「ラオウは体が硬い」板垣恵介が語る、範馬勇次郎と戦わせたい相手とは?|川島・山内のマンガ沼web

「ラオウは体が硬い」板垣恵介が語る、範馬勇次郎と戦わせたい相手とは?|川島・山内のマンガ沼web

麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、先日放送された「マンガ家ガチアンケート・板垣恵介編」後編の模様を紹介していきます(前編はこちら)。放送を見逃した方はTVerもご覧ください。

刃牙』シリーズの中で「やりすぎた」と思うシーンは?

川島 山内君も刃牙シリーズで好きなシーンがあるということなので、紹介してください。

山内 はい、こちらです。

 

「渋川剛気が柳龍光にお茶をパスされるシーン」(『バキ』2巻)

 

山内 たぶん早く投げられたら渋川剛気も避けられると思うんですよ。でもパスされたら「えッッ、パス!!?」となるのはすごく分かる。いじられたときでも、雑にバーンと言われたら「なんやねん!」と言えるんですけど、ヌルッといじられたときって、つい受け止めてしまうんですよ。

川島 「あ、しまった」と後で気付いて(笑)。でも気付いても、もう遅いんよね。

山内 その感じが一瞬でイメージできました。

板垣 これはね、傭兵だった人が書いた危険回避術の本に書いてあった。いきなり強盗に入られて、自分がキッチンにいるときはどうしたらいいか? 包丁もあるだろうけど、もしそこに沸いている鍋やヤカンがあったら、ぶつけるんじゃなくて、そっとパスしなさいと。フタを取って、そっとパスするんだと。それ読んで、「ぶつけるんじゃないんだ。実戦経た人、怖えなあ」と思った……という印象があって、それを描いた。

 

スタジオで『グラップラー刃牙』シリーズについて語る板垣恵介先生、麒麟・川島、かまいたち・山内
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 あの、人を手玉に取る渋川剛気が受けてしまうというところがいいですよね。この戦い、描いてて面白かったんじゃないですか? 渋川と柳、相手の裏を読むような二人ですけども。

板垣 高レベル同士のキャラクターが向き合うのは、面白いよね。

川島 面白いですね。先生の頭の中で、勝手にキャラクターが動くんですか?

板垣 キャラクターが固まってると、必ずやることと、絶対やらないこととはっきりしてるから。

山内 柳龍光の、手のひらでの真空を作るやつありますよね。あれ、めっちゃ真似しました。

川島 「戦いは筋肉だけじゃないんだよ」ということを、この二人は教えてくれましたよね。では続いての質問はこちら。

 

「『刃牙』シリーズの中で、キャラが人間離れしすぎて、『これはさすがにやりすぎだな』と思うシーンはありますか?」

 

川島 先生の回答はこちら。

 

「ないよ。足りなさを反省する」

 

川島 いろんな番組で『刃牙』シリーズを取り上げるとき、「やりすぎたシーン」をよく取り上げますけど、先生的には「ない」と。

板垣 ないですね。

川島 「足りなさを反省する」というのは、むしろもうちょっといけたんじゃないかと?

板垣 そうそう。

山内 いや、やりすぎたシーン、めちゃくちゃありますよね(笑)。

川島 一部ですけども、番組がピックアップした「烈海王と範馬勇次郎のやりすぎたシーン」を紹介したいと思います。

山内 まずは烈海王の「やりすぎではないか」というシーンがこちらです。

 

「兵士にバレないように米軍基地に忍び込んだ烈海王」(『範馬刃牙』11巻)

 

山内 烈海王が米軍基地に忍び込む際、見つからないように考えた作戦が「兵士の後ろにぴったりくっついて全く同じ動きをする」なんです。烈海王曰く、「こうして呼吸を合わせている限りは、兵士が私に気付くことはない」。やりすぎじゃないですか?

板垣 これはね、空き巣の名人の話を読んだときに、面白かったのがあって。空き巣に入ると、まず住んでる人の枕元に立つんだって。で、立ってその人を見下ろす。ずっと見下ろして、彼の呼吸に自分の呼吸を合わせる。彼の呼吸がもう分かったら、ずっとその呼吸に合わせたまま、コソ泥の仕事にかかる。そうすると絶対気付かれないらしい。嘘か本当か分からないけど。

 

「兵士にバレないように米軍基地に忍び込んだ烈海王」について。空き巣の名人の話を語る板垣恵介先生
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

川島 すごく説得力があって、なんとなく分かりますよ。でもこの烈のシーンは「コソ泥が家主の上に寝てる」ような状態ですよね。なぜその話がここまで発展するんですか?

板垣 まあ、才能だな(笑)。

川島 ホンマに永ちゃんやん(笑)。

板垣 でも完全に同じ動きをされたら、意外に気付かれないんじゃないかな?

川島 烈海王ほどの達人ならば、いけるんじゃないかと。これは先生の中では全然やりすぎてない?

板垣 とんでもない、とんでもない。だって全然気付いてないじゃん!

一同 (爆笑)

山内 たしかにそれはそうですけども(笑)。

川島 だって全部先生が描いてるんですよ(笑)?

 

山内 烈海王のやりすぎはもう1つあります。そのシーンがこちら。

 

「川を走って渡る烈海王」(『バキ』14巻)

 

山内 瀕死の死刑囚を病院に連れて行くときに、橋まで回っている時間がなくて、川を走って渡ることにした烈海王。烈海王曰く、「問題はない。15mまでなら」。で、最後は「二人だとさすがに沈む」。

川島 そりゃそうですよ。15mってなかなかの距離ですけども、これに対しての言葉はいかがですか?

板垣 もちろん反省はないね。「烈らしいな」って思う。漢和辞典で調べると、烈という言葉の意味の一つに「はなはだしい」というのがあるらしい。

川島 烈は何をやってもはなはだしいですけども、この「川の上を走る」というシーンはどういう発想から?

板垣 そんなトカゲがいたじゃん(*バジリスクは1秒間に20歩も踏み込んで水上を走る)。だから、たぶん「1秒に何歩踏めば沈まない」というのは、たぶん計算すれば出ると思うんだよ。

山内 それこそ700歩とか800歩くらい踏む感じですよね。

川島 それだけ踏めば沈む前に次行ってる、みたいなことですね。

板垣 そのへんのギリギリを描くのが好きなんで。

川島 だっておんぶしてるんですよね、これ?

板垣 だから沈むんですよ(笑)。

川島 だからギリギリあるという。無茶苦茶なSFをやってるわけじゃないということですね。

山内 やりすぎてると思ったけどなあ……。

「強化アクリルを破る勇次郎」のヒントは、バラエティのあのシーン?

川島 私は勇次郎の「やりすぎたシーン」を紹介してみようと思います。こちら。

 

「強化アクリルを突き破る範馬勇次郎」(『範馬刃牙』11巻)

 

川島 これは名シーンですよ。普通はバーンと拳で割るのかな、と思うんですけど、勇次郎はまず鼻を押し付けて、ぐンにイ〜……ッとやって、最後割り切るという。

板垣 この打ち合わせはよく覚えてる。勇次郎が現れてその後どうするかというときに、考えてない編集が「蹴りで」とか言ってくるから、それに腹が立って「なんでそんな陳腐なこと言うんだ!」と思って、「勇次郎はなあ、そのまま歩いて入って行くんだよ!」と言っちゃって、そうなったら描くしかない。だからもう面白く描いてやろうと思って。芸人さんでストッキングをかぶせて、それを脱ぐときにすごい顔になっちゃうという、あれ覚えてたんで、ああいう風に笑わせたいなと思って。

川島 これ、芸人のストッキングがヒントなんですか(笑)?

山内 最後、勇次郎すごい顔してますもんね。

板垣 ショック受けるじゃない? 「あの人がこんな顔になっちゃうんだ」って。そのシーンを覚えてたんでやらせてもらった。

川島 強化アクリルも勇次郎にとってはパンストレベルだと。すごくカッコいいシーンです。もしその担当の方が最初に「蹴りで」と言ってなかったら、このシーンはなかったかもしれない?

板垣 うん。「お前らとの違い見せてやるよ」と思ってた。

川島 勇次郎のシーン、もう1個見ていただきましょう。

 

「落雷が直撃する範馬勇次郎」(『範馬刃牙』26巻)

 

川島 普通の人だったら即死です。やはり勇次郎は規格外ということなんですけど、どういう意図からこのシーンが出てきたんですか?

板垣 自分の生まれが昭和30年代なんで、「感電した人間は骸骨が見える」という。

川島 アニメでもよくそういう表現がありましたね。

板垣 あれが頭ん中にあって、今それやるマンガ家さんいないから、俺がやったら面白くできるなと。

川島 ただ、勇次郎のはギャグテイストではないですよね?

板垣 大真面目に描いたほうが面白いだろうと。「笑っちゃうくらいすごかった」ということだと思うから。

川島 これは落雷してスケルトンになるシーンですが、もう1つ、僕の大好きなスケルトンのシーンがあります。

 

刃牙と梢江のキスシーン」(『バキ特別編 SAGA[性]』)

 

『バキ特別編 SAGA[性]』板垣恵介
©︎板垣恵介(秋田書店)1992

 

川島 これ、かなり衝撃的なシーンなんですよ。刃牙と梢江が初めて口づけを交わすというシーンで、たとえとして「電流が走る」という表現はありますけど、ここまで半透明になるほどの衝撃だったという。なぜこの描写になったんでしょう?

板垣 そういうイラストを見たことがあったんだよ。仏教的なイラストで、こういう表現をしてたのがあって。この2人のキスシーンなんだから、そりゃすごいものにしたいなと。

川島 僕は最初、これをコンビニで見つけたんですよ。『バキ特別編 SAGA[性]』ってなんだろうと思って、ペラッとめくったときに、立ってられへんくらいの衝撃が走ったんですよ。こういうスピンオフってなかったなと思って。それくらいエロかったんです。やはりそういった情熱をかなり注ぎ込みましたか?

板垣 もちろん。もう何度も言ってることなんだけど、格闘と性は表裏一体だと思ってて。その説にはすごく自信があったんで、すぐに描けるなと。自分の悪い癖で、葬儀に出席すると、不謹慎なことばかり考えてしまうんだけど、そこで思い浮かんだのがこの『SAGA』のシーンだった。隣にスタッフが一人いたんで、葬儀の途中で「すごいアイデアが出た。これをヤングチャンピオンでいきなり始めよう」と言って。「ここからは少年誌で描写できないので、次回から青年誌のヤングチャンピオンでの連載になります」と言っちゃえば、絶対に拡散すると思った。

川島 いやまさか、ここまでのエロスとは思わなかったですもんね。

板垣 「(編集から)『刃牙』の良書としての地位が……」とか言われたけど、「そんなのいいからいいから」と言って。

川島 だってこれは、先生にとって格闘ですからね。

板垣 そうそう。だからすごく描きやすかった。

川島 先生、「刃牙の母親が勇次郎に立ち向かうシーンは泣きながら描いた」とおっしゃってましたけど、『SAGA』 を描いてるときはギンギンだったんじゃないですか?

板垣 なんかいろいろ控えて描いた記憶がある(笑)。

川島 アスリートと一緒ですね。そういう欲を高めないと、これほどの表現はできないという。その結果が「あのティッシュの量」に表れているということなんだと思います。

ラオウVS勇次郎が実現したら?

川島 続いての質問はこちらです。

 

刃牙はこれまでに様々なライバルと戦ってきましたが、今後戦わせたい相手はいますか?」

 

川島 先生の回答はこちら。

 

「ラオウ」(『北斗の拳』)

 

川島 刃牙VSラオウ。これは劇画村塾の先輩である原哲夫先生が描かれたキャラクターですよね。ラオウも「男の中の男」ですけど。なぜラオウを選ばれたんでしょう?

板垣 勝算あるんで大丈夫かなと。

川島 えっ、刃牙はラオウに勝てる?

板垣 ああ俺この質問、「勇次郎と戦う相手」と思っちゃった。

川島 勇次郎とラオウって(立ち位置的に)近しい存在なのかなと思うんですけど……。

板垣 勇次郎とラオウだったら、全然勇次郎のほうが(強い)。

川島 なるほど、そうか……。

板垣 体が硬い。ラオウは関節が硬いんだよ。

一同 (爆笑)

川島 それは弱点だということですね。パワーに頼りすぎじゃないかと。

板垣 見直したら分かるよ。全然、関節が硬い。

川島 面白い目線やなー(笑)。ラオウの関節は、雲のジュウザが一回(腕ひしぎ十字固めで)極(き)めようとしてましたけど、結局極められなかったですよね。

山内 圧倒的なパワーで押し返してましたからね。

板垣 そういうことができちゃうから、たぶん柔軟とかやらないんだよ。

川島 なるほど、力で解決できちゃうから。

板垣 股関節とか、そういうところを見ても、これは相当硬いなと。

川島 そういえば確かに、ラオウのストレッチシーンってないですね。

板垣 たぶん体質的に硬い。

川島 ここまで筋肉が発達してしまうと……。

板垣 筋肉というより、もともと硬い人っているんだよ。いきなり柔らかい人ってのもいるんだけど。昔、拳法やってたんで、そのときに新入生を見ると、体質にすごく差があって。柔らかい、極まりにくい人もいれば、すぐ極まっちゃう硬い人もいる。それでいうと、ラオウはかなり硬い体質だと思う。打撃の伸びとかないからね。

川島 でもラオウには北斗剛掌波(ほくとごうしょうは)という飛び道具がありますよ。触れなくても相手を倒せるというすごい技が。

板垣 「触れなくても」って、そんな(笑)。

川島 いやいや、あるんですから! それはダメ?

板垣 それ…………使うの?

川島 先生、それはアリですよ(笑)!

板垣 でもそんなにスピーディではないでしょ。勇次郎ならかわせますよ。

川島 先生、そうやって他の作品を見て、頭の中でシミュレーションするんですか? 「うちのキャラと戦わせたらこうなるな」とか。

板垣 そういうふうには考えないけど。

川島 でも体は見る?

板垣 体は見るね。

山内 他のマンガで「これは勇次郎が負けるかも」という脅威を感じるキャラクターはいますか? 「もしかしたら勇次郎といい勝負になるかも」みたいな。

板垣 (しばし熟考して)『アグネス仮面』。

川島山内 『アグネス仮面』!?

 

『アグネス仮面』ヒラマツ・ミノル
©️ヒラマツ・ミノル/小学館

 

板垣 『アグネス仮面』に出てくる、マーベラス虎嶋(*アントニオ猪木をモチーフにしたキャラ)。あの人は面白かったなあ。彼が豹変する瞬間があって、この豹変ぶりが良かった。豹変しちゃったら怖いなと思う。

川島 (虎嶋の絵を確認して)これは硬いんじゃないですか?

板垣 動き見てたら分かるけど、これはそうじゃないよ。

川島 そうなんですね。アントニオ猪木をモチーフにしているといえば、『刃牙』シリーズにも猪狩完至というキャラクターがいますよね。あれもだいぶ魅力的な豹変をしませんか? 僕、大好きなんですけど。

板垣 ズルいよね。

川島 そのズルさが面白いじゃないですか。耳元では「負けてくれないか」とささやくんだけど、一方でオーディエンスを煽る力が素晴らしくて。ああいったところと共通してる部分はありますか?

板垣 あるある。虎嶋は(猪狩を)描き終わった後に出てきたからね。「上手にやっちゃったなあ」と思った。

川島 虎嶋と勇次郎を戦わせたら、どうなるんでしょう?

板垣 向き合ったら面白いだろうなと。豹変したテンションになったら、お互い退かないだろうし。これは(試合を)見に行きたいなと思う。

川島 これ聞いてたら、『アグネス仮面』めっちゃ読みたくなりました。

刃牙』シリーズはいつまで描く予定?

川島 先生は夏休みを取ってないんですか?

板垣 うん、取らない。

川島 アシスタントさんは取ったんですよね?

板垣 うん。

川島 「ちょっとどこかに行きたいな」とか、ないんですか?

板垣 それはないな。

川島 休みは嫌いですか?

板垣 もちろん嫌いじゃないんだけど、長い期間休みを取ると、怖い。普段の連載をやっている状態まで戻すのに、時間かかるんだろうなって思うから。

川島 じゃあずっとスイッチオンにした状態で。

板垣 そう。アイドリング状態で。

川島 エンジンを切らないというわけですね。続いての質問はこちらです。

 

「『刃牙』シリーズはいつまで描いていきたいと思いますか?」

 

川島 先生の回答はこちら。

 

「最後まで。プロの刃牙屋だからネ」

 

川島 これはしびれるなーー! マンガ家でもあるけど、先生はまず「刃牙屋」なんだと。

山内 めっちゃ安心したというか、うれしいですね。「最後まで」というのは詳しく言うと、どういうことになるんでしょうか?

 

スタジオで板垣恵介先生と語るかまいたち・山内
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

板垣 自分の意思からはやめないけど、何らかの不可抗力で、ということになるのかな。

川島 一生かけてでも、最後の最後まで刃牙は描き続けたいと。

板垣 家族が聞いたら怒るだろうね(笑)。

川島 でもご家族も、今では相当(作品のヒットを)喜んでおられるんでしょ?

山内 どのへんから奥さんは満足されたんですか? 20代後半の時期は、すごく大変だったと思いますけど。

板垣 『メイキャッパー』は読み切りで、その原稿料で幼稚園の入園費を払って。で、これはすぐ連載になるなと思って、連載になってからは●万くらいの原稿料だったわけ。安いんだよ。でも今までのバイト代プラス●万だから、それはすごく喜ばれたね。

山内 じゃあ奥さんは、だいぶ我慢されてたんですね。

板垣 それから2年ほど経って『グラップラー刃牙』が始まって、そこからはもうどんどん上がっていったから。

山内 『グラップラー刃牙』は、スタートした時点から人気あったんですか?

板垣 いや、最初は10位くらい、真ん中くらいだった。すごく嫌だったのが、担当から「次の作品を考えないか」と言われたことがあって。「いや必ず売れるから」と言ったんだけど。まだ闘技場まで入ってない時期、3巻くらいの頃だった。いま考えると動きがすごく遅いから、人気出ないのも当たり前なんだよね。だけど単行本が売れたのよ。「他の作品を描かないか」と言われてたのが、売れるようになったから(編集に)「だろ? お前!」って(笑)。

快進撃を続けていたマホメド・アライJr.はなぜ負けた?

川島 先生はキャラクターを大事にされていて、「キャラクターが頭の中で勝手に動く」というようなことをおっしゃってましたけど、最初に考えてた勝ち負けが、描いてるうちに変わっちゃったという展開はあるんですか?

板垣 あるある。完全に違ったのはジャック・ハンマーとマホメド・アライJr.。アライJr.は、レギュラーキャラクターの中にどんどん入ってくるくらいの間でキャラクターを立てていこうと思ってて。それで何人かのレギュラーに勝ったんだけど、ジャックと向き合ったときに、「いや、これは無理だ……」と思った。「ここでジャックが倒されたら、あまりにも不自然だ」と。

川島 もともとはマホメド・アライJr.が勝つ予定だったんですか?

板垣 そう。俺はモハメド・アリ信者だったんで、「アリをこの世界に混ぜたい」と思ってアライJr.を描いてたんだけど、ジャックと向き合ったら「おかしいでしょ、これ」と思って。「ジャックに勝てるわけねえだろ、格が違う」みたいな。

川島 描いてみたら勝ち負けが変わったのって、もしかして柴千春もですか? トーナメントに出てきたときは、暴走族キャラですぐ消えると思ってたんですけど、2回戦まで勝ち進んで。

板垣 あれは戦略的だった。それまでの自分の人生の中で何も努力しないで、花山に心酔してて……っていうキャラで。よく「俺はやるときはやるよ」って酒入ったときに言う奴いるじゃない? 俺、あれが嫌いで(笑)。「じゃあやれよ、今からやれよ」って思う。「やるときゃやるよ」という人はたくさんいるから、(千春は)その人たちから絶対支持を受けるだろうと思った。積極的に努力はしないんだけど、やるときはやるという。そういう戦略的な考えで作ったキャラなんだけど、独自の成長を遂げていったね。

川島 それではいよいよラストの質問です。

 

「先生にとって範馬刃牙とは?」

 

川島 現段階での答えということになるんですけど、いかがでしょうか。先生の回答はこちら。

 

「よく稼ぐ孝行息子」

 

川島 先生にとって、刃牙は息子という立ち位置ですか。

板垣 そういう一面は間違いなくあるんだろうな。

川島 幼少期から描かれてますから。

板垣 30年描いてるからなあ。

山内 刃牙ってもともと(総合格闘家の)平直行さんがモデルじゃないですか。どういうきっかけで、平さんをモデルにするところに行き着いたのかなと思ってて。

板垣 当時は総合格闘技がなかった時代で。空手、キック、ボクシング、それぞれバラバラだったんです。その時代に、彼はすでにプロでチャンピオンクラスなのに、名前も売れてるのに、アマチュアの空手の大会にエントリーしたと聞いて、もうびっくりした。それが活躍したのよ。準決勝で倒されて終わったんだけど、「よくこんなことやるな」と思って。でも顔見たらかわいくて。あのボーダーレスな感じが……。

川島 どんどんアウェイに飛び込んでいくという。

板垣 そういう作品はウケるなと思って、刃牙のキャラクターを作り始めた。

川島 先生の人生を変えた息子だと思いますけど、まだまだ頑張っていただこうと思います。

 

最後に、板垣先生に山内さん宛てに色紙を描いていただきました(それにつけても腕の筋肉!)

スタジオで色紙を描く板垣恵介先生

スタジオで色紙を描く板垣恵介先生

記念撮影をする板垣恵介先生、麒麟・川島、かまいたち・山内
撮影/池ノ谷侑花(ゆかい)

 

次回放送の「川島・山内のマンガ沼」は、『こづかい万歳』の吉本浩二先生が登場!

▼次の記事はこちら

 

(構成:前田隆弘

 


【放送情報】
マンガ沼 公式サイト
次回放送
読売テレビ●10月9日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●10月14日(木)深2:29~2:59
「マンガ家ガチアンケート・吉本浩二編」前編を放送。
Tverでも配信中!)
公式HP公式Twitter

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こちらの収録の裏側をTV Bros.WEB様が潜入密着取材しております!

💥番組で紹介しているマンガは本当にMCの2人が選んでいるのか!?

💥収録直後タバコ休憩中の板垣恵介先生に突撃ゲリラインタビュー!

そして4時間を超える4本撮り収録のあとに行った、MCの麒麟・川島明、かまいたち・山内健司へのインタビューをお見逃しなく✨

【前編】
https://tvbros.jp/pickup/2021/10/06/13007/

【後編】
https://tvbros.jp/pickup/2021/10/07/12984/

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