趣味はいつも私とともに『オタクの魂100億まで』

アニメにマンガ、ゲームと趣味は楽しいもの。しかし仕事や育児など趣味以外の時間が増えればなかなか趣味に時間がかけられなくなるのが常……と思いきや「そんなことはない」と言い切るのが灰音アサナさんの『オタクの魂100億まで』。就職に結婚と人生の環境が変わる中でもオタク趣味は変わらないと指摘します。オタク独特の用語の解説も楽しく、オタクの生態をのぞいてみたい人にぴったりの入門書になっています。

『オタクの魂100億まで』(灰音アサナ/ぶんか社)

アラサーのマンガ家である灰音さん。マンガやバンドが好きで、絵も描く創作タイプのオタクです。中学時代にある作品に出合うことでオタク道に足を踏み入れ、そのまま邁進。

『オタクの魂100億まで』(灰音アサナ/ぶんか社)

社会人になって仕事が忙しくなるとオタクにかける時間が減ると思いきや、疲れた体を癒してくれたのもオタク趣味でした。結婚・出産などで忙しくなっても、舞台やライブに通うなどむしろオタクのジャンルを拡大していくという猛者です。「三つ子の魂百まで」というかのように、好きなものを見つけてはまっていく姿が描かれます。

灰音さんの行動力とパッションは普通のオタク以上のもののようにみえます。ひとつのジャンルやテーマに沿った同人誌を頒布するオンリーイベントが延期になったときは、なんと友人たちと自分たちだけでオンリーイベントを会議室を借りて開催。目の前で同人誌の感想を共有できるというおまけもついて、なんとも手作り感あふれるオタクの原点的イベントを感じさせるものになっていました。

必読なのは同人誌にかかわるエピソード。そもそも同人誌は、よほど売れる大手サークルを除けば描き手の持ち出しで活動しているわけですが、なぜ人は同人誌を出すのか、その裏にあるパッションが描き手の立場から描かれています。多くの場合は、推しのカップリングに出会ってしまったら、その情熱を表現するために描かずにはいられないもよう。灰音さんはなんと担当編集にも同人誌を描かせることに成功します。同人誌を出している人が周りにいれば、出し方などを聞きやすく伝播しやすいよう。灰音さんの担当編集の方もまず出るイベントから決め、同人誌制作の道に足を踏み入れることになります。

作品全体を通じて伝わってくるのは、灰音さんらオタクが、趣味にエネルギーをもらい前向きに生きようとしている姿です。特に最近はオタクも運動をして睡眠をとるなど健康維持に積極的です。となると、オタク活動もそんな健康維持の一環ともいえます。なんといってもオタク活動は生きる活力の源。そんな趣味に生かされ、趣味のために生きているオタクの姿をこの作品で面白がっていただければ幸いです。

 

 

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