2011年9月。高校・大学の7年間オーストラリアに留学し就活を機に日本に戻ってきたなつみは、すっかり「一般的な日本人の感覚」を失っていた!
TOEIC900点超えだからなんとかなるっしょ〜と思っていた就活は全く上手くいかず撃沈。そんなとき、道端で日本人の女性に詰問されている外国人のおじさんを見つけ英語で助けに入る。世間話をしてみるとおじさんはパキスタン人だそうで、なんと英語ができる子を探している社長を紹介してくれることに…!
もう、なつみさんの日本社会不適合ぶりが愛おしかったです(他人事とは思えない)。
読んでいて一番大変そうだなと思ったのは「人と違う行動をする=協調性がない」ことではなく、「どんな行動が協調性がないように周囲に映るか」ご本人には全く気づけないところ。
私も子供の頃から多数派と違う意見を持つタイプでしたが、「この辺までは大丈夫」「こういう態度は嫌われる」というのは、小中高と部活などを通じて肌感覚として身につけているので和を乱さないやり方や線引はわかっているのですが、なつみさんの場合はそれがないので苦労も大きく、思わず感情移入してしまいました。
また2011年というのがまた絶妙で、この頃はまだ「乾杯のときにビール以外頼むやつは(全員の注文が届くまで余計な時間がかかるから)空気が読めない」、「サラダは後輩が分ける。女子がやると気配りができる子と思われる」というような風潮がまだまだ残っていたように思います。
人と同じことが出来なくて苦しい一方で、人とは違うからこそなつみさんはチャンスを掴んでいく。
リクスーで知らん社長の車にダッシュしたり、知らないおじさんとの飲みは危険と理解しつつ自分の判断で飛び込んだり、ビジネスの場で立場を恐れず自分の意見を言う。
これらの行動は「下品・防犯意識の欠如・立場を弁えない無礼者」と、眉を顰め批判する人がいても全く不思議ではない行為です。
でもじゃあこんな度胸のある行動が出来る人は一体どのくらいいるのか?と考えると、数%にも満たないのではないでしょうか。
なつみさんの個性は履歴書には書き表せませんが、間違いなく貴重ですし光るものがあります。
そのなつみさんの良さを、仕事ぶりや振る舞いを通じて自分の目で見抜いたパキスタン人の社長は流石だなと思います。
「実体験を基にしたフィクション」とのことですが、どんな状況でも自分次第で道は先に繋がっていると勇気をくれるパワフルな読切でした!
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