vol.01 スカート 澤部渡 「高校1年で『神戸在住』を読んだとき、『僕はこっちだったんだ』と気づいたんです」

写真 / 後藤武浩

もしも。今の自分の人格は、自分が見聞きしてきたものの積み重ねによって形成されているのだとするならば。「どんなマンガを読んできたか」を語ることは、「どんな人間であるか」を語ることにとても近いのでないか。人生に影響を与えたと自覚しているマンガはもちろん、かつて読んでいたけれど今ではまったく手に取ることのないマンガでさえ、自分の血肉と化しているかもしれない。だから、マンガについてインタビューしようと思ったのだ。そのマンガを知るためではなく、その人自身を知るために。

シンガーシングライター・澤部渡。ソロプロジェクトである「スカート」の名前のほうが、通りがいいだろうか。いや、世間的には「Mステで、スピッツのバックでタンバリンと口笛を担当していた、あの男」と言ったほうがピンと来るかもしれない。ポップカルチャーに精通し、マンガ好きとしても知られる彼に、どんなマンガ遍歴をたどってきたかを聞いた。少年時代からさぞかし大量のマンガを読んできたのだろうと思っていたが、マンガへの目覚めは意外にも遅咲きだった。

自らマンガを読み始めたのは『神戸在住』から

──マンガを読んだ最初の記憶って、どんなものですか?

うちの母親がいろいろマンガを持ってたんですよ。中央公論社から出ていた、藤子・F・不二雄の分厚いSF短編集(『藤子不二雄SF全短篇』)が3冊あったりして。それを読んだのはずっと後、小学校高学年くらいなんですけど、最初に読んだ記憶として残っているのは吉田戦車さんの『伝染るんです。』『はまり道』だと思います。小学校1、2年くらい。

──へえ〜。コロコロやジャンプのマンガには興味なかったんですか?

母親がジャンプを毎週読んでたので、家にジャンプはあったんですけど、いわゆるバトル物・冒険物の面白さが全然わからなかったので、ほとんど読んでなかったんですよ。「こち亀」とうすた京介を読むくらいで。

──「このマンガは面白い」と自覚して、初めて読み通した作品は?

さっき話に出た吉田戦車さんの『はまり道』がすごい好きだったんですよ。マリオとルイージがおっさんになってるようなマンガで、今思い出しても「あのマンガいったい何だったんだ?」って思うんですけど。

──小学校低学年で読む吉田戦車って、どんな感覚なんですか?

あまりに子供だったので、それが常軌を逸した行動だとわかるのがずっと後だったりするんですよ。『伝染るんです。』で、バーのカウンターに男の人が座ってて「サワガニ、ダブルで」って言うとグラスにサワガニが2匹入って出て来る、という場面があるんですけど、当時はバーの存在も知らないし、「ダブル」という注文の仕方も知らないから、「グラスにサワガニが入って出てくる」というそのままの状況しかわからないわけですよ。そのへんから何かが歪んでたんだろうなって思いますね(笑)。

──マンガを読むのが習慣になったのは、いつの時期ですか?

実は子供の頃は、わりと読んでないんですよ。

──家にいろいろマンガがあったのに。

習慣というか、家にマンガがあるのが当たり前という状況で。中学1年のときに母親が気まぐれで『巨人の星』を全巻買ってきたり、あるとき急に「『漂流教室』買ってきて」と言われてお使いに行って、それで自分も読んでみたり……みたいなことをやっている中で、ある時期、僕が『ラブひな』というマンガにハマったんですよ。「ああ、こういう世界いいな」と思って読んでたんですけど、高校1年のとき、『神戸在住』というアフタヌーンに載ってたマンガをなんとなしに読んで。そしたら、「僕はこっちだったんだ」と気づいたんですよ。それまでは、藤子・F・不二雄のSF短編集にしろ、『漂流教室』にしろ、「与えられたものを読む」という気持ちがどこかにあって。今みたいに自分からマンガを読むようになったきっかけは、高校1年で読んだ『神戸在住』だったと思います。

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木村紺『神戸在住』第1巻29ページ

自分の知らないことを知ってる大人が大好きだった

──家庭にあったマンガの話がよく出てきますけど、学校ではどうだったんですか? 当時、クラスでみんなが読んでいたマンガは?

『ワンピース』とか、『スラムダンク』とか、いわゆる少年マンガが流行ってたはずですけど……小学生の頃はあんまりマンガの話をしなかったのかな? 全然覚えてないですね。

──マンガを読み始めたのは早いほうだけど、マンガにハマりだしたのは……。

遅いです。でも読むようになってからは、どんどんのめり込んでいきましたね。たとえばその頃、Amazonの「あなたへのおすすめ」みたいなやつをずっと見てたんですよ。よさそうなタイトルや表紙の本を片っ端からメモして、本屋に行ってどんなマンガなのか見てみたり。

──読みたいマンガは手に入れられる環境だったんですか?

いやいや、やっぱり高校生はお金がないので。でも、アフタヌーンとかコミックビームとか、月刊誌のマンガばかり読んでたんですよ。だから単行本の刊行ペースも遅くて、それは助かりましたね。マンガだけじゃなく、音楽に使うお金も多かったんですけど、でもそのためにお昼代を節約するのは全然平気だったんですよ。うちは月々のお昼代を先に支給される制度で、月に1万5千円もらってたんですね。1日700円換算。それを200円のチャーハンで済ませたりして。それで浮いたお金と月の小遣い5千円で欲しいものを買っていました。マンガと音楽にしか興味がなかったから、それでけっこうやれてましたね。

──高校時代に読んでいたのがアフタヌーンやビームのマンガだと、クラスで同好の士を見つけるのは……。

最初は難しかったですよ。でも僕が学校で「これ面白いから読んでみな」ってすすめて、そこから広がったりしてたんですよ。『神戸在住』とか『ふたつのスピカ』とか『放浪息子』とか。やっぱり響く人には響いてたんだなと。

──世の中的に流行ってたのは、当時だと『ワンピース』や『ナルト』だと思いますけど、やっぱりそういうものにはハマれなかった?

「努力して何かを得る」みたいな図式を信用していないフシがあるんですよ。僕の幼稚なカウンターなのかもしれないんですけど、「努力して障害を乗り越えた先に、何かがある」というのがいまいち信用できなくて。

──個別のストーリーが面白い面白くないということではなく、根本にある「勝利・友情・努力」みたいな価値観になじめなかった?

なじめなかったんですね。ああいう「勝利・友情・努力」みたいなものって、いろいろな教育があってたどり着くものだと思うんですよ。たとえば子供の頃に戦隊物を見ていたとか。僕は子供の頃に戦隊物を見ていないから、そっちにハマれなかったのかな、と思ったりもしますね。

──どんな雰囲気の高校生だったんですか?

基本的にはバカでしたよ。「悪目立ちしても自分が面白いと思ったらそれでいいや」みたいなことをよくやってました。校内でハンドボール大会があったときも、「そんなもんクソくらえ」って思って、下駄箱のスペースの屋根のところに椅子を持ち出して、そこで友達と弁当を食うということをやっていましたね。自分としてはアンチテーゼのつもりだったんですけど。

──それは尾崎豊的な意味での反抗なのか、単純に「そんなのバカらしくてやってられねー」というものなのか。

「バカらしい」のほうですね。僕は先生たちが大好きだったんですよ。他のみんなは「先生、マジムカつく」みたいなことを言うんですけど、僕は「自分が知らないことを知ってる人ってカッコいい」って思ってたから、先生たちが好きで。稲垣足穂を教えてもらったり、「『パワーズ オブ テン』という映画があってね……」とか「岡村靖幸とか好き?」とか「ジャッキー・アンド・ロイ買ったの?」みたいな話をしたり。もしかしたら、それも歪みなのかもしれない。普通の学生は先生のことを「あいつマジでムカつく」って言ったりしてるのに、僕は「それって子供だよね」みたいな話を友達としてましたね。

母「『この娘うります!』読んでみな」

──家庭の話に戻りますけど、置いてあるマンガを読むだけじゃなく、お母さんから「これ読んでみたら」とおすすめされたマンガはありますか?

高校3年か大学1年くらいかな、僕が母親のコレクションの中から大島弓子を見つけたんですよ。「大島弓子、すごい面白い」って読んでたら、「じゃあアンタ、萩尾望都も好きだと思うから読んでみな」って言われて。そのとき、母親偉いなと思ったのが、『ポーの一族』や『トーマの心臓』じゃなくて、『11人いる!』と一緒に『この娘うります!』っていうコメディのマンガをすすめてきたんですよ。それが最高でドハマリして、そこからシリアスなほうの萩尾望都も読めたので、シリアスなほうを先に読んでたら、もしかしたらコメディのほうはおろそかになってたんじゃないかなっていう気がするんですよね。今考えれば、あれはかなりの分岐点だった気はします。

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萩尾望都『この娘売ります!』111ページ

──お母さん以外で、人からすすめられた作品で重要だったと思うものは?

マンガじゃないんですけど、ビリー・ワイルダーとボリス・ヴィアンが大きかったと思います。yes, mama ok?っていうバンドをやってる金剛地武志さんが教えてくれたんですけど、自分の中ではそれまでなかった価値観だったので、すごいハマりました。僕が高校1年くらいのとき、金剛地さんがどこかで『アパートの鍵貸します』が一番好きだと言ってて。その後、直接本人と面識ができたときに、「どんな本を読むんですか?」と聞いたら「ボリス・ヴィアンがすごく好きだ」と言ってて。それで何冊か紹介してもらって読んで、どれもむちゃくちゃな話なんですけど、そこでまたひとつ衝撃を受けた……みたいなことはありましたね。

──マンガで「価値観がグラつく」とか、「わけがわからないけどすごい」という体験をしたものはありますか?

価値観が歪んだというのだと、鈴木翁二さんのマンガは最初すごい怖かったんですよね。高校生のときに、『少年が夜になるころ』っていう短編集をタイトル買いして読んだんですけど、瓶の中に入り込んじゃうみたいな話があって。すごい奇妙だし、ねじれてるし、怖かった記憶がありますね。

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鈴木翁二『少年が夜になるころ』16ページ

──初めて性を意識したマンガは何ですか?

やっぱり……藤子・F・不二雄のSF短編だと思うんですよね。『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』で、アイドルの女の子を呼びつけるところとか……。

──暴君みたいになったウルトラ・スーパー・デラックスマンが、アイドルの女の子が仕事中なのに自分の都合で呼びつけてセックスするというやつですよね。

あの短編集って、他にもけっこうねじれた話があるじゃないですか。『ノスタル爺』とか。「抱けっ!!  抱けーっ!! 抱けーっ!!」っていうシーン。もしかしたら、それが一足先に大人らしい世界をのぞいた最初だったのかな。あと僕、小学5年のときにYMOにハマって、図工の先生がYMO関係の作品をいくつか貸してくれた中に、『オネアミスの翼』(テーマ曲を坂本龍一が担当)があったんですよ。「君には早いかもしれないけど」って言いながら。あの映画に、主人公がヒロインを押し倒すシーンがありますよね。あれはかなり最初期に性を意識した作品なんじゃないかという気がします。

好きな人の好きな作品を掘っていく

──それにしても、先生と本当に仲がいいんですね。

他にも、小学校5年、6年のときに障害者の生徒の補助をする先生がいて、その人にYMOの『BGM』と『テクノデリック』がA面・B面に入ったテープをもらって聞いてたんですよ。それもかなりでかい気がします。ベスト盤の『YMO GO HOME』が出る少し前にYMOを好きになったんですけど、『BGM』と『テクノデリック』にはそこに入ってない変な曲が入ってたんで、聞き込みました。

──整理すると、リコメンド役として影響を与えたのが、お母さん、先生たち、そして金剛地武志さん。

そうですね。けっこう図々しい子供だったので……今でも図々しいんですけど、好きになったミュージシャンとかにお会いする機会があったら、「どういうものが好きなのか?」って聞いちゃうんですよ。マンガ家の人に……西村ツチカさんとか、町田洋さんにも、その話を聞きましたね。森雅之さんにお会いしたときも「どういう映画が好きなんですか?」って聞いて、「『キートンの蒸気船』がすごくいいから見たほうがいいよ」って言われたり。

──一つの作品・作家からどんどんディグっていく感じなんですね。Amazonでおすすめ見てたのもある意味それに当たるのかもしれないですけど、自分が好きな人からさらにその人の好きなものをたどっていくっていう。

だから、ひとまとまりの文脈ではなかったりするんですよ。たとえば、「大島弓子・萩尾望都と来たら、じゃあ山岸凉子も……」っていう、本来だったら24年組でくくるべきものは、わかんなかったらわかんないでほっといちゃうみたいなところはあります。でも別の角度から樹村みのりを知って読んだりとか、また別の文脈から岡田史子さんのマンガを読んだりとか。ある種の数珠つなぎになってるんですけど、文脈とはまた違う読み方になってますね。

──子供の頃から少年マンガ・少女マンガの区別なく読んでた?

そういう区別は全然なかったですね。『神戸在住』も、タッチがすごくやわらかくて、女性的な表現の作品で、アフタヌーン掲載ではあるけど少年マンガではなかったですし。志村貴子さんや犬上すくねさんも読んでたし、山名沢湖さんとかも……「女性の作家は何か違うな、すごいな」と思って読んでましたね。

──作家として好きなマンガ家は?

うーん、たくさんいるんですけど……でも高野文子さんになるんですかね。あと、衿沢世衣子さんはとにかくずっと好きです。石黒正数さんも大好きなマンガ家です。

「小口が白いマンガは面白い」説

──読んで面白いというのとは別に、自分の性格や感性に影響を及ぼしたと思うマンガはありますか?

小原愼司さんの『菫画報(すみれがほう)』というマンガがあって、高校1年のときに読んだんですけど……まあ衝撃でしたね。僕がマンガを積極的に読み始めた頃に『二十面相の娘』というマンガをその方が描かれてて、それが面白かったので昔の作品も読んでみようと思って。そしたらたまたま近所の古本屋に『菫画報(すみれがほう)』の3巻以外が全部あった(全4巻)。その3冊をずっと読んでたんですよ。なかなか言葉で説明しづらいんですけど、とにかく「ああ、こんな世界があるんだ!」と思って。たぶんちょうどその頃に読んでたボリス・ヴィアンや稲垣足穂的な世界がマンガになってたから、すごく驚いたんだと思います。「やっぱりマンガってすごいんだな」って。

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小原慎司『菫画報』第2巻 32・33ページ

──自分が人によくすすめるマンガはありますか?

人によって変わるんですけど、高野文子さんを読んだことがない人だったら、『棒がいっぽん』をすすめたりはしますね。あと、さっき言った『この娘うります!』とか。でも『神戸在住』と『菫画報』は絶対すすめますね。『菫画報』といえば、今ニュースサイトのナタリーにいらっしゃる臼杵さんという方がいるんですけど、もともとyes, mama ok?のイベントでずっとDJをされていて、最初に臼杵さんのDJを見たのは僕が14歳のときだから、今から14年前かな。ディスクガイドに載ってないような変な曲……変だけどすごくいい曲をたくさんかけてたので、曲がかかるたびに「これは何ですか?」って聞いてて、僕が多感な時期に影響を受けた一人だったんですよ。「心の師匠」と呼んでるんですけど。その臼杵さんが、mixiで『菫画報』のコミュニティの管理人をしてたんですよ。「すごい、ここでつながるか!」と思って。心の師匠と思ってる人と、示し合わせたわけでもないのに同じマンガが好きだったというのは、僕にとって妙な自信につながったんですよね。

──今日の話だと、レコメンドの話も面白いですけど、(鈴木翁二のマンガを)タイトル買いしてた話も興味深いですね。音楽ではそういう買い方聞きますけど、マンガでもそれがあるんだと思って。

Amazonのおすすめだけじゃなくて、とにかく本屋が好きだったんですよ。並んでる本を片っ端から見ていって、タイトルや背表紙のたたずまいで「これは面白いんじゃないか」と思ったものを読んだりしてたので。大学時代は本屋で働いてたので、その頃に「小口が白いマンガは面白い」ってことに気づいて。

──えっ、どういうことです?

小口というのは本の側面なんですけど、そこに書き込みが少ないマンガが好みだと。

──なんとなくわかってきました。断ち切りの大ゴマを多用するのではなく、普通のコマ割りのままで読ませていくような感じってことですかね。

でも小口が白くても、帯に「ハートフル」って書いてあったら買わないようにしてました(笑)。小口の白さって僕にとっては本当に重要で、もちろん黒いのでも面白いマンガはたくさんあるんですけど、やっぱりマンガって制限がある世界じゃないですか。その制限をうまく使って表現できてるのは素晴らしいことだと思うんですよね。単に僕が断ち切りの絵が嫌いなだけに聞こえるかもしれないですけど、つまり間合いというか、余白の取り方にどれだけ気を遣っているかが小口に表れていると思うんですよね。

オタクになれたら幸せだったのかもしれない

──人の生き死にについて影響を受けたマンガはありますか? 子供って、現実よりも先にフィクションのほうで死を知ったりすることも多いと思うんですよ。たとえば『ドラゴンボール』みたいに死んだ人があっさり生き返る作品が原体験としてあると……。

『ドラゴンボール』ってそうなんですね。

──あ、本当にメジャータイトル全然通ってないんですね。すみません、質問の続きを。

僕の場合は、また藤子・F・不二雄のSF短編なんですけど、『ミノタウロスの皿』だと思いますね。動物と人間の「食う・食われる」の関係が逆になっている星に不時着するという話なんですけど。あれは小学生のときに読んで、強烈なインパクトがありました。

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藤子・F・不二雄『SF短編PERFET版 収録 ミノタウロスの皿』第1巻 32ページ

──それにしても、メジャータイトルを全然読んでない話はされてましたけど、『ドラゴンボール』も通っていなかったのはちょっと驚きでした。

なんで読まなかったのか、全然わからないですけどね。

──マンガではないですけど、エヴァンゲリオンは?

それも全然わからなくて。基本的に「大きいもの」に興味がないというか。メカにも興味がないし。子供の頃から車にも恐竜にも興味がなかったし、エヴァンゲリオンにしてもガンダムにしても、そういうものの延長にあるものだと思うんですよ。その価値観がすっぽり抜けちゃってる。

──そういうメジャータイトルを経験してないことで、不遇な経験はあった?

話が通じないことのほうが圧倒的に多いですから。オタクにもにもなりきれないし。それはすごい悲劇だなって思うことはありますよ。中学のときに『ラブひな』のほうに行ったまま、エヴァンゲリオンを理解できたら、どんなに幸せだったかって思うことはあります。

──そのまま行ってたら……。

絶対楽だったと思うんです。エスカレーター式で、サブカルの受験勉強をしなくていいわけですから。でもサブカルの文脈に入ろうとしたら、エヴァンゲリオンを通らなきゃいけなくて、サブカルのふるいにも落とされちゃう(笑)。「オタクになれたらこんなにつらい思いをしなくてすんだのに……もっと友達の多い、多感な時期を過ごせたんだろうな」とは思いますね。

──昔の自分を今振り返ってみると、根本的にまわりと価値観が違ったのか、あるいは自分のほうがちょっとだけ早熟だったのか。どっちだと思いますか?

どっちもあったと思うんですよ。「まわりの人と一緒のものを見るもんか」っていう気持ちも絶対あったでしょうし、しかし小学生のときに藤子・F・不二雄のSF短編を読んでしまった自分というのもいるわけで。そりゃ合わないわなって(笑)。でも、高校になってSF短編の話ができる友達ができてからは、「『ノスタル爺』ヤバいっしょ」みたいな話もできるようになったし、普段の会話の中にマンガのセリフを混ぜて遊んだりしてましたね。それでいくと、『ガラスの仮面』なんて濃いセリフがぎっしりだったし、女子と『ガラスの仮面』のこの場面がヤバいみたいな話をして盛り上がったりもしてたわけだから、やっぱりマンガの関わりって大きかったんだなって思いますね。

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澤部渡(さわべ・わたる):1987年生まれ、東京都板橋区出身のシンガーソングライター。どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド”スカート”を主宰。音楽とマンガをこよなく愛する好男子。スカートでの活動の他にもパーティ・バンドのトーベヤンソン・ニューヨーク、川本真琴率いるゴロニャンずでもドラムを担当。金剛地武志率いるyes, mama ok?ではサポートベーシスト/ドラマーとして参加。ツボをつくソングライティングに定評があり、様々なアーティストに楽曲提供も行っている。スカートの最新作は『CALL』(カクバリズム/2016年)。11月23日にシングル「静かな夜がいい」をリリースする。最近読んだマンガでイチ押しなのは高浜寛『ニュクスの角灯』。
【本文中に出てきた主な作品】藤子・F・不二雄『藤子・F・不二雄SF短篇集 (1) 創世日記』

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木村紺『神戸在住』

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萩尾望都『この娘うります!』

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鈴木翁二『少年が夜になるころ』

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小原愼司『菫画報』

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高野文子『棒がいっぽん』

棒がいっぽん (Mag comics)

自分の人生に影響を与えたマンガについてマンバで語りましょう!

自由広場 自分の人生に影響を与えたマンガ

マンバ通信にシンガーソングライターの澤部渡さんへのインタビュー記事が掲載されました。 澤部さんの人生を振り返りながら「これまでどんなマンガを読んできたか?」ということをインタビューさせてもらいました。皆さんはどんなマンガに影響を受けましたか? https://magazine.manba.co.jp/2016/11/04/maeda-sawabe/ vol.01 スカート 澤部渡 …

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2020/10/17
スラムダンクの続き
某編集者がスラムダンクの続きを勝手に考えて書いているブログをご存じでしょうか。単なるブログだと侮るなかれ、これが本当に素晴らしく、毎日のようにグスグスと目に涙を溜め、鼻からは鼻水を垂らしながら読んでいる次第であります。2011年の3月から書き始められ、もうすぐで10年、未だに書き続けられています。 当然、夏のインターハイのあと、すなわち秋の湘北高校を最初の舞台に続きは始まるのですが、牧・藤真・赤木の世代が大学に進学するあたりから時間が複雑に交錯するようになります。彼らの大学入学から一気に三年の時が経ち、4年生の牧世代。この間にいったい何があったのか。ここから現在と過去を、つまり大学編と湘北を中心とした高校編を交互に行き来しながら物語が紡がれていきます。2020年の現在では、牧世代は依然として4年生、過去編は宮城・仙道・神の代が終わり、いよいよ桜木・流川の代に移るところで止まっています。 本家『スラムダンク』もさることながら、もうこの時点で続きのほうも本家と双璧をなす一大叙事詩と胸を張って言えるほどの出来栄えに仕上がっていると思います。と、まあ、ここまでが続きの概要なのですが、続きが書かれれば書かれるほど、本家のほうがまた際立ってくるという事実があります。 以前に『ドカベン』で野球漫画について書いたとき、『スラムダンク』のことにも少し触れたのですが、『スラムダンク』は漫画というものの臨界点を超えた唯一無二の北極星に位置するような漫画だということは疑いのない事実でしょう。『スラムダンク』は単なるバスケ漫画ではない。漫画というものの全てを一身に背負っている漫画漫画と言うほうが相応しいと思います。そして、『スラムダンク』が完結した1996年から約25年の時が経ち、続きのブログが本家の魅力をさらに引き立てている。というのは、この続きが一大叙事詩であるばかりか、そのまま本家の批評にもなり得ているのです。 続きのブログを読んだ人は、その文章のなかで、桜木花道をはじめとした『スラムダンク』のキャラクターたちが生き生きとそこに現前していることに驚かずにはいられないでしょう。これは、ちばあきおの『プレイボール』がコージィ城倉の手により『プレイボール2』として運動を再開させたのにも少し似ています。ちがっているのは『プレイボール2』はあくまでも漫画として再開されなければならなかったという点にあり、『スラムダンク』の続きは文章だけで事足りたという点にあると思います。 そう、続きにおいては、たとえば桜木が「ゴリ、負けるなよ、ゴール下は戦場だぜ」と言うだけで赤木の存在がそこで浮き彫りになる。ゴリ、ルカワ、リョーちん、ミッチー、メガネくん、ヤス、シオ、カク、ハルコさん、アヤコさん、オヤジ、ボス猿、センドー、フク助、じじい、じい、野猿、ホケツくん、丸ゴリ、マル男、ピョン吉、ポール、小坊主、デカ坊主、これらのあだ名が桜木の口から発せられるだけで、ふしぎとそのキャラクターの存在が浮き彫りになってしまうのです。これらは全て桜木の主観と直感により名付けられたあだ名ですが、まずひとつ、こういったあだ名がキャラクターに役割を与えている。続きの書き手はきっと書きながら驚いていると思います。キャラクターたちが各役割に沿って勝手に動いたり話したりしてくれる、と。たとえば、湘北と陵南の試合を清田と神が偵察していたとする。 ガンッ、桜木、宮城のパスからフリーで放った得意の合宿シュートを外してしまう。 桜木「なにッ、この天才としたことが! しかし、みずからとーる!!」 誰よりも高い位置で桜木がリバウンドをキャッチ。 バシーーーッ、仙道だ! 仙道が下で狙っていた! 仙道のスティールだ! 清田「けっ、赤毛猿の野郎、ざまあみろだぜ」 神「いや、でも、いまの湘北のオフェンスは流れがよかったな」 清田「ん・・・」 神「宮城のドライブから、フリーの位置に桜木が飛び込んできただろ。はじめて流川以外のところに攻撃の起点が生まれたんだ。さっきは外れたけど、あれが決まりだしたら陵南のディフェンスは的を絞れないぞ」 清田「ぐぬぬ・・・。(牧さんの後を継ぐこの俺がNo.1ポイントガードだ!)」 宮城「なんだと!(野生の勘で何かを察知)」 桜木「ぬ。(同じく野生の勘で何かを察知)センドーは俺が倒す!」 ディフェンスに戻りながら、 宮城「おう天才、いまの動きだ。流川ひとりにやらせたくなけりゃ、ああやって動くんだ。どんどんパス回してくぜ」 桜木「当然だ、リョーちん。この天才を何だと思っているんだ(センドーもルカワも俺が倒す!)」 ためしにチョロッと書いてみただけで、こうもみんなが勝手に動いたり話したりしてくれるんです。各々がしっかりと役割を担っている。あらかじめ、こうと決められていたみたいに、これしかないという動きを繰り広げるのです。 そう、『スラムダンク』における動きは、あるひとつの方向に行くようあらかじめ定められているのです。『スラムダンク』における動きは、何かの理由があって、そのためにこう展開したというようには運ばず、あらかじめ全ての動きがあるひとつの方向に行くよう、そこに収斂するように定められているのです。 それじゃあ、『スラムダンク』はどういう方向に収斂しているのか。それは、「諦めの悪い根性」と「進化」だと思います。クライマックスの山王戦でみせたような諦めの悪さと進化、これが『スラムダンク』の全編に息づき、全ての動きがそこに向かうようあらかじめ定められている。続きが10年も辛抱強く書き続けられているのは、本家『スラムダンク』がカンブリア爆発のようにみせた諦めの悪さと進化の方向とを今日も持続させているからだと思うのです。常に進化の最前線にいる、このことが『スラムダンク』をいまでもさらに進化させていると思うのです。
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名無し
2020/11/09
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と思って読み直したわけじゃないんですが、ふとnarutoを読み直しはじめました。 それで鬼滅がこんだけ人気になってもはや社会現象となっている状況で昔はどうだったかな〜と思ったんですね。 別の作品で面白さなんて比べられないし、比べてもいけないのかもしれないですが自分が小学生かそこらだった頃のジャンプも面白かったんですよ! …と、ちびっこたちに言いたい。 鬼滅くらい面白くて皆、我妻善逸のポーズの代わりにネジの八卦六四章のポーズをして結べもしない印を真似していたんだよ!と。 目的やストーリーなんて比べられませんが要素として抜粋すれば比較できるでしょう。 ・毎週面白く思わせるヒキがあるか どっちもありますね。 鬼滅なんて毎週「あ、もうこれだめだこのキャラ死ぬし全滅だ…」 ってなるのに次週で盛り返すんです。 思えばナルトも一緒だったな。だいたい絶体絶命。 平和かと思ったら事件が起きる。 もうこれ全員死ぬじゃんと読者を視野狭窄にさせておいて明後日の方向から救世主を登場させる。もしくは主人公の覚醒! 要素的に「驚き」ですね。 でも最近のジャンプの方が「驚き」多い気がしますが。 なぜなら読者はどんどん飽きっぽくなっているので。 ・かっこいい必殺技あるか どっちもあります。 鬼滅はもう「水の呼吸…」とか読み手10人中8人に呟かせた時点で1万部売ってると思います。 かっこいい必殺技をかっこいいと思わせて、なおかつ真似させることができた時点で勝利!なんだと思います。 ナルトの螺旋丸とか千鳥とか手から何か出すやつも強い…。 やっぱりジャンプにおける「刀」と「手から何か出す」は必勝の方程式なのでしょう。 ・敵キャラを好きになれるか 個人的に難しく、でも重要な要素だと思っているんですが敵キャラを好きになる漫画はいい漫画だと思っています。 味方ももちろん好きだけど、上弦の鬼…好きになりませんか? 敵は敵なんだけど嫌な奴、悪い奴、としてキャラを作るとうまくいかないと思っていて。 違う正義、思想を持った別の主人公みたいに作るといいんじゃないかなと思うんですね。 あと特徴があって印象に残る敵。 潜影蛇手!…モノマネされる時点でいいキャラだったのではないかと。 ・結論 昔のジャンプも今のジャンプも面白い! ベースは変わらないんだな、と勝手に納得してしまいました。 どちらも面白いように、飽きないように作られてはいますが作者の「これが描きたい!」という欲はどの時代も一緒で熱いです。