麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、先週まで2回にわたって放送された「川島・山内のおすすめマンガ」をお送りします(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。
「ドラクエの一番おもろいとき」がずっと続くマンガ
川島 今回のテーマは「川島・山内のおすすめマンガ」! この番組はこれをやらないとね。ではさっそく僕から紹介させていただきます。これはもうきてるマンガなんですけど、『ダンダダン』でございます。
龍幸伸『ダンダダン』(集英社)
- 2021年〜「少年ジャンプ+」にて連載中
- 単行本は第5巻まで発売
- 「全国書店員が選んだおすすめコミック2022」第1位
- 「出版社コミック担当が選んだおすすめコミック2022」第1位
川島 これは本当に右肩上がりで、今や「ジャンプ+」のエースになってるんじゃないでしょうか。あらすじを簡単に言いますと、主人公が2人いるんです。1人はその名も高倉健、あだ名はオカルト君です。怪奇現象オタクなんですね。もう1人の主人公が綾瀬桃ちゃん、幽霊肯定派の女子高生。綾瀬さんはクラスで人気者で、高倉くんはちょっとウジウジしてるというか、友達いませんみたいな人なんです。で、この2人が、お互いに否定するUFOと幽霊をそれぞれに信じさせるために、桃ちゃんはUFOスポットの病院の廃墟に行く。オカルト君は心霊スポットのトンネルに行く。お互いが同時に肝試しに行く……というところから始まります。
で、これはマンガの王道なんですけど、敵を倒して敵の能力をもらってさらに強くなるんです。肝試しに行って、そこに出てくる都市伝説レベルの「ターボババア」みたいな妖怪と戦って倒したら、その妖怪の能力が手に入る。この「妖怪VS人間」に加えて、もう憎しみしかなくて襲ってくる宇宙人がいるので、この「妖怪」「人間」「宇宙人」の三角関係がめちゃくちゃおもろい。
山内 面白いっすね。「おすすめコミック2022」に選ばれてるのってたぶん、間口が広いからだと思いました。小さい子も大人も、全員が楽しめる感じで面白いなと思います。
川島 人間と妖怪が戦って、妖怪の能力が人間サイドに手に入る。普通はこれで終わりやけど、そこにさらに宇宙人が入ってくるわけです。妖怪と戦って能力を得て、パワーアップした人間が宇宙人とぶつかったりするから、読んでてずっと面白い。
「ドラクエの一番おもろいとき」みたいな感じなんですよ。ずっと棍棒で戦ってお金を貯めて、「はがねのつるぎ」を買って街の外に出たときのワクワク感ってあるじゃないですか。「今まで苦労して戦ってたやつ、これで一発で倒せるで!」みたいなの。あれがずっと続くマンガです。
山内 僕のおすすめマンガはこちらです。『降り積もれ孤独な死よ』。
原作:井龍一/漫画:伊藤翔太
『降り積もれ孤独な死よ』(講談社)
- 2021年〜マンガアプリ「マガポケ」にて連載中
- 単行本は第2巻まで発売
- 累計発行部数100万部以上の『親愛なる僕へ殺意を込めて』の原作・漫画コンビ最新作
山内 以前この番組で僕が紹介した『親愛なる僕へ殺意を込めて』、まずこれがめっちゃ面白かったんです。で、その人の新作が出たので、すぐ買ったのがこれです。あらすじを簡単に説明しますね。
- 富字山南警察署の刑事・冴木仁は空き巣の通報を受けて、灰川十三という男が所有する屋敷へ…
- 調査してみると衝撃の事実が判明
- 灰川の屋敷の地下室から監禁された13人の子供の遺体が発見され、灰川は全国に指名手配される
- しかし捜査を続けるうちに、灰川に育てられた蓮水花音が現れ、「灰川十三は犯人ではない!」と屋敷であった出来事を語り始めた…
- 激情と慟哭のノワールサスペンスマンガ
山内 金持ちの屋敷に行ったらめっちゃ死体があったんで、「犯人は屋敷の灰川や!」となるんですけど、その屋敷で育てられた子供たちが次々と出てくるんです。
川島 亡くなってない子供たちね。
山内 育てられて今は大人になっている子供たちが出てきて、「私もあの屋敷で育ててもらいましたけど、灰川は殺人をするような人じゃないです」みたいなことを言って、擁護するんです。灰川が犯人じゃないなら、誰が殺したのか。生き残ってるこの子供たちの中に、もしかして犯人がいるのか……というフリの段階なんですけど、恐ろしいことに1巻の最後で灰川がもう捕まるんです。
川島 えっ!?
山内 灰川は失踪していてどこにいるかわからない。それで指名手配になる。犯人は果たして灰川なのか……みたいな展開で今後は進んでいくのかと思ったら、1巻の最後で、普通に歩いてる灰川を警察が「見付けました!」みたいな感じで捕まえるんです。
川島 もっとその展開で引っ張れそうなのにね。
山内 そうなんですよ。だからストーリー展開は、かなりサクサクいきそうな気配がします。前作の『親愛なる僕へ殺意を込めて』のストーリーの良さを見てるんで、「もうこれは当たり間違いないな」と思って、1巻の段階でもう紹介させていただきます。
川島 山内さん、最近1巻の段階で紹介しますね。
山内 (後から)他の人に言われたくないんで。
川島 早めに作者に恩を売ろうという行動にも見えないことはないですけど……(笑)。
山内 本当に面白いストーリーなので、ぜひ読んでみてください。
6人の天才マンガ家が絶賛するマンガ
川島 私の次のおすすめマンガはこちらです。『ひらやすみ』。知ってます?
山内 知らないです。
川島 良かった。山内さんもこれを読んで癒されていただきたい。寝てるより何してるよりも癒されます。
真造圭伍『ひらやすみ』(小学館)
- 2021年〜「ビッグコミックスピリッツ」にて連載
- 単行本は第3集まで発売
川島 このマンガ、2021年の段階で帯に「浅野いにお」「石黒正数」「高松美咲」「田島列島」「松本大洋」「和山やま」の、天才6人の名前があるんです。この6人がもう絶賛してる。
山内 へえええええ!
川島 ストーリーもすごい簡単で。ヒロトくんという29歳の男の子がいるんです。フリーターで、恋人もいません。でも将来の不安も一切ありません。とにかくフリーな人なんです。で、このヒロトくんが近所に住んでるおばあさんと仲良くなる。何か美味しそうなお料理作ってるな、と思ってその家を見てたら、おばあさんに不審者だと思われてしまうんですけど、ヒロトくんのおなかがギュウウウ……って鳴るから、「お腹減ってるんだったらご飯食べていきな」ということで、和田はなえおばあちゃんと仲良くなるんです。ここからはなえおばあちゃんとヒロトくんの人情話が展開されていくのかな……と思いきや、早い段階でおばあちゃんが亡くなります。
山内 ええええええ!?
川島 おばあちゃんがもう1人の主人公だと思ってたのに、亡くなってしまう。そのはなえおばあちゃんの遺志で、彼女が一人暮らししてた一戸建ての平屋をヒロトくんに譲るんです。そこへヒロトのいとこのなつみちゃんが山形から上京してくるんですね。「東京に疲れた、でもどこ行っていいかわからん」みたいな感じでこの家にやって来る。そこでお料理とか、人生において大切なのんびりする時間とかが描かれていく。この家にはいろんな理由で、ちょっと人生に疲れた方が集まってきたりするんです。
で、ほのぼの癒されマンガと思いきや、ヒロトくんがなぜこうなってしまったかというのも、少しずつ描かれていく。まだ29歳やし、どんどん働いたらいいのに、と思うんですけど、実は彼、昔は俳優やってて芸能界にいたんです。そこでいろんな目にあって、「もう自分のペースで生きていこう」ってなってるんです。そういうシーンがちょいちょい出てくるんですよ。この番組で紹介した『メタモルフォーゼの縁側』、女子高生とおばあちゃんの友情物語なんですけども、あのマンガが好きな人は間違いなく『ひらやすみ』も好きになるはずです。
山内 自分じゃ買わないマンガだなあ。「亡くなったおばあちゃんが生き返って襲いかかってくる」とかだったら買ってると思いますけど……。
川島 それはないです(笑)。「ちゃんと埋めてなかったから」とか、そんなことじゃないですよ(笑)。普段の山内さんは絶対読まないタイプでしょうけど、これは読んでほしい。こんな心が落ち着くマンガ、ないですよ。
山内 続いて僕がおすすめするのはこちらです、『来迎國/らいごうのくに』。
原作:鈴木智/漫画:玉野祐也
『来迎國/らいごうのくに』(小学館)
- 2020年〜マンガアプリ「マンガワン」「裏サンデー」にて連載中
- 単行本は第2巻まで発売
- ある日、アメリカ合衆国の大統領は全世界に向けて緊急声明を発表
- それは「日本と日本人に関する歴史上類例を見ない未曾有の事態」についてであった
- 主人公は東京の日本家屋に隠された地下室で暮らす青年・才
- 才は「ある病」が原因で12年間も部屋から出たことがなく、幼い頃から極めて特殊な幻覚に苛まれ続けていた
- 才の人生を歪ませた特殊な幻覚は、ある夜、突如として日本全土を歪ませ、日本滅亡への道が始まった
- ここから民族存亡を賭けた令和の日本奪還戦記へと発展していく
山内 でもこの説明を見ただけでは、どんなマンガなのか想像つかないですよね。
川島 そうですね。正直よくわからない。
山内 主人公の才くんは、ある病気にかかっていて、あるお屋敷の地下牢みたいなところでずっと暮らしてるんです。毎日の食事を運んでいく女の子がいて、その子も主人公なんですけど。で、彼が隔離される理由になった病気というのが、「特異精神疾患 四ツ手型妄想障害」というものなんです。「四本腕の人間の幻覚が現れて、そいつが自分を襲ってくる」という症状で、他にも全国で発症している人がいるんですけど、この病にかかったら25%が自殺または事故死して、5年後の生存率は3%と言われてるんです。
その病気に才くんがかかったから、やむを得ず地下牢みたいなとこに隔離されて、才くんも時たま幻覚を見てワーッと叫んだりするんですけど、安全な場所なので生きてはいるんです。で、ずっと「この四ツ手型妄想障害って何なんだ?」と言われてたんですけど、ある日突然、「四ツ手」という化け物が本当に現れるんですよ。妄想障害の人が「手が四つ生えてる鬼みたいなやつが襲いかかってくるんです!」みたいに言ってたのが日本の至るところで実際に現れて、日本人に襲いかかってくるんですよ。
川島 つまり妄想じゃなくて、予知夢に近かったと。
山内 みんなが四ツ手に殺されていく中で、屋敷にいた女の子は「才くんのいる地下牢に逃げたら安全かも」と思って、地下牢に逃げて「才くん開けて」とか言ってるんですけど、その才くんは、地下牢でずっと四ツ手の幻覚と戦ってきて、筋トレとか刀の練習とかで鍛えてて、めちゃくちゃ強くなってたんです。
川島 四ツ手対策をしてたんだ。
山内 四ツ手対策は完璧な状態になってて、実際に現れた四ツ手を才くんだけでバンバン倒していくんです。倒し方を知ってるから。でも国全体では、軍隊も投入されているのに四ツ手が強すぎて、どうしたらいいかわからないんです。
川島 この生き物が何で出てきたかもわからない?
山内 まだわからない。ただこれが起こってるのは日本だけっぽいんですね。で、アメリカの大統領が日本がやばいからということで、助けを出すかどうかみたいな話をしている最中なんですけど。まだ始まったばかりで、今後どう進んでいくかもわかんないです。
川島 いやこのマンガ、めっちゃ山内やなあ。
山内 バトルの要素と、ちょっとグロの要素が肺って、戦う相手も宇宙人なのか何なのかまだわからない。
川島 『GANTZ』の仏像編みたいな感じ。ぜひ『ひらやすみ』をチェイサーで読んでください。これ、いろんなマンガのチェイサーになりますから。
あらゆる疑問を「HEY!」でねじ伏せるマンガ
川島 私が最後におすすめするのは、森とんかつ先生の『スイカ』でございます。
- 2021年〜「good!アフタヌーン」にて連載中
- 単行本は第1巻まで発売
- 物語の舞台は怪奇現象や幽霊の目撃情報が絶えない丑光高等学校
- この学校に赴任してきた教師・園渚のクラスには、丑光高校に伝わる百七不思議の1つ・物部スイカという小学生(?)が居座っていた
川島 あらすじを紹介しましたけど、こんなん読まなくて大丈夫ですから。というのも、ただのホラーギャグマンガなんです。
山内 ギャグなんですか!?
川島 しかも1話読み切りのギャグマンガですから、どこから読んでいただいても全然OKです。これ、2021年に発売されてるのに、僕らが中学や高校で読んでた『激烈バカ』みたいに、勢いだけで終わらせてるギャグマンガなんですよ。そこに怪奇現象・ホラーが入ってくるんで、ちょっと不気味さはあるんだけど、とにかく勢いで終わらすっていう。「なんでこうなったんやろ?」みたいな疑問を、でっかい擬音でごまかしてるんですよ。「HEY!」とか。
最後は「Thank you !」って書いて終わるんですけど。だからアメコミみたいな気持ちよさもめっちゃあります。ちょっとエロくて、ちょっとグロいんだけど、その不条理をギャグにしてる。僕ら世代にとっては、新しいけど懐かしさもあるっていう、すごく流行りそうなマンガです。
山内 細かい説明よりも、勢いでやりきってる。
川島 もう「HEY!」の一言で終わりです。どこから読んでいただいても大丈夫なんですけど、「何も考えたくないな、でもちょっと笑いたいな」というときはぴったりだと思いますよ。勢いって大事やなと思います ちょっとたまらない人にはたまらない世界観です。
山内 僕が最後におすすめするマンガはこちら、『十字架のろくにん』です。
中武士竜『十字架のろくにん』(講談社)
- 2020年〜「別冊少年マガジン」にて連載、その後移籍し、WEB漫画「マガポケ」にて連載中
- 単行本は第6巻まで発売
山内 あらすじはこんな感じです。
- 主人公の漆間俊は、小学6年生の時「実験体A」と名付けられ、同級生5人からの壮絶ないじめに苦しむ地獄の中にいた…
- 俊は家族にいじめられていることを相談し、引っ越すことが決まった
- しかしいじめグループのリーダー・至極京の目的は、ターゲットを追い込み、人を間接的に殺すこと
- 俊が引っ越す前に俊の家族を殺す計画を実行! 両親は死亡、弟は重症…
- 全てを失った俊は復讐を決意
- 世界大戦時の秘密部隊に所属していたおじいちゃんのもとで修行
- 力をつけて生まれた変わった俊は4年後、因縁の敵たちに復讐を開始する
山内 主人公の俊が、小学校の頃に5人のいじめグループにめっちゃいじめられるんですよ。しかも自分がいじめられるだけやったらまだしも、家族まで殺されちゃうんです。俊はもう自殺しようかと考えてたんですけど、彼のおじいちゃんがかつて日本の秘密部隊にいて、すごい殺人技術を持っていた。それで俊に「お前が本当に復讐するつもりなら、俺が全部教えてやる」みたいに言って、殺人の技術とかいろんなことを全部教えるんですよ。で、「もうお前は一人前になったから行ってこい」ということで、高校生になった俊は、この5人がいるところに行くわけです。でも最初は昔の俊のふりをしてるんですよ。
川島 昔と何にも変わってませんよ、弱いですよ、みたいな。
山内 だけど、1人ずつ復讐を開始していくんです。最初のターゲットは、しばらく会ってなかったから、ちょっといい奴っぽくなってて、「頼むからあのときのままでいてくれ、俺のこの復讐に費やした期間は何やったんや」と思ってたら、実は全然変わってなくて。平気で猫とかを殺すような奴で、「これで心置きなく復讐できる」ということで、もうえげつない復讐をしていきます。お爺ちゃんから教えてもらった技術を使って。
川島 それをフルに出すんや。怖!
山内 2巻3巻と進むにつれてどんどんグロくなっていくんです。痛快な感じもありつつ、普通にかわいくてクラスの人気者の女の子まで事件に巻き込まれちゃったりするんです。「その子にまで何かするつもりなん……?」というこの胸の苦しみ。
川島 読んでてちょっと心がギュッとなるという。
山内 そうです。そこを平気でやってくるんですよ。「もうやめてよ〜」っていう。
川島 山内さん、こういうマンガ好きですね本当に。しかしブレないですね。よくも次から次へとこういうのを見つけてくるなと。かなりグロい『北斗の拳』みたいな感じ。
山内 いい具合のグロさです。きれいなグロさです。
次回放送は「マンガ家ガチアンケート・ハロルド作石編」前編をお届けします。
(構成:前田隆弘)
【放送情報】
次回放送
読売テレビ●5月21日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●5月26日(木)深2:59~3:29
「マンガ家ガチアンケート・ハロルド作石編」前編を放送。
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