マンガの編集部に赴き、編集者が今おすすめしたいマンガやマンガ制作・業界の裏側などを取材する連載企画「となりのマンガ編集部」。第16回は、秋田書店プリンセス・ミステリーボニータ編集部を訪ねました。歴史ある女性向けのレーベルで、近年でも各アワードで上位を飾り存在感を放つ『海が走るエンドロール』や『天幕のジャードゥーガル』なども手掛けている、編集部の山本さん・小山さん・津田さんのお三方にお話をうかがってきました。
取材:マンガソムリエ・兎来栄寿
クラスメイトのために雑誌を作った
――最初に、みなさんの担当作品を含めた自己紹介をお願いします。
山本 山本です。『月刊プリンセス』や『プリンセスGOLD』などの少女マンガ雑誌の編集に入社時から携わっておりました。その後、弊社の少女マンガ編集部が一つになったことで、『月刊ミステリーボニータ』にも関わることになりました。今は『海が走るエンドロール』などを担当しております。
小山 小山です。私は入社時は『月刊プリンセス』編集部に配属され、その後一時は『週刊少年チャンピオン』編集部で『Gメン』や『ダーウィンズゲーム』を担当して、現在は『ミステリーボニータ』では『ぼんくら陰陽師の鬼嫁』、『天上恋歌~金の皇女と火の薬師~』などを担当しております。
津田 津田です。私は入社時は『Eleganceイブ』編集部に在籍し女性誌作品やTL作品を担当させていただき、3年ほど前に異動してきました。この編集部では『バットゥータ先生のグルメアンナイト』や、掲載自体は『月刊ミステリーボニータ』ではないんですけれどもボニータレーベルの『天幕のジャードゥーガル』などを担当しております。
――みなさんが編集者になったきっかけを教えてください。
山本 小学生のころ、クラスメイトの女の子が転校生の男の子を好きになり、その子から「彼の情報を集めて欲しい」と頼まれたんです。それで彼にインタビューをしたり、「サインください!」と言ってサインをもらって付録とかも付けたりして情報誌を作りました。それがきっかけになっているかもしれません(笑)。
大学のときにも機関誌を作る活動をしていて、それで雑誌作りみたいなものにも興味は持っていたんです。ただ秋田書店を受けた時は営業志望だったんです。面白いマンガがもっと売れてほしいなと。でも研修でいろいろ巡ったら、マンガ編集は面白いなと思ってそちらを志望してしまいました。
小山 正直、大学3年生ぐらいまで全く出版社とかは考えていなくて。当時外国のことを勉強していたので、海外に行く仕事がしたいなと漠然と思っていたんですが、3年生になり、ちょっとそろそろ就職を考えようかなっていうときに、アニメイトさんでバイトをしておりまして、書籍フロアで働いていてすごく楽しかったんです。当時から漫画もアニメも大好きでしたので。
それで、長い人生、働くのであれば、毎日趣味のことに携われる仕事がいいのではと思いまして……私は思い込んだら0か100かというタイプなのでそこからすぐに出版社を受けるための外部のゼミに入って、就職活動は出版社に限定して行いました。
津田 私は秋田書店へは転職で入っていて、前職は他の出版社なんです。編集者になったきっかけは、まず就職活動のときに私はあまり自我が芽生えていなくて(笑)。当時の私目線で食いっぱぐれがなさそうな他の業界を受けて内定をいただいていたんですが、入社式の時期にちょうど前職の採用を見つけたんです。それで、今思い出しても不遜な就活生だと思うんですけど…どんな人が作ってるのか会いに行きたいと思って。
私は地方の学生だったのであまり頻繁に東京に来れなかったんです。でも入社式のときって交通費を出してもらえるんですよ(笑)。なので、交通費も出してもらえるし、日程もぴったりだし、行ってみようと思って行ったら、それまでの面接で一番面白くて。え、こんな楽しい仕事があるんだ、と衝撃を受けました。漫画は子どものころから大好きだったんですが、編集者という職に当時の私はあまり現実味がなかったんです。
でも内定をいただけることになって、何も知らないところから拾ってくれた前職には本当に感謝に堪えないです。今、秋田書店でもとても楽しく仕事をさせていただいています。
連絡だけはください
――皆さんが編集者をやっていて楽しい瞬間・大変な瞬間をそれぞれお聞かせください。
山本 楽しい瞬間は、打ち合わせ後にいただいたネームが想像していたものよりすごく面白かったときですね。先生はこう考えていたんだ、って。
小山 いただけたものがすごく面白かったり、カラーイラストがめちゃくちゃかっこよかったりすると、「わー最高!」と、もうテンションがバーッと上がります(笑)。
大変なことは……いっぱいありますね(笑)。作家さんと連絡が取れなくなっちゃう時はとにかくハラハラですね。
津田 あれが一番きますね。
小山 嘘の進捗を言われて、もう大丈夫だ、あと数時間で上がると思っていたら連絡がつかなくなり、「すみません、さっきのは全部嘘で10枚まだ全部真っ白です」と言われたり。正直に言っていただければ、その後の対応策がとれるのでなんとか連絡をいただけると……(涙)。
山本 デジタル原稿ですとアシスタントさんもオンラインで入られるため現場には人がおらず、作家さんはお1人で作業されてることが多いんです。最悪何かそういうことがあったのかなと心配にもなるので。
津田 本当にそうですね。心配なので連絡をしてほしいです。
――私も締め切りに追われる方なので気持ちは解ってしまいますが、これを読んでいる作家さんはぜひ正直に進捗を報告してください……!(笑)
――今、編集部が推したい作品を教えてください。
山本 まずは『リストルージュ』という作品です。
灯晴ほく先生が他社さんに出して落選されてしまった作品がX(旧Twitter)に投稿されたもので、たまたま読んですごく面白かったんですよね。自分はこれは愛の話だなと思いまして。それで、少し改稿をして『ボニータ』に載せませんかとお声がけをして。
折角ならお話をずっと続けていけたらいいなと編集長に話を持って行ったら許可も取れて連載に至り、8月にコミック1巻が発売となります。
――私も最初にSNSで読んだときにすごく良いマンガだなと思いました。それが読み切りとしてまず載って、連載化するとなったときにはどういう話になるんだろうと思っていたのですが、ああこういう風になるのかと楽しませていただいています。
山本 これからますますみなさまとこの物語を紡いでいけたらと思っています。応援よろしくお願いします。
津田 次は、『国を蹴った男』という歴史小説をマンガ化させていただいた作品です。
原作が伊東潤先生で、吉川英治文学賞も受賞されている作品です。幾花にいろ先生は私が前職から担当させていただいている作家さんなんですが、色気のある非常に魅力的な絵を描かれる方です。
原作は今川氏真のお話で、一般的には戦国時代ものって勝者の方がよく題材になると思うんです。でも氏真は失っていくばかりの人生のように思われながら、割と人生をエンジョイしていて。勝ち組・負け組で分類されると負け組の人生のように思われるけど、それって本当に負け組なのかなと。現代の競争社会の中で、そういった人生も存在しているというところを読んでいただきたいです。
――「国を蹴る」の蹴る部分がしっかりヴィジュアルとして象徴的に描かれるのもマンガならではで良いですよね。
津田 そうなんです、蹴鞠が重要モチーフのお話なので。氏真が鞠を蹴る姿、幾花先生の筆致で本当に美しく描かれてます!端正で達観したような氏真の、もの悲しさと美しさも、改めて漫画の形ですばらしく表現していただいてると思いながら担当しています。
山本 もうひとつ、『いつか死ぬなら絵を売ってから』というぱらり先生の作品です。
金と現代アートの組み合わせが新鮮でした。美術とか芸大マンガもいろいろとあるんですけど、その中でお金というところに焦点を当てている作品は非常に珍しいんじゃないかと。
「この絵ってなんでこんなに値段するんだろう?」と思われたことがある方は多いと思うんですけど、値段の付け方とかどうして価値が上がっていくのかとかそういったところを描いているので、マンガ的な面白さに加えて投資的な視点で見ることもできて面白い作品です。
――マンバの中でもすごく人気があって、感想・レビューが8件くらいついている上に全員が星5をつけています。
山本 ありがとうございます! 素晴らしい読者さんですね(笑)。
すごく熱烈なファンの方々に強く支えていただいている作品です。シリーズもいろいろあって長いので入りにくいと思われるかもしれませんが、どこのシリーズから読まれても面白いですし、電子版も出ているのでオススメです。
――作品を作っているときの裏話などがあれば教えてください。
小山 青木朋先生の『天上恋歌~金の皇女と火の薬師~』は、連載がはじまる前ずっと打ち合わせをしていて、締切の数か月前くらいに題材を急に変えたんです。はじめは、同じ北宋が舞台ではあったんですが、現在の皇女が主人公のお話とは違っておじさんがネズミに変身する話でしたね(笑)。
津田 初めて聞きました(笑)。
小山 青木先生に許可をとったので内容に少し触れると、ネズミの姿になってしまう妖術をかけられたおじさんと少女が旅をしながら陰謀と戦うという話でしたね。中華ものではありますが、妖術というファンタジー要素がありました。
好きな作品やグルメ情報で盛り上がる編集部
――次に編集部の方についてお伺いしていきたいんですけれども、今編集部は何人ぐらいでやられてるんでしょうか?
山本 11人で『月刊ミステリーボニータ』と『月刊プリンセス』と『プチプリンセス』と『カチ COMI』というBL誌の4誌を担当しています。他、『Souffle』や『チャンピオンクロス』などに担当作を持つ編集者もいます。
――11人で4誌だと大変ですね。
山本 大変です! 人が欲しい(笑)。
――編集部内で今流行ってることはありますか?
津田 『ちいかわ』ですね!(食い気味に即答)
小山 更新されると、一瞬仕事の手を止めます(笑)。
津田 小山さん早いですよね。
小山 通知が来たら、すぐに津田さんや山本さんに「見ましたか!?」とつい話しかけてしまいます。
津田 あ、通知つけてるんですね(笑)。
小山 みんな以前から好きで、編集部ではちいかわのフィギュアとかを机の上に置いている部員も結構いますね。
――『ちいかわ』はどの辺が刺さってらっしゃるんですか?
小山 『かわいそかわいい』ところです(笑)。
津田 かわいい生き物が世知辛い目に遭うことで、逆に現実を痛烈に感じますね。商業的なラインとしても成功してらっしゃるので、編集者としても気になる存在です。
山本 マンガ上手いな~と思います。
――編集部の皆さんがおすすめのお近くのグルメがあれば教えてください。
津田 「咖喱人」です。秋田書店から30秒ぐらいのところにあるエスニックカレーのお店です。本当に美味しくて大好き!定番のキーマカレーやチキンカレーにプラスして、定期的に期間限定メニューもあって、いつ行っても飽きない。おすすめです。
小山 九段下に「ぴえもん」という和風パスタが美味しいお店があります。私は気に入ったものがあると永遠に同じものしか食べないので(笑)、「梅しそ納豆」以外注文したことがないのですが、美味しいのでぜひ行っていただきたいです。
――以前のマンガクロス編集部へのインタビューの際にも「ぴえもん」を挙げていただいて、そのときは「ツナたらこいか納豆」を絶対に食べると仰っていました(笑)。ぜひ行ってみたいです。
小山 あと、最近だと「スフィンクス」です。
山本・津田 あぁ~~~!!
小山 同じく編集部で作っている雑誌『月刊プリンセス』では古代エジプトを舞台にした『王家の紋章』という作品があり、担当させていただいているのですが、秋田書店のすぐ近くに昨年ものすごく映える感じのエジプト料理屋さんがオープンしたんです。店内のディスプレイとかがとにかく素敵です。
山本 ここから東京大神宮の先にある「オールドタイランド」というお店も美味しくて好きです。そこの謎のすっぱ辛いスープが好きで。
――では、編集部が自慢できることを一つ挙げるとすると何でしょうか?
津田 新しいものに挑戦していこうという意識を感じます。企画も現状今これが売れてるからこれでいこう的な感じにとどまらず「世の中でこういうものが求められてるかもしれない」とか「先週観たこの映画の、こういうところが面白かった」といった話ができる編集部なんです。
小山 確かに、部員同士で見たものや流行っているものの共有は結構しますね。情報交換を兼ねた雑談というか…これが面白かった、あれが良かったとか話してます。
津田 毎月作家さんや関係者の方に編集部全員で献本を送る業務があるのですが、その時手をバババッと動かしながら「あの作品がさあ!」「◯◯と××どっちが好き?」みたいな話をすごくします。忙しい合間に、高速でエンタメ情報交換するのが楽しいなと(笑)。
――特に最近皆さんで注目したコンテンツはありますか。
山本 ここ最近だと映画『マッドマックス:フュリオサ』が面白かったです。大河ドラマ的作りで、ラストに痺れました。
津田 今はドラマ『虎に翼』も盛り上がってますね。作品自体も面白いし、漫画作りの視点からもキャラクターの立て方や伏線、演出など学ぶところが多いですね。観ていてつらい描写も多いですが、毎日楽しみです。視聴中の方にめちゃめちゃ話しかけてしまいます。
小山 Netflixオリジナルだと6月から配信されている『セーヌ川の水面の下に』はとてもお薦めです。フランスのセーヌ川に淡水に適応したサメが来てしまい…というストーリーで、途中まではすごく真面目なサメ映画だなと思ったんですけど、どんどんいい感じにイカれていって、ラストは衝撃的でした。あと、サメ映画のモデルになるサメはホオジロザメが多いんですけど、この作品のサメは『ディープ・ブルー』と同じアオザメなのでシュッとしててかっこいいです。
津田 小山さんはサメ映画のガチ勢なので(笑)。
人生に多大な影響を与えた作品たち
――「編集者が繋ぐ思い出のマンガバトン」ということで毎回編集者の方の思い出のマンガ作品をお聞きしているんですが、人生を語る上でこれは欠かせないという思い出のマンガを挙げていただけますか。
山本 田村由美先生の『BASARA』という作品が好きで何回も読み返しています。
小学校5年生ぐらいのときに読んで特に網走刑務所編に衝撃を受けました。主人公の更紗が刑務所内のボスに襲われてしまうかもしれないというときに、揚羽というキャラクターが自分が犠牲になり彼女を守るシーンがすごく印象に残っていて。少女マンガの中でも恋愛というより愛を描いた作品だと思っています。壮大な運命の中で愛し合うお話だったり、人間愛であったり、自分が好きなマンガを振り返るとそういう作品の方が多く、『BASARA』はマンガ観に影響を与えてくれた大切な作品の一つです。
小山 いろいろ考えたんですけど、私の人生を広げてくれたのは『テニスの王子様』ですね。
『テニスの王子様』は私がしっかりマンガを読むきっかけになった作品です。ちょうど私が小学校6年生から中学生になるくらいから連載が始まって、主人公の越前リョーマくんが同い年だったんです。それで、「あ、同い年の主人公だ」というところから気になって読み始めたんです。すごくかっこいいキャラクターがたくさん出てくるし、夢中になって読んで、中学校ではもちろん自分もテニス部に入りました(笑)。
私は地方出身なのですが、小6~中2まで東京に親の転勤で住んでいて、「ジャンプフェスタ」や「コミケ」などのイベントへ行き始めたのも『テニスの王子様』がきっかけだったんです。それで、当時自分は中学生だったんですが、イベントを通じて大学生のお友達ができて一緒に遊びに行ったりしていました。今考えるとよく中学生と大学生で遊びに行ってたなと思うんですけが、共通の好きな作品があるということで、一緒にイベントに行ったりコスプレをしたりと、すごく楽しい思い出です。間違いなく、今のオタクの自分を形作ったのは『テニスの王子様』だなと思えます。
もうひとつ、『鋼の錬金術師』に関しても。
高校のときにアメリカに1年間留学していたんですが、そのときは周りに日本語を話せる人もいなかったし、当時の私の英語の発音が悪すぎて言いたいことを言ってるつもりなのに「何を言ってるの?」と聞き返されたりして、全然伝わらなかったんです。そんな状況で辛かったときに、向こうで英語で吹き替えられた『鋼の錬金術師』のアニメが放送されていて。『ハガレン』はもともと大好きな作品で、元のセリフと内容を知っていたので、「ああ、この英単語はこういう意味なのか」とか、「このセリフはこういう言い回しになるのか」と、アニメを見ていることがリスニングと発音の勉強になって、それで英語力が確実に上達しました。そして、日本のマンガが好きな子も通っていた高校にいたので、『ハガレン』の話が会話のきっかけになったりもしましたね。日本のマンガコンテンツの力を感じた作品でもありますし、辛かった時期に支えになった作品です。
津田 私は『火の鳥』と、『日出処の天子』です。
両作とも物心つくころから実家の本棚にあり、未就学児のころから繰り返し読んでいました。世界のダイナミズムの面白さを知ったのは『火の鳥』からです。我々の住むこの宇宙はすごく巨大な生物の細胞のひとつかもしれないとか、私の細胞の中にもしかしたら宇宙があるかもしれないというような、今いるここからバッと意識を飛んでゆかせてくれるような読書体験がすごく多くあるなと。
人物造形も特に『鳳凰編』の我王と茜丸のお話などもものすごくて、小さいころは意味がわからないところもあったんですけど、年を経るにつれ理解できることが増えるところも含めて、一生を通して読みたいと思ってます。
『日出処の天子』に関しては、本当に王子のことがちょっと好きすぎて。人生を通してミューズ的に思っている存在です。子どものころは毛人の最終的な選択にたいへんな憤りを感じていて(笑)。なんで王子がこんなに好きって言ってるのに、別の女を選んで行くんだよと思っていたんですけど、高校生くらいになって、私はまだ納得できていないけど、きっと毛人には毛人の人生があるもんね…ぐらいの感じに段階的になってきたんです。
人と人とが本当の意味では理解しあえないかもしれないけど、理解しあえたような一瞬はたまに訪れたりするし、祈りにも似た気持ちで一緒に生きていきましょうねというようなことを学んで、私の人生に影響を与え続けている作品です。
野球とサッカー!
――編集者として現在注目している他社作品を教えてください。
津田 『ダイヤモンドの功罪』です!(即答)
山本・小山 (笑)。
津田 帯のキャンペーンに応募して綾瀬川くんのステッカーももらいました。
さきほど『日出処の天子』で言ったような人間としてのある種どうしようもなさというか、その中で足掻く姿がすごく描かれていて、とても魅力的な作品だと大注目してます。
山本 私たちが本当にハマっているのは……
山本・小山 『ブルーロック』!(笑)
小山 読み終わった後に誰かと感想を共有したくなる作品ですね。『マガポケ』が水曜0時に更新されたら即読んで、山本さんを含む『ブルーロック』好き仲間とLINEで感想を交わしてしまうくらい今はハマっています。
津田 『ブルーロック』はキャラクター造形がお上手ですよね。
小山 そうですね。キャラクターもとても魅力的ですし、試合中ボールをゴールに叩き込む瞬間がものすごくかっこよくて……金城先生の演出力と、ノ村先生、三宮先生の画力の素晴らしいコンビネーションに毎週感動しています。
最後には自分が面白いと思うものを
――同じ時代でマンガを作っている次の編集者の方へのバトンといたしまして、何かコメントをお願いします。
山本 編集歴が長くなるにつれて、作品を作る上で多分いろいろ考えなきゃいけないことってすごく増えてくるんですよ。どれくらい売れるかとか、面白いと思ってもらえるかとか……。いろいろあるんですけど、最終的には自分が面白いって思う部分は絶対に削らない方が良いと思います。上司とかに何か言われても、そこだけは絶対に変えない方がいいかなと。
流行ってるものって、ある程度の売上が想像できるんですけど、それだけだと編集者って多分あまり面白くないと思うんですよね。
――最後に普段『ボニータ』を読んでくださってる読者の皆さんと、この記事を読んでくださってる方に何かメッセージを一言ずつお願いします。
山本 いつも買って読んでくださって本当にありがとうございます。
小山 無料で楽しめるものがこれだけ溢れている中で、お金を払って作品を買ってくださってる、選択肢が多い中で選んでくださってるということに本当に感謝しかないです。
山本 本当に作品は描いただけでは終わらなくて、読んでくださる方がいてこそですので。
津田 いつもありがとうございます!これからも面白いと思っていただける作品を送り出せるよう努めますので、ぜひご注目ください!
小山 先日『チャンピオンクロス』がリニューアルしたばかりで今いろいろな作品の1話を無料で読めるので、ぜひお気に入りの作品を見つけて応援していただけたらありがたいなと思います。
――本日は以上となります。お忙しい中、どうもありがとうございました。
お三方それぞれがご自身の好きなものへの熱量が非常に大きく、また言語化にも長けていて、そうしたものを共有しながら作品を創っているということがひしひしと伝わってくる時間でした。非常に笑いも多いインタビューでしたが、その中でも物語を創造するに際して絶対に譲れない部分への強い意志とこだわりも端々から感じられ、それが心を揺さぶる素晴らしい作品へと繋がっているのだなと納得しました。少数精鋭で大変な現場かとは思いますが、今後も秋田書店の女性向け誌を応援しています。