麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、前回放送の「マンガ家・ガチアンケート 真造圭伍編」の模様をお送りします(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。
大学生でマンガ家デビュー、小田扉先生のもとでアシスタント
川島 今回のテーマは「マンガ家ガチアンケート」! 今回来ていただいたのは、おすすめマンガで2回も紹介した、いま一番癒されるマンガを描いている大好きなあの方……『ひらやすみ』の作者、真造圭伍先生です!
山内 若い! 先生、若いですね。何歳ですか?
真造 36です。
川島 では、ここで先生のプロフィールを簡単に紹介したいと思います。
真造圭伍先生
・石川県出身、36歳
・東京造形大学 美術学科 絵画専攻卒業
・2009年、大学3年の時に『なんきん』でデビュー
・2010年、『月刊!スピリッツ』にて『森山中教習所』で連載デビュー、2016年には実写映画化
・2012年『週刊スピリッツ』にて『ぼくらのフンカ祭』を連載、第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・新人賞を受賞
・2015〜2017年『月刊!スピリッツ』にて『トーキョーエイリアンブラザーズ』を連載、2018年にテレビドラマ化
・2020年4月、33歳の時に悪性リンパ腫になり治療
・2020年11月に完全寛解を発表
・『センチメンタル無反応 真造圭伍短編集』で入院生活の様子をマンガに描く
・2021年からは『ひらやすみ』を連載中
川島 大学のときにはもうデビューされてたという……。
真造 そうですね。大学3年のとき。
山内 マンガ家になろうと思って、東京造形大学に進学されたんですか?
真造 そうですね。在学中にデビューするのを目標にして、それで大学1年から描き始めて。
川島 有言実行だ。ちなみにアシスタントの経験はあるんですか?
真造 あります。小田扉先生のところです。
川島 小田扉先生! 『団地ともお』ですよ。めちゃくちゃいいマンガです。
いや、これはちょっと先生と共通してる部分がありますね。日常を描きながらも、たまに刺さってくる回があるというね。では、現在連載中の人気作『ひらやすみ』も簡単に紹介させていただきます。
真造圭伍『ひらやすみ』(小学館)
・2021年〜『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載中
・単行本は第5集まで発売(第6週は8/30発売)
・累計発行部数50万部以上
・「マンガ大賞2022」第3位
・主人公ヒロトは29歳のフリーターで、「定職なし」「恋人なし」「将来の不安も一切ない」というお気楽な自由人
・ひょんなことから仲良くなったおばあちゃん・和田はなえさんから譲り受けた平屋での気ままな暮らしと、それを取り巻く人間関係を描く
真造先生、川島・山内のお気に入りシーン
川島 それでは真造圭先生のガチアンケートにまいりましょう。最初の質問はこちらです。
『ひらやすみ』の中で、真造先生のお気に入りのシーンと、その理由を教えてください。
川島 まず1つ目はこちら。
「第1集」24ページ
川島 平屋の持主・和田はなえさんが亡くなる前日のハグシーンですね。お気に入りポイントはどこでしょう?
真造 1話のシーンなので、ここでバシッと決まった表情を描かないと……と思って頑張って描きました。今まで、おばあちゃんがしかめっ面ばかりしてたのに、ここで優しい表情になるシーンを描けてよかったです。
川島 けっこう描き直したんですか?
真造 描き直しましたね。ハグって描くのがけっこう難しいんです。2人が重なってる、そのバランスが難しかった。
川島 ヒロトくんのハグ具合にも深さが出てるし。この時はまだ読者はわからないですもんね、亡くなってしまうって。さあお気に入りのシーン、続いていきましょう。
「第2集」101ページ、14話目の扉絵
川島 阿佐谷七夕まつりの扉絵ですね。 待っているなっちゃんが描かれている。ここのお気に入りポイントは?
真造 夏って感じの情景が描けてよかったなと。駅とかで、こういう情景を見たことがあるんですよね。手前がめちゃくちゃ日差しが強くて、陰で暗くって、 奥が夏の日差しで白っぽく見える。そういう景色を描きたかった。
川島 先生、阿佐ヶ谷に住んでたんですか?
真造 いや、(1駅隣の)高円寺です。
川島 なるほど、それで、この辺も歩いて取材されてて。
山内 この間、別の番組で元乃木坂のさゆりんごと……。
川島 はい、松村沙友理さん。
山内 「どこに住みたいか」みたいな話になったときに、さゆりんごは「阿佐ヶ谷」って言ったんですよ。その理由が『ひらやすみ』を読んで、「ああいう街に住みたい」って思ったからなんですって。俺、『ひらやすみ』はこの番組で川島さんに教えていただいて読み出したんで、 さも昔から読んでるかのように「あれ、いいよね」って(笑)。
川島 うちのマネージャーが阿佐ヶ谷に住んでて、このマンガ大好きで。出てくるお店も「あ、ここのお店や」とわかるんですって。それで聖地巡礼みたいに(登場した店に)行ってるって。阿佐ヶ谷に住んでる人からしたら、すっごいリアルらしいです。空気感とか、商店街の感じとか。 ちょっとおこがましいんですが、われわれのお気に入りシーンも挙げさせていただきました。私のお気に入りシーン、こちらなんです。
「第2集」173ページ
(夕方の釣り堀にたたずむヒロトを見開きで描いたシーン)
川島 2ページにわたる見開きのシーンなんですけど、なっちゃんのマンガが少し評価され、親友に子供が生まれて、といういいことが色々重なってこの見開きになるんですけど、これで 2ページ使うというのが、僕すごく好きで。人の幸せじゃないですか、言ってしまえば。人の幸せのためにこんなに喜べて、そこを見開きでいこうという真造先生のこの意気込みというか。
真造 この釣り堀は実際にあるんです、阿佐ヶ谷に。そこに取材行ったときに、本当にこういう夕方の情景があったんですよ。それを描きたくって、こういう感じにしました。
川島 編集さんに聞きたいんですけど、ここで見開きってどうなんですか?
担当編集 さすが真造さんだなと。さっき川島さんが言われたように、やっぱり人の幸せを喜ぶところでがっつりページを割くのが、やっぱりこのマンガのいいところですよね。さっき真造さんがおっしゃってたように、一緒に釣り堀に取材に行ったんですけど、もうそのときに「この絵を描きたい」「見開きで描きたい」というのは真造さんから話があって、ネーム見たときから「絶対いい絵が入るんだろうな」と思ってました。
川島 では山内くんのお気に入りシーンも紹介してください。
山内 僕はこちらです。
「第2集」100ページ
(よもぎが泣き崩れながら「み…みんなが みんなぁ〜っ、アナタみたいに生きられると思わないでよぉ〜…っ。」と言いつつ、内心「ヤバ…私…」と思っているシーン)
山内 お気楽なヒロトに思わず感情が爆発してしまう、よもぎのシーンですね。「わかるわー」って思ったシーンなんです。「ヤバい」と思いながらも口にしてしまう感じ。「俺、今すごいこと言ってるな」って客観視できてるんですけど、口が止まらない。こんなこと言っても何の意味もないのに、最悪の結果しか待ってないのに、と思いながら言ってる感じがすごいわかるなと思って、めちゃくちゃ印象的でしたね。
川島 これはやっぱり「ヤバ…私…」がきいてる。
山内 俺も嫁とケンカして、「掃除してないやん自分」みたいなことを言ったときに、「あ、これこの後とんでもないことなるな」って(笑)。「ヤバ…俺…」と思いながら言ってる。
川島 よもぎちゃんが色々ありすぎて、それに対してヒロトくんがちょっと能天気に見えてしまったんですよね。
真造 この「ヤバ…」がないと、すごく感傷的なシーンになっちゃうじゃないですか。これが入ることによって、 ちょっとギャグっぽくなるというか。泣いてるシーンほど、ちょっと笑える感じにしたいっていう意図がありました。
川島 いや、でもこれは「ヤバ…私…」がないと、ほんまにヒステリックな女性なんかと勘違いされるところですね。
真造 ちゃんと自分がわかってる。ヤバいのはわかってるってのがやっぱ大事かなと。
不幸をくれてありがとう
川島 さあ、続いての質問まいりましょう。こちらです。
『ひらやすみ』の中で、特にここを読んでほしいというストーリーはどこですか?
川島 ま、全部読んでほしいと思うんですけども、「特に」とさせていただきました。回答こちらです。
5集のヒデキの話。真骨頂な話が描けました。
川島 これ、泣きましたね。読んでる方はわかるんですけども、これ、ヒデキが上司に怒られ、ヒロトとの青春を思い出すっていうシーンです。ヒデキがここまでのキャラになるとは。
真造 最初は3枚目キャラというか、クズキャラみたいな。
川島 ちょっとカッコつけて、ナルシストな部分があって。
真造 で、いじられる。
川島 いじられて、お笑い担当のキャラかなと思ったんですけど、4、5集あたりから一気にヒデキのシビアな話が出てくる。あんなに楽しかった親友が、どんどんどんどん家庭と仕事で追い詰められていくという。つらいっすね、これ。
真造 自分の中で、友情を描くのが好きで。デビュー作も割と友情の話だったんですけど、この5集でそういう男の子2人の友情がどんと描けて良かったなと思います。
川島 続いての質問まいりましょう。
『ひらやすみ』の設定はどこから発想しましたか? そして、この作品で先生が描きたかったメッセージは何ですか?
川島 先生の回答こちらです。
自分の好きなマンガや映画やドラマを思い出して、色々詰め込んだのがこのマンガです。平屋にしたのは、マンションよりもキャッチーだし、平屋を舞台としたマンガが少なかったからです。入院している時に読みたい漫画を目指しました。
いつでも外に出れて、健康で、食べたいゴハンを食べられて、会いたい人と会える。そんな普通の日常が幸せということをかきたかったのかもしれません。
川島 これはやっぱり先生ご自身の経験が大きいですか。
真造 そうですね。はい。
川島 この番組でも紹介しました『センチメンタル無反応』に出てくるんですが、この中の短編で描かれているように、先生は実際、入院中に『ひらやすみ』のネームを描かれたという。その短編の中でも特に印象的なセリフがこちらです。
「不幸をくれてありがとう」
真造 そうですね。はい。
川島 先生が悪性リンパ腫で入院されたときのセリフです。僕、これ読んで「強い方やな」と思ったんですけども。これ、どういったときに描こうと思ったんですか。すんなりそう思えたんですか? 「不幸をくれてありがとう」って。
真造 まあほんとは嫌ですよ。もちろん。
川島 当たり前ですよね。そりゃそうです。「なんで俺だけ」ってなりますよね。
真造 でも、ほんとにそのとき次に描くことが何も思いつかなくって。 これがきっかけで何か生み出るんじゃないかなっていう気持ちはありました。
山内 じゃ、いま考えてみて、この入院生活がなかったらもしかして『ひらやすみ』のアイデアが浮かんでない可能性もあるって思いますか?
真造 そうかもしれないですね。
川島 で、同じように入院してるときに読めるマンガにしたいと。
真造 入院中に明るいマンガを読むとすごく癒されたので。
川島 具体的にどういった作品を読んでたんですか?
真造 『それ町』(『それでも町は廻っている』)です。
川島 そういう空気感か。山内が好きなマンガとかはちょっと読めないですね。
真造 そうかもしれない。
山内 入院中、『ガンニバル』とか読まない(笑)?
川島 もう話にならないですよ(笑)。あんなの元気じゃないと読めない。
真造 逆にいいかもしれない(笑)。
山内 『ひらやすみ』って、先生の中では「最後こういうふうにしよう」みたいな構想を持って始まってるんですか?
真造 過去の作品だとゴール決めて描いたんですけど、今回はあんまり決めてないですね。決めすぎると、 「こう流れるんだろうな」ってわかっちゃうじゃないですか。それがわからないような話にしたくって。ちょっとずつ、こうしていこうかなってのはあるんですけど。
川島 ずっと続けようと思ったら続けられるんじゃないですか?
真造 いや、そんなに長くは続けたくはない。
山内 マジすか!
川島 なんで、ここに来る人は「すぐ終わる」って言うの(笑)!?
山内 『島耕作』みたいなシステムにできないですか? 最後タワマンに住むみたいな。『タワマンやすみ』(笑)。
川島 ほんまに成功したやつの話やん、誰が読むねん(笑)。
今もフルアナログで執筆!
川島 では真造先生の仕事場へスタッフさんがロケに行ってくれました。どうぞ。
広さ6畳ほどのこちらが、真造先生の仕事部屋。 『ひらやすみ』はどんなふうに描かれているのか、先生に聞いてみると……。
真造 アナログで全部描いていますね。まだ下書きの1ページしかないんですけども。
川島・山内 えーーー!
真造 アシスタントは主に仕上げだけやってもらっている感じですね。
スタッフ じゃあ背景も全部?
真造 そうですね、はい。『ひらやすみ』ではそれをこだわるというか。
川島 ほぼほぼ1人でやりきるんだ。
真造 これがネームを拡大したやつです。
真造 B4を4分割して単行本サイズくらいにして、あまり詰め込んでないです。
スタッフ これをトレースしてるってことですか?
真造 そう。やっぱりネームの表情が良かったりするので。
スタッフ 全部こういうふうに拡大して?
真造 アタリが最初決まってる方が描きやすいんで。
スタッフ ペンは何を使ってらっしゃる?
真造 Gペンですね。Gペンを3種類くらい分けて。一番太いのが枠線用。ちょっと太いのがでかめの人物。細いのが仕上げや小さい人物。
山内 マジで10人に1人もいないんじゃないですか?
真造 めちゃくちゃ少ないです。
担当編集 フルアナログは少ないですね。スピリッツだと、たぶん浦沢直樹先生と真造先生くらい。
そして先生の生活に欠かせない癒やしの存在がこちら。
気になる真造先生の本棚もチェック。
スタッフ 特にこの中でお好きなマンガはありますか?
真造 やっぱり一番見返すのが『茄子』。黒田硫黄さんの傑作です。高野(文子)さんの作品は(資料というより)読みたいから読んでるって感じですかね。
さらにこんなお宝も。
真造 これは(松本大洋と)対談したときにいただいた絵です。まさか書いてもらえると思ってなくてびっくりしました。
真造 これは入院した時に描いてくれたお見舞いの絵です。なんかそばが食べたいみたいなことつぶやいてたんですよ。
最後に真造先生の気になる情報を確認。奥さんもマンガ家って本当ですか?
真造 はい。谷口菜津子さんっていう。
スタッフ お互いの作品は読み合ったりしてるんですか?
真造 読んでるけど、感想言い合わないかなっていう。良かったら「良かった」みたいなことは言うんですけど、ダメ出しとか、「もっとこうしたらいいんじゃないの」ってのは言わないという約束をしてます。でも、すごい尊敬してるというか、いい絵だなって思うんで、楽しみというか。ちょっと宣伝してもいいですか?
スタッフ もちろんです。
真造 『ふきよせレジデンス』という最新作が出てて、素晴らしい作品だったので、ぜひ読んでください。
ヒデキのモデルはあの芸人!
川島 最後に、真造先生にこの場でサイン色紙を描いていただきたいんですが、よろしいですか?
真造 はい。
(サインを描きながらの雑談)
川島 『ひらやすみ』を実写化したら、誰がやるといいですかね?
真造 誰がいいですか?
川島 (ヒロキは)ジャニーズWESTの重岡くんがいいと思う。
真造 それはどうしてですか?
川島 年齢もなんですけど、いつも彼、無邪気で明るいキャラなんですけど、意外とシリアスな役も似合うんで。その両面を持ってるから、ヒロトくんに合ってんじゃないかなと思って。
山内 ちょっと少年っぽい感じを持ってるのも合ってますね。
真造 ヒデキの役は誰がいいですか?
川島 ヒデキは……マジで髪の毛さえあれば、ナダルにやってほしかったんですけどねー。
真造 え……知ってるんですか!?
川島 ……?
真造 ヒデキはナダルさんがモデルで。
川島・山内 えーーー!
真造 ナダルさん、めちゃくちゃ好きで。
川島 俄然ヒデキを見る目が変わりましたよ。あれ、ナダルやったんや。
真造 飲み物飲むときに、ジュジュジュって飲むじゃないですか。それはナダルさんがそういう飲み方をしてるんですよね。
川島 なんか感じてたんですよ。あの二重とか、カッコつけてる感じとか。
最後に、番組宛てのサインのほか、川島・山内へのイラストもいただきました。
川島 真造先生、今日はお忙しい中、貴重な回答やイラスト、本当にありがとうございました。
次回放送は「夢の最強ラインナップ『スピリッツ編』後編+ヤンマガポーカー」をお送りします。
(構成:前田隆弘)
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