昭和の児童書の中でもド直球を極めた、高額プレミアで入手困難な全11冊。ドラゴンブックス『日本幽霊百科』

子供って不思議な話が好きですよね。

私も幼少期から小学校高学年くらいまでは、その手の話が書かれた本が大好きでした。

私が生まれる前ですが、昭和32年に発行された『世界の七ふしぎ』という本があります。

『世界の七ふしぎ』(日下実男/大日本図書)

小学生向けのこの本、目次に並ぶ七つの不思議は昭和40年代に子供だった私に馴染み深い記事ばかりですね。

『世界の七ふしぎ』(日下実男/大日本図書)

残念ながら昭和30年代の物はこの1冊しか所有してません。

資料不足で確証はありませんが、ムー大陸や空飛ぶ円盤を扱った児童書はこの当時としては珍しいのではないかと思います。

昭和40年代に入ると雑誌のグラビアでも謎や怪奇関係はグラビアで特集されるようになり、児童向けの本も多く出版されてます。

少しですが紹介しましょう。

秋田書店の『世界怪奇スリラー全集』第1巻の『世界の魔術・妖術』

『世界怪奇スリラー全集① 世界の魔術・妖術』(中岡俊哉/秋田書店)

1968年1月の初版で、所有している物は1971年5版です。

全6巻のタイトルだけでも魅力満載です。

同じく秋田書店の『世界怪奇ミステリー全集』第4巻の『世界の驚異をたずねて』

『世界怪奇ミステリー全集4 世界の驚異をたずねて』(庄司浅水/秋田書店)

1971年12月の初版で、所有している物は1972年10月の再版です。

こちらも全6巻。

学研のジュニアチャンピオンコース、『驚異の記録 世界ショッキング事件』

『驚異の記録 世界ショッキング事件』(大野進/学研)

1973年12月の初版で、所有している物は1974年11月第3刷です。

どれも重版されているという事は、良く売れた証拠です。

私も結構夢中になって当時読みましたよ。

秋田書店や学研に限らず他の出版社からも児童向けの本は色々な趣向で出てますが、謎や怪奇系の物はプレミア価格が高めです。

そんなプレミア価格の「昭和40年代謎や怪奇本」の中でも頭抜けて高い価格なのが、講談社の『ドラゴンブックス』シリーズです。

この手の本を扱う古書店であれば、カバー付きでそこそこまともな状態の物が間違っても棚に刺さっている事はありません。

必ずガラスケースに入っているか、お客の手の届かない場所に置くかで販売されてます。

そもそも現存数が少なく、ガラスケースに入っているのさえあまり見ません。

古書店の従業員時代にカバー無しを1冊扱ったことがありますが、「カバーは無いけど珍しい本だし」と少々強気の値段で棚に入れたにもかかわらずすぐ売れたのを憶えてます。

私が現在所有している『日本幽霊百科』もカバー無しで、状態も良いとは言えません。

『ドラゴンブックス⑪ 日本幽霊百科』(佐藤有文/講談社)

安価で売られているのを見つけて買えたのは幸運でした。

この『ドラゴンブックス』は1974年から1975年にかけて全11冊が出版されましたが、先述の秋田書店や学研から出された物より後発です。

その為、中学生となった私のリアルタイムでの記憶にはありません。

大人になって漫画専門古書店の目録でその存在を知りました。

現物を手にして中を見たのは従業員時代に扱った『吸血鬼百科』と、手元にある『日本幽霊百科』のみです。

内容はというと子供向けに柔らかい文体という体裁でありながら、イラストも写真も遠慮なしのガチです。

『ドラゴンブックス⑪ 日本幽霊百科』(佐藤有文/講談社)

情報量も、詰め込むだけ詰め込んであります。

文章を大人向きに書き替えれば、そのまま専門書として通用すると言っていいのではないかと思います。

この内容は後発であるが故の、気合の表れなのでしょうか。

先発の謎や怪奇系児童書には負けてられん、ウチはここまでやりますよ。

と講談社が考えたのかどうかはわかりませんが、それぐらい濃い内容です。

昭和49年頃の小学生はこの『ドラゴンブックス』をどう受け止めたのでしょうね。

出現率の低さから言ってそんなに売れたとは思えません。

気になるのは多くの写真が使用されていますが、時代劇風の怪談幽霊映画から流用されたと推察される事です。

版権の記載が無いのが謎ですが、無断でって事は無いと信じましょう。

時代劇風の怪談幽霊映画、私も子供の頃に観た事がありますよ。

断片的な記憶しかありませんが、昭和の映画館の雰囲気と暗い映像で映し出される恐怖。

今も怖い話や映像が苦手なのは、この時のトラウマが大きな要因です。

さて『ドラゴンブックス』には石原豪人さんがイラストを多く描かれてます。

週刊少年漫画誌に描かれた絵より数段リアルで怖い絵が特徴で、このシリーズの価値を高めている一因でもあると思います。

まずは「四谷怪談」

『ドラゴンブックス⑪ 日本幽霊百科』(佐藤有文/講談社)

貴重なカラー絵です。

次は「怪談 累が淵」

『ドラゴンブックス⑪ 日本幽霊百科』(佐藤有文/講談社)

2色ですがこれぞ豪人さんで、この3人の表情が凄いです。

石原豪人さんの見開き画はこの2点ですが、他にもおどろおどろしい絵や写真がこれでもかというくらいにあります。

なんと文字だけのページが無いのですよ。

目次を見ても内容の細かさに驚かざるを得ません。

『ドラゴンブックス⑪ 日本幽霊百科』(佐藤有文/講談社)

シリーズの他の本も読みたいですね。

2冊は復刻されているようですが、出来れば全部当時の物で。

『ドラゴンブックス⑪ 日本幽霊百科』(佐藤有文/講談社)

『飢餓食入門』や『生き残り術入門』、『秘密結社』等々どんな内容なのか気になって仕方ありません。

入手の努力だけは続けていきたいと思ってます。

インターネットがある現在では、謎も怪奇も不思議も昭和とは大きく変わったと思います。

本や雑誌の記事を読んで想像を膨らませた昭和と違い、検索すれば大概の情報が(真偽はどうあれ)手に入ります。

便利な世の中を甘受しながらも、摩訶不思議に魅了された子供時代を思い出しながら記事を書いた次第です。

 

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