)の編集者に相談したら「狩撫さんの追悼本を出そうとウチでも企画をしたのですが、狩撫さんは一切表舞台に出ない人だったので、分からないことが多すぎて断念しました。追悼本は、その人となりを良く知る人じゃないと作れないですよ」と言われ、まっさきに頭に浮かんだのが小学館・KADOKAWA・日本文芸社の各社担当者の顔でした。「偲ぶ会」終了当日の夜、四社共同による追悼本作成をお願いし、みなさんからご快諾をいただいた次第です。
それと同時に、前述の追悼本を断念した版元の編集者の言葉もあり、《作家・狩撫麻礼の実像が浮かび上がる》本にしよう、という基本コンセプトが決まりました。
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この追悼本は、参加していただいた皆さん一人一人の狩撫さんへの熱い思い、すべてが見所です。
その中でも、デビュー前の貴重な様子を語っていただいた劇画村塾第一期生の同期である高橋留美子さん、山本貴嗣さんをはじめ、狩撫さんのターニングポイントに関わったかわぐちかいじさん、いましろたかしさん、カネコアツシさん、嶺岸信明さん、松森正さんにはインタビューさせていただきました。
それから、「らくえんのうた」「ツキノウタゲ」というファンサイトに集まった読者の方たちと協力し、《不完全》作品リストを制作しました。狩撫さん本人も把握していなかったので《不完全》とならざるを得ないのですが、読者の皆さんの情熱の結晶です。
*実は追悼本を出すこと自体、「けっして騒がぬように」という狩撫さんの遺言に逆らってしまった……という思いはあります。でも、狩撫麻礼という漫画原作者が存在したことを、記録として残さなければいけないという使命感がありましたし、何よりもこの本に関わっていただいたすべての人の狩撫さんへの想いを一冊にまとめることができ、感無量です。
派手なことを嫌い、表舞台へ登場することもほぼ無いままにこの世を去った狩撫氏。
彼のことを心から愛する人々によって作られたこの追悼本には、これまで読者が目にすることのできなかった狩撫麻礼という人間の軌跡がしっかりとおさめられていることでしょう。彼がどのようにしてマンガ家たちと向き合い、数々の原作に取り組んでいたのか……ぜひ、これを機会にこの本を手にとってみてはいかがでしょうか?
【発売情報】
『漫画原作者・狩撫麻礼 1979-2018《そうだ、起ち上がれ!! GET UP,STAND UP!!》』
狩撫麻礼を偲ぶ会(双葉社・小学館・KADOKAWA・日本文芸社)・編
双葉社より7月23日(火)頃発売(一部書店を除く)/ A5判 定価1800円+税
【寄稿者】※五十音順
相原コージ、秋吉理香子、新井英樹、いしかわじゅん、和泉晴紀、いとう耐、いましろたかし、岩崎夏海、浦沢直樹、江口寿史、大根仁、押見修造、小幡文生、柏木ハルコ、角田光代、加藤広大、カネコアツシ、かわぐちかいじ、きらたかし、王欣太、河野那歩也、櫻井稔文、すぎむらしんいち、鈴木健也、須藤真澄、須本壮一、関川夏央、高橋留美子、田亀源五郎、武田裕明(TKD)、竹谷州史、たなか亜希夫、田辺剛、張慶二郎、寺田克也、ナガテユカ、仲能健児、中村真理子、羽生生純、ハロルド作石、古澤健、ブルボン小林、松本大洋、松森正、嶺岸信明、向井康介、守村大、山崎紗也夏、山下敦弘、やまだないと、山本貴嗣、吉本浩二