1982年、昭和57年。ヤンマガに続いた講談社の青年誌『コミックモーニング』創刊号

1980年。18歳の私は九州の高校を卒業後、大阪の某大学へ通っておりました。

一人暮らし。

誰に何を言われることなく使えるお金の範囲内で漫画を買う自由を満喫します。

そんな日々の中、住まいへ帰る途中駅前の本屋さんで『ヤングマガジン』という新しい雑誌を見つけます。

高校の時に『ヤングジャンプ』が創刊しましたが、貸本屋さんには置いてなく友人が買ったのをざっくり読んではいました。

ジャンプに続いてマガジンも出したのか。

とりあえず買ってみて以後もそれなりに面白く読んでましたが、2年後にまたも新しい講談社の青年誌が創刊。

『コミックモーニング 創刊号』

『コミックモーニング』。これまでにあった雑誌と関係ない全く新しい物。

またなんか出た、と思い購入。

この時私は大学を辞めて同じ大阪の違う場所に移り住み、アルバイトで生計を立てる日々でした。

今では信じられませんが時給は500円が当たり前の時代です。よく生活出来てたなと今思い返しても不思議です。

だからって漫画は切り離しません。

まず目を引いたのは豪華な執筆陣。

これは面白いに違いないと期待して買ったところまでは憶えてます。

以降しばらくは買い続けますが、いつしか買わなくなってました。

どれくらいの期間だったか。これも記憶からは抜け落ちてます。

買うのを再開したのは何かのきっかけで『代打屋トーゴー』という作品を知ってから。

いや面白いじゃないのよ、とモーニングを買うのを再開します。

モーニング島耕作ナニワ金融道、等々数え上げればきりがないほどの名作や新しい手法、新しいジャンルの漫画を掲載してきました。

今読むのは困難ですが、松本大洋さんもモーニングで『STRAIGHT』という作品を連載されてました。

 

現在では扱ってないコンビニはないのではないかと思えるくらい、人気雑誌としての地位を確立してますね。

では創刊号の紹介に移りましょう。

 
 

巻頭カラー5ページは谷口ジローさん。

繊細な絵柄が美しい絵物語のような構成。

ちばてつやさん、川崎のぼるさん、ジョージ秋山さん、水島新司さん、本宮ひろしさん等々ビッグネームが顔を揃えます。

掲載されている漫画作品全体の雰囲気はビッグコミックに近い感じがしますね。個人的な印象ですが。

 

巻末は小林まことさんのカラーで4ページ。

この数年後小林まことさんはモーニングに『What’s Michael!?』を掲載し、社会的なブームを起こします。

このマイケルブームは良く憶えてます。

漫画を読まない層にも浸透した名作ですが最近はあまり話題に上ることは少ない気がします。

令和の今でも十分面白い猫漫画ではないでしょうか。

 

個人的に感慨深いのが谷岡ヤスジさんが6ページ掲載されている事。

実は小学生の時に貸本屋さんで谷岡さんの漫画を借りて母親に怒られたことがあります。

こんな本を借りるのならもう貸本代は出さないし貸本屋さんにも行くなとも言われました。

戦前生まれの私の母にとって谷岡さんの漫画はエロい表現や生々しさ、どぎつさ等、とても小学生の子供が読む物ではなく理解できない漫画だったのでしょう。

その怒られた谷岡さんの漫画が自分が買う雑誌に掲載されている。

当時特に感じたわけではありませんが、今こうして振り返って「大人の漫画読者」になってたんだと改めて思います。

ヤングジャンプ創刊以前の青年漫画雑誌は大人となった団塊の世代の方々が読者層だったと言っていいと思います。

出版社も当然その層を読者層として捉えていたでしょう。

私が子供の頃から10代の終わりまでは青年誌といえばビッグコミック漫画アクションでした。

当然『ゴルゴ13』や漫画版の『ルパン三世』を面白いと思える年齢ではなくヤングジャンプヤングマガジンが創刊されるまで青年誌は読んでません。

作品単体ですと映画にもなった『博多っ子純情』は同じ九州が舞台という事もあり、単行本では読みました。

もう一つこちらも映画になった『嗚呼!! 花の応援団』も単行本で読みました。

どちらの映画も映画館で見ましたよ。

また『あぶさん』は貸本屋さんにあったので借りて読んでます。

1970年代に10代を過ごした私にとって、掲載されている作品を読む機会はあるものの青年向けの漫画雑誌は馴染める雑誌とは言い難かったと思います。

そんな私も高校卒業から二十歳へ向かう時期。

1979年に創刊されたヤングジャンプからヤングマガジンビッグコミックスピリッツと新しい青年誌は明らかに新しい読者層がターゲットです。

そしてモーニングの創刊。

先述した様に少年誌を読んでいる世代が大人になったと出版社が認識したからだと私は思ってます。

昭和20年代生まれと昭和30年代生まれ。

漫画が虐げられた時代を生きました。

読むとバカになる、いつまでも漫画なんか読むな、など何度言われたことでしょうか。

両親が漫画を読む事に対してうるさく言わなかったのが私にとっては幸せだったと言えます。

昭和20年代生まれの方々にはビッグコミック漫画アクションがありました。

この1980年前後の青年誌創刊は昭和30年代生まれの世代が大人になっても読める漫画を与えてくれたと思ってます。

そして漫画という世界が世間でようやく確立されたとも言えます。

以降漫画もアニメも世の中には当たり前のように存在するようになり、大人になった我々は大人向けの漫画だけでなく少年誌も読み続けます。

だからこそと言っていいのでしょうか。少年誌でも大人が読むに値する作品が多く発表されていきます。

それとも子供の頃から多様な漫画を普通に読むことが出来た昭和40年代以降の世代は我々よりも漫画を読む力が上がったという事でしょうか。

細かい分析は野暮ですね。

色々な積み重ねがあって令和の今、思う存分漫画を享受出来る。

その事実だけで良しとしましょう。

さて今回入手したモーニング創刊号ですが個人的に嬉しい発見がありました。

 

第1回コミックオープンちばてつや賞一般部門の入選作に(大賞は該当者なし)先述した『代打屋トーゴー』が!

知りませんでした。ここからのスタートだったんですね。

代打屋トーゴー』は面白いですよ。全話読むには元版を全巻揃えるしかありませんが読んで絶対損しないとお勧めします。

新たな発見もあったモーニング創刊号ですがそれなりに現存してます。漫画専門の古書店以外にも安い価格で売られているのをよく見かけます。

もちろんネット上でも。

当時それだけ売れたんでしょうね。

現在の相場がいくらなのかは言及しませんが、興味を持たれたら漫画史の片隅に触れるおつもりで探してみてはいかがでしょうか。

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