スリムな若者を見ると、ちゃんとご飯を食べているか不安になる。
この気持ち、分かりますか?
駅で細すぎる黒のスキニージーンズを履いている若者、大丈夫ですかね。
腸に寄生虫がいて、そいつに栄養を全部取られているんじゃないかと心配してしまいます。
どうか今すぐ改札と焼肉屋の入り口を直結させて、彼らが間違って入るようにして欲しい。
そしてこのおせっかいは、現実だけに留まらず、マンガを読んでいるときにも発揮されます。
特に『NANA』を読んでいるとき、圧倒的な「細さ」に目がいきます。
『NANA』とは
『NANA』は、『Cookie』にて2000年から連載中の少女マンガです。
バンドでの成功を目指して上京した大崎ナナと、恋人を追って上京した一ノ瀬(当時は小松)奈々が偶然出会い、
紆余曲折ありながらも、お互いにとってかけがえのない存在になっていくというストーリーです。
繊細で不安定な内面を抱えたキャラクターたちが複雑な模様を描いていくのが特徴です。
第48回の小学館漫画賞を受賞。
映画やアニメ等、メディアミックスも盛んに行われています。
この『NANA』、とにかく皆、体が痩せてるんです。
細いキャラクターたち
どこで「痩せているなあ」と思ったのか。
いくつか例を挙げてみましょう。
序盤で海に遊びに行ったシーンですね。
ほら!
もう痩せている。
お腹に線が入っていますよ。
きゃー。
ここも痩せています。
三人いて三人ともガリガリなんてことあるんですね。
比較がないと分かりづらいですかね。
同じ日本を舞台にした名作、『ドカベン』を『NANA』と交互に出してみます。
骨格?
骨格レベルで構造が違うんでしょうか。
『NANA』のキャラクターの細さが際立ちましたね。
では具体的にどれくらい痩せているのか、見てみましょう。
調査方法
『NANA』のファンブックに当たる7.8巻に、7巻までに登場した主要キャラクターの身長と体重が掲載されています。
全キャラクターのプロフィールは、主人公の大崎ナナが20歳の時点でのものです。
このデータを基に、BMI(ボディー・マス・インデックス)という指標を使います。
BMIとは、ベルギーのアドルフ・ケトレーが考案した指標で、肥満度を簡易的に表します。
BMI= 体重kg ÷ (身長m)2
適正体重= (身長m)2 ×22
このような式で求めることができ、BMI指数が22のときに最も病気にかかりにくくなるとされています。
22よりも数字が小さいほど低体重、数字が大きいほど肥満です。
学校や会社の健康診断でもよく使われる指標なので、馴染みのある方も多いかもしれません。
さらに比較のため、日本人のBMIを調査したデータとして、厚生労働省の『平成29年国民健康・栄養調査』を用います。
この統計の分布と比較することで、各キャラクターが日本人の中でどれくらいの体型にいるのかが分かります。
標本サイズは5258で、15歳以上の男女(妊婦除く)を対象にしています。
それでは各キャラクターのBMIを割り出してみましょう。
調査対象は14名です。
大崎ナナ(162cm 43kg)
大崎ナナは、『NANA』の主人公の一人です。
高校のときの知人を中心に、BLACK STONESというバンドを組んで音楽で生活していこうと考えて上京。
後にメジャーデビューを果たします。
自身はボーカルを務め、華奢ながら強い存在感を放ちます。
BMIは、16.38でした。
上のグラフは日本人のBMIの分布で、オレンジ色の範囲にそのキャラクターが当てはまっています。
このグラフから言えるのは、ナナが極端に低体重ということです。
日本人全体の上位0.6%〜1.8%に入る痩せっぷりです。
同じ身長の場合の適正体重は、57.74kgですよ。
もう見た目で細いもんなあ。
一ノ瀬奈々(158cm 46kg)
一ノ瀬奈々は、『NANA』のもう一人の主人公です。
犬っぽい雰囲気のために、先述のナナと区別してハチと呼ばれています。
ナナと比べて人生の目的のようなものがなく、
独身時代は恋愛で自分を埋めようとしたり、ふらふらとアルバイトをして生活していました。
結婚後は、精神面での成長があります。
BMIは、18.43でした。
作中ではナナが痩せ過ぎていて標準体型っぽく見えますが、ハチも大概細いですよ。
適正体重54.92kgより8.92kgも軽いですからね。
WHO(世界保健機関)の出している基準では、18.5未満なので同じく低体重に入ります。
ハチの場合は、ご家族がややふっくらしているのを確認できます。
なので、生まれつき痩身の体質ではないと思うんですよね。
未来(10年後くらい?)の姿では、やや肉がついていますかね。
その調子で適度に肉を付けていって欲しいところです。
本城蓮(182cm 64kg)
本城蓮は、ナナのライバルバンド、TRAPNESTのギター担当です。
さらに、ナナの元バンド仲間にして元彼でもあり、後にナナの夫になるという立ち位置も兼ねています。
物語のややこしさの中核を担う、キーパーソンですね。
BMIは、19.32でした。
これは低体重寄りではありますが、普通体重の部類ですね。
よかったよかった。
それでも適正体重72.87kgに対して64kgは、実際に見たらかなり細い印象になるでしょう。
ちゃんと食べているのか本編でも心配されていますね。
ガリガリの人がガリガリの人を心配する世界。
それが『NANA』。
高木泰士(185cm 72kg)
高木泰士(通称ヤス)は、ナナの所属するバンドのドラム担当です。
ナナとは旧知の仲で、危うげな部分のあるナナに対してヤスが保護者的な役割を担っています。
ドラムの腕は余裕でプロレベルで、さらに司法試験に合格する頭脳も持つハイスペックな人材です。
BMIは、21.04でした。
最も病気にかかりにくいとされる22にかなり近いですね。
さすがヤス。
なんとなく一番長生きしそうですもんね。
太く短くってキャラクターが多すぎるだけかもしれませんけど。
寺島伸夫(167cm 52kg)
寺島伸夫(通称ノブ)も、ナナのバンドメンバーです。
担当はギター。
真面目かつ温厚な性格で、巻き込まれ役になることが多いです。
BMIは、18.65でした。
ギリギリで普通体重。
あと0.5kgでも痩せたら、低体重ゾーンに入ってしまいます。
低体重に片足突っ込んでいますので、しっかりご飯を食べて欲しいところです。
岡崎真一(164cm 50kg)
岡崎真一(通称シン)は、ナナのバンドでベースを務めています。
複雑な家庭で育ち、大人びた面と子供っぽい面が同居したような性格をしています。
地頭は良いらしく、頭の回転が速いことの分かる場面も散見されます。
BMIは、18.59でした。
ノブとほぼ同じで、紙一重で普通体重といった具合です。
未来の描写では、細身のまま身長が高くなってる姿が見られます。
それにしても、なんでこんな皆細いんですかね。
バンドだから?
重いもの持って演奏するからカロリーを使うってこと?
でもそうしたら、バンドやってて太っている人は何?ってなりますもんね
失礼しました。
続けて調査していきましょう。
芹澤レイラ(164cm 48kg)
芹澤レイラは、レンと同じくTRAPNESTのメンバーです。
ポジションはボーカル。
美貌と歌唱力を兼ね備えた、才能あるエンターテイナーです。
BMIは、17.85で低体重です。
ふわっとした服を着ているからあまり意識がいかないですが、めちゃめちゃ痩せていますね。
細身のシンと同じ身長でさらに体重が軽いってすごいですよ。
164cmの適正体重は、59.17kgですからね。
筋肉が全くないのではないかと心配になります。
一ノ瀬巧(183cm 67kg)
一ノ瀬巧(通称タクミ)は、TRAPNESTのベース担当にしてハチの夫です。
自分のバンドのイメージ作りなどを考えるブレインの役割もしています。
冷静な判断で物語のごちゃごちゃに対処しようとする一方で、自ら複雑さを作り出してもいるという役回りです。
BMIは、20.01で普通体重です。
これは、ちょうど美容体重(見た目がスリムに見える体重)と呼ばれるバランスです。
健康的ですし見た目もスリムなら、問題ないでしょう。
素晴らしい。
藤枝直樹(178cm 65kg)
藤枝直樹(通称ナオキ)は、TRAPNESTのドラムです。
物語の深い部分には関わってきませんが、明るい性格でホッとさせてくれます。
本当に『NANA』の世界は、陰のあるキャラクターが多いですから。
冬の日本海。
ナオキのBMIは、20.52でした。
こちらも、適度に痩せているといった体重です。
ヤスのBMIも21.04でしたし、ドラムはある程度体重が必要なんですかね。
足とかすごい動かしますし、筋肉がつきそうではあります。
上原美里(153cm 42kg)
上原美里(本名:都築舞)は、ナナのバンドの追っかけ(後にマネージャー)です。
気配りのできる性格で、マネージャーとして優秀だと見込まれている描写もあります。
BMIは、17.94でした。
これまた極度に細いですね。
別にバンドマンでも何でもないのに。
早乙女淳子(168cm 53kg)
早乙女淳子は、ハチと地元が同じ美大生です。
精神的に成熟していて、よくハチの相談役になっています。
BMIは、18.78ですね。
普通体重の範囲とはいえ、軽い。
女性陣の体重の軽さが目を見張ります。
高倉京助(180cm 70kg)
高倉京助もハチとは地元仲間の美大生です。
淳子と交際していて、ハチのピンチには二人して駆けつけることもしばしばあります。
BMIは、21.6でした。
22を基準としたときに、今回のニアピン賞です。
君が健康チャンピオンだ。
冒頭で出した海のシーンを見る限り、体は引き締まっていそうなので、
細マッチョというカテゴリに入る体型なのでしょう。
遠藤章司(175cm 60kg)
遠藤章司は、ハチの元彼です。
淳子や京助とは、同じ美大で顔を合わせる仲です。
優柔不断な部分はありますが、基本的には善良な人柄です。
ハチと別れて以降は、しばらく居心地悪そうに細々と登場していました。
当時の読者たちから抗議が殺到したらしいですからね。
BMIは、19.59でした。
かなり細い印象ですが、他の面々の数字を見た後だとパッとしないですね。
こんなところにも彼らしさが見られるとは。
川村幸子(146cm 35kg)
川村幸子は、ハチから章司を奪い去った女性です。
見た目は小動物系ですが、章司へのプッシュは分かりやすく強烈でした。
特に、終電ダッシュしているときに靴が脱げるシーンの計算高さは、戦慄ものです。
BMIは、16.42です。
ナナの16.38に肉薄する低体重っぷりです。
いやあんた、146cmとはいえ体重35kgて。
もしかしてNANAの世界では、心の繊細さと体の細さがリンクしているのかなあと思っていましたが、幸子がこの細さなら違いそうですね。
芯の部分では、かなり図太そうだから。
まとめ
以上です。
まとめますと、上の全体図でオレンジに塗った部分の人しか『NANA』の主要な登場人物にはなれないんです。
痩せている側の人類にしかスポットが当たっていない。
徹底しています。
ご飯を食べてくれ。
こんなに痩せている人ばかり見たら、自分がとんでもなく太っているのではないかと不安になりますよね。
ファッション雑誌の読みすぎと同じ症状です。
ちょっと最後に痩せていない人を見て安心しましょう。
一応、『NANA』にも痩せていない人は出ているんです。
先述のハチのお姉さんとお母さん。
それと…。
マンションを決めたときの不動産屋さんです。
参考資料(URL最終確認は、2019/3/15)
『NANA』1〜21巻 2000〜2009 矢沢あい 集英社
『ナナ&ハチ プレミアムファンブック! NANA7.8』 2003 矢沢あい 集英社
『ドカベン プロ野球編』1巻 1995年 水島新司 秋田書店
『ドカベン ドリームトーナメント編』25巻 2017年 水島新司 秋田書店
『平成29年国民健康・栄養調査』厚生労働省 2018
『wikipedia 日本肥満学会』
『KEISAN BMIと適正体重』