藤子不二雄、白土三平、石森章太郎、横山光輝……豪華絢爛な執筆陣による連作忍者漫画『忍法十番勝負』

藤子不二雄、白土三平、石森章太郎、横山光輝……豪華絢爛な執筆陣による連作忍者漫画『忍法十番勝負』

『忍法十番勝負』は昭和39年、秋田書店の漫画月刊誌『冒険王』に10回にわたって連載された作品です。

10人の豪華な漫画家さんの顔ぶれには唸らざるを得ません。

『忍法十番勝負』(秋田書店)より。堀江卓、藤子不二雄、松本あきら、古城武司、桑田次郎、一峰大二、白土三平、小沢さとる、石森章太郎、横山光輝と夢のような10人によって描かれました。

「○○で打線を組んでみた」、というネタがネット上で見られますがまさにそのままです。

 

何故あの漫画家さんが入ってないかという考えは捨てるべきで、忍者漫画を連作してみたら面白いに違いない。

『冒険王』がこう考えてこの10人を揃えたという事実で充分です。

 

3歳だった私は当然連載時には読んでません。初めて読んだのは小学生、秋田書店サンデーコミックス版でした。

理解度は低かったと記憶してます。

 

その後も何度か読み返しますが作品内容の印象は薄いままでした。

今回改めて読んでみて子供の頃の私にはちょっと難易度が高かったな、と感じた次第です。

大阪城の絵図面をめぐって豊臣と徳川、甲賀と伊賀の忍者が争うのが話の大筋です。

『忍法十番勝負』(秋田書店)より

しかし連作の為漫画家さんが変わるごとに場面は大きく転換し、何がどう動いて話が進んでいるのかわかりづらいのは否めません。

 

実は大人になって古い漫画を集めるようになった際にも入手して読んだことがあります。

結果は子供のころとあまり変わらず。「子供のころに読んだよなぁ」と懐かしんだだけでした。

連作は難しいですね。漫画に限らず小説でも取られる手法ですが、あまり頻繁には使われません。

個性が違う作家さんが順を追って話を創っていくのは夢がありますが、個性が違うからこそ展開にブレが生じていくのは仕方ありません。

この『忍法十番勝負』を過去にそれほど受け入れる事が出来なかったのは、一つのストーリーで完結する作品だと思って読んだことが原因ではないかと思います。

前話の終わりがそのまま次話の始まりにはなってません。

連作ですからそれぞれの漫画家さんが話を踏まえて描かれてはいるのですが、独立した話としても読めるようにとの意図があったのかもしれません。

大まかな話の道筋はあるものの、名だたる漫画家さんたちが忍者や忍法の表現を競ったアンソロジーとして読むべき作品。

今更ながらお恥ずかしくも、この年になって認識しました。

 

さて昭和30年代の漫画は月刊漫画誌と貸本漫画の時代といっていいでしょう。

貸本漫画は別の機会に譲り、月刊漫画誌について少し触れたいと思います。

昭和40年代は月刊誌が姿を消していき、週刊漫画誌が席巻していく頃です。

ただ私が漫画を読みだした昭年40年代当初、私にとってはまだ月刊誌が漫画の王様的な存在でした。

巻頭のグラビアをはじめ、カラーページも多く読み応え満点。

付録も多く本屋さんの店頭で光り輝いてました。

とはいえ買った記憶も買ってもらった記憶もありません。

庶民世帯にとって高価なんですよ、月刊誌は。

贅沢品といってもいいです。

それでも誰かが買ったものを借りたり、貸本屋さんで借りたりと読むことはできました。

毎月買ってた友人はいなかったと思ってます。

 

そして徐々に廃刊となり無くなっていったのは、大きな要因としてテレビの普及があると思います。

私がもの心ついた時には我が家にはテレビはありました。

私より2、3歳上からが生まれた時からテレビが家にある最初の世代だと思います。

毎週同じ曜日の同じ時間に同じ番組が放送される。

当時は家族で食事をする場所にはテレビがありました。

子供が幼稚園や学校へ行っている昼は別にして、朝食と夕食はテレビを見ながら。

食事をする場所とテレビを見る場所を分けられない住宅事情もありますが、みんなテレビが見たかったのですよ。

子供だけでなく親も。

何故なら我々世代の親にとってもそれまでテレビって無かったからです。

東京オリンピックをきっかけにテレビが普及したのは周知の話ですが、やっとテレビを買うことが出来たんですよ。

親だってテレビを見たいに決まってます。

無言で食べながらテレビを見る、なんてことはなく放送されている番組を媒介として会話も弾み楽しく家族で食事しましたよ。

食事の後もテレビを見ながら談笑は続きます。

昭和世代にとって一家団欒に欠かせない必需品でした。

私の個人的な記憶なのかもしれませんが、テレビを見ながら食事をするのは他の多くの家庭でも当たり前のことだったと思います。

(漫画を読みながらだと怒られました、はい。)

 

一週間の同じ曜日ごとに番組が供給される感覚は漫画にも通じていきます。

同じ雑誌が毎週新しい号となって供給される。

マンガ好きの子供にとって大事なのは読む漫画があるという事。

週刊誌として供給される漫画に移行していったのはテレビとの相性が良かったこともあり自然な流れだったと思います。

 

『忍法十番勝負』が発表されたのは昭和39年。週刊少年マガジンも週刊少年サンデーも創刊から5年が経過してますがまだまだ月刊誌は健在です。

当時のマガジンもサンデーも厚さは1センチに満たない薄い物でした。

連載されている漫画もページ数が少なくすぐ読み終わってしまいます。

少年漫画週刊誌が1センチ前後の厚さになり、グラビアも漫画も充実していくのはあと1、2年先です。

比べて月刊誌は一か月の間子供の興味を保ち続けなければなりません。

巻頭グラビアに漫画、絵物語など次の号を手にするまで何度も読み返しては堪能できる内容です。

 

だからこそ話の繋がりがわかりにくくとも月刊誌だから10回にわたる連作が可能だったと言えます。

月刊誌華やかな頃の豪華な漫画家さん10人による連作。

それぞれの漫画家さんたちが描く忍者は個性あふれてます。

 

共通するのはあり得ない身体能力。忍者ですから当然です。

さらにド派手な忍法。

『忍法十番勝負』(秋田書店)より

これは忍法とか忍術というよりRPGの魔法といった方がいいと思います。

もちろん剣による戦いも盛りだくさんです。

山や荒野での戦いを経てクライマックスに登場する大阪城。

フィールドでの戦いからの最終ダンジョン的な扱い。

 

私が最後に読んだのは20代半ばでした。

ドラクエもファイナルファンタジーもソードアートオンラインも知らなかった頃。

時を経てゲームもアニメも多く経験してきました。

そうしてやっとこの『忍法十番勝負』のエンタメ性を理解する事が出来たのは我ながら遅すぎると思います。

それでも遅いながら改めて過去の作品の面白さに気付くからこそ今も漫画を読み続けてます。

『忍法十番勝負』は雑誌連載から50年を経てコンビニコミックとしても発売されており、連作忍者漫画としてこれからも読み続けられることでしょう。

記事へのコメント
今って連作というかリレー形式の漫画って無いですよね?(あったら教えてほしいです) 当時も珍しかったのかな

今って連作というかリレー形式の漫画って無いですよね?(あったら教えてほしいです) 当時も珍しかったのかな

@名無し

リレー形式なら最近講談社がやってたコロナウイルスを題材にしたチャリティー読み切り連作
MANGA Day to Day』がまさにそれですね。
これ系だとネオ寄生獣シリーズもなかなか面白かったです
アンソロと言い換えると結構あるか。

リレー形式なら最近講談社がやってたコロナウイルスを題材にしたチャリティー読み切り連作 『MANGA Day to Day』がまさにそれですね。 これ系だとネオ寄生獣シリーズもなかなか面白かったです アンソロと言い換えると結構あるか。

リレー形式なら最近講談社がやってたコロナウイルスを題材にしたチャリティー読み切り連作 『MANGA Day to Day』がまさにそれですね。 これ系だとネオ寄生獣シリーズもなかなか面白かったです アンソロと言い換えると結構あるか。

@名無し

MANGA Day to Dayそうでしたね!

ただこれもそれぞれの作家で完結してる話だし、一本のストーリーを全員で描き繋げていく感じのはやっぱりなさそう…?

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