創刊のコンセプトは「少年マンガと少女マンガの垣根をこえて」朝日ソノラマ『月刊マンガデュオ』

以前書いた朝日ソノラマ発行の『マンガ少年』は1981年に休刊します。

その後継誌として同年に創刊された『月刊マンガ デュオ』。

残念ながらリアルタイムでは読んでませんが、創刊号他数冊を入手したので御紹介しましょう。

『デュオ』(朝日ソノラマ)1981年9月号

創刊号表紙に書かれたキャッチコピー。

「おとこのコとおんなのコのためのニューエイジ・コミック」

「少年マンガと少女マンガの垣根をこえて、ニューセンス・コミックマガジン、ただいま創刊!!」

「THE COMIC MONTHLY FOR BOYS AND GIRLS」

『デュオ』の名前の通り、男女のどちらが読んでも面白い漫画雑誌なのを強調してます。

執筆陣も男性漫画家と女性漫画家で半々くらいでしょうか。

『デュオ』(朝日ソノラマ)1981年9月号

ペンネームではどちらかわからない方もいます。

前誌の『マンガ少年』から更に進んだ漫画雑誌を目指した、と言えるのではないかと思います。

なかなか豪華な顔ぶれの中に「青池保子」さんが1ページですが描かれてます。

実は表紙に記載された「青池保子」の文字に魅かれて入手しました。

男女の垣根を超える漫画雑誌というコンセプトは結構珍しいのではないでしょうか。

あくまで私の記憶範囲内ですが、他に思い浮かびません。

 

しかしこの試みも長くは続きません。

手元の数冊から変遷を見てみましょう。

創刊から1年ちょっと経った1982年11月号。

『デュオ』(朝日ソノラマ)1982年11月号

月刊の冠は取れて『デュオ』のみの名前に変わってます。

掲載された漫画9作の内、男性漫画家は「ますむらひろし」さんのみです。

更に1年が経過した1983年11月号。

『デュオ』(朝日ソノラマ)1983年11月号

どう見ても女性向けのラインナップですね。

何故女性向けに移っていったのかは検証出来てません。

ただ創刊3号に「山岸凉子」さんが「鬼来迎」という読切を44ページ、創刊4号に「坂田靖子」さんが「星食い」という読切を50ページ描かれてます。

当初から女性漫画家の大型読切を掲載した流れかもしれません。

男性女性、どちらも読んで面白い漫画で埋め尽くされた雑誌を作る。

簡単ではないと思います。

確かにそのような作品は過去にも現在でもありますが、ひとつの雑誌に1作品か2作品ではないでしょうか。

それも私個人の感覚ですが、そこを意図して描かれているというよりも結果としてその様な作品になったと考えるのが自然です。

創刊号に掲載された作品を見ても、男性向けと女性向けが混在している感は拭えません。

私には姉と妹がいます。

3人とも漫画好きで貸本屋さんを利用してました。

私は子供の頃から少女漫画に親しみ、姉と妹は少年漫画を読む。

こういった少年少女の区別なく漫画を読んできたのであれば、創刊号の作品群は面白く読めます。

しかし当時はそんな区別なく漫画を読んでいた人は少なかったのではないでしょうか。

記憶を辿っても私の周りにはいませんでした。

男性が女性向けの漫画を読むと「男のくせに」と言われ、女性が男性向けの漫画を読むと「女のくせに」と言われた。

まだまだそれが当たり前の時代だったんですよ。

男女で区別された漫画をその通りに男女が読む。

そういう大多数の方がこの創刊からの『デュオ』を読むとどう思うか。

あくまで私個人の推察ですが、どっちつかずの印象を持ったのではないかと思います。

いつだったかずいぶん前で記憶がちょっと曖昧で申し訳ないのですが、テレビのインタビューで長崎尚志さんがおっしゃってました。

作品名は出されませんでしたが浦沢直樹さんの『YAWARA!』と『Happy!』を例に出して、「男性向けの漫画は設定の奇抜さが大事である」と。

対して「女性向けの漫画は登場人物の心情や感情表現が大事である」。

『YAWARA!』と『Happy!』から考えておそらく1990年代の放送だと思います。

確かにまだこの頃は長崎尚志さんの言う通りで、放送を見ながら「なるほど」と頷いた記憶があります。

現在もその理論は生きているとは思いますが、漫画の多様さは1990年代からは比べ物にならない程増えてます。

例えば、

ビッグコミックオリジナル』で連載されている『ミワさんなりすます』や『アフタヌーン』の『スキップとローファー』は女性誌で。

Kiss』の『クジャクのダンス、誰が見た?』や『ヤングダイヤル ―少年事件第零課―』は男性誌で連載されてもおかしくない作品だと言えます。

漫画雑誌全てを読んでいるわけではないので断言できませんが、ここ最近はそう感じる作品が多いような気がします。

男女だけでなく、漫画雑誌にはそれぞれ独自の色ってありますよね。

その色から外れた作品も見受けられます。

昭和世代の拙い推察ですが、漫画も読み手も時代の変化に合わせながら今だ成長し続けているという事ではないでしょうか。

令和の現在、『デュオ』の様に男女の垣根を超えたと謳った雑誌が創刊されたとしたら、多様な漫画を読み慣れた現在の読者層に受け入れられると思いますがどうでしょうね。

個人的にはどんな漫画家さんがどういう作品を描くのかとても気になります。

妄想がはかどりますね。

『デュオ』が早すぎた試みだったのか失敗だったのか結論は出せませんが、悪くない試みだったと考える次第です。

 

 

記事へのコメント

とても興味深い記事でした。
最近は、グッドアフタヌーンはキャッチコピーで「ノンジャンル」と言っていたり、ジャンプ+は編集部がジャンルを問わずに作品を募集していたりしていますね。
ただ、ジャンプ+の方は名前が「ジャンプ」なせいか、女性向けだとみなされた作品のコメントには「女向けの作品なんかジャンプでやるな」といったコメントがついていたり、読者の反発もあるのでなかなか難しいなと思います。
青年誌とか少年誌とか少女誌といった性別や年齢での枠組みがない雑誌がもっと増えてもいいかもしれませんね。

私も過去に男女の垣根のないこんな挑戦的な雑誌とは知らずとてもおもしろかったです!

あらためてコミックブリッジの「女性が読む青年誌」というコンセプトは素敵だなと思いましたし、各社とも男性誌と女性誌でアプリを分けているのが不思議 に感じました。

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