麒麟・川島が妻から「めっちゃ嫌だったけど読んでほしい」と言われたマンガ『るなしい』|川島・山内のマンガ沼web

麒麟・川島が妻から「めっちゃ嫌だったけど読んでほしい」と言われたマンガ『るなしい』|川島・山内のマンガ沼web

麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、前回放送された「川島・山内のおすすめマンガ」前編をお送りします(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。

めっちゃ嫌なんだけど、めっちゃ読みたくなるマンガ

川島 今回のテーマは「川島、山内のおすすめマンガ!」。では私から紹介します。これをテレビで紹介するとは……って感じなんですけど、『るなしい』です。

山内 「♪ROSIER 愛したキミには……」。

川島 LUNA SEAではございません。意志強ナツ子先生の『るなしい』でございます。

 

意志強ナツ子るなしい』(講談社)

  • 月刊小説誌『小説現代』にて現在連載中
  • 単行本は現在2巻まで発売中

 

意志強ナツ子『るなしい』について語る麒麟・川島
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

山内 全く聞いたことない。

川島 全く聞いたことないですよね。俺も、これは妻に教えてもらったマンガなんですけど、1巻が出た段階で「ちょっと読んでほしい」と言われたんですよ。「私はめちゃくちゃ嫌やった」と。

山内 嫌だった?

川島 「めっちゃ嫌なんだけど、めっちゃ読みたくなるような、めっちゃ不思議なマンガだから、ちょっと読んでくれ。で、感想を共有してほしい」と。妻に教えてもらうマンガってめっちゃ多いんですけど、「嫌やった」という感想は初めて聞いた。それでとりあえず1巻だけ読ませてもらったんですけど、めちゃくちゃ嫌だった。

山内 どういうこと? めちゃくちゃ嫌って何なんですか?

川島 不気味なんです。ずっと、どんよりどよどよしてる中で、何が起こっているのかっていうところなんですけど。この主人公は表紙の女の子、郷田ごうだるなちゃんです。

山内 ちょっと不気味ですね。

川島 プールの授業が終わったら、クラスの一番前に、その子のパンツが引っかけられてて、背低いから届かへんという、ちょっといじめられてるような地味な女子高生です。このるなちゃんは、ちょっと普通の人と違いまして、火の神の子と書いて「火神かじん」の子なんです。火の神様がついてる。そういう神の子として生まれた。

で、自宅は鍼灸院なんです。お灸をするからモグサを使うんですけど、そのモグサに、このるなちゃんの血を入れてたりするんです。これで患者さんというか、信者が来るんです。「これで体が治りました」とか、「これでお祈りしたことで幸せが訪れました」みたいな。いわゆる宗教的なことをやってるんです。

この子と仲のいい、同級生のスバル君という男の子がいるんですけど、放課後に技術室に行って、出張はり治療みたいなことをするんです。そこへ疲れた生徒たちがやって来て、「お願いします」「はい、じゃあお金ください」みたいにお金取って、自分の血の入ったモグサで治療していくという。けっこう怪しいことやってるんです。

「あの子、気持ち悪いよね」ってクラスの女子からはめっちゃ言われてるんですけど、クラスで一番人気者でイケメンの、ケンショー君という男の子が出てくるんです。そのケンショー君がたぶん面白半分でしょうけど、「最近うんこが出ないから、ちょっと治してよ」と頼んで、ほんで放課後に施術したら本当に治るんです。

クラスの人気者に話しかけられたから、るなもちょっとときめいちゃって、急に眼鏡外して、この子なりにメイクとかして、ちょっと変わっちゃうんです。それでもともと仲の良かったスバル君が、「俺ずっと仲良くしてたのに」みたいになるんですけど、そこから三角関係の恋愛に発展していくかなと思ったら、ゴリゴリの宗教ビジネスのほうに進んでいくんです

山内 ええええええ、めっちゃ怖い!

 

意志強ナツ子『るなしい』について語る麒麟・川島、かまいたち・山内
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 めちゃくちゃ怖いんですよ、これ。クラスの人気者だったケンショー君まで、るなの信者になってしまうし。スバル君は小説家を目指してるんで、るなの自伝を書いてあげるんですけど、そのスバル君ですら、るなにどんどん取り込まれていく。周りの人がるなを中心に1個の宗教になっていくみたいな…なんかめちゃくちゃ嫌なんですよ。間違ったことがずっと続いてる感じがする。「ちょっと、もうやめて」って読んでて思うんですけど。「間違った宗教ビジネスって、こうやって生まれるんだな」と思いました。

山内 めっちゃ面白そう。神の子として育てられたというのは、本当は神の子じゃないのに両親が「お前は神様の子だから」みたいに信じ込ませてるのか、それとも本当に力があるのか。

川島 おばあちゃんからそう言われてるんですけど、でもおそらく力はあるんですよ。「いんちきやってるな」と思ってたら、たまに神様の力みたいにろうそくが揺れたり、全部が全部うそじゃない感じなんです。るなちゃんも、だましてる気はない。本心から「自分は火神の子だから、人を健康にする。だからお金を取る」ということでやってる。それにしては駆け引きがうますぎるんですけどね。「あなたを治すから他の子も呼んできなさい」とか言って、どんどん信者を増やしていくという。で、ケンショー君はケンショー君で、そのノウハウを見てるので、「僕とデートしたかったらお金を払いなさい」とか、ちょっとホスト的なことをやってったりするんですよ。全員がおかしいんですけど、めちゃくちゃ読みたくなるのよ。

山内 すっきりはまだしない?

川島 全然しない。読んでてめちゃ嫌な気分になるんだけど、ここまで読んだら「怖い展開が待ってるやろな」と思ってても進まざるをえないっていう。それで、同じ作者の『アマゾネス・キス』という作品も読んだんですけど、やっぱり嫌な作風でしたね。意志強先生の、性癖も見せられてる気がして。嫌なんだけど、先が気になってしゃあないマンガなんです。

山内 いいっすね。読もう。

川島 しんどいですよ。まともな人出てこないから。でもこれ、僕の「連載中のマンガベストテン」には入ってますから。

老人が若返ったらまず何をするか?

山内 僕がおすすめしたいマンガはこちらです。『エイジング-80歳以上の若者が暮らす島-』。

川島 なんかタイトルが矛盾してますね。

 

友野ヒロエイジング-80歳以上の若者が暮らす島-』(双葉社

 

友野ヒロ『エイジング-80歳以上の若者が暮らす島-』(について語るかまいたち・山内
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

山内 この主人公は、妻子殺害のえん罪で50年近くに及ぶ刑期を終えた、八武崎やぶざき瀧郎たきろうっていう主人公なんです。家に帰ったら妻とが殺害されてて、主人公はその犯人になっちゃうんです。

川島 えん罪ですか?

山内 完全なえん罪です。「俺は犯人じゃない。なんとか真犯人を俺が捕まえる」って言うんですけど、そのまま収監されちゃって、50年間の刑期を終えて、80歳になってるところから話が始まるんですよ。もう80歳だから、今から何かしようと思っても、もうきついじゃないですか。

川島 もう何のリベンジもできない。

山内 何のリベンジもできない状況なんですけど、そんなとき八武崎が目撃したのは、「20歳の頃の肉体に戻れる若返り薬を、日本政府が開発した」というニュースなんです。

川島 最高のタイミングですね。

山内 で、若返りたいという80歳以上の希望者をある島に集め、再雇用するというエイジングプロジェクトという政策が開始されるんです。そのニュースにアイドルみたいな子が出てきて、「元82歳のさくらです」「元86歳のチカコです」「元92歳のタエです」みたいなことを言ってる。そんなことをやってるのかと思って、ニュースを見ていると、ニュース映像の中に、妻と子供を殺した犯人そっくりなやつが映ってたんですよ。それで主人公は「あの島に行って、犯人を捕まえて復讐してやる」と決めて、エイジングプロジェクトに参加するわけです。

で、実際に若返って島に行ってみると、もうその島の中で社会が成立してる。その中で犯人を捜していくんですけど。これまた面白い要素があって、中にはお年寄りじゃない若者がエイジングプロジェクトに紛れ込んでいたりするんです。

 

友野ヒロ『エイジング-80歳以上の若者が暮らす島-』(について話を聞く麒麟・川島
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 でも見た目じゃ分かんないんだ。みんな若いから。

山内 それぞれの思惑が絡み合って、今後どうなっていくかというお話しです。いま5巻まで出てます(*収録時)。1個、見どころとして言いたいのは、お年寄りが若返って、みんなまず何がしたいかというと、めちゃくちゃエッチするんですよ。

川島 そりゃそうですよ。

山内 だから元老人たちが、めちゃくちゃエッチしてるシーンが大量に出てくる。その部分も見てください。

SFっぽいけど、ジャンルはバリバリの『カイジ

川島 次のおすすめマンガはこちらでございます。住吉九先生の『ハイパーインフレーション』。

山内 これは読んでます。

 

住吉九ハイパーインフレーション』(集英社)

 

住吉九『ハイパーインフレーション』について語る麒麟・川島
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 これ『カイジ』なんですよね。こう見えて、ジャンルで言うとバリバリの『カイジ』。表紙だけ見ますと、SFっぽい雰囲気もあるんですけど、実は経済バトルマンガです。

山内 経済バトルマンガ、確かにそうですね。

川島 「こんなマネーゲームあるのか!」と驚きます。これ、めちゃくちゃ賢い人が描いてると思いますよ。

主人公は奴隷階級の民族・ガブール人の少年ルークです。生まれた時から、お父さんお母さんもお姉ちゃんもいるんですけど、奴隷階級なので捕まったら売られますし、虐げられた生活を送っております。で、お父さんお母さんはもう国の奴隷狩りによってもう狩られています。

どうすればこの世界に平和が訪れるのか。ルークは一生懸命考えるんです。「お金さえあれば、自分たち、そして自分たちと同じように虐げられていた奴隷民族を救うことができるんじゃないか」と思って経済を勉強して、まず贋金がんきんという偽のお金を自分で作るんです。

神様は全然救ってくれないから、お金で自分を救おうとして頑張るんですけど、それでも最愛の姉がさらわれてしまう。なんでこんなにも不幸になるんだっていうときに、ガブール神という、いわゆる神様が契約に来るわけです。「おまえにとって一番大事な能力を取る代わりに、すごい能力を授ける」と。で、取られた能力というのが、いわゆる自分の子孫を残すという生殖能力。その代わりに、お金を生み出す能力っていうのを手にするんです。これさえ手に入れたら、いつでも好きな時にお金を出せて、お姉ちゃんも周りの人もみんな助けられるんじゃないかと思いますよね? でもこれがまた残酷なんですけど、同じ番号のお札しか作り出せないという。

山内 そこですよね。このマンガのポイントは。

川島 そう、そこがいいんですよ。体から偽札を生み出す能力を手に入れたから、好きなときに好きなだけ使えばいいんですけど、全部が同じ番号なんで、見る人が見たらすぐに偽札だとバレてしまう。じゃあどうするのか。「偽札を無限に作り出せる」という設定で、どこまで生き残っていけるか、どれだけ国をだましていけるかを描いた経済頭脳バトルマンガなんです。

山内 ただ「お金を無限に生み出せる」という話で進んでいくのかと思ったら、その「通し番号が同じ」というのが超ポイントになって、そのままでは通用しなくなるんです、そこをどう駆け引きで乗り越えていくかという部分が面白いですよね。

 

住吉九『ハイパーインフレーション』について語るかまいたち・山内
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 だから1枚だったら、パッと渡せるわけです。看守に「ちょっとトイレ行かせてください」「駄目だ」って言われたら、お札を1枚渡して、「これでお願いします」みたいにうまいことやるという。それだったら他のお札と比べられないんで、偽札だとバレずに済むんですけど、とんでもないオークションに参加するシーンがあるんです。そこで1,000万、2,000万くらいの札束を出すんだけど、全部番号が一緒なんですよ。ここでバレてはいけない。そして調べられてもいけない。じゃあどう戦うんだ…というところで、このルークはめちゃくちゃ賢くて、カイジばりの駆け引きをする。

山内 まさにカイジばりですよね。

川島 お金持ちになりたい人も、これ読んだほうがいいと思います。SFの皮を被ってますけど、とんでもないマンガです。

山内 超計算してますよね。行き当たりばったりじゃ絶対描けない。

川島 『ハイパーインフレーション』、これはめちゃくちゃ流行ると思います。

 

次回放送は「川島・山内のおすすめマンガ」後編をお届けします。

 

(構成:前田隆弘

 


【放送情報】
マンガ沼 公式サイト
次回放送
読売テレビ●8月13日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●8月18日(木)深2:29~2:59
「川島・山内のおすすめマンガ」後編を放送。
Tverでも配信中!)
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