羽生という男は山でしか生きられない。
そしていつかは山で死ぬしかない男だ。
危険なルートと安全なルートの選択を迫られたとき、
迷わないわけではないだろうが、
危険なルートを選んでしまう。
そうでなければ登る意味が無い、と思い、
それが美しい登り方だと思ってしまうから。
人間関係でもそうで、
良好な人間関係を保つために
言葉を選び表現を変えることが出来ない。
変えたら話す意味がない、と。
もしも羽生がマロリーのカメラを世に出して、
世界中が世紀の発見だと賞賛しても、
羽生は
「所詮は過去の記録だ」
くらいに言いかねない。
羽生という男は山でしか生きられない。
そしていつかは山で死ぬしかない男だ。