かつて『やる気まんまん』(牛次郎+横山まさみち。途中から横山単独クレジットで『それいけ!!大将』にタイトル変更)という漫画がありました。77年から横山が死去する03年まで『日刊ゲンダイ』に長期連載されていた艶笑作品です。
ストーリーは、精力増強剤の老舗・四つ目屋本舗の当主である主人公・泊蛮兵が、次々とセックスファイトで強敵を破り四つ目屋本舗の信用を高めていくというもの。「セックスファイトって何だよ!」とみなさま思うかもしれませんが、本作以外にも、みなさまご存知『男!日本海』でも日本海がアメリカのペニスキラー(ペニスキラー?)、ペニー・シャブリとセックスで戦う回がありますし、
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その他にも『艶恋師』(倉科遼+みね武)とか先日亡くなった三条友美の『真夜中のアリスたち』、実は漫画界には連綿と「セックスバトルもの」という系譜があるのです。漫画評とかで取り上げられることがほとんどない作品ばかりから忘れ去られているだけで……。
セックスファイトは愛や恋など不要の命がけで厳しいものであり、
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と同時に真行草の三つの形がある道でもあります。
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セックスファイターたちは、読者が「限りある人生をこんなことに費やしていていいのか」と読者が思わず心配してしまうような厳しい修行をして様々な技を身に着けています。
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そして、本作の最大の特徴といえばオットセイのオットです。横山の艶笑ものにおいてはペニスはすべて動物として描かれており、その代表が本作で登場するオットセイなのです。人格を持っていて色々喋ったりします。
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そんな『やる気まんまん』、令和の世になってリメイクがなされました(どうしてそんなことを……)。一つが20〜22年に連載の山田参助『新やる気まんまん オット!どっこい』、そしてもう一つが今回紹介する23年連載の霧隠サブロー『新やる気まんまん 警視庁SEX捜査官』です。
本作の基本ストーリーは、サブタイトルでも分かると思いますが、増加するセックス犯罪に対応するため警視庁が新たに導入したセックス捜査官・男谷精六の活躍を描くというもの。この基本設定の時点で分かると思いますが、本作はとても頭が悪いです。何しろ、第1話の最初の一コマからこれ。
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壁の落書きが「SEKKUSU」ですよ。警察漫画(に含めていいのか)の歴史の中でもここまで頭の悪い冒頭はないでしょう。
それにしても「セックス犯罪」って何だよとみなさま思われることでしょうから、具体例を説明しましょう。精六が一番最初に対峙するセックス犯罪者は、ものすごい腕のフェラチオで相手を失神させ金品を奪う「連続フェラチオ魔」です。
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この連続フェラチオ魔・世羅千夜姫は、縮地と保護色を組み合わせることで大リーグボール2号のごとき消える魔フェラを繰り出してきます。
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こういうセックス犯罪者をセックスファイトで倒し逮捕するのが精六の役目なんですね。逮捕にセックスファイトの段階は不要ではと皆さん思われるでしょうし、精六の相棒である真希レイカは実際普通に暴力で逮捕しようとするんですが、セックス犯罪者にはセックスファイトで勝たないといけないんですよ! 考えるな。
精六はその後も、セックス犯罪組織・セクスデスがバックにいる違法セックスファイト「ザ・スーパーセックスバトル」を叩き潰したり、
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相模原市の山奥にあるセクスデスのセックスファイター養成施設・人の穴を叩き潰したりします。
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……本作、警視庁なのに神奈川県がおおむね舞台(精六がスカウトされた場所からしてわが町川崎市ですし、他も事件も横須賀市とか)ですが、まあ神奈川県警といえば当てにならないことで有名ですから仕方がないのでしょう。
そして、このようなセックス犯罪者と戦うために、精六はオットやキングオットー(金玉)などにさまざまなセックス技を駆使させます。左右の金玉を打ち合わせることで超音波を発生させる荒業「ゴールデンソニック」(精六の精神と肉体に大きな負担をかける)とか。
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「なぜそこまでして戦うのか」と皆さん思われるでしょうが、セックスファイトとは常に新たなるチャレンジを繰り返し人間の限界を超えるものなのだから仕方がないのです。考えるな。
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史上最悪のゲッターロボパロディもあるので永井豪・石川賢ファンもニッコリです。
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あと、本作の精六、バカではありますがこれでも警察官だけあって以下のように人としての尊厳はまだ持ち合わせています。
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この点については実は本家のほうが恐ろしくて、こっちの主人公・蛮兵は、このようにためらいなく中でションベンする「蛮兵」の名に恥じないルール無用の残虐ファイターだったりします。
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本家『やる気まんまん』、「セックステニス」など「セックス近代五種」での勝負になったりとおよそ正気でない展開が連発されるので、こちらもまとめて読んで皆さんも年明けから時間を浪費しましょう。
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