2022年、ビッグコミックオリジナル11月増刊号にて完結した「細野不二彦」さんの『1978年のまんが虫』。
単行本も12月に全1巻で発売されてます。
細野さんの大学時代が描かれ、作中の年代が私に身近なのもあってとても面白く読みました。
第9話で細野さんは大学在学中に漫画家としてデビューします。
SF小説『クラッシャージョウ』のコミカライズです。
掲載された雑誌は『マンガ少年』。
1976年に創刊され、1981年に休刊します。
出版社の「朝日ソノラマ」も、この『マンガ少年』も今あまり語られる事は少ない様に思います。
先日その細野さんの「クラッシャージョウ」が掲載された1979年4月号を入手したので、御紹介したく今回の記事を書く次第です。
『マンガ少年』の創刊は1976年、私は15歳です。
割と初期から読んでいた記憶がありますから貸本屋さんで借りていたのだと思います。
はっきりとは思い出せませんが高校を卒業して親元を離れ、貸本屋さんの利用がなくなるまでが読んでいた期間だった筈です。
当時は特に考えずに読んでましたが今振り返って思うに、とても豪華な執筆陣です。
また「朝日ソノラマ」という出版社もまったく気にしてませんでした。
大人になって古い漫画を集めるようになり、この「朝日ソノラマ」という出版社の刊行物がいかに偉大だったかを知ります。
昭和40年代に子供時代を過ごした私にとって思い出深い物ばかり。
新書サイズのサンコミックス、アニメや特撮のソノシート、怪獣関連の書籍、等々。
漫画専門の古書店でガラスケースに入った高額なプレミアがついた物を「欲しいけどこの値段は気軽に出せないよなぁ」と眺めるだけでした。
それでも見るだけで楽しく、満足してました。
今回調べて知りましたが、『マンガ少年』は手塚治虫さんが『火の鳥』を掲載する雑誌を欲した故の創刊なんですね。
『COM コム』の休刊から4年半ほどの間を経て「火の鳥」を新しく始めた功績はとても大きいのではないでしょうか。
全体にSF作品が中心ですが難解な内容の物は無いと言ってよく、10代の少年にも受け入れやすく読みやすい雑誌でした。
『マンガ少年』で読んでいる時はかなり引き込まれた内容でしたが、残念ながら最終回まで読んだ記憶はありません。
そして長らく単行本化されて無く、再読は叶いませんでした。
2015年に書籍化されているのは恥ずかしながら知りませんでしたが、マンバ通信で記事を書きたいと古書店で探してますがまだ入手出来てません。
いずれ手に入ったら書きたいと思います。
また藤子不二雄さんの「みどりの守り神」は『マンガ少年』掲載時に読んでます。
10代の少年だった私にとって、とても心に刺さり感動した覚えがあります。
「劇画オバQ」の記事(大人になって再会したQちゃんの衝撃 藤子・F・不二雄「劇画オバQ」)で描きましたが、1980年代半ばに出版された中央公論社の『藤子・F・不二雄 愛蔵版SF全短編』の第2巻。
表題作が「みどりの守り神」です。
「おお、これはもしかしてあの!」と思いましたよ。嬉しかったですね。
そして第3巻の表題作は「征地球論」です。
こちらは『マンガ少年』掲載時に読んではおらず、この愛蔵版で初めて読みました。
これも「おもしろいなぁ、やっぱ藤子さんすげえなぁ」と感心した記憶があります。
他にも水木しげるさんやますむらひろしさんなど多くの秀逸な作品が掲載されたとても良い雑誌だと言えましょう。
記憶のみで確認は出来てませんが、最初の頃の読者ページに「内容は良いのに紙質が悪すぎる」といった投稿があったと思います。
これには高校生だった当時、そんなに悪い紙質なのかなと思いました。
というより漫画雑誌を読むのに紙質を気にするんだ、と少し驚きました。
この投稿者の独自の感覚なのか、それとも投稿欄に載るくらいなので自然な感覚なのかわかりませんが、初期の号と当時の他の雑誌を比べてみたいですね。
では1979年4月号を紹介しましょう。
巻頭カラーは藤子不二雄さんの「マイロボット」。
何度も読んでいる作品ですが、扉絵含めて8ページのフルカラーが素晴らしすぎます。
表紙の大きな文字で表記された漫画家さんは手塚治虫さん、松本零士さん、岡田史子さん、諸星大二郎さん。
そこに並ぶ「原作/高千穂遥 作画/細野不二彦」。
『1978年のまんが虫』第9話に、主人公がこの号を手に取る様が描かれてます。
この「クラッシャージョウ」は前後編で、残念ながら前編のみの掲載です。
普段私が良く覗く古書店は2店あるのですが、ついこの前そのうちの1店で見つけました。
以前から『マンガ少年』は十数冊ながらこの店に置いてありましたが「そういえば(まんが虫で)描かれてたよな」と思い出し、表紙をチェックしていたら見つけました。
こんな上手い事見つかるなんてのは滅多にありません。
早速帰って読みました。
絵柄はかなり違いますね。デビュー作ですから当然といえば当然でしょう。
なにより描き込みが凄い。
メカや宇宙船内の背景、登場人物の衣装、爆発の描写。
少しトーンを使用してはありますが、ほぼ手描きでとても丁寧に描かれてます。
19歳細野不二彦さんの漫画に描ける情熱が詰まった渾身の作品だと言えるでしょう。
後編はまた別の古書店を巡って入手したいところです。
この『マンガ少年』は創刊号と数冊出された増刊号には少しばかりプレミアがついた価格で売られてますが、通常号はそこそこ安価です。
というのも古い漫画を扱う古書店にはそれなりに並んでいて、現存数は多いと推察されます。
ネット上でも多く売られてますね。
コンプリートのハードルはそれほど高くないように思えますが、いざ集めだすとそこそこ根気はいるでしょう。
全冊セットも稀に見かけますが、流石に5年近い期間の月刊誌を一度に手に入れるのは置き場所を含めてちょっと勇気がいりますね。
もしどこかで機会があれば1冊でもご覧になってみてはいかがでしょうか。
豪華な執筆陣の作品を、当時の掲載雑誌でお読みになるのも漫画を読む楽しみの一つだと思う次第です。