あらすじ

己の限界を感じ、下山した深町。途中、山頂の見える岩場から、ファインダー越しに羽生を捜すが、信じられない光景を見る! 果たして、羽生の単独登頂の結末は…!? 山岳ロマンの最高峰、感動の完結巻!! 巻末に、谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録
神々の山嶺(1)

エヴェレスト初登頂の謎を解く可能性を秘めた古いカメラ。深町誠は、その行方を追う途中、ネパールで“毒蛇(ビカール・サン)”と呼ばれる日本人男性に会う。彼がネパールに滞在する理由とは!? そして、彼の正体とは…!? 巻末に、夢枕 獏[『神々の山嶺』漫画版によせて]+谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録

神々の山嶺(2)

ヨーロッパアルプスで最も有名な壁・グランドジョラス。羽生丈二は、その壁で人類初となる、冬季単独登攀を目指す。しかし、壁から落下、瀕死の重体に。生死の境を彷徨う極限状態の中、羽生は生きる為に、奇跡の登攀に挑む!! 巻末に、谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録

神々の山嶺(3)

前人未踏のエヴェレスト登頂を目指し、還らぬ人となったジョージ・マロリー。果たして、彼は世界最高峰の頂上を踏んだのか――。この謎を解く鍵を握る羽生丈二を捜す深町誠。しかし、その最中、日本からやってきた岸涼子が誘拐され!? 巻末に、谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録

神々の山嶺(4)

人類という種が、単独で行えるギリギリの行為、エヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂――。それは、長い間、人間を拒み続けてきた。その神の領域とも言える登攀に、孤高の単独クライマー・羽生丈二が、全てを捨てて、挑戦する!! 巻末に、谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録

神々の山嶺(5)

己の限界を感じ、下山した深町。途中、山頂の見える岩場から、ファインダー越しに羽生を捜すが、信じられない光景を見る! 果たして、羽生の単独登頂の結末は…!? 山岳ロマンの最高峰、感動の完結巻!! 巻末に、谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録

神々の山嶺

「これしかない人生」を歩む

神々の山嶺 谷口ジロー 夢枕獏
名無し

僕の地元・長野県には、中学校集団登山という拷問のようなイベントがありました。一学年240人がみんなで3000m級の山に挑むという荒行です。しかも、登る予定の山で起きた遭難事故を描いた新田次郎の「聖職の碑」の映画版を見せられるという、嫌がらせとしか言いようのないオマケもついていました。とはいえ、このイベントで山に目覚めた人もいないわけではなく、それなりに意味のある行事な気もします。僕は下山中に便意に襲われ、6時間死ぬ思いで我慢するという、これまでの人生で一番の苦行を味わったので、二度と山には登らないと決めています。  とはいえ、山ものの作品を読むと、山もいいかもしれないと思ってしまうのです。『神々の山嶺』は数多い名作を生み出し、海外でも評価の高い谷口ジローのまさに最高峰だと思っております。   『神々の山嶺』には羽生丈二という一人のクライマーの姿が、カメラマンの深町誠の視点から描かれます。  この羽生丈二、初登場シーンから圧倒されます。「その時…むっと獣の臭いが店内にたちこめたような気がした」。この存在感がどこからくるのか、深町は彼の過去を調べていくのです。  羽生を関係してきた様々な人に取材していくうちに、彼の孤高としか言いようのない半生が明らかになっていきます。  羽生は可愛げのない、根性はあっても鈍重で無口な男でしたが、クライマーとしては抜群の才能を発揮。しかし、全てを山に集中する羽生は、普通の生活を送る人間と温度差がうまれ、山岳会でも孤立していきます。誰もが登れなかった壁を登り、山岳界の話題をさらうものの、羽生自信は不遇のまま。海外の山に挑戦することができません。  誰よりも山を想っているのに資金や人脈や名声がないだけで、挑戦できない苦しみを味わい、自分を慕う人間の死があり、やがて羽生は自分から孤立していきます。そして消息を断った羽生がなぜカトマンズにいたのか?彼がなにをしようとするのか、物語は加速していきます。  羽生の姿は、新田次郎の小説ではないですが、まさに「孤高の人」なのです。孤高の人は、人の共感は求めません。自分でも言葉にできない衝動に突き動かされるまま、「これしかない人生」を送るのです。  羽生はいいます「いいか。山屋は山に登るから山屋なんだ。だから山屋の羽生丈二は山に登るんだ!!」また、なぜ山に登るのかという問にこう答えます。「そこに山があったからじゃない。ここにおれがいるからだ」  「これしかない人生」を送る男の寂しさと美しが同時に描かれ、僕もこのような生き方に強く憧れるのです。  いや、既に僕は僕にとっての「これしかない人生」を歩んでいるかもしれない。この、マンガとゲームにあふれた人生は。