街の便利仕事から国際的なトラブルまで。その名も「パーフェクト・ピンチ・フォロー・オフィス」 たかもちげん『代打屋トーゴー』

以前『コミックモーニング』の創刊号の記事を書きました。

その記事で触れた『代打屋トーゴー』のモーニングKC版全25巻セットと、掲載された『モーニング』本誌を3冊手に入れましたので御紹介しましょう。

『コミックモーニング』は創刊からしばらく買ってましたが、あまり好みに合わなかったのか数号で買うのを止めました。

その後何で知ったのか憶えてませんが『代打屋トーゴー』を知り、『モーニング』の購入を再開します。

以後最終回まで『モーニング』を購入して読み続け、単行本も全て発刊ごとに最終巻まで揃えました。

この最初に所有した全巻セットは蔵書整理で手放し、次に手に入れた物は数年前引っ越しの際に漫画好きの若い子に「面白いから」と進呈。

そして今回3度目の全巻セット購入です。

『代打屋トーゴー』(たかもちげん/講談社)

いつもの古書店に新しく棚に並んでいるのを見つけ、即購入。

奇抜な発想とその解決方法で展開する基本的に1話完結の、何度読んでも面白い私の殿堂入り漫画です。

モーニング』創刊号の「ちばてつや賞」発表で入賞している『代打屋トーゴー』ですが、第1話の掲載が何号なのかはわかりませんでした。

今回入手した創刊から9か月後の昭和58年6月16日号に第3話が掲載されてます。

『モーニング』(講談社)昭和58年6月16日号

ちなみに週刊ではなく一週おき木曜発売の隔週誌です。

223ページ目という後ろの方の掲載にもかかわらず、扉から5ページが2色なのは既に人気作品なのが伺えますね。

では作品の紹介に入りましょう。

主人公は吉本大介。

区役所の土木課に勤務する公務員です。

しかし殺人と営利誘拐以外ならなんでも引き受ける代打屋、「パーフェクト・ピンチ・フォロー・オフィス」の所長でもあります。

代打屋としての名前は「トーゴー」。

所長とは言ってもあくまで吉本大介個人の仕事。

公務員の副業禁止はどうなの? なんて言ってはいけません。

全224話中、一言もそこには触れられてません。

現実に照らし合わす、なんて野暮な事はしないのがこの作品を楽しむのには必須です。

というのも代打としての依頼内容が小さな揉め事や探し物から、国際的なテロリストとの対決まで多岐に渡るんですよ。

そしてトーゴーが採る解決方法の奇抜さというか壮大さというか、現実に不可能な発想がこの作品の大きな魅力だからです。

全エピソードを紹介したいくらい外れ無しの面白さなのですが、流石に無理なので個人的な好みで選んだ話を紹介します。

連載時『モーニング』では最後に掲載されることが多かった『代打屋トーゴー』ですが、これは人気が薄かったからではなくトリを飾る意味だったと私は信じてます。

まずはそのトリを飾る役目から一転、入手した貴重な巻頭カラーの2話から紹介しましょう。

 

昭和59年7月19日号 第25話 「ワンダーランド」

事故で遭難し、珊瑚礁の中で発見されない飛行機の機体を探して欲しいという少女からの依頼。

乗っていたのは宝石商である少女の両親。

一緒に沈んだ5億相当の宝石の1割を代打料として払うという少女の依頼を受けたトーゴー。

無事に機体を発見するものの、果たして結果は如何に。

アナログ手描きの青と緑が美しいカラー画にため息が出ます。

『モーニング』(講談社)昭和59年7月19日号

参考までにまだ第1第3木曜発売となってます。

 

昭和63年6月2日号 第169話 「グリズリーを追え」

成功率100パーセントの殺し屋グリズリーに狙われた、2日後に来日予定の某国皇太子。

某国の関係者から最後の切り札として同じ100パーセントの代打屋、トーゴーに殺害阻止が依頼されます。

グリズリーは誰も招待や素顔を知らない殺し屋。

成功報酬は1億円。

ギリギリになって入った情報で機転を利かせるトーゴーに唸らされます。

迫力ある見開きで銃を構えるトーゴーですが、話の内容とは関係ありません。

『モーニング』(講談社)昭和63年6月2日号

ちなみに『週刊コミックモーニング』となっており、同時掲載の『課長島耕作』は Step.47 で、京都から本社に戻ったところから始まり大町久美子さん登場の回です。

 

また全244話から私個人の大好きな話をいくつか簡単に紹介しましょう。

 

第12話 「ザ・デイ・アフター・ゲーム」

60階の高層ビルに仕掛けられた爆弾。

警官1000人、半日がかりで探すも見つからずトーゴーに依頼が。

爆弾は見つけたものの取れない場所に。

爆弾起動1分前にトーゴーが採った策は如何に。

これ一見地味ですがとんでもなく「ありえねぇ~」な超人的解決で、初読みの時にいたく感心したのを憶えてます。

 

第34話 「スパローゲーム」

トーゴーの住居はガソリンスタンドの2階を借りてます。

そのガソリンスタンドのオーナーである通称「オバハン」から別れた亭主が麻雀の賭けにガソリンスタンドそのものをぶち込んだ為、取り返して欲しいと頼まれます。

麻雀を知らないトーゴーが挑む麻雀勝負の相手は、「つばめ返し」を完璧にやれる「三鷹の小次郎」。

『代打屋トーゴー』(たかもちげん/講談社)4巻74,75P

これは唯一の麻雀回で派手な場面はなくとも、トーゴーが繰り出す役満の場面が面白くてかなりのお気に入り回です。

 

第69話 「オリエント急行予告殺人」

第68話からヨーロッパへ来ているトーゴー。

区役所の仕事は? と突っ込んではいけません。

舞台はオリエント急行列車です。

「ゴールドバスター」という国際的なテロリストから殺人予告を受けた人物を守って欲しいと依頼されます。

「ゴールドバスター」の仕事を過去に2回失敗させたトーゴー。

トーゴーに恨みを持つ「ゴールドバスター」は果たしてどんな手を使うのか。

実際に取材されたのだと思いますが、オリエント急行の描写が良いんですよ。

更にスリル溢れる展開がたまりません。

第73話までヨーロッパが舞台で第74話で日本に帰ってくるのですが、このオリエント急行の回が一番好きですね。

 

第146話 「指紋」

トーゴーには女性の協力者が何人かいます。

彼女等はトーゴーに仕事の依頼もしますが、大切な仲間と言ってもいいでしょう。

第3話に依頼主として初登場した弁護士の世羅淳子は、トーゴーの大事なブレーンとして多くの代打に関わります。

色恋とは程遠い堅物の彼女ですが、たった一度の恋愛話。

切ないラストが心に残ります。

 

第240話 「夢で逢いましょう」

泣けます。

いえ泣いてしまうというか泣かざるを得ないというか、こんな話はずるいです。

どれだけ簡潔に紹介しようとも内容に想像がついてしまうので、この話だけは何も書きません。

でもどうしてもお気に入りを紹介するというのに、この第240話を外す訳にはいかないんですよ。

これはお許し願うしかないです。

 

最後の紹介が曖昧で申し訳ありませんが、これくらいにしておきます。

しておきますが足りません。

こんなもんじゃないです。

もっともっと紹介したくてムズムズしますが、ここは諦めます。

調べたところkindleで読めるようです。

最近は古書店でも全巻セットの入手は困難になってます。

現状ネット上で売られているのを買うのが一番手っ取り早い手段でしょうか。

テレビドラマにもなった『警察署長』連載中に、51歳という若さで亡くなられた「たかもちげん」さんの代表作と言っていい『代打屋トーゴー』。

機会があればお読みになるのをお勧めします。

 

 

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