アメリカに続きメキシコにもいられなくなった美影、腐敗した独裁国家ならなんとかなるやろ……と思って今度はバティスタ政権下のキューバに密入国するも、折悪しくカストロ&ゲバラによる革命闘争が始まり、さくっと革命軍に捕まります。共産思想とかにはこれっぽっちも興味がないが我が身は可愛い美影、同じ檻に入れられていた奴らが看守を買収して脱走を図っていることを密告し、速攻で革命軍のイヌに。
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密告が原因で処刑された人々を見ながら「これで間接的にもおれは大量の人間を殺した! おれって人間兇器に青春革命が起こるって予感がますますしてくるぜ!」などと謎の寝言(青春革命?)をのたまいつつ、革命軍のカラテ教師の座に収まりますが、女相手にいつもの残虐行為やってたのがゲバラの逆鱗に触れ50ページもしないうちにワアーッ。
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その後美影は、革命軍憲兵の命令で、バティスタの情婦だったマチルダという女がアメリカン・マフィアとともに出国しようとするのを妨害するという任務を与えられますが、催眠ガスを浴びて無事失敗。薄れゆく意識の中で彼が思ったのは「責任転嫁せにゃ」でした……。
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美影がクソの役にも立たなかったこともあってマフィアに女性兵士6人を人質に取られてしまった革命軍は、捕虜を解放させる条件として美影を引き渡すことにします。この決定に、カラテ教師であることをうっかり忘れられるほどの醜態を見せつける美影。
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マフィアに殺されると怯えながらアメリカに戻ったところ、ゲバラがしてくれていた配慮でなんとか命だけは救われます。これで大人しくしていればいいのに、キューバからの船の中で味わった屈辱の仕返しをしたくてたまらない美影は、マチルダを襲います。マチルダとねんごろになったのはよかったものの、これがマチルダの男であるマフィアの親分・ロッコにバレてしまい、いつものように醜態をさらすことに。
こうして、ロッコによって地下プロレスの舞台に上げられ、金持ちの娯楽であるデスマッチショーに出演させられることになった美影を救ったのは、意外にも烈山と薫子でした。人間の優しさに触れた美影は改心し薫子とともに日本へ帰途……と思いきや、途中立ち寄ったハワイで即裏切って逃亡。「大元烈山も外道カラテの追求をおれに期待しているのかも」などと都合のいいことを考えたりしつつ(それならせめて空手の腕をもっと磨いてくれ)、ロカビリーの帝王、ブルボン・バルチモアというセレブが丸々買って別荘としている無人島に辿り着きます。
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弱い相手にはとことん強い男・美影はバルチモア邸を占拠。「おれをナメるなよッ もっともジュニアはナメられてるが………」などという迷言を吐きながら、酒池肉林の宴を繰り広げることになります。
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もちろんこの天下は長く続きません。セックスの宴に夢中になってたらバルチモアに逃げられて通報され、全米に名の轟く大悪人として警官隊に屋敷を包囲されることに。最終的には乗り込んできた薫子にKOさせられて逮捕され、懲役二十年の実刑を食らいます。
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こうして監獄入りした美影は、オナニーをしながら「マスかきぬいて自殺できないもんか?」と「できるかバカ!」としか言えないことを考えつつ、烈山と薫子を裏切らなきゃよかったと後悔したりします。
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そんな美影、シャバで買った恨みから、彼を監獄内で殺すべく暗殺者が差し向けられたことが判明。「ヤダーッ」→「ワワッ」→「泣いちゃった!」と汚いちいかわ化します。
しかしこれは演技でした(こいつの場合、素でもいつもこうなので読者も演技を見抜けない)。暗殺者の投石を利用して鉄条網に穴を開け脱獄に成功すると、ガールスカウトを襲うなど罪を重ねて全米を恐怖のズンドコに陥れます。そんな彼の前に現われたのはまたも烈山。KOさせられて監獄に逆戻りすることになった美影は、股間に蹴りを受けてコツカケ状態にされ性機能を一時的に停止させられたりしつつ、烈山とともに刑務所で囚人への空手インストラクター業務をやることになるのでした。
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しかし、こうして強制的な禁欲生活を送らされることになると我慢できないのが美影義人という男。「つながれた安全より自由な破滅を!」と格好のいいことを思っては(いざ破滅したら「裏切らなきゃよかった」ってなるくせに……)、またぞろ烈山を裏切って逃亡します。
こうして逃亡者となった彼を拾ったのはCIAでした。彼に日系人として偽造パスポートを与える代わりに、コンサートのため日本に向かうイブ・レスリーというカリスマ反戦歌手を暗殺するよう指令を出します。革命軍の犬になったりCIAの犬になったり忙しい男です。
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そして美影は、この初任務に無事失敗。日本にたどり着いたはいいけど、今度はCIAからも追われる身となります(こんな奴に任務を与えたCIAの見る目のなさが悪い気もする)。そして、アンドレ・ザ・ジャイアント(がモデルのプロレスラー)にいつものように命乞いをしたりしつつ、ここまでで下がりきった株をさらに一段・二段下げるムーブをかました後(ここからさらに株を下げる余地があるというのが信じられないかもしれませんが……)、物語は最終回へと向かうのです。
長くなりました。いやー、本当に酷い話なんですが、先述の通りなぜかジェットコースター的エンタメとしてスイスイ読めてしまう傑作なのが不思議なところです。美影の醜態眺めてるだけで異常に面白いですからね(紹介したい名シーンはさらにごまんとあります。ぜひ自分の目で確かめてください)。なんというか、読み味が『神聖モテモテ王国』っぽい気もします。毎回ろくでもない計画を立てては失敗し、ギャワーと悲鳴を上げてはヤクザや警察相手に命乞い、そのくせ自信だけはなぜか全く失わないあたり……。
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カジ・センセの独特の台詞回しも冴えわたっていて、「だがよ ここでパンツさげシコシコとマスかくのは並みの青二才……… 美影義人は逆にズボンはく!」というセリフなどはまさに天才の仕事でありましょう。
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ちなみに、こんな本作の位置付けについてカジ・センセ曰く……。
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……こんな半自伝があるか!