本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
※本棚・フォローなどの各アクションメニューはこちらへ移動しました(またはフローティングメニューをご利用ください)

「これしかない人生」を歩む

僕の地元・長野県には、中学校集団登山という拷問のようなイベントがありました。一学年240人がみんなで3000m級の山に挑むという荒行です。しかも、登る予定の山で起きた遭難事故を描いた新田次郎の「聖職の碑」の映画版を見せられるという、嫌がらせとしか言いようのないオマケもついていました。とはいえ、このイベントで山に目覚めた人もいないわけではなく、それなりに意味のある行事な気もします。僕は下山中に便意に襲われ、6時間死ぬ思いで我慢するという、これまでの人生で一番の苦行を味わったので、二度と山には登らないと決めています。  とはいえ、山ものの作品を読むと、山もいいかもしれないと思ってしまうのです。『神々の山嶺』は数多い名作を生み出し、海外でも評価の高い谷口ジローのまさに最高峰だと思っております。   『神々の山嶺』には羽生丈二という一人のクライマーの姿が、カメラマンの深町誠の視点から描かれます。  この羽生丈二、初登場シーンから圧倒されます。「その時…むっと獣の臭いが店内にたちこめたような気がした」。この存在感がどこからくるのか、深町は彼の過去を調べていくのです。  羽生を関係してきた様々な人に取材していくうちに、彼の孤高としか言いようのない半生が明らかになっていきます。  羽生は可愛げのない、根性はあっても鈍重で無口な男でしたが、クライマーとしては抜群の才能を発揮。しかし、全てを山に集中する羽生は、普通の生活を送る人間と温度差がうまれ、山岳会でも孤立していきます。誰もが登れなかった壁を登り、山岳界の話題をさらうものの、羽生自信は不遇のまま。海外の山に挑戦することができません。  誰よりも山を想っているのに資金や人脈や名声がないだけで、挑戦できない苦しみを味わい、自分を慕う人間の死があり、やがて羽生は自分から孤立していきます。そして消息を断った羽生がなぜカトマンズにいたのか?彼がなにをしようとするのか、物語は加速していきます。  羽生の姿は、新田次郎の小説ではないですが、まさに「孤高の人」なのです。孤高の人は、人の共感は求めません。自分でも言葉にできない衝動に突き動かされるまま、「これしかない人生」を送るのです。  羽生はいいます「いいか。山屋は山に登るから山屋なんだ。だから山屋の羽生丈二は山に登るんだ!!」また、なぜ山に登るのかという問にこう答えます。「そこに山があったからじゃない。ここにおれがいるからだ」  「これしかない人生」を送る男の寂しさと美しが同時に描かれ、僕もこのような生き方に強く憧れるのです。  いや、既に僕は僕にとっての「これしかない人生」を歩んでいるかもしれない。この、マンガとゲームにあふれた人生は。

名無し
『神々の山嶺』のクチコミ投稿
クチコミで好きなマンガを広めよう!
話題の種類
「マンガのクチコミってどうやって書けばいいの?」という方へ!選んだ話題に応じた書き方のヒントや例文を表示します。初めての方は、練習用ページで気軽に投稿の練習をしてみてください。
タイトル
本文
神々の山嶺
神々の山嶺
谷口ジロー
谷口ジロー
夢枕獏
夢枕獏
あらすじ
エヴェレスト初登頂の謎を解く可能性を秘めた古いカメラ。深町誠は、その行方を追う途中、ネパールで“毒蛇(ビカール・サン)”と呼ばれる日本人男性に会う。彼がネパールに滞在する理由とは!? そして、彼の正体とは…!? 巻末に、夢枕 獏[『神々の山嶺』漫画版によせて]+谷口ジロー[もうひとつの山嶺]収録
神々の山嶺の情報の提供お待ちしてます!
掲載している内容の誤りや、この作品に関するおすすめの記事、公式情報のリンクなどはこちらからお送りください。みなさまのご協力をお願い申し上げます。
マンガリストを作ってみませんか?
この一年をマンガで振り返ろう!
テーマを選んでリスト作成にチャレンジ!
ポスターかっけえ
「どうしようもなくなったら助けてくれ」
じゃなくて、
「どっちが死にそうになっても助けない...
神々の山嶺は、まず夢枕獏先生の小説を
読んで感動した。
だが、谷口ジロー先生による漫画版は...

おすすめのマンガ

クロサワ 炎の映画監督・黒沢明伝

クロサワ 炎の映画監督・黒沢明伝

▼第1話/リク・ス・ダールから来た男▼第2話/巨匠と連れション▼第3話/監督は俺だあー!!▼第4話/黒澤組▼第5話/バカ侍と大監督▼第6話/誤報▼第7話/本気▼第8話/3人の師匠▼第9話/素人俳優▼第10話/確執▼第11話/見舞いの手紙▼第12話/ゴッホの夢▼第13話/ロックアウト▼第14話/ダリルの夢▼第15話/電報▼最終話/夢の跡●主な登場人物/黒澤明(日本が誇る世界的映画監督。1998年9月6日逝去。享年88歳)、早瀬のり子(映画雑誌の新米記者。ただし、映画に関しての知識は驚異的にない)、平山幸一(のり子とは同業他社のライバル。だがのり子に力を貸してくれる)、ジェフリー・ヨーク(アメリカの若手ジャーナリスト。黒澤の名声に疑問を抱き、『トラ・トラ・トラ』降板の真相を調べようと来日)●あらすじ/1998年5月。日本映画界の巨匠・黒澤明監督にぜひ会いたいと、アメリカからジャーナリストのジェフリー・ヨークが来日した。応対したのは映画雑誌編集者の早瀬のり子と、平山幸一。ジェフは二人に「アキラ・クロサワは、一人の人間の夢を無残にぶち壊した。俺は許さない」と言う。1968年に企画された日米合作の戦争映画『トラ・トラ・トラ』から黒澤が降板したことにより、プロデューサーだったダリル・F・ザナックの夢が砕け散ったというのだ……。●本巻の特徴/黒澤を語る時、あまり触れられることのない『トラ・トラ・トラ』降板事件。この事件の隠された真実を、綿密な取材によって描き出した力作。黒澤明自身の、そして彼に関わった多くのスタッフや俳優たちの情熱が伝わってくる。『小津安二郎の謎』に続く、日本映画監督列伝シリーズの第2弾。●その他の登場人物/土屋嘉男(俳優。『七人の侍』の農民・利吉役でデビューし、以降9本の黒澤作品に出演)、村木与四郎(黒澤映画の美術監督)、大澤豊(黒澤明の元チーフ助監督)、松江陽一(黒澤映画の助監督を経て、後年は制作も手がける。黒澤の海外渡航時には通訳もつとめた)

試し読み
リアル

リアル

バスケを辞めてから何もかも上手くいかなくなった男・野宮朋美。街でナンパした山下夏美をバイクに乗せ事故り、ケガを負わせてしまう。高校も辞めた野宮は、ある日、古ぼけた体育館で車いすの男・戸川清春と出会い1on1のバスケ勝負を挑む。体育館でのバスケ勝負から繋がった野宮と戸川。ひょんなことから西高バスケ部キャプテン高橋と賭けバスケ対決をすることに。結果、賭けに勝ち西高体育館の鍵をゲットする。その高橋がある日、トラックに轢かれてしまい…。 【デジタル版では紙版未収録のカラーイラストを特別収録】

プロフィールはありません
プロフィールはありません