5年間に188冊の刊行。漫画史に残る名作揃いのラインナップ。虫プロ商事「虫コミックス」

5年間に188冊の刊行。漫画史に残る名作揃いのラインナップ。虫プロ商事「虫コミックス」

戦後の漫画は手塚治虫さんから始まったと言っていいでしょう。

昭和30年代に入り漫画月刊誌が隆盛を極めていくにつれ、トキワ荘の面々や多くの漫画家の漫画作品が発表されていきます。

そして昭和34年、『週刊少年マガジン』と『週刊少年サンデー』の創刊。

私はその2年後、昭和36年に生まれました。

昭和30年代の漫画作品はほとんどがA5サイズで出版され、多くがハードカバーです。

漫画月刊誌と貸本屋さんの衰退に伴ってそれらの漫画書籍も子供の周りから姿を消して行きます。

変わって台頭するのが新書版コミックスです。

小学校に入学するかしないかの頃から貸本屋さんを利用していた私ですが、毎日の様に借り出したのは三年生か四年生くらいからだったと記憶してます。

週刊漫画雑誌を除けば借りる本のほとんどが新書版コミックスです。

中でも「虫コミックス」には随分とお世話になりました。

昭和30年代、月刊誌に掲載される漫画はほぼ全てが児童漫画でした。

しかし昭和40年代に入るとリアルタイムで供給される漫画はジャンルも表現も描写も多岐に渡ります。

子供たちに夢を与えるのが漫画の使命だった時代は過去になり、TVの普及と経済成長と共に急激に変化する時代を生きる子供たちへ供給される漫画も変化し続けます。

その昭和40年代を生きる子供へ夢を与えた時代の漫画を読む機会をくれたのが「虫コミックス」です。

激動の時代とは言え小学生はまだまだ児童です。

マガジンやサンデーやジャンプも読みますが、毒気など一切無いほのぼの児童漫画だって面白くて読みたいのは当然です。

虫プロ、あるいは手塚治虫さんがどのような意図で「虫コミックス」に昭和30年代の漫画を収録して発行したのか。

推察するしかありませんが、ハードカバーの書籍として発行されながら姿を消した名作を今の子供たちにも読んで欲しいと願ったからだと確信します。

手元にある昭和44年発行の『ひみつのアッコちゃん』第3巻と『オバケのQ太郎』第4巻。

定価は240円です。

当時の子供にとって気軽に出せる金額ではありません。

そこで貸本屋さんの出番です。1冊借りて翌日返して10円だったと記憶してます。

他にも新書版コミックスはありましたし借りてましたよ。

「朝日ソノラマサンコミックス」「秋田書店サンデーコミックス」「小学館ゴールデンコミックス」「コダマプレスダイヤモンドコミックス」などなど。

しかし児童漫画に特化した作品収録は「虫コミックス」だけです。

昭和40年代に発表された作品も多く収録されてますが当時は子供でしたからあまり時代やジャンルを意識していたわけではありません。

「虫コミックス」に関しては読みやすくて面白いからと再読含めてかなりの回数で借りました。

杉浦茂さんは「虫コミックス」で知りました。

昭和40年代の子供にはあまりなじみがない漫画家さんです。

子供時代に読まなかったら杉浦茂さんに対する捉え方は大きく違ってたと思います。

また前谷惟光さんの『ロボット三等兵』は「虫コミックス」が初読みです。

二人とも独特すぎる作風です。

「虫コミックス」がこの二人を収録に加え、昭和40年代の子供が読む事が出来た。

その功績はとても大きいのではないでしょうか。

もちろん他にも「よくぞ入れてくださった」と感心せざるを得ない作品ばかりです。

虫プロがもっと長く続いていれば更に多くの名作が収録されたのでしょうがそれは致し方ありません。

5年という期間で収録された作品の多くが現在も語り継がれ、読まれている事実だけで充分でしょう。

そして貸本屋さんの存在も大きいと思います。

特に私の様に毎日何かしら漫画を読んでないと気が済まないオタク気質(当時そんな言葉はありませんが)の子供にとって、安価で借りてこれる貸本屋さんは大切な存在でした。

先述した所有する2冊の虫コミ。どちらも貸本屋さんで使用されたものです。

『ひみつのアッコちゃん』は貸本屋さんのハンコが押してあり、多くの箇所に押してある注意事項もあえて作ったとしか思えないハンコです。

カバーはべったりと本体に糊付けされてます。

『オバケのQ太郎』はカバーの糊付けはされてませんが折り目で切れない様に裏面をセロテープで補修してあります。

また裏見返しには貸出記録と思える数字の書き跡が見られます。

2冊共、本そのものに穴を開けて紐で補強してあるのは貸本として当たり前の事です。

『アッコちゃん』も『オバQ』も当時大人気です。

ボロボロとまではいきません。でも本当に色んな子供たちに読まれた証としての状態の悪さです。

大人になって入手しましたが、この状態を見るたびに貸本屋さんを思い出し子供の頃を振り返らせてくれる大切な本です。

現在はコレクターズアイテムとして定番の「虫コミックス」です。

作品によっては高額な物も多い為、全て電子化されて気軽に読めるようになってくれればいいですね。

昭和40年代、たった5年間の出版期間ですが漫画史にとって重要な本である事を知って欲しくて記事を書きました。

興味を持って頂けましたら幸いです。

記事へのコメント

貸本屋さんがハンコがいいですね。
言ってしまえばネカフェの漫画に貼ってあるシールやスタンプとおんなじなんですけどなんだか味わい深いです。

コメントする