『新谷かおる』さんといえば?
私の中では『ふたり鷹』が筆頭に上がります。
先日全巻セットを購入しました。
『ふたり鷹』の連載開始が昭和56年44号です。
ずっと以前から週刊少年サンデーは貸本屋さんで借りて読んでましたが、この当時は地元を離れ大阪で大学生となっておりました。
貸本屋さんが利用できない環境になって私が取った策は、漫画週刊誌が置いてある喫茶店でコーヒーを飲みながら読むことです。
発売日だと他に読む人が多い為、少し日をずらして行ってました。
この頃の『サンデー』は『うる星やつら』が大人気で他にも『タッチ』や『GU-GUガンモ』などが連載されており、特に『ふたり鷹』は連載開始からその設定に引き込まれ毎号楽しみでした。
主人公は「沢渡鷹」と「東条鷹」。
ともにバイクレーサーを目指すライバルです。
しかしなんといっても「沢渡鷹」の母親、緋沙子さんのキャラクターが良いんですよ。
都内の一等地に店を構える業界でもトップクラスの美容師。
バイクレーサーになるという息子の「鷹」を応援するどころか、誰も叶わぬ豪快さで周りを振り回しながら助けたりと大活躍です。
そんな緋沙子さんが抱える悩みが、物語の根幹をなす『ふたり鷹』のタイトル通りの問題です。
未読の方もいらっしゃるでしょうから、これ以上は説明しないでおきましょう。
この設定はどちらかというと少女漫画的です。
また女性キャラクターも細い線で描かれ、私個人の感覚ですが当時の少年誌では珍しい画風ではないでしょうか。
今思い返すと大学生となって姉と妹と離れて暮らすようになり、少女マンガと疎遠になっていたこともあって『ふたり鷹』に引き込まれた感はあります。
ただし連載終盤は大阪から神奈川に居を移す真っ最中で忙しく、記憶には残ってません。
『マガジン』、『サンデー』、『ジャンプ』は24歳のこの頃に毎号読むのをやめてます。
『ジャンプ』はその後『ドラゴンボール』のピッコロ大魔王登場あたりでドハマりし、毎号発売日に血眼になって買い続ける事になりますがその話はまた別の機会に。
今回連載当時に読んでから40年ほど経過しての再読です。
訂正した限定解除の免許をひらひらさせる場面は記憶だけで書きましたが、ちゃんと確認しないといけませんね。
他にも40年ずっと覚えてる場面があって、御紹介しましょう。
コミックス第4巻。
「沢渡鷹」にとって初のバイクレースである鈴鹿耐久4時間レース。
なんだかんだで優勝するんですが、チェッカーフラッグを受けながらウイリー走行でゴールラインを通過して格好つけようとします。
そして派手に転倒してしまう始末。
バイクレースの知識など全く無く、ゴールする際にウイリーするなんて勿論初めて知り「やろう…ウイリー・フィニッシュだ!」というコマ内のセリフは初読みの時に刻まれました。
それから10年以上経ってF1やレースにハマり、バイクレースもテレビで見るようになります。
実際にウイリーでゴールするのを見て、本当にやる人いるんだと『ふたり鷹』を思い出しておりました。
今回全巻一気に読んだのですが、随所に「ふたり鷹ミニミニ辞典」と称して、ページ半分がバイクやレースにまつわる話を新谷かおるさんが書かれてます。
これは昭和の雑誌ではよくある事ですが、元々広告が雑誌掲載時に載ってました。
現在はどうなんでしょう。全ての漫画雑誌を読んでいる訳ではないのですが、作中に広告を差し込むのは無くなったのではないかと思います。
で、コミックスとして発刊する際にこうやって漫画家さんが書き下ろしの様な形で何か書くか、新しく描き足して修正するとかいった事になるわけです。
記事を書くのに1冊くらい掲載された『サンデー』を入手しとくか、といつもの古書店で買ってきたら上手い事この広告が入った号(昭和58年24号)でした。
広告というより映画の紹介記事ですが、漫画作品の途中に入れるという事は事前に打ち合わせしてある訳ですよね。
この回だと映画のオーディションが始まる場面で広告です。
ページをめくるとバイクレースの場面です。
たった半ページとはいえ差し込み広告があるときはそれを踏まえてネームを作らなければならなかったのは、漫画家さんにとって負担だったと思うのは素人だからでしょうか。
コマ割りの構成とかに影響あるとしか思えないのですが、それをやっての雑誌連載だったのでしょうね。
『ふたり鷹』はバイクやバイクレースの漫画作品です。
それに加えて母親の緋沙子さんや、登場する他のキャラクターが魅力あふれる名作です。
本格バイクレース、メロドラマ恋愛、母子愛情、ドタバタギャグといったバラエティーあふれる展開の『ふたり鷹』。
未読でしたらお読みになるのをお勧めします。