今日紹介する1巻は、ビッグコミックスピリッツにて連載中の「ジャガーン」。
原作の金城宗幸は、先日の「アメトーーク!」の“本屋でマンガ大好き芸人“で紹介された「僕たちがやりました」の原作担当の人ですね(余談ですが今月から「僕たちがやりました」のドラマが始まりますね)。で、作画のにしだけんすけは、花沢健吾「アイアムアヒーロー」のスピンオフ作品「アイアムアヒーロー in NAGASAKI」の作者。
先に読後感だけ言っておくと、このマンガ、ちょっとゾワゾワするんですよ。そのゾワゾワがどういうやつかは後で説明するとして。
(ここから先、序盤のネタバレ含みます!)
物語の主人公は交番勤めの警官・蛇ヶ崎晋太郎(じゃがさき・しんたろう)。毎日ストレスをためこんで、内心では「ぶっぱなす!」と思っているけれど、そんな態度はおくびにも出さず、愛想笑いで日々をやり過ごしている。コンビニにたむろするウェーイ系の若者たちにバカにされてもこの表情。
この愛想笑い、絶妙ですよね。「感情がすり減ってるやつ特有の愛想笑い」が見事に絵になってます。
で、交番に戻れば上司からバカにされ、家に帰れば(盛り上がるでも盛り下がるでもない平行線の状態で)同棲中の彼女から結婚を迫られている。彼女とは夜の営みもあるんですが、それにつけてもこのおっぱいの吸い方。
性欲は20%くらいで、残り80%は「おっぱいを吸う自分であらねば」という義務感から、演技でむしゃぶりついているような吸い方。こんな物悲しいおっぱいの吸い方、見たことないよ。
自分の人生はもう死ぬ瞬間まで完全に見えてしまっていて、しかもあからさまにつまんなさそう。
そんな蛇ヶ崎の生活がある日、一変します。電車で怒鳴り散らしていた会社員を注意したら、なんとそいつが突然、壊人(カイジン)に変身!!!!!!!!!!!!!!!!!!
壊人の造形、めっちゃキモい。それでいてこのウルトラ怪獣のようなネーミングはなんなんだ。ネーミングだけじゃない、テロップ感も。
さながら「寄生獣」のような暴れっぷりで乗客たちを次々に殺していく壊人。蛇ヶ崎の人生もこれで終わりかと思ったそのとき。
右手に”ジャガン”を持つ男、壊人戦士「ジャガーン」爆誕の瞬間です。マンガ読みは「手から何かぶっぱなすやつ、だいたいカッコいい」という情報がDNAに刷り込まれていると思うのですが、例にもれずジャガーンもカッコいい。
この後も続々と壊人たちが登場するのですが、冒頭にも書いたように、読んでいてすごくゾワゾワするんですよ。壊人たちの造形はグロテスクでとにかく気持ち悪い。でもウルトラ怪獣のようなネーミングの「ハズし感」もある。そしてジャガンをぶっぱなす瞬間はスカッとしてカッコいい。それらの要素が妙な「不協和音」みたいなものを生み出していて、一つ一つの要素は「どこかで見たことがある」ような気がするのに、作品全体のトーンとしては「今まで見たことがない」ようなものになっているんですよ。そのへんにゾワゾワしてしまう。
1巻で初期設定がカッチリとできあがっても、そこから(バトルマンガ的な)パターナリズムにハマってしまうとグルーヴが失われていくような気もしますが、どうもこの作者についてはそんなことはなさそうな気がします。1巻のラストシーンも「おいおいどうなるんだね」というものだったし。キモくてハズしててカッコいい「ジャガーン」、おすすめします。
『ジャガーン』のクチコミもあわせてどうぞ!最新話の感想も集まっているので雑誌派の方もぜひ!!