2023年10月2日まで、明治大学 米沢嘉博記念図書館・現代マンガ図書館で「あさぎり夕 BLの始まり 展」が開催中です。
あさぎり先生といえば80年代のトップ少女マンガ家。中学校のクラスメートが『あいつがHERO』を大好きだったことを思い出します。
ってことで改めて読み返してみました。
これぞ「ザ・ラブコメ少女マンガ」ですね!
高校生の若菜は『ライラックの花の王子さま』という童話の主人公に恋をしています。
わかります、私は『日出処の天子』の厩戸王子に恋をして高校3年間頭をボーッとさせて生きてました。当時は『風と木の詩』のジルベールに頭がボーッとなっていた女子高生もたくさんいました。
そんな若菜の「HERO」候補は3人。
一人目は、ハンサム揃いで有名(本人談)な剣道部の宇佐美ジョー。
彼に誘われて、若菜は剣道部のマネージャーになります。
そこで、若菜は自分が風見竜という人の婚約者だということを知るのです。
高校に入ったばかり、しかも学校で自分に婚約者がいることを知るって、とんでもなくレアケースですよね。「婚約者〜〜っ!?」と言いたくなる気持ちも分かります。
その晩、若菜がお父さんに詰め寄るとお父さんは、
「どうせなら(若菜を)好いて好かれた人のところへよめにやりたい。しかしそれをまっていたら……」
「きみはオールド=ミスになってしまう」
などとよくわからない理由で失礼なことを言います。
そうして若菜は学校に行き、1人の野蛮人と出会います。
野蛮な上に失礼ですね。
10年くらい前まで、大きいほうがいい的な風潮があったけど、最近はどんな体型も個性だってことで生きやすくなりました。ほんと昔はこの手のこと、平気で口に出して言われたんですよね。
そんな失礼で野蛮な人が自分の婚約者・風見竜でした。王子さま味がかけらもない、番長です。
よりによって婚約者がこんな野蛮人だったとは、ショックを受ける若菜。
そして家に帰ると、ライラックの木陰から、ライラックの君がザザッと出てきます。
彼は若菜の家に下宿することになった、頭もいいしスポーツも万能というほれぼれするほどいい男(お父さん談)の一人(かずと)。
この3人の中で、王子さま味がないのは竜だけですね。
ところでお父さん!
寝転がっている男女に「男女でプロレスごっこ」と言うのはどうなんですか。それともプロレスは何かの暗喩ですか?
そして若菜は竜に脅されて剣道部のマネージャーになります。女子マネ物語ってのも昔っぽい。その上、洗濯だの掃除だのをやらされてます。こんな小間使いがいる運動部、いいですね、私も男子マネージャーがウエアを洗濯してくれるテニス部に入りたいです。
そしてせっせと掃除洗濯に明け暮れる若菜の元に、剣道部の親衛隊がやってきます。
「なく子もだまるスケバン京子と紅バラグループ」
「いたいめ見たくなかったら、さっさと竜から手をひきな」
「チビガキチンクシャ ナインペタンのネンネにゃ竜の相手はつとまらないよ」
などと、どこを切りとっても名ゼリフを吐いて去って行きます。しかしナインペタンって久しぶりに聞いたなあ。
こうして、番長の竜にどなられ、スケ番お京におどされ、キス魔のジョーにせまられて話が進みます。さていったい、若菜のHEROはだれなのでしょう?
ところでこのシーン見てください。学校での一コマです。
「やるか?」じゃないっつーの学校で。
でも80年代って、高校生・大学生の飲酒くらい当たり前だったんですよね。クラスメートと高校帰りに居酒屋に行って、フツーの酒はまずいのでカルピスハイを頑張って飲んでました。大人ぶりたい年頃だったんですね。
そして女子垂涎の夢、自分を男子が取り合うの図。
一人と竜が竹内まりやの「けんかをやめて」バリにたたかってます。
やめて〜、私のために争わないでぇ〜!
若菜は、両手のグーを口元に持っていくのが大好き。これぞブリッコポーズですが、彼女には女子の夢が詰まった展開が次から次へと持ちかけられます。
そして少女マンガお決まりの〝あの〟設定も当然のように登場! それが何かは本編のお楽しみということで……いや〜、あさぎり先生、やっぱ天才ですね!