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身近にある食の冒険 学食巡る『学生食堂ワンダフルワールド』

身近にあり、大学に通った人であれば一度はお世話になった学生食堂。地元の食堂が運営していたり大学生協が運営していたり。それぞれの大学が特色を競う学生食堂のいまを切り取っているのが増田薫先生の『学生食堂ワンダフルワールド』です。学生食堂の成立史や、それぞれの食堂が学生を引き付けるためにどのような工夫をしているのかが垣間見えます。

『学生食堂ワンダフルワールド』

学生食堂ワンダフルワールド』によると学生食堂が多くの大学に広がり始めたのは第二次世界大戦後から。食料不足で学生が満足に食事できない中、現在の東京大学などが中心になり釜を作って食事を提供し始めたことからスタートしたといいます。当時の学生は将来の日本社会を引っ張っていく人材の卵。社会全体で学生を支えようという思いがあったのではないでしょうか。

そんな学生食堂も長い歴史を経てそれぞれの大学で進化しています。地元の食堂が運営するところもあれば、学生自身がスタートアップ企業となって手掛けているところも。実際に通っているときには「安く食べられる場所」としか認識していなかったかもしれませんが、社会人になって改めて行ってみると意外な発見があります。しかも原価を考えて、手作りのところが多いのは頭が下がります。

そんな学食をめぐる『学生食堂ワンダフルワールド』は作者の増田先生の母校、多摩美術大学の学生食堂「イイオ食堂」「東学食堂」から始まります。ひとつの大学にふたつの食堂というぜいたく。しかもこのふたつの学食は、運営主体の違いからメニューも少しずつ違う。毎日いろいろなメニューが楽しめる学生が羨ましいです。

それぞれの大学の食堂には、大学の理念が反映されています。大正大学のように地域と学生をつなぐ場所にしているところもあれば、千葉商科大学のように学生が立ち上げた企業が運営を担っているところも。神田外語大学のように様々な地域出身の教授陣がメニューに注文を付けるところもあり、大学の理念が垣間見えます。学食は、学生の生活を支えるところであると同時に、食文化というチャンネルを通じて学生に新たな発見を促すという教育に資する場所でもあるのだと思います。

東京農業大学の学食のように卒業生のネットワークに支えられているところもあれば、運営が厳しくなった時に実施したクラウドファンディングで多くの支持を集めた昭和12年創業の慶應義塾大学の食堂「山食」も。学食は大学生活の一部として、卒業後も学生らの心に残っているのでしょう。

もちろん昔に比べれば大学に周りに飲食店なども増えています。しかし、学生に安くおいしいものを食べてほしいという学食の運営者の思いを見ると、私たちもその恩恵を受けたいと思うようになります。多くの大学の学食は一般人にもオープンになっています。ぜひ近くに大学のある方は学食というワンダフル世界に足を踏み入れてほしいです。

 

 

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