麻雀マンガに出てくる関西弁の奴の成績

麻雀マンガに出てくる関西弁の奴の成績

明治時代に中国から持ち込まれ、昭和に大流行したゲーム、麻雀。
多くの人に親しまれたことで、今でも麻雀をモチーフにしたマンガが数多く連載されています。
そんな麻雀マンガをいくつも読んでいると、一定のパターンが見えてきます。

それが、「関西弁の奴、だいたいボロ負けして酷い目に遭っていないか」です。
最初は威勢よく連続で和了したり、トップを取ったりしているんです。
でも、後から化物格の打ち手と同卓したり、主人公が対策を思いつくと、気の毒なくらい負けてしまう。
そんなイメージがあります。
さらに言えば、主人公のトリッキーな打ち方に惑わされて放銃(自分の出した牌で相手にあがられること)して「なんやてー!」みたいなことをいつも言っている気がします。

果たして、本当にイメージ通りの姿なのでしょうか。
それとも意外に善戦しているのでしょうか。
実際に、関西弁の奴が出てくる麻雀マンガを参考に、調べてみましょう。

レギュレーション

①麻雀マンガで関西弁を使っているキャラクターの成績を集計する
②範囲は、2018年11月1日時点での既刊単行本までとする
③関西弁の種別(京都・大阪など)については区別しない
④4人麻雀を対象とする
⑤点数の確定している全ての局を集計する
※例えば、「ロン 満貫です」と記載のあるコマがあったとして、親番かどうかが分からない場合や何本場か分からない場合は集計外とする
⑥供託(場に出ているリーチ棒)による収入は考慮しない
⑦作中に特殊ルールなどがあればそれに準ずる

むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』編(以下、本文では『むこうぶち』)

まずは、主人公が関西を訪れるようなマンガがいいと思うんですよ。
なので『むこうぶち』から調査してみます。
鬼のように麻雀の強い打ち手、傀(かい)が、行く先々の雀荘で相手をなぎ倒していくというストーリーです。
全国どこでもまさに神出鬼没で、関西編もあります。

関西弁のキャラは、6人登場しています。

佐藤

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻 13p)

関西弁一人目の佐藤は、裏麻雀で飯を食っている麻雀打ちです。
京都の河原町をホームにしています。
傀をカモと誤認して同卓したところ、あっという間に持ち金を失ってしまいました。

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻 23p)

これこれ!私のイメージ通り、トリッキーな打ち方に翻弄されています。

局収支は、点数の確定している7局でマイナス66000点でした。
傀にロックオンされて後半の4局で立て続けに放銃しています。

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻 15p)

僧は、佐藤とたまたま同卓していた関西弁のおじさんです。
佐藤が傀のターゲットだったため、大怪我をせずに済んでいます。

局収支は、点数の確定している7局でプラス13000点でした。
一回12000点の大きな加点をしたのが効いています。

和菓子屋(中村・輝勝)

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻 9p)

同じく京都行脚で傀が対戦することになる、伝統和菓子屋の祖父と孫です。
どちらも関西弁を使います。
孫の輝勝は、ヘボ麻雀を趣味で嗜んでいて、京都のゴロツキにカモにされています。

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻 45p)

輝勝の打ち方は、鳴きを使った速攻を主体にしています。
局収支は、点数の確定している8局でマイナス15200点でした。
先述の佐藤よりはマシなものの、マイナスですね。
食いタン(タンヤオという役があり、その中で鳴きを使って和了したもの)を多用したために収入不足になった感があります。

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻 44p)

対照的に祖父の中村は、とことん手作りにこだわるタイプです。
面前で大事に手を育て上げ、高い打点にする場面が散見されます。

ただ、作中ではその大作は実りませんでした。
局収支は、点数の確定している8局でマイナス15200点でした。
傀の調整によって、輝勝と全く同じ点数だけ凹まされる結果になりました。

二人はその後、和菓子屋の不動産の権利書を容赦してもらい、再出発することになります。
麻雀には負けましたが、珍しく悲惨な目には遭わなかったパターンです。

塚田

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』25巻 113p)

ヤクザ筋の代打ちです。
訳あって1500万円を2000万円にする必要に駆られて賭け麻雀に挑みます。

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』25巻 232p)

傀の独壇場の前に点数を削られる一方でした。
局収支は、点数の確定している26局でマイナス34700点です。
お金で言えば、増やすどころか1400万円を失う結果になります。

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』25巻 236p)

負けが込んできた結果、最後はトイレに行くフリをして逃げ出します。
しかし、帰り道にヤクザに捕まり、あえなく命を落とすことになります。

紀子

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』30巻 63p)

塚田の姪にあたる紀子*も登場します。
麻雀の腕も、作中ではそこそこ打てる雰囲気でした。
塚田みたいな使い捨てっぽいキャラクターに血縁者を出して厚みを持たせる技法、いいですね。

*本記述についてコメント欄にてご指摘をいただきました。「塚田の姪」ではなく、正しくは「塚田が常連として訪れていた雀荘を父が経営していた」という関係です。(2022年7月19日 マンバ通信編集部)
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』30巻 160p)

叔父の仇討ちとして、傀に賭け麻雀で挑むも、持参した500万円を溶かして終わります。
局収支は、点数の確定している19局でマイナス46100点でした。
点数的には塚田よりも凹まされているんですね。

むこうぶち』では、関西弁のキャラクターが概ね負けているようでした。
死者も出てえらいことになっていますね。

ただ、この作品では関西弁のキャラに限らず、殆どのキャラクターが悲惨な末路を歩んでいます。
他の作品も見ないと分かりませんね。
次は、『天 天和通りの快男児』をチョイスしました。

『天 天和通りの快男児』(以下、本文では『天』)編

『天』は、1989年から2002年にかけて連載された麻雀マンガです。
天貴史という男を中心に、読みと直感の熱い勝負が繰り広げられます。

この作品では、東西戦編という章が存在します。
日本全国から猛者を集めて、東と西に分かれて麻雀勝負をしたんですね。
なので、腕の立つ関西弁キャラクターが豊富に登場します。
なお、東西戦編で西側にいたキャラクターも、関西弁が確認できなければ集計から除外しています。

室田

(『天 天和通りの快男児』2巻 39p)

室田は、賭け麻雀の代打ちとして登場します。
七対子という役を得意とし、作中では2連続でトップを取っていた描写があります。

(『天 天和通りの快男児』2巻 122p)

しかし、主人公の天が現れると状況が一変します。
駆け引きに翻弄されて疑心暗鬼に陥り、4ピン単騎に刺さって打牌バランスが崩壊します。
点数の確定しているのは、7700を放銃した1局だけです。

その後については描かれていません。
少なくともその日の賭け麻雀では、序盤の勝ちを吐き出した旨のセリフがあります。

(『天 天和通りの快男児』3巻 91p)

健は、東西対抗戦のスカウトマンとして実力者を探していた若者です。
一見奔放に見える手順や鳴きで和了するのを得意としています。

(『天 天和通りの快男児』3巻 118p)

ひろゆきとの勝負では、序盤から終盤にかけて点数的、心理的に優位を取り続けます。
しかし、ひろゆきの機転によってオーラスに12000点を放銃することになり、勝ちを手放します。
点数の確定しているのは、この1局のみです。

その後も本編には登場するものの、あまりパッとした活躍はしません。
イカサマを仕掛けたのに見破られて、手を刺されたりしました。

スピンオフ作品にてその後も元気でやっている姿が確認できます。

坂口

(『天 天和通りの快男児』5巻 51p)

東西戦編に出てきたチョイ役です。
赤木の大胆なイカサマによって48000点を親被りし、あえなく4位となります。
こんな出来事あったら一生忘れないだろうな。

点数の確定しているのはこの1局だけで、収支はマイナス48000点です。

原田

(『天 天和通りの快男児』4巻 196p)

原田は、東西戦編のボスです。
大阪の暴力団の組長でありながら、麻雀打ちとしても現役最強と呼ばれる人物です。

作中では弱って狼狽した姿も一時見せるものの、基本的には知能的で、抜け目なく立ち回ります。

(『天 天和通りの快男児』7巻 109p)

麻雀のときは標準語ですが、普段は関西弁で話します。

画像は、東西戦の決勝戦のルール決めをするために集まるシーンです。
原田、暴力団の組長なのに自分で天にお酒をついであげてるんですよね。
舎弟にやらせても全然良さそうなのに。
あんまり人を顎で使わずに、自分でできることは自分でやるタイプなのかもしれません。

局収支は、点数の確定している8局でプラス6800点でした。
『天』は親番などの記載がない局も多いため、登場シーンの割にサンプル数が少なくなっています。
東西戦決勝の、「満貫未満は点数変動せず局消化のみ」というルールのため、決勝では満貫未満を集計していないというのもあります。
それでも収支をプラスで終えるのは立派ですね。

天たちとの対戦の後も、暴力団の組長としてしっかり組を引っ張っていっているようです。

僧我(そが)

(『天 天和通りの快男児』5巻 102p)

僧我も原田と同じく、東西戦の主力として活躍したキャラクターです。
初期には不気味さを売りにした怪物というデザインで登場しました。
しかし、決勝戦では化物クラスが集まることもあって、相対的に得体の知れなさは薄れます。

(『天 天和通りの快男児』9巻 29p)

あの天才、赤木茂に説教を垂れている。
めちゃめちゃすごいことですよ。
これだけで僧我という存在の格が保証されるシーンです。

局収支は、点数の確定している9局でマイナス36000点でした。
けっこう互角に戦っていたイメージがあったんですけどね。
4局で放銃し、平均放銃点が11000点だったのが響いています。

『天』では、比較的顔を立ててもらったような関西弁キャラクターが多かったように思います。
特に、原田と僧我は、最後の通夜編にも呼んでもらっていましたしね。

アカギ 〜闇に降り立った天才〜』(以下、本文では『アカギ』)編

アカギ』は、『天』に出てきた赤木茂の若き日を描いた話です。
『天』を読んでしまったので、なし崩し的に調査します。
1992年から続いた連載が、2018年に無事、完結しました。

(『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』4巻 194p)

アカギ』では、浦部という関西弁の代打ちが主人公のアカギに立ちはだかります。
浦部も室田と同じくベテランの麻雀打ちといった風格で、理論派のニセアカギをまずは調子よく討ち取ります。

しかし、本物のアカギが登場すると、アカギ特有の常軌を逸した行動に惑わされます。
そりゃチョンボ料を払ってまで手牌を見せたがらない奴を見たら、調子狂いますよ。

(『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』6巻 119p)

結果としてアカギの裸単騎に14枚から2ピンを選んで放銃。
負けた結果、3200万円の負債を負い、さらにヤクザものたちに手ひどく痛めつけられました。

トータルでは、点数が観測できた14局でプラス2700点でした。
なんとかプラスを確保しています。
最後には負けてしまいましたが、全体で見ると健闘していたんですね、浦部。

詳しく言えば、前半の7局でプラス9300点、後半の7局でマイナス6600点でした。
やはり後半で痛めつけられる展開になっています。

『天』の室田然り『アカギ』の浦部然り、関西弁キャラクターの代打ちが目立ちますね。
「関西弁の奴がわざわざ東京に呼ばれて麻雀を打っているから腕が立つ」という、質の保証のような意味でマンガ的に重宝されるんでしょうか。
ちょっと他の代打ちが出てくる作品も見てみましょう。
リスキーエッジ』という作品に、ちょうど関西弁の代打ちが出てきます。

リスキーエッジ』編

リスキーエッジ』は、2005年から2009年にかけて『近代麻雀』で連載されました。
麻雀に全てを賭ける男、吉岡の戦いを描きます。
麻雀の展開は、マンガの中ではリアル寄り。
ありえない大物手の応酬などはありませんが、緊張感のある闘牌で魅せてくれます。

(『リスキーエッジ』3巻 134p)

リスキーエッジ』には、西浦という代打ちが登場します。
関西弁のキャラ、代打ち多いですね。

(『リスキーエッジ』3巻 180p)

麻雀の腕はそこそこといった感じで、注意力に欠けた打牌も見られます。
特にこの2ピン切りは、一回戦目の痛い敗着に繋がりました。

トータルでは、点数が確定している18局でプラス11500点でした。
意外にもプラスなんですね。

(『リスキーエッジ』4巻 97p)

ただ、主人公の吉岡との勝負には負けて、スポンサーの3000万円を奪われています。
最後は、負けたことをグルで打っていたアキラ(実力は西浦より上)のせいにしてその場を去ります。
学校教育で「小物」という教科があったら、満点がもらえる立ち振る舞いです。

『バード』編

最後はもう、とにかく派手な点数移動が見られるマンガがいいですね。
しかも、関西弁のキャラも登場する。
となると、もうこの作品しかないでしょう。

『バード』シリーズは、天才手品師のバードと麻雀界の強敵たちが、麻雀でトリックの探り合いや駆け引きをするマンガです。
今回は、リメイク後の『バード 最凶雀士VS天才魔術師』と、『バード 雀界天使VS天才魔術師』を対象にしました。
関西弁キャラの不破の出番がたくさんあるので。
バードで特徴的だったのは、役満(和了する確率は低いが点数がとても高い役)が頻発することです。
バレなければイカサマがし放題という世界なので、ダブル役満、トリプル役満も複数回飛び出します。

不破

(『バード 雀界天使VS天才魔術師』1巻 145p)

不破は、大阪出身の代打ちです。
最凶雀士編では二流の扱いでしたが、不屈の精神で特訓を重ねて、雀界天使編ではボスとして立ち塞がります。

画像では明るく振舞っていますが、苦労人です。
一般人としては優秀だけど化物相手には敵わないという立ち位置なんですよね。

(『バード 最凶雀士VS天才魔術師』2巻 30p)

若き日には、機転を利かせてダブル役満を上がったにも関わらず…

(『バード 最凶雀士VS天才魔術師』2巻 34p)

そのせいで牌の計算がずれて次の半荘で天和(役満の一種)が使えないとパートナーの蛇に怒られてしまいます。
しかもおしおきとして、こいつにお尻を犯されます。
リメイク前では、ビール瓶で顔を殴られます。
かわいそうだ。

局収支で言えば、点数の確定している46局でマイナス220400点でした。
コンビの蛇にわざと放銃していたことと、最後に2回も48000オールを決められたことが響いています。
先述のダブル役満で64000+900点を稼いでいるのにこれとは厳しいですね。

まとめ

以上です。
全体の局収支を出してみましょう。
各キャラクターの点数確定局の合計は、173局ありました。
同じ卓に2人以上の関西弁キャラがいた場合もありますが、今回は単純に足し算しています。

そして、収支の合計は、マイナス467300点でした。
試しに局数で割ってみますと、1局辺り約2701点失う計算になります。
東南戦1半荘は8局あるとして、約21608点負けています。
麻雀の初期点数は大体25000点(ルールによって変動あり)なことを考えると、いかに関西弁のキャラが酷い目に遭っているか分かります。

一見、マイナス220400点を叩き出した『バード』の不破のせいに思えますが、不破がいなくても割と悲惨です。
不破抜きでは、1局辺りマイナス約1944点、1半荘8局でマイナス約15552点となります。
これでも頭を抱えたくなるような成績です。

あと、麻雀マンガを集計するに当たってもう一つ気になった点があったので、最後にお伝えしておきます。

(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻 53p)

「流局率低いな」(173局中6局)です。

参考資料

むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』1~49巻 天獅子悦也 2000~2018年 竹書房
天 天和通りの快男児』1~18巻 福本伸行 1989~2002年 竹書房
アカギ 〜闇に降り立った天才〜』4~6巻 福本伸行 1994~1996年 竹書房
リスキーエッジ』3~4巻 押川雲太朗 2014年~2015年 竹書房 
バード-砂漠の勝負師-』1~2巻 青山広美 2000年 竹書房
バード 最凶雀士VS天才魔術師』1~2巻 青山広美山根和俊 2011年 竹書房
バード 雀界天使VS天才魔術師』1~3巻 青山広美山根和俊 2012~2013年 竹書房 

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