ほったゆみ/原作のアイススケートマンガ『ユート』 続きが読みたいあのマンガ その3

 今回取り上げる『ユート』は、ほったゆみの原作を河野慶がマンガにしたアイススケートマンガだ。ほったの原作で作画を小畑健が担当して大ヒットとなった囲碁マンガ『ヒカルの碁』の完結後、およそ1年半のブランクを挟んで、『週刊少年ジャンプ』2005年11号から連載がスタートしている。

『ユート』

 主人公の瀬尾雄斗は小学5年生。北海道北見市のスケート少年団に所属し、「北見の瀬尾」として注目されるスピードスケーターだった。北海道には少年野球チームのように子供のスケートチームがあるのだ。雄斗は、精神的に少し弱いところがあり、レース中に周りが見えなくなる欠点があった。そんな雄斗のライバルになるのは、帯広市のスケート少年団に所属する高月和也だ。
 4年生の冬、阿寒湖で開催されたジュニア・スプリント戦で高月と争った雄斗は500メートルでフライング失格に。1000メートルでも高月に及ばず、来シーズンでの勝負を約束して別れた。
 しかし、春になって父親が東京に転勤したために、雄斗も東京の小学校へ転校することに。東京でもスケートを続けて、高月との再戦を楽しみにしていた雄斗だったが、思ってもみなかった壁が立ちはだかった。
 東京には、スピードスケートのための400メートルリンクがなかったのだ。

 筆者は、連載をリアルタイムで読んでいたが、この展開にワクワクしたのをはっきり覚えている。今回、原稿を書くために読み返してみてもやはり面白い。絵も作画募集オーディションを実施したというだけあって、ストーリーとよくあっている。
 東京の小学校で、喧嘩っ早く負けず嫌いの同級生・吾川(あがわ)幸太と仲良くなった雄斗は、ふたりで東京近郊でスケートリンクを探すが、ようやく見つけたリンクではスピードスケート用のシューズが禁止されていた。
 それでも電話帳(死語)を使って探し回った結果、ついにスピードスケートのクラブを西東京市に見つける。吾川とともに練習中のリンクまで行ってみると、そこでやっていたのは、北海道で親しんだロングトラック競技ではなく、ショートトラック競技だった。
 1周が333と3分の1メートルから400メートルのトラックで2人が同時スタートしてタイムで競うロングトラックに対して、ショートトラックは1周111.12メートル。複数の競技者が同時にスタートして、タイムではなく着順で勝敗が決まる。1967年に国際スケート連盟が採用して、オリンピックでは1988年のカルガリー大会の公開競技になったのがはじめだった。
 それでも、吾川とともにクラブに入ることを決めた雄斗は、クラブで柿原透と中井修に出会う。柿原は雄斗にライバル心を燃やし、吾川は中井にライバル心を燃やす。
 ショートトラックでもめきめきと腕を上げる雄斗だったが、ロングトラックで高月と競うという約束は忘れていなかった。そして、ロングでもショートでもレースをしたいという思いが強くなっていた。
 北海道での大会参加を目指す雄斗のために、吾川と柿原は、東京の近くで子どもが出場できるロングトラックの試合がないか、ネットを駆使して探し始める。
 見事に「友情・努力・勝利」の世界になっているではないか!
 かくして、3人は日光霜降スケートリンクのロングトラックレースに出場するのだった。

 いよいよ物語が本筋に入っていく、というところだが、連載はここで終わった。最終掲載は2005年32号。その前から掲載ページが後ろの方になっていたので、予感はしていたが、打ち切りだった。
 あの時代はまだフィギアやロングトラックに比べてショートトラックが地味だったのかもしれない。
 単行本第3巻では61ページの描き下ろしが加えられて、帯には「ユート完結!!」の文字が踊っているが、肝心の高月との勝負も片付いておらず、とても残念な終わり方となっている。
 ただ、単行本のラスト5ページには今後の展開がダイジェストのようにして描かれている。そこから、続きを読み解きたいと思う。
 久々にロングトラックを滑って、高月との対戦に胸を躍らせる雄斗のもとに、吾川が思わぬ情報を持ってくる。山村留学という制度を利用すれば親元を離れて、ロングトラックがある土地に行くことができる、というのだ。
 山村留学は、都会の子どもたちが地方の共同宿泊施設や農家で暮らしながら、地元の学校に通い、自然体験や生活体験をするという制度だ。自らも北海道の大会にロングトラックで出場したい吾川は、雄斗が嫌なら自分だけでも長野県に山村留学する、と宣言した。
 反対する父親を説得した雄斗は、吾川とともに長野県の農家に山村留学することになる。柿原と中井は東京に残ってショートトラックを続けることになるが、4人の友情はその後も続くことになる。
 長野でも新しいスケート仲間を見つけた雄斗はトレーニングを重ね、課題だった精神的な弱さも次第に克服していく。
 そんな中、再び大きな問題が起きる。雄斗の父親が倒れたのだ。スケート競技にはお金がかかる。その資金を稼ぐために父親は仕事で無理を重ねていたのだ。
 父親のために競技を諦めようとまで考えた雄斗に、実業団チームから特別枠で迎えたいという話が舞い込む。偶然、雄斗のスケートを見たコーチが彼を将来のオリンピック選手に育てたいと申し出たのだ。
 こうして、因縁のジュニアスプリント戦が始まる。だが、雌雄は決せず、ふたりは中学に進学する。ここでは、外国勢のライバルも登場して目指すは、2018年の平昌冬季オリンピック!
 こんなに盛り上がるのに、途中で終わらせるなんて本当にもったいないなあ。

『ユート』ジャンプコミックス1巻 140〜141ページ

 

 

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