麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ「川島・山内のマンガ沼」。今回は『チ。―地球の運動について―』の作者・魚豊先生へのガチアンケート後編の模様(前編はこちら)と、川島・山内のおすすめマンガをお届けします。
人々が矛盾を感じていてもそこに触れないのは、中世だけの話ではない
川島 続いては我々のお気に入りのシーンについて質問させてください。山内くんのコマはこちら。
魚豊先生への質問
『チ。』で「昔の人は矛盾を感じていてもそこに触れてはいけない」という部分(2巻のバデーニと修道院長のやり取り)が衝撃的だったのですが、どのような思いを込めて描かれたのでしょうか?
川島 先生の回答はこちら!
魚豊先生の回答
作中の人物に限らず、現在の僕らも常にそういった問題を抱えていると思います。社会や人間集団のそういった危うさに僕自身も参加している。そういう事に自覚的でいれたらいいなと思い、描きました。
川島 ほおー……。
山内 ちょっと何言ってるかわからない……。
川島 いや、わかるやん!? 山内さんは「当時こういうことがあったのか」と聞いてるわけですけど、先生は「当時だけじゃなく今もみんなそういうことあるでしょ」と言ってるわけですよ。今の報道でも「そこに触れたらいかん」みたいなタブーの部分があるでしょ?
山内 たしかに。「こんなに進化してるのに自動販売機でお金1回入れたらなんでか落ちてくる」とか。
川島 全然違います! そんな小さいあるある描いてるわけないやん。では私のお気に入りのシーンがこちら。
魚豊先生への質問
「一生快適な自己否定に留まるか、全てを捨てて自己肯定に賭けて出るか、どちらを選ぶも自由だ。」このようなセリフは、どうやって考えているのでしょうか?
川島 この言葉、自分にもすごく刺さったんですよ。僕はこれがこのマンガのテーマなんじゃないかと思ってるんです。芸人界でもこういう感じありますよね?
山内 「こんなんで笑いを取ってても、別に生活してはいけるけど、本当にそれでいいのか?」みたいな葛藤ですよね。
川島 ハプニング映像見て笑ってお金もらってもいいんですよ。いいんですけど、「それだけでいいのかお前は?」という。
山内 ですよね。YouTubeで拾ってきたのをつなぎ合わせたような……。
川島 もうやめとこ(笑)! それが「触れてはいけない事実」なの。
山内 そういうことなんですね。
川島 いろんな人に刺さるセリフだと思います。そして先生は前者「一生快適な自己否定に留まる」と後者「全てを捨てて自己肯定に賭けて出る」どちらの側なのかも答えていただきました。
魚豊先生の回答
セリフは何かを見たり聞いたり読んだりした中で、納得したくないことを見つけた時に思いつくことが多いです。具体的には上手く行ってない飲み会終わりとかによく思いつきます。
川島 じゃあこのセリフも飲み会終わりに?
魚豊 これは違います(笑)。近年の風潮的に「被害者である」というポジションを競うようになっている気がしていて。本当に被害者である人は尊重されるべきなんですけど、そうじゃない人たちでそこに属すると発言しやすくなるから、そのポジションを取り合っている。それを見て、「いや、そうじゃないんじゃないか? 加害者意識も大事だし、自分を否定することで自分の立ち位置を確立するという方法をみんなが取っているのってどうなんだろう?」と思ったという。
山内 深い!
川島 SNSを見ていて、僕もずっと思っていることがあるんです。「被害者より怒っている第三者は加害者だ」という。……先生、今のセリフ全然使っていいですよ。あげますから。
山内 使わないです(笑)。先生、特に反応なかったんで。
川島 ええこと言うたと思ったのに……。
魚豊先生の回答の続き
おそらく自分は無意識下ではネガティヴで保守的な人間だと思うので、意識的な範囲では常に冒険心を持って、自己肯定できる道へ進みたいです。
山内 セリフは無駄なく端的な感じですけど、アンケートの回答はすごく多いですよね。前者か後者か聞いてるのに。
川島 ホンマに出て行ってくれ(笑)!
魚豊 いや!ここで「後者です」と言ったら番組的に成立しないかな、
山内 それを言うんだったら最初に「後者です」と……。
川島 やめてくれーーーっ! なんでこんな「朝まで生テレビ」みたいになんねん。みんな愛し合ってるのに。一回止めます。
次に描きたいテーマは「荒らし」
川島 ここで私の好きな恒例の質問、マンガを描く時に使う「7つ道具」を先生に聞きました。こちら!
魚豊先生の回答
- 芸人さんのYouTube(自粛期間で多くの芸人さんがYouTubeを始めてくれたのがとても嬉しかったです)
- SoundCloud
- 線香
- ブルーライトカットメガネ
- タンブラー
- ラジオ
- 消しカス用掃除機
川島 先生のYouTubeチャンネル、いろいろ入ってますよ。レインボー、ダイアン、土佐兄弟、ダイタク、ジャルジャル……。
山内 いやちょっと待ってください……入ってないですね(かまいたちもYouTubeチャンネルをやっている)。先生、これはどういうことでしょうか?
魚豊 あの、コメントは控えさせて……。
川島 さっきあんなにしゃべってたのに(笑)。
山内 登録してくれたらいいじゃないですか。
魚豊 ま、それは……。
川島 やはりこれは「媚びない」ということですか。だから(前回「媚びないのがいい」と言って挙げた)「カイジ」「寄生獣」「ピンポン」のせいですよ。ここにかまいたちのYouTubeを入れたら媚びたことになる、ということですよね。さて、先生がマンガを描いてる机の写真、見たいですよね。写真を撮ってきてくれました。
山内 えええええ、モノ少な!
川島 シンプルですね。これだけですか? 住みます芸人を担当している社員の机みたい。あ、これは上下する机なんですね。立って描いたり、座って描いたりするという。ではラストの質問はこちら。
魚豊先生への質問
次に描いてみたいテーマは?
川島 先生の回答、こちら。
魚豊先生の回答
誹謗中傷やクソリプ、”叩き”を行なっている「荒らし」「ヘイター」「トロール」について描きたいです。
(できれば荒らし行為をする人側を主役にして)
川島 ちなみに補足情報があるそうです。
魚豊先生に取材した補足情報
めちゃめちゃ王道の青春スポ根作品にしたい。「叩き」の師匠と出会って、主人公が「やっと見つけた!俺が夢中になれるモノ!」みたいな感じで「荒らし行為」をする作品を描きたい。
情熱を変なモノに捧げちゃう人の作品を今まで描いているのだが、悪いモノに情熱を捧げちゃうとどういう作品になるのか、描いてみたい。
山内 面白そう。
川島 めちゃめちゃ叩くんや。
最後に魚豊先生から番組宛てにサインをいただきました。
川島のおすすめマンガ『ドリフターズ』
川島 ここからは我々のおすすめマンガを紹介しておきます。これは超名作なんですけど、『ドリフターズ』。
山内 僕も読んだことあります。
川島 簡単に「ドリフターズ」の言葉の意味を紹介すると、「漂流者」という意味なんです。この5,6年で異世界転生モノが一気に増えたでしょ? そのはしりに近いんじゃないかな。
・ヤングキングアワーズで連載中。
・単行本は第6巻まで発売中。
・累計発行部数は400万部以上。
・2016年にアニメ化。
・関ヶ原の戦いで生死をさまよった島津豊久が、突然異世界に召喚され、同様に流れ着いた織田信長や那須与一たちと「漂流者(ドリフターズ)」として国奪りを始めるアクション系歴史ファンタジー
川島 1巻の表紙の島津豊久は実在した武将で、とにかく戦好きで命知らず、特攻精神あふれる武将なんですよね。本当の歴史では関ヶ原の戦いで命を落とすんですけど、この作品では島津が死の淵にあるときに、急に世界がポンとオフィスのような場所に変わるんです。そこで「なんだこりゃ?」となってるときに、「あなたはこの部屋に行ってください」と飛ばされる。そこで第2の人生が始まるんですけど、この島津が飛ばされた世界というのが、とある悪い集団に征服されそうになってるわけです。それでドリフターズと呼ばれる島津がそこを守ろうとする物語なんですけど、しびれるのが実在した偉人たちがガンガン飛ばされてくるところなんですね。最初に出会うのが日本一の弓の名手・那須与一で、その軍団の総大将が織田信長。この3人が中心メンバーとなって引っ張っていく物語なんですけど、ありえないようなチョイスなんですよ。ライバルになるのが新選組の土方歳三だし、ジャンヌ・ダルクも出てくるし。
山内 歴史のオールスター大集合ですね。
川島 「なんでもアリありやんけ」と最初は思ったんですけど、なんでもアリなのにすごくバランスがいい。人選もいいし、ストーリーもいいし、ギャグもあるし、ロマンスもあるし、萌えもある。戦のカッコ良さもある。異世界転生モノとしてはかなり骨太です。まだ6巻しか出てないので、一瞬で読めます。
山内のおすすめマンガ『東京決闘環状戦』
山内 僕のおすすめマンガはこちらです。『東京決闘環状戦』。
川島 山内くん、本当に決闘好きですね(笑)。
・Webマンガサイト「ゼノン編集部」にて連載中。
・2020年8月連載開始。
・単行本は第2巻まで発売中。
・山手線新駅の開業をきっかけに、新駅の利権を争う「東京決闘環状戦」が勃発。各駅の用心棒たちが街の存続のために戦いに身を投じる決闘大戦争マンガ。
山内 設定がめちゃくちゃ面白いんです。東京の環状線(山手線)で、そこの利権を争って各駅の代表選手が戦うんです。
川島 各都道府県じゃなくて各駅なんだ。
山内 1巻の表紙になってる裸の男が神田駅代表、右側の男が品川駅代表なんです。で、負けたら相手の駅に吸収されるんです。1試合で敗れたら、相手駅へ5000億円支払う。
川島 桃鉄80年目くらいのリスクやん。
山内 それでその駅ならではの戦い方をするんです。神田駅だったら祭りっぽい戦い方、品川駅は水族館があるのでポセイドン的な戦い方で。
川島 新宿とか渋谷はどんなキャラなの?
山内 今のところはまだわからないです。今は巣鴨駅の「巣鴨じぞう流」というジジイが戦っています(笑)。
次回放送は新企画「カバー裏-1グランプリ」をお送りします。
(構成:前田隆弘)
【放送情報】
【放送情報】
読売テレビ●5月15日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●5月20日(木)深2:04~2:34
単行本のカバー裏イラストの傑作を紹介する「カバー裏-1グランプリ」と、川島・山内のおすすめマンガ紹介を放送。
(Tverでも配信中!)
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