連載「戦争と平和のリアル」第34回速水螺旋人「戦争と想像力」
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2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシ出身の作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによる証言集『戦争は女の顔をしていない』は、1985年に原著が刊行され、日本でも2008年に群像社により翻訳出版された(現在は岩波現代文庫に所収)。そのコミック版(小梅けいと作画、KADOKAWA)は、2019年4月にComicWalkerで連載が始まってすぐに、読者から熱い歓迎の声が寄せられた。
舞台となっている「独ソ戦」に関しては、ナチスの蛮行や太平洋戦争と比較すると、これまで日本ではあまりスポットが当たることがなかった。コミック...
架空の国、架空の戦争ではありますが、戦場の後方で戦う人たちの物語です。 撃ち合い、殴り合いでなく、紙の上で戦闘をする兵站部「紙の兵隊」たちの生活が、主人公を中心に描かれています。 あらすじいわく、「ミリタリー法螺漫画」です。 主人公の母国、大公国の軍には、陸海空にくわえて、兵站が存在します。 主人公は、ショートヘアなめがねっ子・マルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉です。 食料や衣類や武器など、必要な物資を必要なところへ届ける手続きをする兵站軍。 兵站軍の士官学校を卒業し、アゲゾコ市にある補給廠に配属されるところから、物語は始まります。 四角四面すぎる主人公が、生真面目すぎて当初は疎まれつつも、その個性を大切にされているのが印象的です。 部隊の人たちもよくみれば、みんな個性的です。そしてアットホームです。 使えるものは使えるところで、うまく使えばいいという感じがします。 トラブルに巻き込まれた場合、主人公は銃で打ち合いなどは苦手なようで、かわりにクソ真面目な知識を元にした知恵で切り抜けます。 軍隊内の事情は、パワーでねじ伏せるのでなければ、決まりで乗り切るのが効率的なようです。 読んでいて混乱したのですが、登場する国は、主人公が属する「大公国」、そして占領したアゲゾコ市でともに連合軍を組んでいる「帝国」、敵国である「共和国」の3国です。 長い戦争のせいか、どの国も疲れています。 なぜ戦争をしているのかわからないのですが、振り上げた拳を下ろすのは難しいようです。 ちなみに、物語冒頭に毎回描かれている、緻密な兵器などの紹介も圧巻です。