これを読んで、自分が今までチェルノブイリ原発事故について今まで何も知ろうとして来なかったことに気付きました。Wikipediaの記事を流し読みすることさえしたことがありませんでした。

チェルノブイリでは原発事故があったあと、消防士たちは「普通の火事」だと知らされ防水服すら着ず消火にあたり被爆。
被爆した消防士たちを、当局は妻たちに嘘を付いてまで強制的にモスクワへ移送。最初は何事もなかったかのようにトランプをしていた彼らも、1人1人徐々に放射線により体が崩壊していき死亡しました。同様に、患者が搬送された病院の医療関係者も亡くなったそうです。

第1話の主人公は消防士の妻。
身重の体で愛する夫を追いかけモスクワへ行き、看護師に「2人子供が居る」と嘘をついて、計測器の針が振り切れるほどの高放射線量の病室にまでたどり着きます。
そして徐々に皮膚が焼け爛れ、血を吐き、死へ向かっていく夫に、自分の病気が恐ろしいものだと思わないよう勇気づけるためにキスを贈り抱きしめ、14日後に亡くなるまで寄り添いました。

夫の棺桶はコンクリートで埋められたこと。
生まれた娘には肝硬変の症状があり、生後4時間で亡くなってしまったこと。
目を逸らしたくなるほど辛いシーンはいくつもあるのですが、何より、妻に融通を利かせてくれていた看護師のセリフに胸を抉られました。

「忘れてはいけませんよ」
「あなたの前にいるのはもうご主人じゃない、愛する人じゃないんです」
「汚染濃度の高い放射線物質なんですよ」

https://i.imgur.com/xF74ysH.png

(スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ/熊谷雄太(STUDIO H)/今中哲二チェルノブイリの祈り』第1話より)

小説の原作者のスヴェトラーナ・アレクシェーヴィチさんというお名前に見覚えがあり、調べてみたら『戦争は女の顔をしていない』と同じ作者の方でした。

1話を読んでみて。原発で火事が起きたにも関わらず何の対策もせず消防が現場に向かい、医療関係者も何の防護もなく治療にあたったことが、私にはとても信じられませんでした。そしてこれが、自分が生まれるほんの少し前の1986年に起きた出来事だということにも驚きました。
もっともそれは私が原爆について子供の頃から歴史の教科書で学び、3.11を経験した日本人だからかもしれませんが…。

チェルノブイリ原発事故という悲惨な事故を教訓として、今私達はより厳重な管理や災害対応が行われる世界に生きているのだと。本作を読んで自分が当たり前の用に享受している安全が、いかに大きな犠牲の上に成り立った得難いものであるか改めて痛感しました。

ウクライナが戦渦に巻き込まれ1年以上が経つなか、ロシアが核保有国であるという事実に折りに触れゾッとさせられます。
そしてそんな今、この原作をコミカライズすることは、普段小説を読まない層にも原発・核・放射線の恐ろしさを届けることができる非常に素晴らしい試みだと思います。

多くの人に読んでほしい作品なので、雑誌だけでなくアプリやサイトでの配信や、白泉社の海外向けアプリ「Manga Park W」でも翻訳版が公開されてほしいです。

【追記】1話がWEBで公開されてました!そりゃこんな名作を公開しない方が意味がわからないです。単行本が出たら絶対購入します!

チェルノブイリの祈り・第1話 「戦争は女の顔をしていない」等の著者で、ノーベル文学賞受賞者のスヴェトラーナ・アレクシェーヴィチが執筆した魂のノンフィクションが遂にコミカライズ! 原発事故という、当時未曾有の惨事に遭遇した人々の悲痛な願いと静謐な祈りを書き留めた、日本人必読のノンフィクション。

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チェルノブイリの祈り

今はその国で戦争が行われている。

チェルノブイリの祈り スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 熊谷雄太(STUDIO H) 今中哲二
ゆゆゆ
ゆゆゆ

戦争前は聞いても覚えられなかった地名。 すっかりわかるようになっていた。 キエフ、チェルノブイリ通り。 戦争がある日常が通常となってしまっている国。 読んでいて思い出したのは、その戦争が起こる前、コロナよりも前、まだスマートフォンもなかった頃。 原発跡地がある街に、ガイガーカウンターとともにバイクで出かけ、自然に帰ろうとする街を写真に撮っていた女性(たしか女性だった)のホームページがあった。 森に飲まれつつある、時が止まった美しい街だけど、これほど線量がある。ここから先は行けない。 など、写真とともに彼女は書いていた。 そのホームページに、街の手前、まだ放射線量が高い地域に、よそへ越さず、昔からの生活を続けている家族がいたとも書かれていた。 線量の高いものを食べる、それがなんだ、この土地から離れたくないのだと言っていた。 あの人たちは今どうしているんだろう。 さて、漫画に登場する人たちの行動に、どうしてそんな恐ろしいことを!と思ってしまう。 でも、そもそも知らないのだし、放射線も放射能も見えないからわからないのだし。 自分も言われなければ同じことをしているのだろうし。 未来人はやるせない気持ちにしかなれない。 読んでみて、第一話が鮮烈な印象を残してくれたのだけど、その中でも街の人がバタバタと亡くなっていく様子が淡々とした描写で、なんともそら恐ろしかった。 そして主人公の女性が少しでも幸せに今を生きるのはどの方法だったのか、考えてしまった。 口述史というのは非常にセンセーショナルなものだけど、この作品も類に漏れず、読んだ人に思うことを残す激しさがある。

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いくさの子 ‐織田三郎信長伝‐

いくさの子 ‐織田三郎信長伝‐

織田信長は、母の胎内でいくさの声を聞いた。生まれては、いかなる刹那も戦い続けた。信長にとって、いくさ場はまさに揺りかご。すべてのことは、いくさから学んだ。信長は、まぎれもなく「いくさの子」であった。織田信長、幼名・吉法師。天下一の悪餓鬼が戦国の世を堂々傾きぬく!

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