こんにちは、ドッグナマコです。
これは誰もが知ってることなのですが、日本のマンガって世界各国で翻訳版が出版され読まれていますよね。ちょっと昔だと『ドラえもん』や『ドラゴンボール』、今だと『NARUTO』『DEATH NOTE』『BLEACH』などなど、挙げだすとキリがないので、今回は「ちょっと意外な作品がフランスでウケている」っていうお話をさせていただきたいと思います。
もともと、フランスやベルギーには「バンドデシネ」という独自のマンガ文化があるのをご存知でしょうか?子ども向けの作品だと『タンタン』『スマーフ』、大人向けだと、メビウスの作品などが有名です。『孤独のグルメ』や『遥かな町へ』を描かれた谷口ジローさんは、このバンドデシネに近い作風(絵柄やナレーション)がウケてフランスでも高い人気を誇っているんです………以上です。(完)
いえ、以上じゃないです。続きます。
前述の作品とはまた違ったジャンルのマンガがウケているって話が本題でした。
あぶない、あぶない、失礼するところでした。
話を戻すと、フランスで毎年開催されている国際漫画祭「アングレーム」で2年連続賞をとっていてフランス読者にウケている作品、それが望月ミネタロウさんの『ちいさこべえ』なんです。
念のため簡単に説明しますと、『ちいさこべえ』とは山本周五郎先生の時代小説を現代に置き換えて漫画化した作品です。丁寧かつ細やかに描かれた登場人物たちの日常のようすが、あたかもそこで起きているかのような近さを感じさせ、多くの読者を魅了しました。
が、しかし、この作品って、今のフランスで人気とされる日本マンガやバンドデシネとは少し作風が異なります。それに日本人特有の「人情と意地」という心情は、フランス人にはあまり通じないイメージです。
では、どんなところがフランス人の心にビビッときたのでしょうか?
今回、この作品のフランス語版を出版している出版社「Le Lezard Noir 」のオーナー、ステファンさんにメールインタビューしてみました。
──Le Lezard Noir はそもそもどういうきっかけでできたのでしょうか?
私はもともと音楽系のインディペンデント・レーベルに勤めていました。2003年に来日した際、丸尾末広先生にお会いする機会があり、話をしているうちに彼の作品をフランスで出版できたらと思ったんです。それがきっかけとなって2004年に書籍出版社を設立。会社名は昔から憧れていた江戸川乱歩先生の作品名にちなんで「Le Lezard Noir (黒蜥蜴)」という名前をつけました。
最初の出版作品は、福谷たかし先生の『独身アパートどくだみ荘』(仏題:Le vagabond de Tokyo)だったんですが、人気は上々でしたね。その後、丸尾末広先生、ジョージ秋山先生、勝又進先生、花輪和一先生、松本正彦先生、楳図かずお先生などの作品を出版し、現在に至ります。
──『ちいさこべえ』を出版するきっかけを教えてください。
実は望月ミネタロウ先生のことは、この作品と出会うまで知りませんでした。
出版作品を探すために来日した際、神保町の小さな書店でたまたま目に止まったのが『ちいさこべえ』でした。
シンプルかつピュアなタッチで描かれた髭面のキャラの表紙には大変インパクトがあり、一般的なマンガっぽさはないにせよ、そこにはちゃんと日本らしさが感じられました。
フランスでは、日本のマンガ、アメコミ、バンドデシネなど、ジャンルによって読者が細かく分かれていて、日本のマンガ作品のことをあまりよく思っていない人もいます。だけど『ちいさこべえ』は他の日本の作品と違い多くの読者にウケる要素があると確信があったので出版へとふみきりました。
上:ちいさこべえ 望月ミネタロウ(小学館)/下:Chiisakobé Minetaro MOCHIZUKI(LE Lézard Noir)
──『ちいさこべえ』はフランスの読者の間ではどのような評価を受けていますか?
フランスの読者の多くは、現代的な作品にもかかわらず時代を超越した内容にとても感動していました。マンガ評論家たちもこの作品を絶賛してくれていたので、2年連続で賞をもらうことができたんだと思います。
── Le Lezard Noir から日本のマンガの翻訳版を出版する場合、どのような作品を選んでいますか?基準やルールがあれば教えてください。
出版する作品は、主に私の好みで選んでます。恥ずかしい話ですが、私は日本語を話すことができないので、ほぼ自分自身の勘をたよりに選んでるんです。
最近、望月先生の『東京怪童』、真造圭伍先生の『トーキョーエイリアンブラザーズ』、安倍夜郎先生の『深夜食堂』をリリースしました。
── Le Lezard Noir から出版されている日本のマンガの多くは、日本のオリジナルの表紙とは違ったデザインで出版されていますが、それはなぜでしょうか?
読者は表紙を見て興味を持ち、作品を手に取ります。たとえ日本人に伝わりやすい表紙だったとしても、それがフランスではあまり通用しないということもあるので、できるだけフランスの読者に伝わりやすいものを意識して新しい表紙を作ってます。
それに私はもともと音楽業界で仕事していたので、レコードのアートワーク同様、マンガの表紙にも自分なりのこだわりを持ってます。だから、フランス版として新たに表紙を作るときには、グラフィックデザイナーに私を驚かせるようなデザインにして欲しいと発注をするんです。
例えば、さまざまなタイポグラフィを使い分けたり、映画のポスターのようなものを作ってほしいとオーダーをすることも。
ただ、『ちいさこべえ』については、オリジナルの表紙を見てすぐに世界観がわかるものだったので元の表紙をそのまま採用しました。
── Le Lezard Noir では今後どのようなマンガ作品の翻訳版を出していきたいと考えていますか?
小さな出版社なので出版したい作品全てが出せるわけではありませんが、個人的には新しい漫画家を発掘したり、劇画をプッシュしていきたいです。
マンガ家では、佐々木マキ先生、風忍先生、宮谷一彦先生あたりに注目しています。新しい世代だと、ユースカに出ているマンガ家の作品を出版したいですね。
そのほかだと、フランガ(※)作品の監修もやっています。ストーリーはフランス人、作画は日本人が担当し、内容はオカルト的なスリラー作品を予定しています。これは刺激的な経験なのでがんばってやりとげたいと思ってます。
※フランガ…日本とフランスの合作マンガ
メールインタビューの中にもいくつか作品名が登場していましたが、ステファンさんの出版社Le Lezard Noir では、多くの作品がフランス語版として出版されています。楳図かずおさん、丸尾末広さん、近藤聡乃さん、真造圭伍さん、安倍夜郎さん、ジョージ秋山さん、ユズキカズさんなどなど。
日本版とは違う表紙はなんだか洋書の趣もあって、各マンガ家さんのファンならぜひ手にとって欲しいですね。Le Lezard Noir のサイトでは日本への通販も可能です。
これでホントに以上です。長々と失礼しましたっ!
Le Shop du Lézard Noir – Lézard Noir
la boutique en ligne des éditions Lézard Noir
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