衝撃!コンビニ雑誌棚の奥地に『川口浩探検隊』のコミカライズは実在した!!

衝撃!コンビニ雑誌棚の奥地に『川口浩探検隊』のコミカライズは実在した!!

 皆さん、『川口浩探検隊』はご存知でしょうか。若い人だと「知らん」となる方も多いでしょうが、78〜85年にかけてテレビ朝日の「水曜スペシャル」枠で50回近くにわたり放映された人気テレビ番組で、俳優の川口浩を隊長とした探検隊が人跡未踏のジャングルや洞窟に入り、ヘビやタランチュラや底なし沼といった危機に遭遇してはなんとか乗り越え、最終的には未確認生物(UMA)を発見したりする様子を緊迫したナレーションが盛り上げる……という内容のシリーズです。なお、2000年代に入ってから放映された『藤岡弘、探検隊』は、続編というかオマージュというか、そういう感じになります。

 先にスパッと言っておきますと、この番組はドキュメンタリーではなく、ドキュメンタリー風のバラエティー番組です。悪い言い方をすれば「やらせ」の一種です。ただ、見てる側もその辺のことは分かってはいて、84年に嘉門達夫が出したレコード「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」では「川口浩が洞くつに入る カメラマンと照明さんの後に入る」「さらに未開のジャングルを進む 道には何故かタイヤの跡がある」などと歌われていますし、85年にはタイトーがアーケードゲーム「決死の探検サバイバル ゆけゆけ!山口君」(転がってくる岩をかわしたり、原住民にマイクを投げつけて倒したりしながら進んでいく、『フロントライン』や『戦場の狼』みたいな任意式縦スクロールSTG)なんてのを出してたりします。まあ純真な子供とかは信じてたでしょうし、現代の放送倫理だとアウトだとは思いますが……(『藤岡弘、探検隊』はこの辺、「冒険エンターテイメント」と、ドキュメンタリーではないことを謳っています)。

 さてしかし、『川口浩探検隊』は知っているという人でも、それがコミカライズされていたことを知っている人はあまり多くないのではないでしょうか。『漫画ゴラク』2005年1月28日増刊号として、平綴じA4サイズの雑誌様の本が発刊されているのです(後の2007年にB6サイズのコンビニコミック版も出ています)。

 「なんで番組終了から20年近く経った時期にコミカライズが?」と疑問に思われる方も居るでしょうが、その答えは裏表紙を見れば分かります。

 ご覧の通り、この時に、シリーズの中でも人気だったエピソードをピックアップして収録したDVDが発売されたので、要はそのタイアップとしてのコミカライズなんですね。DVDに収録された話をそれぞれ別の漫画家が描くアンソロジーとなっており、『修羅がゆく』『任侠沈没』などで知られる山口正人が「恐怖!双頭の巨大怪蛇ゴーグ!南部タイ秘境に蛇島カウングの魔人は実在した!!」編を、『ドカコック』『ワイルドリーガー』などで知られる渡辺保裕が「謎の原始猿人バーゴンは実在した!パラワン島奥地絶壁洞穴に黒い野人を追え!」編を、『野原ひろし 昼メシの流儀』などで知られる塚原洋一が「驚異!幻の魔獣“バラナーゴ”をスリランカ奥地密林に追え!!」編を、『フラグのジョー』などのパチンコ漫画で知られる沖圭一郎が「恐怖の巨大怪鳥ギャロン!ギアナ奥地落差1000メートルの大滝ツボ洞穴に原始怪獣を追え!!」編を、『ラジコンキッド』や幻の麻雀漫画『劫の修羅』(「書店流通ではなくパチンコの景品として発刊された(ただし上巻だけ)」という、「そんな漫画単行本あるの!?」な一品。筆者は10年くらい探し求めていますが未だ手に入れられていません。掲載誌は国会図書館に入ってるから内容は全部読めるんですが……)などで知られるのなかみのるが「ワニか怪魚か!?原始恐竜魚“ガーギラス”をメキシコ南部ユカタン半島奥地に追え!!」編をそれぞれ描いています。ちなみに、Wikipediaの「川口浩」の項目には「2007年には日本文芸社より未確認生物編の5話が山口正人により漫画化され、Gコミック『漫画川口浩探検隊 未確認生物編』として発売されている」って書かれてますが、「現物を確認せずにAmazonの登録情報(山口の名前しか載ってない)だけ見て書くからそういうミスを犯すんやぞ」とその項を書いた人には言いたいところです。

 さて、内容ですが、基本的には元の番組にほぼ忠実なものとなっています。一つ一つ紹介していきましょう。

 まずは「双頭の巨大怪蛇ゴーグ」編。切り立った断崖で周囲を囲まれており、年に一度の大潮の日に12時間だけその姿を見せるという洞窟から船で入るしか足を踏み入れる術はないというタイ南部の島・カウング島に、双頭を持つ巨大怪蛇・ゴーグを探しに行くという内容で、とにかくヘビが出まくります。

『漫画川口浩探検隊』16ページよりカウング島。ちなみにこの島、ググっても「川口浩が探検した島」以上の情報は出てきません

 特に見どころは、ジャンピングスネーク(って何?)の群れに囲まれた探検隊が、切り札としてマングースを放ちピンチを脱するところですね。昔は、「ヘビ絶対殺すマン」みたいに思われてた生き物なんですよマングース。そのイメージでハブ対策として南西諸島に放たれ、特にハブを殺すわけでもなく、むしろ貴重な島の固有種たちを餌にしていったため今では特定外来生物として駆除対象になっていることはご存じの方も多いかと思います。

『漫画川口浩探検隊』28〜29ページより

 肝心のゴーグは、洞窟の奥でちょろっと姿を見せますがすぐに穴の奥に引っ込んでしまい、12時間のタイムリミットがあるので川口隊長は潔く帰ります。

『漫画川口浩探検隊』49ページより

 続いては「原始猿人バーゴン」編。フィリピン・パラワン島で撮影された「原始猿人バーゴン」を探しに行くという内容です。これは原作にちょっとアレンジ利かせたものとなっており、カメラマン・セザールが落石に巻き込まれそうになったり、少数民族保護庁の職員・トニーがバーゴンの罠に引っかかったりしたところを川口隊長が助けた時の「THANK YOU」という感謝の言葉などが見どころです。

『漫画川口浩探検隊』66、81ページより。いや、「THANK YOU」くらいは訳なくても分かる。あとどのへんが現代人には作ることが不可能なのかは不明です

 また、本作は展開もちょっと元番組よりアレンジされており、番組ではバーゴンは最後までコミュニケーションを取れず半ば無理やりヘリコプターに乗せられて去っていきましたが、本作では川口隊長と眼と眼で通じ合ったことになっています。真の漢たちの間に言葉はいらない。

『漫画川口浩探検隊』98〜99ページより

 続きまして「魔獣バラナーゴ」編。スリランカ奥地のジャングルに、ヘビともトカゲともつかぬ伝説の巨大怪蛇・バラナーゴを探しに行く話です。見どころは、ヘビの巣窟となっている遺跡の地下に潜っていくシーン。上からヘビが降ってきて、そのあと地面からは毒サソリが襲ってくるという、上下からの波状攻撃に探検隊が晒される緊迫のシーンが漫画でも忠実に描かれています。

『漫画川口浩探検隊』140ページより

 このサソリの絵の動きのなさは地味に職人仕事です。いやここ、番組でも「足元には、更に恐ろしい敵が忍び寄っていた。猛毒のサソリである。しかも、群れをなしてジリジリと迫ってくる」というナレーションとともに何匹か映るサソリ、ほとんど動いてない(1匹だけ動いてるのが確認できますが)ので……。ちなみに、先述の「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」でも、「ヘビの攻撃さけると 動かないサソリがおそってくる」と歌われています。

 そして最後、バラナーゴはついに発見され捕らえられます。「トカゲのような体だが表面はヘビのよう」と言われているのはまったくもって正しいです。なぜなら、これはミズオオトカゲという現地ではポピュラーなトカゲにニシキヘビの皮をチョッキみたいに着せた存在だから……。ミズオオトカゲ、日本でもペットとして飼っている人は普通におり、去年は沼津のローカルニュースとして脱走騒ぎがありました(https://www.at-s.com/news/article/local/east/813066.html)。

『漫画川口浩探検隊』144ページより
静岡県河津町の爬虫類専門動物園iZooにて筆者撮影のミズオオトカゲ。なんだかんだ言ってデカいので迫力はあります。iZoo、ワニの子供を抱く体験とかできて面白いところですよ。目の前のバス停を通るバスの本数がすげえ少ないので、タクシー使うか駅から30分歩くかする必要がありますけど……

 続きましては「巨大怪鳥ギャロン」編。南米・ギアナ高地にある落差世界一の滝・アンヘルの滝(エンジェルフォール)近くの洞窟に住むという、恐竜のような巨大怪鳥・ギャロンを探しに行く話です。苦労の果てに一行はついに、洞窟内でギャロンの群れに遭遇します。

『漫画川口浩探検隊』186ページより

 ……これはアブラヨタカという鳥ですね。日中は洞窟内で休息し、夜になると外で餌を取る夜行性の鳥です。「ただの猛禽類じゃねえ」という発言は間違っていません。アブラヨタカ、猛禽どころか肉食でさえない(ヤシ科などの脂質に富んだ果実を食べるそうです。夜行性の鳥類としては唯一の草食)から……。ただ、「翼の長さが2メートル以上にもなる巨大鳥」と言ってるのは完全にフカシで、実際は広げても1メートルもないくらいですね。

 そして最後に「原始恐竜魚ガーギラス」編。メキシコ・ユカタン半島の奥地に、「頭はワニ、体は魚」の古代魚を探しに行くという内容で、もうこれはこの時点でオチの予想がついてしまってる人もいるんじゃないかと思いますが、アリゲーターガーですね。近年では多摩川とか鶴見川のようなとこにも生息してしまっていて問題になっているアイツです(デイリーポータルZに鶴見川生息のを釣って食べた記事があります(https://dailyportalz.jp/kiji/130722161214)。まあ「アリゲーター」って名前がつくくらいの魚ですから、何もウソは言っとらん、言っとらん。

『漫画川口浩探検隊』198〜199ページより

 いかがでしたでしょうか。ネットが発達して「いや、これはただのアブラヨタカだろ……」と即座にSNSで反応があるような時代ではなかったからできた冒険エンタテインメントの息吹、その一端を感じ取っていただければ幸いです。ちなみに。本書の幕間には当時のスタッフなどのインタビューも収録されており、資料としてもけっこう貴重だったりします。サソリの襲撃などは先述の通りかなり誇張された危険だったものの、撮影自体はなんだかんだ言ってかなり過酷で時には命の危険もあるものだったそうで(毒ヘビには血清も用意した上で噛まれないように十分注意したが、無毒のヘビにはかなり噛まれたとか)、その辺は頭が下がりますね。

 また、本書は巻頭カラー部に折り込みで、「猿人バーゴン」のペーパークラフトがついています。筆者未見なので断言はできませんが、B6のコンビニコミック版にはたぶんサイズ的についてないんじゃないかと思いますので、欲しくなったぜという人はA4サイズのバージョンの方を探すと多分ちょっとお得です。

『漫画川口浩探検隊』巻頭の猿人バーゴンペーパークラフト

 

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