麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、次回放送の「川島・山内のおすすめマンガ」を、放送に先駆けて紹介していきます。放送を見逃した方はTVerもご覧ください。
ハリウッドで映画化希望!『Thisコミュニケーション』
川島 今回の企画は原点に返りまして、「川島・山内のおすすめマンガ」でございます。私が紹介する1冊目はこちら、『Thisコミュニケーション』。
山内 読んでないです。
川島 まだ読んでない? それは幸せ者です。最近「何が面白いですか?」と聞かれたら、僕はこのマンガをすすめまくってます。作者は六内円栄(ろくだい・まるえい)さん。2020年5月からジャンプSQ.で連載中で、現在、単行本4巻まで発売中。「次にくるマンガ大賞2021」ノミネート作品となっております。ではざっくり紹介しましょう。
怪力!不死身!な少女達のところへ、とても合理的な男が来る話 1/17 pic.twitter.com/tBsGEQxCv0
— 六内円栄 (@rokudaimaruei) June 27, 2020
「謎の生物によって、人間たちが消し去られた地球が舞台の、サバイバルサスペンスマンガ」
まあ、ここまではよくあるSFマンガですよ。地球がピンチなんです。
「20世紀後半、突如地球に湧いた謎の生命体・イペリット」
これが、見るからに気持ち悪い巨大ミミズみたいな感じなんです。
「人類に取って代わろうと襲ってくる彼らが、地球上に充満させた有害なガスによって、人類の多くは滅ぼされ、地球は廃墟と化した」
ほぼ、生きてる人はいないんです。
「イペリットの出現により、荒廃した21世紀。生き残った人類は、そのイペリットに対抗すべく、その有毒なガスが届かない長野県の雪山にある極秘研究施設で、薬物によって戦闘用に強化された不死身の女兵士・ハントレスを次々と作り出していた」
「ハントレスは不死身」というのをちょっと覚えといてください。で、ハントレスたちの前に現れたのが、主人公である元軍人のデルウハ。これがかなりのやり手なんです。統率が取れてない6人のハントレスの監督となって、このチームに入るわけです。「戦って強いだけではいけないんだ」「こうやって戦術を組むんだ」みたいなことを指示できる、ハントレスの指揮官になる男が現れたわけですね。ただ、このデルウハは、秩序と己の保身のためなら、とんでもないことをやってしまう非常な合理主義者なんですよ。6人のやんちゃなハントレスをデルウハがどうやって統率していくか、そしてイペリットをどうやって倒していくかというマンガなんですけど……このマンガ、すぐにハリウッドで映画化するべきです。
山内 へえええ!
川島 スケールがでかすぎるし、人間関係も多すぎるし、それだけですごいんですけど、このハントレスというのは、死なないんです。この女の子たちは不死身なんです。だからワーッと攻めていってイペリットに殺されたとしても、ある一定の時間がたつと生き返るんです。
山内 ほほう。
川島 で、この条件がめちゃくちゃおもろいんですけど、死ぬ1時間前からの記憶はないんです。
山内 死ぬ1時間前からの記憶がなくなって復活する。
川島 誰かに殺されるとするでしょ? でも生き返っても誰にやられたかはわからないんです。
山内 なるほど、なるほど。
川島 死ぬ1時間前からの記憶がないから、なぜ殺されたかもわからない。で、再生して起きると、死ぬ1時間前の状態に戻ってますから、「あれ、なんで私ここにいるんだ?」「お前、イペリットにやられたんだよ」「ああ、そうか」みたいなことになる。だからこれがもしイペリットではなく、何者かに殺されたとしても、本人にはそれが誰なのかわからない。で、このデルウハは彼女たちのこの習性を知っているので、チームの秩序を守るため、そして自分の保身のために、なんとこのハントレスを殺すんですよ。
山内 へええええええ!
川島 「こいつは変な動きしてる、これはチームを乱すぞ」と思ったら、平気で首をはねたりする。それで再生して起き上がったら、「私なんで死んでたんだろう」「いやいや、さっきイペリットにやられたやん」「そうなんだ」で済んじゃうんです。そういうことをしながらイペリットと戦っていくんですけども、6人のハントレスの中にも、ちょっと疑いが生じてくるわけですね。まあ極端な言い方をすると、たとえばデルウハがハントレスの一人を殺している瞬間を、他のハントレスが見てしまったとする。そうなると、デルウハはこの目撃者も殺さなきゃいけない。おもろいのは、その場合、目撃者を1時間以内に殺さないといけないということなんです。
山内 あー、なるほど。
川島 1時間たって殺すと、生き返られても「見たぞ!」となっちゃうから。そういうスリリングな駆け引きがある。それプラス、イペリットとの戦いもある。1回2回読んだだけでは「ん?」と思うかもしれないですけど、3回4回読むうちに、めちゃくちゃおもろなってくるんです。
山内 頭使いますね。心理戦みたいな描写が面白そう。
川島 デルウハは1巻ではすごくいい男なんです。でも1巻のラストあたりから、ちょっとずつ化けの皮がはがれはじめて、2巻3巻でどんどん本性が明らかになっていくという。
山内 これ言ったら失礼ですけど、謎の化け物が人類を倒していって、残った人で戦うところまではよくある設定じゃないですか。でもそこにプラスして、いろんな心理描写があるという。
川島 ちょっとヒントだけ言いますけど、その6人の中に、もしかして1時間で記憶が消えてなかった奴がいたとしたら?
山内 あらららららららら!
川島 で、謎の生命体のイペリット、このルックスがまあとにかく気持ち悪くて、愛せないキャラクターになってるんです。これは読者がまったく感情移入できないようにわざとやってると思うんですよ。デルウハと6人のハントレスをめぐる人間ドラマ、こっちが本筋だから、敵のルックスをわざと気持ち悪くしてるんじゃないかと。僕、初めてこれを読んだとき、行きと帰りの飛行機で3周くらい読み返しましたもんね。自分も1時間前に戻って読み直さないといけない。
山内 読み込めるんだ。
川島 読み込めます。誰が正しいかわからない展開だけど、まだ4巻なのですぐ追いつけます。これ、(病気で休養していた)山内さんが現場復帰するまで取っておいた作品ですから。
山内 ありがとうございます。温存していただいて(笑)。
今、芸人が楽屋で読んでるマンガ『九条の大罪』
川島 では続いて、山内さんのおすすめをお願いします。
山内 僕のおすすめはこちら、『九条の大罪』。作者は真鍋昌平先生、『闇金ウシジマくん』の先生ですね。2020年10月からビッグコミックスピリッツで連載中で、単行本は第3集まで発売されています。最新刊の第4集が2021年11月末に発売予定です。「ウシジマくん」がめちゃめちゃ好きだったんで、その流れで即買いしたんですけど、1回読んだ時点で、「はい先生、当たりです!」となりました(笑)。
川島 おめでとうございます(笑)。
山内 あらすじを紹介します。主人公はなぜか厄介な案件ばかりを引き受ける弁護士・九条間人(くじょう・たいざ)。九条は鼻炎持ちのバツイチで、知人のビルの屋上でテント生活をしている偏屈な弁護士です。弁護士だからお金はあるはずなのに、なぜこんなところに?みたいな場所に事務所をかまえている。
川島 ほう。
山内 で、主な顧客は半グレ、ヤクザ、前科持ちなど、きな臭い人だらけ。ネット上で悪徳弁護士と罵られながらも本人は気にせず、居候の弁護士・烏丸(からすま)と共に依頼人の擁護に努める。ある日、飲酒をしてひき逃げをした半グレが先輩に連れられて、九条のもとを訪れる。そこで九条が授けた策は、弁護士にはあるまじき教唆。交通事故一つですら常識がひっくり返る、知っているだけで人生が変わる、法とモラルの極限マンガでございます。……これ、まず弁護士なのに、悪い人を弁護してる感じがあるんですよね。
川島 まあそうだよね。
山内 で、これを「勉強になる」と言っちゃダメなんですけど、半グレが「先生、どうにかしてください!」と駆け込んできたときに、「こうやって対処すれば大丈夫」という”法の抜け道”をアドバイスするんです。じゃあ悪いやつに加担するだけの弁護士なのかと思いきや、実は自分の中の正義を貫いている弁護士なんです。たとえばお金持ちから依頼を受けたら、普通の弁護士さんは相手の財産に応じてギャラをもらうと思うんですよ。でもこの先生は一律いくらって決めてて、依頼人が悪かろうが、金持ちだろうが、どんな人であろうが、「依頼人の利益を守る」という方針でやっている。
川島 (手塚治虫の)『ブラック・ジャック』みたいなところありますね。
山内 居候してる烏丸という弁護士は、本来こんな弁護士事務所にいるはずじゃないほどのエリートなんですけど、この九条先生が面白いから勉強したいと言って一緒に働いている。その二人の関係性も面白い。やっぱり「ウシジマくん」を描いてた先生だけに、ブラックな部分の描き方がめちゃくちゃ上手い。「そんなこといいの!?」とこっちがハラハラドキドキするような法の抜け道をくぐって、そこからたどり着く結末というのが面白くてオススメです。
川島 いや、真鍋先生の取材力はやっぱりリアルですね。読んででちょっと嫌になるくらいのリアルさ。
山内 「ウシジマくん」のときも、実際の闇金に取材に行って、それをマンガにしているとおっしゃってたので、もしかしてこの九条先生にもモデルがいるのかもしれないです。
川島 僕も今、読んでるところなんですけど、それこそ「このマンガがすごい!芸人楽屋編」の上位に入るくらい、いろんな芸人が読んでる。
山内 「ウシジマくん」はドラマ化して面白かったから、九条先生もそのまま山田孝之さんでドラマ化してほしいです。
川島 じゃ「実写化おめでとうございます」とだけ言っておきましょう。
山内 実写化おめでとうございます!(*まだ決まってません)
読んでて心地良いし、ご飯にも合う『三日月のドラゴン』
川島 先ほどの『Thisコミュニケーション』はなかなか頭を使うんですけど、こちらはもうまったく頭を使わなくていいです。それがこちら、『三日月のドラゴン』。これも芸人からの人気が高いマンガです。
山内 最近よく聞きますけど、まだ読んでないんですよ。
川島 すぐ読めます。『三日月のドラゴン』、作者は長尾謙一郎先生。2019年から月刊スピリッツで連載中。現在、単行本は第5集まで発売中。第6集は今年の12月末に発売予定です。あらすじを言いますと、主人公はどこにでもいる、ひ弱な高校1年生・月島龍之介くん。幼い頃に両親を亡くしておばあちゃんと二人暮らし、家計を助けるためにコンビニでアルバイトをしております。ある日、友人が不良たちに脅されているところに遭遇、龍之介も巻き込まれて、恐喝されます。そしてその夜、バイト先のコンビニで強盗を圧倒的な強さで撃退する謎の老人と出会うんです。この老人がもうベロベロなんですよ。
山内 急にここからエンジンかかりますね(笑)。そこまでは「普通のマンガやん」と思ってたんですけど。
川島 「自分が情けないなあ」と思いながらレジやってると、コンビニ強盗が店にやって来る。ちょうどそこへ、ベロベロに酔っ払ったダサいおじいちゃんが来るんですよ。そしたらそのおじいちゃんがババババッと強盗をやっつけちゃうんです。その老人は空手の達人で寺の住職、西田凡拙。強くなりたい龍之介は、凡拙の空手道場に通うんですよ。そうやって空手を通じて龍之介が成長してゆく青春成長ストーリーマンガ……ということになるんですけど、あらすじというより、これが全部です。
山内 これがすべて(笑)!?
川島 もう本当に僕らが幼い頃に読んだ「こう来てほしい」という王道をズバッとド真ん中で行ってくれるマンガですね。読んでてまったくしんどくならないし、龍之介もどんどん成長していく。
山内 めちゃくちゃ読みやすそう。
川島 めちゃくちゃ読みやすいです。で、読んでると胸が熱くなるんですよ。この長尾先生の画風なんでしょうけど、やっぱりちょっと落ち着くんですよね。子供の頃に読んだ感じのタッチで。
山内 『はじめの一歩』じゃないですけど、弱い子が強くなって成長していくという。
川島 そうなんです。で、「勝つんやろな」って感じ。それを分かった上で読んでても、味わいがある。フォークソングを聞いてるような心地良さが、ずーっと続いていくという感じなんですよ。
山内 最高じゃないですか。
川島 だから他のマンガに疲れたら、これ読んでほしいくらいですね。
山内 僕、ご飯食べながらけっこうマンガ読むんですけど、「食事に合うマンガ」というのがめっちゃ大事にしてて。
川島 え? はい。
山内 普段読むのは血とか殺人とか出てくるマンガだから、食べながらだと食事に合わない。だから食事に合うマンガをずっと探してるんですよ。実家にいるときは「こち亀」がそれだったんですけど、今はそういうマンガがなかなかなくて。だからこれはめちゃめちゃご飯に合いそうなマンガだなと。
川島 言ってもいいですか? これ読みながら食べるオムライス、めちゃくちゃ美味い(笑)。オムライス、ハンバーグ、チキンライス、カレー、めちゃくちゃ合う。読んでて気持ちいいから。僕ら世代で流行った『ベスト・キッド』という映画あったでしょ。弱いやつがこの一発の必殺技にかけて、強い相手を倒していく。まったくそれです。ぜひ本棚に入れていただきたい。
『地獄の教頭』はどんな手で更生させるのか?
山内 次に僕がおすすめしたいのがこちら、『地獄の教頭』。
川島 これは飯に合わない(笑)!
山内 手持ちの漫画で今、一番合わない(笑)。作者は大沼良太先生。2015年からヤングガンガンで連載中。約3年間の休載を経て、今年4月に連載が再開されてます。現在単行本は第6巻まで発売、約4年ぶりに単行本が発売されました。あらすじなんですが、まず「教頭は地獄」という言葉があるんです。教頭という仕事は、校長先生みたいにトップでもなく、かといってヒラでもでもなく、中間管理職的な感じで、校長の意見もしっかり伝えないといけないし、現場の意見は校長に伝えないといけない。すごい大変な職業で、それで教育業界には「教頭は地獄」という言葉がある。これはそれをひっくり返して『地獄の教頭』というタイトルになってるんです。
川島 なるほどね。
山内 主人公は県立朱地高等学校に赴任した、温厚で勤勉な52歳の教頭・近衛修文(このえおさふみ)。ごく普通の平和に見える高校なんですが、内情は不良教師、いじめ問題、モンスターペアレントなど、ほっておけば重大事件になりかねない問題が山積み。そんな様々な問題に、時に狂気とも思える覚悟を胸に、近衛教頭が立ち向かう教育者の熱い生き様を描いた、狂気と覚悟のハードボイルド学園マンガです。
川島 不良教師というのは?
山内 生徒に手を出そうとしてるような不良の先生がいるんです。女子生徒をいやらしい目で見てたりして問題が山積みの先生を、普通は教頭先生が口頭で注意して終わらすんですけど、「地獄の教頭」ですからそんなことはせずに、まさに地獄のような目にあわせて、そんな気が起こらないように更生させるんですよ。
川島 地獄のような目……。
山内 それだけ言ってもまったくわからないと思いますけど、読めばわかります。その更生のさせ方がストロングスタイルではなく、考えられないやり方をしていて、そうやってこの教頭が学校の問題を解決していくという話でございます。伏線で振ってる話もあって、教頭先生がここに赴任する前の学校で起こした問題があって、それを根に持っている先生が追っかけて、同じ学校に赴任してくるんですよ。副校長として。
川島 教頭がいるのに副校長!?
山内 普通、校長先生の下って教頭じゃないですか。でもこの人は地獄の教頭を追いかけてきて、校長先生のちょい下の副校長というポジションで来るんですよ。で、ちょっと教頭が支持を得はじめたときに、「教頭先生はいい人だ」と思っている人たちに、教頭が行なってきた過去のデータをちらっと見せたりして、かき回すんですよね。この副校長とのバトルもありながら、他の問題も解決していくという。
川島 おもろそう。
山内 とにかくタイトルに惹かれましたね。『地獄の教頭』。ご飯に合わない。合うはずもない。
川島 体力のあるときに、ぜひ読んでください。
「川島・山内のおすすめマンガ」の模様は、次回放送の「川島・山内のマンガ沼」にて!
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(構成:前田隆弘)
【放送情報】
次回放送
読売テレビ●10月23日(土)深1:32~2:02
日本テレビ●10月28日(木)深2:29~2:59
「川島・山内のおすすめマンガ」を放送。
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