水曜日のマンバ通信をご覧の皆様、こんにちは。執筆者が持ち寄った様々な説を検証するこのコーナーですが、今回私が持ってきた説はこちらです。
タイトルが「○○な××さん」の漫画、『からかい上手の高木さん』のブレイク以降激増した説
・条件1:主人公の属性や肩書きではなく「名前か名字に」、敬称としての「さん」が付いているもののみにする。
「お兄さん」「お姉さん」「おっさん」のようなものも、タイトルの意味合いとしては「○○な××さん」に近いのかもしれませんが、今回は除外しました。
・条件2:基本は「○○な××さん」もしくは「××さんは○○」のように、タイトルの主が××さんにあるものにする。
『小林さんちのメイドラゴン』や『高杉さん家のおべんとう』など、名字でピックアップされているのが個人ではなく家庭単位になっているものは、名字の部分は「○○な」に相当するだろうということで除外しました。
・条件3:「××さん」や「××さんと△△くん」のように、主への装飾文が無いものは除く。
複数人が並列で主になっていても「××さんと○○な△△くん」のように「○○な」の部分があるものはなるべくピックアップしました。
この条件でピックアップした作品の発売日や傾向を考察することで、説を立証できるのではないかと。検索する方法についてはだいぶ苦心した(例えばWikipediaの「日本の漫画作品一覧」なんかだと、肝心な近年の流行作品が入っていないものが多い)のですが、最終的にはebookjapanさんの「少年・青年」カテゴリを、単純に「さん」で検索してピックアップしました。全てを書き出すとあまりに莫大な量になるので、とりあえず漢字のものだけを集めてみました。(それでも213作品にもなるのですが)
絶対生徒会長!! 大熊猫さん
BOOTSの山田さん
教えて!ふれん道和ん田~さん
とんちの一休さん
3LDKの花子さん
大好き 吉村サン!
七瀬さんは前向きになりたい
ゲスいよ! 花村さん
唯我独尊 天堂サン!
おまつり源さん
自動販売機 戸部さん
ケッパレ松原サン!
くのいち女子高生 音無さん
桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?
マル勇 九ノ島さん
結崎さんは投げる!
三成さんは京都を許さないー琵琶湖ノ水ヲ止メヨー
高嶺さんはモテたい
美人上司滝沢さん
浜咲さんなら轢いている
ちょろこいぞ!休刊さん
なぜ備さんはいつもいやらしいことばかり想定して危機管理しているの?
佐伯さんと、ひとつ屋根の下
弁当やばいよ 水無瀬さん
美乃さんのそれ、さわってもいい?
長身ぽっちゃり女子校生「高田さん」
わざと見せてる? 加茂井さん。
豹藤さんは攻略(おと)したい
絶対に下着がみえない花屋敷さんの研究と考察
田舎暮らしの若美さん
まんが御絵伝 蓮如さん
帰ってください!阿久津さん
橘花さんは抜きたくない!~女子校生剣士・異世界血風録~
みなさんは何作品読んでいたでしょうか。ちなみに、名前が被っているのは山田さん(BOOTSの山田さん、となりの山田さん、暗殺組合の山田さん)、花子さん(3LDKの花子さん、フィールドの花子さん)、佐藤さん(佐藤さんはPJK、隣の席の佐藤さん)、白雪さん(受付の白雪さん、おしかけメイドの白雪さん)、音無さん(くのいち女子高生 音無さん、音無さんは破壊神!)、上野さん(ラブホの上野さん、上野さんは不器用)、佐伯さん(佐伯さんと、ひとつ屋根の下、佐伯さんは眠ってる)、桐谷さん(桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?、自意識過剰な桐谷さん)、の8種類でした。山田さんや佐藤さんはまぁやむを得ない所でしょうし、白雪さんや音無さんなどのいかにも漫画っぽい名字が被っているのはなるほどと思わされましたが、佐伯さんや桐谷さんあたりは「被ってしまった」感がありますね。もしこれから始める漫画のタイトルを「○○な××さん」系にしようと思っている方は、被らないように気を付けてください。
これらの「○○な××さん」タイトルを、単行本1巻の提供開始日で並べたのが以下のグラフになります。
ebookjapanさんが2010年頃までどの程度のタイトルが用意されていたのか分からないという問題はありますが、2013~2014年頃から徐々に増えだしていますね。なお、「からかい上手の高木さん」の単行本1巻の2014年6月12日発売です。アニメの放送は2018年1月からですが、2017年には単行本の特別版が作られたりスピンオフの連載が始まっているので、2017年からすでにブレイクしていたと言っても過言ではないでしょう(しかし、いつどの時点で高木さんがブレイクしたかとハッキリ言い切るのかが微妙な時点で、そもそも説として破綻している気もしますね……)。2017年5月から2020年4月までは、毎月何かしらの「××さん」の単行本1巻が発売されているあたりは、高木さんの影響とまでは言えないものの、完全に「○○な××さん」のタイトルがブームになっていたと言えるのではないでしょうか。
また、今回調べたのは「さん」だけですが、「くん」(闇金ウシジマくん、将棋の渡辺くん、月刊少女野崎くん、湯神くんには友達がいない、可愛そうにね、元気くん、武士スタント逢坂くん!、思春期ルネサンス!ダビデ君、県立海空高校野球部員山下たろ~くん、などなど)や、「ちゃん」(宇崎ちゃんは遊びたい!、干物妹!うまるちゃん、ちおちゃんの通学路、ヤンキーJKクズハナちゃん、恋に恋するユカリちゃん、ふだつきのキョーコちゃん、淫らな青ちゃんは勉強ができない、悪魔のメムメムちゃん、姫乃ちゃんに恋はまだ早い、などなど)や、「様」(かぐや様は告られたい~天才たちの恋愛頭脳戦~、柊様は自分を探している。など)では調べていないため、これらも含めたらさらに数は増えることでしょう。誰か時間に余裕がある方は、「くん」「ちゃん」「様」なども全て含めた完全版を作ってください……。
ところで、私が他の人より少し詳しいとしているのは麻雀漫画というジャンルなのですが、「麻雀をしていて面白ければ、わりと何をしてもいい」タイプのジャンルなので、時事の流行やパロディを積極的に取り入れがちです。もっとも、専門誌である近代麻雀系列誌は月刊誌2種が休刊になり、近代麻雀本誌も月2回刊から月刊に変わったため、その分だけ発表の場が少なくなっていますが……。それでも、近年のラブコメ作品を中心とした「○○な××さん」ブームにしっかり乗っかった漫画が2本、KADOKAWAのComicWalkerで始まっています。それが「鳴かせてくれない上家さん」と「一色さんはうまぶりたいっ!」です。いずれも高校の麻雀部を舞台にした、男女の恋愛感情にうまく麻雀を重ね合わせた良作となっており、単行本が出るのが楽しみです。麻雀漫画と言うと、いまだに「大金や身体が賭かったギャンブル」や「裏社会」などのイメージを持つ人も多いのかもしれませんが、もうその段階は通り越して、麻雀が1つのゲーム・競技として存在する世界に違和感を持たれない時代になっているのかもしれませんね……。
というわけで、そろそろ強引にまとめさせていただきます。
タイトルが「○○な××さん」の漫画は、「からかい上手の高木さん」の1巻が発売されたあたりから増え出して、麻雀漫画にも登場するほどになった。