突然ですがみなさん、陰陽師を初めて知ったのはいつでしょうか。私は中学生のころ、小説を読んで知り、風水や四神とは何て面白いのだと思い、加門七海先生の「大江戸魔方陣 徳川三百年を護った風水の謎」などにたどり着きました。加門先生は、怪談、エッセイなどを書く文筆家をされながら私たちが非日常と考える世界と日常的に接している人です。そうした加門先生の日常をエッセイで描いたのが、『七海さんのオバケ生活』(朝日新聞出版、加門七海/みつつぐ)です。
加門先生はオカルト好きにも一目置かれている作家です。怪談実話や、小説だけでなく呪術や神仏に関する著作も多く、最近は呪術・陰陽道にも関わったに大江匡房を取り上げた「神を創った男 大江匡房」という著作もあります。
そんな加門先生の日常も、神社やお寺、不思議なものとの接点が豊富です。引っ越しをすれば地元の神社にお参り。近所のお稲荷さんとコミュニケーションをとり、いざというピンチの状況を切り抜けることも。お葬式やお盆といった、日本人の生活に根付いた習慣に、どのような心持で向き合えばいいのかも教えてくれます。
ただ、ときどき一般の人がかかわってはいけないものに遭遇した瞬間を描くので、ホラーが苦手な方はご注意を。人ならざるものと共存されている加門先生にとって、人外の存在はありにも日常生活になじんでいて、「ほい」と出してこられるので、読者は驚かされます。まさに「本当にあった怖い話」です。加門先生は、日常と非日常の境目あたりで生きていられるようにみえます。(加門先生ご自身は非日常として意識されていないようですが)加門先生が感じている「日常」をそれとはみえない私たちにもおすそ分けしてくれているのです。
こうした「非日常」に、加門先生は旅先でも出会います。正体不明の存在に追いかけられ、神社で買ったお守りに助けられることも。旅先の偶然の出会いは楽しいものですが、旅先のハプニングで、良くないものにつかまって迷子になったり、馬に乗った女神を見て死んだりするのは本当に避けたいです。こうしたハプニングでも加門先生が無事なのは、それぞれの地域のルールを守っているから。そもそもそれぞれ地元の人が守っていることについて、たとえ意味がわからなくても守る。だから生き延びることができるのです。
こんな不思議な世界を見ている加門先生にご興味を持たれた方はこのエッセイ漫画を読んで、加門先生が普段見ている奥深い世界をのぞいてみてください。加門先生が呪術監修をされている映画『陰陽師0』もお薦めです!