『咲-Saki-』決勝大将戦に向けて残っている伏線・因縁をまとめてみた

ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)で連載中の『咲-Saki-』が一つの大きな山場を迎えようとしています。単行本25巻発売にともなう休載期間も終わって『ヤングガンガン』No.11(2024年5月17日発売)掲載の第273局[大将]から連載を再開しており、そのサブタイトル通りに大将戦が始まろうとしています。『ヤングガンガン』No.12(2024年6月7日発売)掲載の第274局[頂上]ではついに大将の4人が卓に座り、次号の『ヤングガンガン』No.13(2024年6月21日発売予定)からはいよいよ決勝大将戦の闘牌が始まると思われます。泣くも笑うもあと半荘2回!

『ヤングガンガン』2024年No.12 『咲-Saki-』第274局[頂上]より。線が荒いため作画が少しだけ追いつかなかった様子)

ちなみに、宮永咲さんが麻雀を打つのは準決勝が決着した第153局[一閃](2015年12月29日掲載)以来となり、連載期間でおよそ8年半ぶりになります。8年半!?? え、マジで……? 

そんな『咲-Saki-』ですが、連載期間は18年を超えており、人間に換算したらもう成人です。前述の通りに現在も『ヤングガンガン』で連載中なのですが、これだけの長期連載になってしまうと生活環境や趣味・嗜好・興味・関心などの変化に伴って「離脱」してしまう理由はいくらでもあり、私のように最新話をずっと追い続けている人の方が残念ながら少ないことでしょう……。ながされて藍蘭島』『魔法陣グルグル2』『月刊少女野崎くん』と並ぶ、スクエニ4大・最新話や最新刊をちゃんと追っているファン以外に「まだ続いてたの!?」と言われがちな漫画四天王ではないかと思います。

長野編までしか読んでいないとか、アニメ化された全国大会2回戦あたりまでしか読んでいないとか、人によっていろいろな離脱ポイントがあるでしょうから、どこから読み返して再合流すればいいかも人それぞれですが、単行本ごとでのおおよその流れは下記の通りとなるのでご参照ください。

・2回戦:8~10巻

・準決勝:11~15巻

・5位決定戦:16~18巻

・決勝戦:19~25巻(進行中)

個人的には、19巻から始まる決勝先鋒戦が「バケモノたちの狂宴」といったド派手な試合展開がずっと続いて「そうそう!『咲-Saki-』って漫画はこれだよな!」となって楽しいため、準決勝や5位決定戦の途中から読んでいないという人にもまず19巻を読んでもらいたいくらいに思っています。また咲-Saki-』19~22巻と『咲-Saki-阿知賀編』7~9巻は、同じインハイ決勝戦の先鋒戦・次鋒戦という舞台をそれぞれ別の視点で描かれているという珍しい作りになっており、『咲-Saki-阿知賀編』が特に好きだったという人は、まずこちらの続刊から読むのもオススメです。

そして、そうやって『咲-Saki-』に一気に追いついた人がこれから始まるインターハイ決勝大将戦を読むにあたって、一気読みでは頭に残りづらいかもしれない伏線・因縁などをまとめてみました。

『咲-Saki-』

 

◎原村和と阿知賀女子の「遊ぶんだ…和と!!」

これについては、清澄と阿知賀女子が全国大会の決勝という舞台で戦った(ている)ことで、すでに解決・回収済みとなっています。『咲-Saki-阿知賀編』が始まったばかりの頃から言われていた「原村和は副将で、阿知賀女子の副将は和と面識がない鷺森灼だけど、それはいいのか?」という問題も、いざ決勝副将戦が実際に行われてみれば、対局中はそもそもプライベートな会話などはほとんどする暇がないですし、原村和さんは対局相手によって打牌が変化するタイプの打ち手ではないこともあってか、なんとなくこれでまぁ良かったのかもなと納得させられました。むしろ、副将というポジションに居たことで、対局前には新子憧と、対局後には高鴨穏乃と、阿知賀時代の同級生2人と会話を交わすことができました。この並びこそが、まさに小林立先生の構想通りだったのかもしれません。

また、『咲-Saki-阿知賀編』第20局[軌跡](単行本6巻当時は「最終局」)での「これはその頂点を目指す少女たちの軌跡!!」というナレーションと構図についても、『咲-Saki-』第274局[頂上]で同じものが登場することで、実に美しく重ね合わされているので必見です。

 

◎原村和は清澄高校が優勝しないと転校してしまうのか

(『咲-Saki-』第6局[決意]より。全国優勝まであと一歩の所まで来ていますよ……)

「高校でも全国優勝できたら…ここに残ってもいいでしょうか…」という、単行本1巻で原村和さんと原村恵さんが交わしていた約束がありました。物語序盤から超ロングスパンの伏線として配置されていたのですが、準決勝と決勝の間の第156局[両親]に行われた原村親子団らん食事会にて、母親の原村嘉帆さんに「変な約束」「残りたければ残ればいいじゃない」と一蹴されたことでおおよそ解決の様子を見せています。結局この約束が取り消しになったのかどうかまでは不明瞭ではありますが、なんにせよ「残りたければ残ればいい」という言葉を保護者の片方から得られたことで、清澄高校が優勝を逃したら原村和さんが転校してしまうという離別ルートの可能性は薄くなったのではないでしょうか。しかし、これはメタ的に見ると、清澄高校が絶対に優勝しないといけない理由が1つ薄れたという不安要素ともなり得ますが……。

 

◎宮永咲VS高鴨穏乃

咲-Saki-』と『咲-Saki-阿知賀編』の主人公対決であり、原村和さんの今カノ・元カノ対決と言えるかもしれません(笑)。そういう冗談を別にすれば特に直接的な因縁は無いのですが、麻雀の能力的な部分で重なり合うものがあるので注目しておきたいところです。

まず高鴨穏乃さんの「山の深い所を支配する」という能力ですが、これが王牌にまで及ぶというのは準決勝で証明済みです。そして、それは宮永咲さんの「カンをすると嶺上から有効牌を引く」という能力とまさに真っ向勝負となり、天江衣さんも懸念しています。

(『咲-Saki-』第155局[証果]より。『咲-Saki-阿知賀編』第20局[軌跡]でも同じ場面が別視点で描かれています)

高鴨穏乃さんが支配力で宮永咲さんの嶺上開花を封じ込めるのか、逆に高鴨穏乃さんの支配力を宮永咲さんが打ち破って嶺上開花を決めるのか、この2人の能力のぶつかり合いは決勝大将戦の闘牌における最大の見所でしょう。

 

◎宮永咲VS大星淡

この2人は直接的な面識があるわけではありませんが、宮永照さんを通して間接的な因縁が形成されています。まず大星淡さんは準決勝では対局相手の個人名を把握しておらず基本的に所属高校名で呼んでいたのですが、宮永咲さんについては宮永照の妹だということを本人から直接聞かされているため、対局前からすでに「サキ」と名前で呼んでいます。また、宮永咲さんの方も「お姉ちゃんの学校の大将」ということで意識している様子が伺えます。そのため、宮永咲さんは「叩き潰す」(第154局[奮起])、大星淡さんは「皆殺し」(第273局[大将])などと、お互いに『咲-Saki-』の世界観からやや浮いているのではないかと感じてしまうほどに強く物騒な言葉を使っています。

『ヤングガンガン』2024年No.11 『咲-Saki-』第273局[大将]より。ちなみに、刑法222条1項には「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し罪を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。」という条文があります。いわゆる「脅迫罪」ってやつですね)

また、原村和さんが初対面の片岡優希さんを高鴨穏乃・新子憧の2人と重ね合わせたように、対局中の大星淡さんが咲さんから感じた威圧感なり殺気なりで照と重ね合わせたりとか、逆に宮永咲さんが大星淡さんのことを以前夢に登場していた車椅子の少女・従姉妹の光ちゃんと重ね合わせたりすることがあるかもしれません。

麻雀の能力的にも、大星淡さんは「壁牌を暗槓する」「カンした際に増える裏ドラがカンした牌に4枚モロ乗りする」というものを準決勝で披露していましたが、これは宮永咲さんの「カンをすると有効牌を引く」という能力と干渉する部分がありそうです。大星淡さんが壁牌をカンしようとする直前に宮永咲さんがカンをすることで、カン裏モロ乗りを回避するようなことがあるかもしれません。(※現実的には開局前に牌山が全て積まれているというゲームの性質上、何をしたところで「カン裏がモロ乗りしなくなる」ということは無いはずなのですが、『咲-Saki-』の世界においてはわりと「牌山は開かれるその瞬間までそこに何の牌があるか決まっていない」ような雰囲気があります)

 

◎ネリー・ヴィルサラーゼの能力とは

決勝大将戦の4人の1年生のうち、いまだに能力がハッキリと明かされていないのは臨海女子のネリー・ヴィルサラーゼさんのみです。準決勝でわずかに披露していたのは、「波」を調整して「飛翔のとき」を呼び込むことができるというもので、「1(エルティ)」「2(オリ)」「3(サミ)」の声とともに第152局[一片]から第153局[一閃]にかけて3局連続で三倍満を和了っていました。3局で72000点の加点とかかなりエグイですね……。

しかし、ネリーが対局の主導権を握るのかというと、そういうものでもなさそうです。もちろんマークはされるでしょうが、あくまで「波」が来ていない時はおとなしくしているような打ち筋っぽいですし。それよりも、準決勝Aブロックの大将戦を思い出してみてください。「大星淡VSその他3人」と言ってもいいくらい、大星淡さんの能力にどう対抗するかという勝負でした。4~5シャンテンの悪配牌を送り込むことで捨牌一段目で放銃する可能性がほぼ無くなる「絶対安全圏」に、1巡目にダブリーを掛けてから壁牌で暗槓をしてカン裏モロ乗りのハネ満という高打点を直撃してくる能力といい、「全体効果系」という言葉を使いたくなるくらいに場を制する能力となっています。

(『咲-Saki-』第172局[王者]より。「準備満タン」とは身体的特徴のことを言っているわけではありません)

さらには、ちょっと反省してテクニカルになったスーパーノヴァあわいちゃん(意味は分かりません)は、「今は天にカペラやプロキオンがいるのがわかる」「もう準備満タンだよ!!」という台詞もあるように、大星淡さんはよりコンディションが良好な状態で決勝戦を迎えると思われます。世界ジュニアで活躍するというほどの実績を持つネリーさんでも、そう簡単には行かないと予想されます。それでも、まだ能力の底を見せていないのは恐ろしいところですが。

 

◎宮永家を取材していた西田記者の「収穫」とは

原村和へのインタビューがきっかけで、決勝戦前日なのに宮永照と宮永咲の関係について急に取材を始めた西田順子記者ですが、宮永家の過去にどれだけ踏み込むことができるのでしょうか。第166局[邂逅]では、謎に包まれていた宮永姉妹の母親・宮永愛の旧姓はアークタンデ、つまり元の本名は「愛・アークタンデ」だという証言があり、20年くらい前に活躍した「アイ・アークタンダー」というプロと同一人物ではないかと疑われています。

(『咲-Saki-』第166局[邂逅]より。ハッキリと「宮永ホーン」などと呼ばれるツノが見えるシルエットは、読者からしたら「絶対に咲さんと同じ血筋の人でしょ!」と思ってしまいますね)

ただ、この2人は外見は似ていない(でも近所に住むおばあちゃんのようによく知っている人なら同一人物だと即答できる)という謎も残っており、どういう結論が出るのかはまだ分かっていません。まさか『呪術廻戦』の羂索のように肉体と精神が別なパターンとかもあったりして……!?

また、第245局[天造]の回想シーンにて描かれていましたが、フランスはソフィア・アンティポリスの研究所育ちという臨海女子の雀明華さんには、「人造人間」「神様と宇宙人の混血」のような、どこまでが本当の話か分からない出生の秘密があるようです。宮永家にもそういう普通ではない出生の秘密が隠されているのでしょうか……。まさか、「宮永照はヒトじゃない」という言葉はあながち言い過ぎでもなかった、なんて話になるのでしょうか……?

(『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』第4局[全国]より。後に『咲-Saki-』第219局[帰京]の荒川憩さんと百鬼藍子さんの会話でも再び同じ言葉が出てきます。人間離れした雀力を持つ宮永照、まさか本当に普通の人間ではないのか!?)

咲-Saki-』よりも過去の時間軸を描いているスピンオフ『シノハユ』の方では、主人公・白築慕さんが母の行方を追うための手掛かりとして話を聞こうとしているニーマンなど、不思議な力を持ち世界で活躍する麻雀プロが登場してきています。そのあたりとの関わりも出てくるのでしょうか……?

西田記者は編集長に「クビにするかどうかは記事の内容次第だ」(第219局[帰京])とまで言われており、第221局[悪夢]では「副将戦までに戻れるといいんだけどな」と言っていたのですが、結局戻れたのは副将戦開始直後の第262局[釣果]でした。まぁ麻雀雑誌の記者が全国大会中にその取材をせず個人取材をしているのは、そりゃ怒られても仕方のないことかもしれません。ですが、西田記者は宮永家の取材にはそれだけの価値があり、見合うだけの収穫もあったと思っているわけです。さて、西田順子さんの記者生命を掛けた取材成果とはいったいどのようなものなのでしょうか……。「宮永照はお菓子が好き」の一文しか書いてなくてそのままクビになったりしないでしょうね?笑

 

◎宮永咲VS宮永照

なんにせよ、宮永咲さんと宮永照さんは大将と先鋒というポジションの違いにより、直接卓を囲むことはできません。そのため、宮永咲さんの「麻雀を通してならお姉ちゃんと話せる気がする」(第2局[理由])や「私の心がお姉ちゃんに伝わる」(第154局[奮起])という咲-Saki-』という作品の根幹にある主人公の願いは、「咲の麻雀を見て照がどう思うか」という、あくまで間接的にしか伝えられない状況になっています。

(『咲-Saki-』第167局[遭逢]より。すれ違っただけでこんなんなっちゃってるんですが大丈夫……?)

はてさて、本当に宮永照さんに気持ちが伝わるのでしょうか……?(そもそも咲さんの話したいことや伝えたい心とはどういうもの?) それとも、このあと個人戦などで一緒に卓を囲む状況は来るのでしょうか……?

 

◎決勝大将戦の終了後、個人戦やコクマ編や世界大会編に突入するのか

そんなわけで、決勝大将戦が終わったあとに来るかもしれない個人戦についても考えておきましょう。これは私見ですが、咲-Saki-』では個人戦を詳細には描写しないのではないかと思っています。2009年に放送されたTVアニメ『咲-Saki-』では団体戦の翌週に個人戦が行われており、長野県からは福路美穂子さんと宮永咲さん・原村和さんが個人戦代表になっていることが描写されています。福路美穂子さんについては原作でも東京で同じ宿舎に同行しており個人戦の話もされていますが、宮永咲さんと原村和さんについては、第155局[証果]にて「美穂子も咲も和も個人戦に出るじゃない?」という台詞がサラッと登場したり、第172局[王者]にて「地区大会の個人戦ではプラマイゼロを出していた」とアニメで描写されていたのと同じことが原作でも起こっていたと思わされる記述があるくらいで、話の本筋ではほぼ個人戦について触れられていないのです。そんな状況で、団体戦が終わったあとに「実は宮永咲と原村和も個人戦でも長野県代表でした~」と言って、長野県予選を全く描写していない個人戦の全国大会を始めるでしょうか。さすがに作品の構造として不自然になるのではないかと思います。準決勝が終わるまで一切言及のなかった「5位決定戦」も、読者としてはだいぶ突然始まったような印象があったし……。なので、個人戦の描写があったとしても、ダイジェストや時間軸をもっと先に飛ばしてからの過去回想などでサラッと触れるくらいになるのではないかと私は予想します。もし個人戦をガッツリと描写されたら木の下に埋めてもらって構わないよ!(フラグ)

逆に、コクマ編や世界編に本格的に突入するのは大いにあり得ると思います。どちらも具体的なルールなどはまだハッキリしていませんが、とりあえず秋に開催されるというコクマ・国民麻雀大会の年齢区分は公開されています。

(『咲-Saki-』第142局[中継]より。本内成香さん、麻雀の成績はあまりふるいませんでしたが、牌効率の解説はわりと正しいし、物知りなのもありがたいです)

ただ、コクマに出場する選手はなんだかんだでだいたいインターハイで顔も能力も登場済みの面子が多いでしょうし、そこをまたもう一度深く掘り下げるのかと言うと疑問ではあります。選手として選ばれるかどうかという話になっているということは、団体戦ではなく個人戦のようですし。そうなると、やはり漫画の流れとしてもベタな、全国編の次は世界編だ!という展開ではないでしょうか。

世界大会については、第166局[邂逅]にて、宮守女子の監督を努めている熊倉トシさんが、総監督なのかGMみたいな立場なのかは分かりませんが、出場メンバーや監督の選定にまで深く関わっているようです。大会のシステムすらも分かりません(リーグと言うからにはインハイの決勝のように4チームで1戦ではなく、8チームとか10チームとかそれ以上のチーム数でいろんな組み合わせで何戦も試合をするの? 決勝リーグだけでいったい何日掛かるんだ……?)が、日本代表チームは「今年こそ決勝リーグ出場」というのが基本的な目標のようです。しかし、トシさんの掲げた目標は「世界一」! 今年のインターハイ出場選手を見て、それだけの手応えを得ているということなのでしょうね。

(『咲-Saki-』第166局[邂逅]より。上野駅前からスカイツリーをのぞむ風景。ちなみに、『忍者と極道』第29話で、暴走族神が率いる聖華天の極道車によって一般市民が虐殺されまくっている首都高(※作中では「帝都高」)をバックに輝村極道が商談を終えて電話をしていた場所もここです。)

 


団体戦も残すは決勝大将戦の半荘2回のみとなっており、最新25巻まで読めば決勝副将戦が終わってこれから大将戦が始まるという所まで進むため、最新話からでもだいたい話に追いつくことができます! 決勝大将戦がどんな結末を迎えるのかも、そこから先の展開もまだ分かりませんが、長く長く続いてきた大会の最終決戦という大きな節目をこれから迎えるのに、それを共有できる仲間は多ければ多い方が楽しいものです。

咲-Saki-』って楽しいよね! いっしょに楽しもうよ!

 

 

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