子供のころ親しんだカルチャーはいつになっても思い出深いもの。カメントツ先生の『あのときのこどもさん』(小学館)はそんな子供のころに楽しんだ遊びを紹介する作品です。1990年代の時代背景とともに当時の面白さを伺い知ることができます。
ビーダマン、ミニ四駆、キャラクターグッズ……1990年代の日本で過ごした子供たちであれば一度は見聞きした玩具が当時の子供たちの思い出とともに描かれます。特にミニ四駆を公園の側溝で走らせていた人がいたとは知らず。自分が知っている文化の新しい側面を見せられた気がしました。
面白かったのはキャラクターグッズです。もちろんキャラクターが印刷された文具は今でもありますが、カメントツ先生が描いた文具「エスパークス」は「玩具系文具」とでもいいたい、印刷されたキャラクターにきちんと物語があるもの。文具を中心にメディア展開する作品というのは時代を先取りしているようにも思えます。あまりにもはしゃぎすぎて先生に禁止されるところまでが小学生っぽいなと思いました。
そうした小学生特有の考え方を読み取れるのがエレベーターのカニを怖がるカメントツ先生です。カメントツ先生はエレベーター、特にエレベーターに貼られたステッカーのカニが怖かったとのこと。なぜ怖かったのかはぜひ作品を読んでいただきたいのですが、カメントツ先生が描く子供たちは真剣そのものなのです。大人になって読むと子供の間の他愛もない流行なのですが、世間を知らない子供の勢いでどこまでも突っ走っていく様子は見守りたいと思ってしまいます。
登場してくるキャラクターも素敵です。カメントツ先生ご自身の子供時代はもちろん、そのカメントツ先生にいろいろと解説をして一緒に世界を広げてくれる「賢い小島」さんが大好きです。小学校時代のカメントツ先生のご友人をいろいろと混ぜられているよう。リアルとフィクションの素晴らしいバランスを味わえます。
当時は好景気からバブル崩壊に至る時期。世界が滅びるといわれたノストラダムスの大予言やマヤの予言といった終末期を感じさせる予言が広まった時期でもあり、なんとなく先行きの不安が蔓延していた時代でもあります。そんな時代に、表紙のカメントツ先生ご本人の子供時代の絵が、「やあ!」と話しかけるかのように導いてくれます。