麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、先週と今週の2回にわたって放送される「マンガ家ガチアンケート・ハロルド作石編」を前後編まとめてお送りします(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。
19歳のデビュー作が『ゴリラーマン』
川島 今回のテーマは「マンガ家ガチアンケート」! 今回アンケートに答えてもらった先生は、われわれ世代にとってはど真ん中の大人気マンガ家、『ゴリラーマン』『BECK』『ストッパー毒島』の作者、ハロルド作石先生でございます! もうわれわれ、物心ついたときから『ゴリラーマン』は知ってましたから。世代的に直撃したのは『BECK』かな。
山内 僕は『BECK』からです。
川島 『ストッパー毒島』を経て、『BECK』。どんな作品でも描けるし、絵がとにかく上手いんです。俺、ハロルド先生が描く女性が一番好きです。一番かわいくて、一番ムチムチで。
山内 で、清楚な感じもあって。
川島 清楚な感じだけど、ちょっと無邪気で健康的なんですよ。先生は今、新連載でご多忙ということで、今回はアンケートのみの参加です。代わりに、ハロルド先生の担当編集者に来ていただいております。
編集者 よろしくお願いします。
川島 では先生のプロフィールから紹介してまいりましょう。
山内 ハロルド作石先生は、1969年生まれの53歳。1988年、19歳の時に『ヤングマガジン』にて『ゴリラーマン』の連載を開始。めっちゃ若いですね。
川島 19歳で。当時の先生って、そんなにゴリラーマンと年離れてないんだ。連載デビュー作なのに、もうどっしり落ち着いた感じがありましたよね。
山内 その後、『ストッパー毒島』『BECK』『7人のシェイクスピア』など、さまざまなジャンルの作品を発表。『BECK』は累計発行部数1,500万部を超え、映画化もされた大ヒット作品です。2020年には『ヤングマガジン』40周年を記念して『ゴリラーマン40』の読み切りを掲載、2022年に『ゴリラーマン40』の連載を開始されます。40代の男性にとっては神様的存在の、レジェンドマンガ家でございます。
川島 まさかゴリラーマンが40歳になった姿を見られるとは、思ってなかったよね。
山内 生きてて良かったです。最終回のラストシーンで、死んだんじゃないかって心配してたから。
川島 なかなか衝撃のラストだったんですが、『ゴリラーマン』を読んだことない人もいるかもしれないので、あらすじを説明しましょう。
『ゴリラーマン』作品紹介
- ある日、白武高校に転校してきた、ゴリラのような風貌で、全くしゃべらない寡黙な男・池戸定治
- その容姿から、学校の不良グループのリーダー・藤本修二にゴリラーマンと名付けられる
- ヤンキー高校生たちの日常をバカバカしく描きつつ、他校とのケンカでは実はめちゃめちゃ強いゴリラーマンが大活躍
- 当時の高校生たちはみんな読んでいた、大ヒットのヤンキーギャグマンガ
川島 そしてこの春、そんな名作が『ゴリラーマン40』としてついに復活いたしました、40歳になったゴリラーマンと仲間たちは、どんな人生を過ごしているのか? 連載開始から30年以上たった今も、面白さが色あせない名作となっております。ヤンキーが出てくるんだけど、同じヤンマガの『ビー・バップ・ハイスクール』とか、この番組にも来てもらった森田まさのり先生の『ろくでなしBLUES』とか、そういう作品ともまたちょっと違うマンガなんですよね。
山内 確かに違いますね。でもこれが19歳の作品ってヤバいっすね。今、19歳でデビューされているマンガ家の先生っていらっしゃいます?
編集者 『ヤングマガジン』だと、おそらくいないと思います。
川島 いないっすよね。もしいたとしても、いきなりこれだけのヒットをバーンと打つ人はいないですよね。だって初めて見た時の衝撃ってすごかったですよ。(『ビー・バップ・ハイスクール』の)トオルとヒロシって男前やん。(『ろくでなしBLUES』の)前田太尊も。この顔を主役にするってすごいよ。
山内 僕、先生の作品は『BECK』から入ったので、『ゴリラーマン』を読んだとき『BECK』の主人公と違い過ぎるから、最初は同じ先生って思えなかったんですよね。
川島 そりゃ『BECK』 は1,500万部いきますよね。『ゴリラーマン』は何巻でしたっけ?
編集者 19巻です。
川島 デビュー作で19巻!
編集者 ちなみに『ゴリラーマン』も1,200万部くらい売れています。
川島 『ゴリラーマン』も1,200万部。しかも1話完結ですからね。後半、シリーズ展開になったりもするけど、やっぱり1話完結でやるってすごいよね。ではハロルド先生のガチアンケートに参りましょう。最初の質問はこちらです。
「『ゴリラーマン』という作品を復活させることになったきっかけ教えてください」
川島 これは気になりますね。先生の回答はこちらでございます。
「2年前に『ヤンマガ』40周年の企画で、『ゴリラーマン』の読み切りを依頼され、じゃあ40周年だからゴリラーマンも40歳という軽い気持ちで描いたらとても楽しく、担当さんに『もう少し描いて単行本にしましょう』と言っていただき、連載させていただくことになりました」
川島 久しぶりに描いて、やっぱり楽しかったんですね。ご自身としても、やっぱり同窓会みたいな感じやったんでしょう。
『ゴリラーマン』衝撃の最終回ができるまで
川島 では次の質問です。
「ゴリラーマンをなぜあんなキャラにしたのですか?」
川島 回答はこちらです。
「ゴルゴ13みたいなやつが学校にいたら……ということで物語を作ってみました。ゴリラのような外見は、実際にいた同級生がヒントになっています。最初は無口なキャラくらいの設定だったんですが、担当編集者と打ち合わせしていく中で『いっそのこと、セリフはなくてもいいんじゃないか』と言われ、それは面白いと思い、一言もしゃべらないキャラになりました」
川島 ゴリラーマンって、絶妙な顔してますよね。やり過ぎてないやん。
山内 そうっすね。いるっちゃいる顔ですね。
川島 たとえば『コロコロコミック』だと、鼻水がたくさん出てたり、10円ハゲがあったりするんですけど、ゴリラーマンは「老け顔」という範疇に収まっているので、リアルさがあるんですよね。でも実際に同級生にいたんですね。
山内 その人は知っているんですかね? 自分がゴリラーマンのモデルになっているって。
川島 高校で別れた同級生のマンガを読んだら、いきなり自分が出てくるようなもんですよね。主人公のゴリラーマンは、ずっとしゃべらないんです。で、もうずっとしゃべらないもんだと思って僕も読んでたんですけど、最終回が衝撃だったんですよね。最後の最後でなんと口を開くという。何をしゃべったかというと、「痛いよ、香織ちゃん」。これで終わりなんですよ。
山内 鉄骨が落ちてきて、ゴリラーマンに直撃するんですよね。それでびっくりした香織ちゃんが「池戸くんウソでしょ!」って激しく揺さぶったから。
川島 香織ちゃんというのは、ゴリラーマンの意中の女性なんですけども、これは本当に思い切ったラストでした。
山内 「しゃべらない」という設定を最後まで取っといて、ここで解禁するっていう。
川島 しゃべらないままで終わってもいいんだけど、これだけの作品をこんな形で終わらせるのはものすごく潔いですよね。なぜラストシーンだけしゃべらせることにしたのか。先生に先生にお聞きしました。こちら。
「ずっと『最後くらいはしゃべっていいんじゃないか』と思っていたのですが、当時の担当編集者から『ノッポさんが最後にしゃべったときショックを受けた』と言われて」
川島 めっちゃ分かるわ。NHKでやってた「できるかな」ですよね。
山内 しゃべったんだ、ノッポさん。
川島 けっこう流暢にしゃべったんですよ。
「それで反対されました。なので、編集部の中でアンケートを取ってもらったら、『しゃべったほうが面白い』という意見が過半数だったので、しゃべって終わることにしました」
川島 しゃべるセリフも絶妙やったよね。
山内 いや大事っすよね。だって最初で最後のセリフやから。狙い過ぎてもいけないし、普通のセリフでもインパクト弱いし。
川島 他にどういう候補があったか知りたかったな。香織のことを本人の中で「香織ちゃん」と呼んでたんだというのも、ここで分かるんですよね。ちょっとびっくりしました。ではさらなる質問でございます。
「ゴリラーマンの吸っているたばこや、いつも飲んでいる飲み物がかなりマニアックですが、その理由は?」
川島 先生の回答はこちら。
「ゴリラーマンはリベラマイルドという、当時誰も吸ってなかったマニアックなたばこを吸っていて、カロリーメイトドリンクは、水やお茶を買わない時代に200円もする健康ドリンクで、味が独特過ぎて誰も飲んでいませんでした。そんな独特なものの味が分かる男として、ゴリラーマンのキャラを決めていきました」
山内 カロリーメイトのドリンク、確かに1回も飲んだことない。飲んでますよね、ゴリラーマン。
川島 いっつもこれやねん。スポーツテストで、喉渇いたときもこれを持っていく。屋上なんかで、よくたばこ吸ってるんですけど、銘柄はちょっとマイナーなリベラ。「違いが分かる男」というのは、実際に表現としてよく出てくるんですけど。俺も学生の頃、カロリーメイトドリンク、ちょっと探したもんな。200円もするのよ。
山内 缶のやつですよね。俺、飲んだことないですけど、普通のカロリーメイトはめっちゃ食べるから、あれがドリンクになるって全く引きがないなと思いますけど。
川島 俺の知り合いで飲んでんの、ゴリラーマンしか知らんわ。でも「ゴリラーマンと言えばカロリーメイトドリンク」とイメージは定着したね、確かに。
描く前日から緊張していた「ゴリラーマンパンチ」
川島 続いての質問はこちら。
「『ゴリラーマン』の中で魂を込めて描いたという、お気に入りのシーンを教えてください」
川島 先生の回答はこちら。
「55話(第5巻)のゴリラーマンがパンチするシーン(*)。大変難しい絵で、描く前の日から緊張していたんですが、机に座ったらなんだかスラスラ描けたのを覚えています」
*奇襲で藤本を大ケガさせた相手を追いかけてぶん殴り、土手の上から下まで吹っ飛ばしたシーン。
川島 緊張するって、なんかいいね。
山内 前の日から緊張するって、そんな感情になるんや。
川島 ライバルを殴ってるシーンなんですけど、この表現、いろんなマンガに影響を与えてると思うわ。
山内 吹っ飛んでますもんね。
川島 痛そうやしね。絶対、鼻いかれてるやん。
山内 こぶしの硬い感じも伝わってくる。
川島 「骨と骨がぶつかる」って感じがしますよね。このシーンを描いたときのことも取材しました。こちら。
「昔に見た香港映画がヒントになっていて、たまたまカッコいいなとスケッチしたものが残っていたので、それを参考に描きました。当時はネットもないので、数少ない資料でよく描けたなと思います」
山内 あの構図を見たら「こいつのパンチ、ヤバいんだな」ってわかりますよね。
川島 一発入ったら終わり。敵を吹っ飛ばすシーンはこれ以降、ゴリラーマンの名物シーンとなりまして、ここから連載終了までに合計9回、敵を吹っ飛ばしてます。絶対見開きで持ってくるんですよね。
川島 ゴリラーマンと全く顔が一緒の、ゴリラーマン姉も敵を吹っ飛ばすシーンがあります。拳じゃなくてビンタで。
山内 お姉さん、ゴリラーマンより強いかもしれないんですよね。
川島 ちなみに『ゴリラーマン40』でも、40歳になったゴリラーマンがさっそくふっ飛ばしております。画力がまたさらにアップしてるんですよね。『ストッパー毒島』『BECK』『7人のシェイクスピア』を経て、線が細くなっている。さらに美しいですよね。『ゴリラーマン40』は読みました?
山内 今、出ているのを読みました。昔の仲間は成長してパパになっているんですけど、でもゴリラーマンは変わらず強いっていう。
川島 そう、強い。安心したね。大好きなカロリーメイトドリンクも健在です。
山内 カロリーメイトドリンクって、もう生産中止じゃないですか?
編集者 まだあります。
山内 まだあるんですか!? 1回飲んでみたくなった。
数カ月誰にも会わず、ひたすら「燃えプロ」をやっていた理由
川島 どんどん行きましょう。続いてはこの質問。
「ハロルド先生が『ゴリラーマン』でデビューする前に一番大変だった事を教えてください」
川島 回答はこちら。
「無職で公団のアパートで数カ月誰とも会わず、『燃えろ!!プロ野球』をひたすらやっていたこと。中日で130試合、日本ハムで130試合やりました」
川島 素晴らしい(笑)。「燃えろ!!プロ野球」だ。ジャレコの名作。「燃えプロ」ってなかなかゲームバランスが崩壊したゲームなんですよ。クロマティやポンセがバントでホームラン打ったり(*各チームに1人ずつ、異常な打力の選手がいた)。
山内 そんなゲームやっとったん(笑)。
川島 当たればホームランなんです。だからバントでもホームランになるという、むちゃくちゃなゲームなんですよ。先生、野球はもともと好きなんですかね?
編集者 野球は大好きです。
川島 やっぱり大好きなんですね。『ゴリラーマン』にもよく野球のシーンが出てきましたしね。このへんの経験が『ストッパー毒島』に活きてくるんですよね。さらに補足情報行きます。
「この直前に、当時の担当編集者さんの言うとおりに時間をかけて描いたマンガがあったが、ペン入れまで終わっていたのに、全ボツになった。それで嫌になって、ノートに自分で勝敗や打率をメモしながら『燃えろ!!プロ野球』をひたすらやっていました。その後、自分を信じて、自分の描きたいマンガを描くことを決め、『ゴリラーマン』がダメだったらマンガ家は諦めようと思った」
山内 へえー。
川島 先生の転機となったのが「燃えプロ」なんや。というか、当時の編集者さんが「こうやれ」と言ったとおりにやったのに、全然ダメだったんだ。
山内 こんなことあるんですか? 編集者さんの言うとおりにやって、最後ボツになるって。
編集者 ペン入れまでやって、っていうのはかなり行ったなと思います。
川島 これはわれわれの世界で言うと、新ネタを作って、舞台で出囃子が流れて今から出て行こうとする瞬間に「出るな」って言われるようなもんです。
山内 そうですよね。
川島 というかペン入れの前段階のネームが、たぶんネタ合わせみたいなもんやから、ペン入れまで行ってボツになるって、意味が分からへんね。
山内 僕、それに近いのでいうと、M-1で審査している人に「あのネタおもろいから、次もあれで行け」と言われて落されたことがあります。
川島 おるねん、そういうのめっちゃおるねん!
山内 言われたとおりにやったら、ややウケでしっかり落ちた(笑)。
川島 そしてそいつと二度と会わないというね。ほんまにあるわ、それ。「じゃあもう自分の好きなようにやったらいいやん」ってなるよね。
山内 結局そういうことなんですよ。
川島 それで傷ついた自分を立て直すために「燃えプロ」をやって、自分に火を付けたと。『ゴリラーマン』であかんかったらマンガ家諦めるという背水の陣で。
山内 19歳の時点で背水の陣って、めっちゃ早くないですか?
川島 でも、ボツになったことで大人が信じられなくなったんじゃないの。でもすごいね。「燃えプロ」やるだけじゃなく、勝敗や打率をメモるって。やっぱりコツコツやらはる人なんやね。
モデルになった有名人のチョイス
川島 続いての質問行きましょう。
「『ゴリラーマン』の中で、特に思い入れの強いキャラとその理由を教えてください」
川島 回答はこちら。
藤本:複雑な感性のあるところ。
ベカちゃん:描いてて楽しい。
川島 藤本のことを一応説明すると、男前の高校生なんです。ゴリラーマンの名付け親なんだけど、ゴリラーマンが来るまでは学校の番長的な存在だったんです。あと、「ゆうれい自転車」が得意な男。当たり前みたいに言うてるけど、『ゴリラーマン』読んでないと全然分からへん(笑)。
山内 『ゴリラーマン 40』でも、ゆうれい自転車登場してました。
川島 ゆうれい自転車は意外とスタミナ使うということが、『ゴリラーマン40』で分かりましたけれども。ゆうれい自転車を最初にやったのは藤本ですが、ゴリラーマンも得意なんです。自転車を思いっ切りこいで、自分はパッと降りて、自転車だけ敵陣に突っ込ませるという。
山内 そして敵だけじゃなく、自転車もけっこうなダメージを受ける(笑)。
川島 これ、本当は真似しちゃダメなやつなんですけど、実際俺らも真似してやってましたね。で、藤本のもう1つの得意技が二段蹴り。藤本はケンカが強いんですけど、実はゴリラーマンがめちゃくちゃ強いとわかって、ちょっと嫉妬するというか、「ゴリラーマンが強いのを認めたくない、でも友達でいたい」という男の友情の葛藤があるんですよね。そんな藤本とゴリラーマンは『ゴリラーマン40』で再会するんですが、そのシーンがめちゃくちゃエモいと話題になりました。
山内 高校時代と現在がクロスオーバーしたようなシーンでしたけど、ゴリラーマンだけは、ほぼ変わってないんですよね。
川島 でもこれがゴリラーマンなのよ。さあ、もう1人の先生のお気に入り、ベカちゃん。ベカちゃんの名前の由来は……若い人に言っても分からへんと思うけど、「桂べかこ」なんです。今の桂南光師匠ですね。
山内 南光師匠、いつまで「べかこ」という名前でだったんですか。
川島 もう20年以上前ですね(*1993年まで)。『ゴリラーマン』を連載してるときは、まだ「べかこ」です。ちょっと性にも貪欲でね、もう本当にクラスメイトに欲しいキャラなんですけれども。他にも『ゴリラーマン』には有名人風に描かれたキャラクターがたくさん登場しております。飯塚のモデルはダンカンさん。コンドルラーメンの親父は泉谷しげるさん。校長先生は大川慶次郎さん。
山内 大川慶次郎さんだったんだ。
川島 『ゴリラーマン40』にも、有名人に似てるキャラが出てます。悪役が呂布カルマさん。草野球チームの監督は六角精児さん。どういうチョイスで呂布カルマさん選んだんやろ。
山内 フリースタイルが好きなんですか?
編集者 好きだと思います。
川島 確かに『BECK』でもラップを描いてるし。
山内 呂布カルマさん、喜んでるやろな。
ネームを描く前に必ずやっていること
川島 続いては「マンガ沼」恒例のこの質問。
「漫画を描く上での七つ道具は?」
川島 大好きです、この質問。回答はこちら。
- 音楽
- オーウェンのフィギュア
- ネーム用のルーズリーフ
- スーパーオレンジ(住宅用洗剤)
- ラジオサーバー
- 古ぼけた鏡
- 水筒
川島 音楽はポール・マッカートニーのソロを聴くそうです。
山内 カッコいいなあ。
川島 レコードも聴いておられるそうですが、これは仕事現場で?
編集者 はい。CDとレコードで同じタイトルを持っていて、音質の良いほうを残していますね。
川島 えっ、絶対CDというわけじゃないんですね。
編集者 違いがあるらしいんですよ。それでいいほうを残すっていう。
川島 そしてオーウェンのフィギュア。イングランドのサッカー選手ですね。難しい角度の顔を描く参考にすると。何でオーウェンなんやろ。それとルーズリーフ。ネームは手描きということですか?
編集者 ネームは手描きです。
川島 原稿はどうなんですか?
編集者 原稿は線画まではアナログで作業されて、その後の仕上げなどをデジタルで作業されています。
川島 そしてスーパーオレンジ。これは通販でしか見たことないです。ネームを描くとき、まっさらな机じゃないとアイデアが生まれてこないので、机をツルツルにする。そのために使っていると。これはルーティンなんでしょうか?
編集者 この収録の打ち合わせの際に、初めて知りました。ピカピカに磨いてやってるそうです。やるのはネームを描く時だけで、ピカピカにして集中するそうです。
川島 ちょっと柑橘系の香りもするので、テンション上げられると。
山内 オレンジ系の洗剤ってめっちゃ落ちますよね。
川島 それからラジオサーバー。よく聴いてるラジオは伊集院光さん、爆笑問題さん、矢作さん、オードリーと。やっぱりお笑いが好きなんですね。じゃあ仕事場ではずっと、音楽かラジオ流れてる感じですか?
編集者 そうですね。
川島 それと、古ぼけた鏡。表情を描くときに自分の顔を映すそうです。
山内 何か思い入れのある鏡なんですか?
編集者 ちょうどいいサイズみたいです。
川島 そして水筒。中身は白湯。おなかを冷やさないように、1日1本飲んでいると。コーヒーとかじゃなく、白湯なんですね。勉強になりました。続いてこちらの質問です。
「最近ハマっていて、これは面白いと思う作品を教えてください」
川島 これは聞きたいね。回答はこちら。
『女の園の星』
全てにおいて素晴らしい。間が好き。
『シティライツ』
大橋裕之さんの名古屋でやってた似顔絵イベントに行きました。
『女子柔道部物語』
こんなに女性の顔の造形をたくさん描き分けられるのがすごい。
川島 『女の園の星』は、やっぱりお笑い好きやからですかね。小林まこと先生を好きなのはなんとなくわかるんですよ。小林先生とハロルド先生って、ちょっと共通してる部分があるというか。どっちもキャラが素晴らしいし、女性がめちゃくちゃかわいいですよね。
ハロルド先生へイラストを依頼したのに音信不通に!?
山内 ハロルド先生から川島さんへ質問があるそうです。
「10年以上前に田村さんから麒麟のツアーのポスターを描いてほしいと編集部に連絡があり、その後、担当が詳細を確認しようと連絡したら、全く連絡が取れなかったそうです。きっと他に素晴らしい方に決まったのかなあと。伝え聞いたことなので、もし事情が違ったら申し訳ありません」
川島 まず……田村がすいません!
山内 まずはそれですね、はい。
川島 ちょっと説明させていただいていいですか? 田村が全く悪いわけでもないんです。麒麟の単独ライブをやるときに、ネタとネタの間に流れるVTRの中で、怖いもの知らずで「いろんな先生に『この単独ライブのポスターを描いてください』と電話する」という企画をやったんですよ。これ言うと失礼なんですけど、要はボケなんです。有名な先生に突然電話して「麒麟ですけど、ポスター描いてください」と頼む。で、めっちゃ断られるという映像を撮りたかったんです。
山内 ああ、そういう。
川島 で、「出来上がったのがこれです」ということで、俺と田村がお互いの似顔絵を描いて出す……というオチにしたかったんです。誰にも受けてもらえへんかったから、もう自分らで描いたというオチ。で、田村はハロルド先生のファンやから、電話したと思うんですよ。そしたら「お返事まで少々お待ちください」ってご丁寧に対応していただいて、そのまま終わっちゃったのよ、たぶん。だから100%、こっちが悪いんですけど。その企画をやった結果、単独ライブのポスターが、これに決定してしまったんです。
川島 僕、やなせたかし先生に電話したんですよ。フレーベル館に連絡したら、「やなせ先生に話を伝えます」ということになって。門前払いを期待していたのに、ちょっとややこしくなってきたなと。そしたら、やなせ先生に伝えてくれた方が麒麟のファンで、「絶対やってあげたほうがいいです」と言ってくれたんですよ。やなせ先生は「彼らに手紙を書いてもらって、その手紙を読んで、心を打たれれば描きます」とおっしゃってくれて、想定外やったけど、またとないチャンスやから、めっちゃ真剣に手紙を書いたの。われわれの思い、自分たちがどういう熱意で漫才やっているかというのを。で、それを読んだ先生が「描きます」と。それで1カ月後に、これが送られてきたんです。
山内 いやすごいな、これ。
川島 先生は僕らのことを知らなかったから、「スタジオにも来てください」ということで呼んでいただいて。「麒麟です。初めまして」と言ったら、先生が田村を見たときの第一声が「君、エクレアに似てるね」(笑)。すごいよ、やっぱり。
山内 アンパンマンの世界(笑)。
川島 さすが先生、全員の顔が食べ物に見えるんや(笑)。で、「エクレアに似てるね」って言われたから、これはチャンスやと思って「田村をエクレアマンとして出してください」って言うたら、「申し訳ございません。実はもうエクレアさんというキャラがいるんです」と言われて。ネットでエクレアさんを探したら田村そっくりやった(笑)。そういう経緯があったので、本当にハロルド先生には失礼なことをしました。申し訳ない。
山内 ハロルド先生、もしかしたら描いてくれてたかもしれないです。
川島 もう二度とあんな迷惑なことしません。覚えていただいていたというだけで、ありがたいです。では最後に先生からプレゼントがあるそうです。山内さんへのプレゼントがこちら。
山内 ガンギマリの顔してる。俺、こういう印象なのかな、やっぱ(笑)。
川島 ガンギマリや。眼力すげえわ。山内のちょっとサイコな部分も出てるし、顔も似てる。これ家宝やで。じゃあ私のも開けてみます。
川島 うまっ! これ、クラスでもわいせつなもん持ってくるキャラやな。ベカちゃんとか飯塚に近い。めっちゃうれしい。学生時代の自分に見せたら、高熱出すわ。ということでハロルド先生、今日はお忙しい中、貴重な回答や写真、そしてイラストまで本当にありがとうございました!
次回放送は「マンガ家ガチアンケート・ハロルド作石編」後編をお届けします。
(構成:前田隆弘)
【放送情報】
次回放送
読売テレビ●5月21日(土)深1:33~2:03
日本テレビ●6月2日(木)深2時04分~2時34分
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