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たか
たか
2023/12/21
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陰惨の快楽 #読切応援
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前年の酉の市で買ったまま納屋に放置されている出目金による一人称視点漫画。 美しかった紅白の鱗は失われ、腐臭を放つ水の中で生き続ける。 喜びの何一つない絶望的な世界に1匹閉じ込められておりながら、自らを「乃公(ダイコウ・わがはい)」と大仰に呼び淡々と状況を受け入れ、あまつさえ快感すら感じている。 ふと「もしかしたら金魚だから深く考えることが出来ないせいかも」と頭をよぎりましたが、明治の文豪のような物々しい口調で思考の出来る存在なんだからそんな訳ないと考え直しました。 精神を守るための防御反応かと思うとただただ辛く、救いがなく陰惨。 たった3ページの中に淡々とした絶望があって、ひたすら暗い気持ちになれるので好きです。 というのも、自分自身が小学生の頃ずっと金魚を飼っていて「こいつらの人生って一体なんなんだろう」と常に感じていたからです。 【以下読まなくて良い隙自語り】 >「飼っていて」というのは正しくなく、毎年夏祭りで金魚すくいをするものの、水の入った水槽は重くて2階から庭まで子供には運べず掃除をする時期は全て母に頼りきり。私は気まぐれにエサをやり、母が運んだ水槽を洗うだけでした。 更年期で不安定な母にこまめな管理は難しく、たびたび水槽はドロドロの藻に覆い尽くされたまま放置されました。 >ゲームは1日1時間。兄はすでに家を出て家には子供が私1人。時間が有り余っている私はよく生臭い緑の水の中で死ぬまで往復し続ける金魚たちを眺めて、生殺与奪の権(もちろんそんな義勇さんめいた言葉は知りませんでしたが)、こいつらの命と人生を私が全て握っているにも関わらず、劣悪な環境に置き続けていることにバツの悪さを感じていました。 金魚に感情移入して申し訳なく思っていた小学生の自分の思いが形になったような作品で、たった3ページで罪悪と嬉しさの両方を感じられる良い読切でした。
たか
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2023/12/19
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伝統絵画とwebtoonの融合 #読切応援
もうただただ美しくて、陰陽・生死の境を描いた物語の世界に夢中になって読みました。全体が明清花鳥画のような淡い色使いで統一されており、日本の漫画家で例えるなら清水玲子先生や今市子先生のような繊細なタッチで超絶耽美。 縦読みなのも相まって絵巻物の世界にいるようでした。 まず何より天才なのが、長袍姿で黒髪ロング&メガネのミステリアスな店長のビジュアル!! カードキャプターさくらと×××HOLiCで育った女子にドストライクなやつで「クゥ〜!!これこれ!!」と手を叩いて喜んでしまいました。大好物です。 水彩画を活かし、言い伝えの残る山のシーンはウェット・イン・ウェット(にじみ)や渇筆(かすれ)という技法、そして墨と暗緑色という配色によって不気味で恐れを抱かせる画面になっているのが上手い。 https://i.imgur.com/FEJrEgv.png また陽(生)の世界が伝統的な淡い色使いで描かれるのに対し、陰(死)の世界がネガポジ反転したようなバッキバキのシアンとレッド(#ff0000)で描かれることで異質さが引き立ち、さらに陰陽関係を暗示しているようで好き(深読みオタク)。 https://i.imgur.com/mbygxgA.png https://i.imgur.com/xz2IhOr.png そしてwebtoonらしい技巧として、少女漫画のトキメキシーンで背景に花が咲くように、場面転換のトランジション演出として伝統的な雲模様がサラッと使われているのがお洒落! 私が読んだことのある日本の中華漫画は、特定の王朝を舞台にした歴史漫画(特に三国志)、後宮・宮廷ファンタジー、ネオンと高層ビルだらけの猥雑でクールな都会が舞台がほとんどだったので、こういっや伝統的な神棚や葱油餅などリアルな生活感や信仰が描かれた「ガチ中華(漫画)」が読めるのアツすぎます…! 漫画としてのストーリー展開は王道(主人公が実はすでに死んでいた)で、勘がいい人なら展開が読めてしまいますが、ガチ中華設定と超絶美麗な画力のお陰で唯一無二となっていて、新鮮な面白さがあります。 ただ残念だったのが写植。 あのディズニーですら無神経に酷いフォントを使っていることを考えれば、場面に合わせ非常に丁寧に写植されているのですが、原作が無茶苦茶ハイクオリティなだけに、ところどころ日本語のフォントがクソダサゴシックなのが悔やまれます…。 「本物の悪鬼!」が。シリアスなシーンなのにフォントのせいで海外で見かける謎日本語みたいになっていてつらみが深い。 冒頭の店全体を描いているシーンの看板「棺桶屋」がゴリゴリにゴシック体でせっかく美麗な絵に「うおおおお!!」とアガった気分が台無しになり、なのに次のシーンでは毛筆になっているという……統一してくれ〜〜😭 BL界隈ではかなり前から魔道祖師や天官賜福のおかげで、死霊術師ではない道士という存在が広く認知されているのですが、日本で人気の中華設定といえばもうずっと「三国志・後宮・繁華街」の3強で、最近はそこにキョンシー回顧ブームが来てるのを感じますが、これを機に「道教はキョンシーだけじゃない!」という認識が広まってほしいです。道士はいいぞ! 完全に余談ですが、最近趣味で中国語を勉強しているので途中漢字が分かってメチャクチャ嬉しかったです。转头就跑〜! https://shonenjumpplus.com/episode/14079602755570532919
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2023/12/04
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自分に合う道はどこかにある #読切応援
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2011年9月。高校・大学の7年間オーストラリアに留学し就活を機に日本に戻ってきたなつみは、すっかり「一般的な日本人の感覚」を失っていた! TOEIC900点超えだからなんとかなるっしょ〜と思っていた就活は全く上手くいかず撃沈。そんなとき、道端で日本人の女性に詰問されている外国人のおじさんを見つけ英語で助けに入る。世間話をしてみるとおじさんはパキスタン人だそうで、なんと英語ができる子を探している社長を紹介してくれることに…! https://comic-days.com/episode/14079602755425506172 もう、なつみさんの日本社会不適合ぶりが愛おしかったです(他人事とは思えない)。 読んでいて一番大変そうだなと思ったのは「人と違う行動をする=協調性がない」ことではなく、「どんな行動が協調性がないように周囲に映るか」ご本人には全く気づけないところ。 私も子供の頃から多数派と違う意見を持つタイプでしたが、「この辺までは大丈夫」「こういう態度は嫌われる」というのは、小中高と部活などを通じて肌感覚として身につけているので和を乱さないやり方や線引はわかっているのですが、なつみさんの場合はそれがないので苦労も大きく、思わず感情移入してしまいました。 また2011年というのがまた絶妙で、この頃はまだ「乾杯のときにビール以外頼むやつは(全員の注文が届くまで余計な時間がかかるから)空気が読めない」、「サラダは後輩が分ける。女子がやると気配りができる子と思われる」というような風潮がまだまだ残っていたように思います。 人と同じことが出来なくて苦しい一方で、人とは違うからこそなつみさんはチャンスを掴んでいく。 リクスーで知らん社長の車にダッシュしたり、知らないおじさんとの飲みは危険と理解しつつ自分の判断で飛び込んだり、ビジネスの場で立場を恐れず自分の意見を言う。 これらの行動は「下品・防犯意識の欠如・立場を弁えない無礼者」と、眉を顰め批判する人がいても全く不思議ではない行為です。 でもじゃあこんな度胸のある行動が出来る人は一体どのくらいいるのか?と考えると、数%にも満たないのではないでしょうか。 なつみさんの個性は履歴書には書き表せませんが、間違いなく貴重ですし光るものがあります。 そのなつみさんの良さを、仕事ぶりや振る舞いを通じて自分の目で見抜いたパキスタン人の社長は流石だなと思います。 「実体験を基にしたフィクション」とのことですが、どんな状況でも自分次第で道は先に繋がっていると勇気をくれるパワフルな読切でした!
たか
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2023/12/01
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超強力な怨念が「町」を全体攻撃…!「神仏vs悪霊」な町規模サバイバル!
これはすごいww『海の向こうからきた男』や『ニクバミホネギシミ』みたいな純粋なホラー作品かな?と思ったら「怖い」と「笑い」が波状攻撃で襲ってくる新感覚の物語でした。 まず町全体が呪われているという規模のデカさが最高。 信じがたい方法、ありえない場所で何十人もの人々が首を吊り始めた井間町。その界隈では名高いという、町の神社「篠宮神社」で神職を務めるシズさん(ヒロインの祖母)が中心となり悪霊をなんとか退けていくのですが、シズさん曰く相手は129人の魂の集合体で「町の滅亡を臨んでいるから、町が滅べば悪霊は消える」のだとか。 これほどまでに井間町が祟られている理由…それは知れば納得の胸糞が悪くなる過去にあります。 **〜メッチャ好きなところ〜** **・悪霊が強力すぎて警察も医者も「こりゃ悪霊の仕業ですな」と秒で納得する** **・「(呪いの痕に)湿布出しときますね」** **・町全体が呪われてるから住民全員が被害に遭っていて震え上がりもはや神仏に縋るしかない** **・町の宗教団体、神社・寺・カトリック教会が早々に手を組み一枚岩になるスムーズさ** **・被害者は出るんだけど誰も足を引っ張らない** **・主人公のお母さんが古き良きおばちゃんパーマ(70年代が舞台)** **・シズさんが糸目(ゴリゴリの強キャラ)** https://i.imgur.com/ZxbfQ0i.png (原作:夜行列車/漫画:武者辰虎『首くくりの町 ~篠宮神社シリーズ~』第3話 後編より。ンフフwwwここすき)   「こんなの非科学的だ!」とか誰も言い出さないレベルで怨霊がヤバいため、話が早くて最高。 大人になって以来、「神様を信じる」という言葉や態度ににうっすら警戒心を覚えてしまっていたのですが、この漫画のおかげで子供の頃は神社とかその辺のお地蔵さんに素直な気持ちでお祈りしていたなぁ〜と思い出しました。 小学生4年生の主人公・ケイタが悪霊に取り憑かれたことから真剣に神道の修行に取り組み、神様を身近に感じられるまでになるところはまさに「小さい頃は神様がいて」だなと、スッと納得できました。 12月8日の1巻発売前のプロモーションで6話の前編まで無料公開されてます!読むっきゃない!読んでくれ…! https://kuragebunch.com/episode/14079602755514446246
たか
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2023/11/27
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自分には何も無い高校生がゴルフに出会う!
ジュブナイル小説のようなリアルな温度感がずっと流れていて、素直に面白くてじっくり読み込んでしまった1話でした! スポーツ少年漫画ではありますが、伝統的な真っ直ぐな熱血主人公でも、自分を変えたい弱虫系主人公でもないところがいいですね。 進路指導で「渡米」と書いた王賀さんに「ハロー」って絡む珀。あまりにもダルすぎて失笑してしまいました。こういうやついる〜! https://youtu.be/myInfEqojW4 読みながらブルーピリオドの主人公・八虎のことを思い出しました。 成績優秀なインテリヤンキー・八虎はW杯で日本代表の活躍を見てはしゃいでいる自分たちのことを冷静に卑屈に俯瞰できていましたが、一方の珀は残酷にも自分のみっともなさを王賀さんに丁寧に指摘されてしまう……。 珀は八虎ほど賢くない、本当に何も深く考えてない凡庸な高校生という設定が良いですね。 よくラノベや少年漫画で平凡な高校生を描こうとして「普通」という名の濃いキャラを立たせてしまっていることが多いですが、珀のような男の子こそどこにでもいる普通の高校生と呼ぶに相応しいなと思いました。 王賀さん、自分の好きなことに真剣で堂々としててブレない芯があって私は大好きですけど、読者に嫌われないか心配です。 既に珀の才能の片鱗が見えていて、ここからどう成長していくのか楽しみです。
たか
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2023/11/16
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厳しい人生を生きる2人の束の間の出会い #読切応援
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17歳から25年ヤクザとして生きてきて足を洗うことになった秋山。そんなところに「ヤクザになって助かりたい」と言うちびっ子・勇介が現れ、ほんの数時間面倒を見てやることに。 決して怒らない秋山。 純粋さと鋭さを併せ持つ勇介。 ヤクザが排除された世で仁義を忘れた極道と町の人々。 ヤクザにならなきゃ生きていけなかった中年と、辛い環境から逃げたくてもヤクザになれない幼児。 異なる時代に生まれた2人を主人公に据えることで、いつの世も社会の淀みに生きることは厳しいということが、残酷なまでに伝わってくる圧巻の読みごたえでした。 読み終わった後にタイトルを見てズシッときたところも最高……。 秋山が勇介の足を洗ってやるシーンで、アニメ『デスノート』のオリジナル演出を思い出しました。アニメにはLが雨に濡れた月の足を拭うというシーンがあり、死を前にしたイエスが最後の晩餐で弟子たちの足を洗う場面になぞらえているのだそうです(※「月は神ではない」という暗喩)。 秋山は終始勇介に優しいですが、靴も買ってやれない、銭湯に入ることもできない彼にできる最大の愛情表現が路地裏の水道で足を洗ってやることだと思うと……胸がいっぱいになります。 見ず知らずの子供の足を当たり前のように洗ってやる秋山の心根が好きです。思わずキリストの姿を重ねたくなるほど。 秋ヨシカさんという名前に見覚えがあると思ったら『萌えの血』の方でした。マジで何描いても面白いな〜〜この人!早く短編集出してください買います!!!
たか
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2023/11/13
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宮殿の壁画を2人の天才ダ・ヴィンチvsミケランジェロが競演し彩る!
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私事ですが、YouTubeチャンネルの「山田五郎のオトナの教養講座」が動画をほぼ全部見てるレベルで好きでして、1話を読みながらニヤニヤが止まりませんでした。そうそうwwこの2人はそうww 2人の年齢差や、芸術家としての仕事ぶりの対比が自然な形で1話の中で説明されてて思わず「おおっ…!」と唸りました。この2人のことを名前しか知らない人でもスッとその関係性が頭に入ってくる構成になっています! レオナルドの方がミケランジェロより20歳以上年上。 ミケランジェロは真面目できっちり依頼は完遂するタイプ。 レオナルドは芸術家肌で、制作にバカ時間かかっていつまでも納品しない納期ガバガバおじさん。 天才と名高いレオナルドですが、作中でミケランジェロに言われてた通り彫刻完成させたことないし、発注守らないし、生涯に残した作品数は年下のミケランジェロには遠く及びません(ミケランジェロが多作なのを差し引いても少なすぎ)。 ちなみに作中で「最後の晩餐」が6年しか経ってないのに剥離したというのも事実で、壁画用の描き方(フレスコ)を習ったことがないうえ重ね塗り大好きおじさんのため、描く対象が湿気が多い食堂の石の壁なのにテンペラ(卵が原料)で描いちゃったらしいです。 https://youtu.be/1hsjsD1E7Mk?si=hTis10cXEH0lkBoC 一方のミケランジェロといえば。 私がまず思い浮かべるのは、子供の頃に大好きだった世界遺産図鑑に載っていた壁画「最後の審判」にコッソリ描かれているベロンベロンの人間の皮。大人気画家で仕事が忙しすぎたミケランジェロが自分自身を描いたものだと図鑑で説明されていました。 …ということで、「気分やで芸術家気質のレオナルド(年上)と真面目な職人ミケランジェロ(年下)」というのが2人の間にある関係性・ダイナミクスなんですよね(ニッチャリ) ただ読み始めたときから「ん?」と思っていたのが、この2人が依頼を受けたシニョリーア宮殿の壁画の末路って…?というところ(確認したらやはりそうでした)。 短期集中連載ということで、うましむら先生の手によってどんな結末が描かれるのか今から楽しみです!! (▼画像は1話より。バッチバチで草)
たか
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2023/11/08
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転校生(185cm)なのに全然チヤホヤされない話
1話読んで「いやおんもしろ!!えー!?ヤバくない?こんなマイナースポーツ作品の1話がこんなに面白いとかアガるんですけど〜」という感想。競技始まってなくてこれなら試合とか始まったらどうなっちゃうの〜!? 同じ日に転校してきたやつが大阪出身・191cm・関西弁・絵が上手いとかいうバグった設定のせいで注目をすべて奪われ、転校初日からボッチで飯を食う羽目になりかけた主人公の信濃(長野出身・185cm・信州弁)と、そんなスター性しかない転校生のくせに実はスキップも出来ない運動神経ゼロ人間・山城が水球をやる話。 偶然だと思いますが、マンバの書影も信濃が写ってなくてこれすら面白い。 信濃が「(運動神経)中の上」って言ったのに対し、山城が「すごい自信やな」と言ったのが理解できなかったのですが、スキップを見たら「あぁ!(完全理解)」となりました。このレベルからみたら中の上はすごい自信に分類されるわ…。 小気味よく繰り出される長野ネタ・ボケ・ツッコミが最高でした!! ごめん信濃…。北岳(日本2位の標高)は知ってるけど奥穂高(3位)は知らなかった。 サンデーに載っているという事実を噛みしめると、「W転校生」という設定の味わいがいっそう増してグッときます。面白い〜!!