1972年、昭和47年の『別冊少年ジャンプ』2月号。
不朽の名作と言っていいでしょう。ちばあきおさんの『キャプテン』初回が掲載された記念すべき号です。
表紙に谷口くんがいますが、墨谷二中のユニフォームではなく青葉学院のユニフォームなのが驚きです。
作品タイトルは『がんばらなくっちゃ』。その後『キャプテン』へと改題されました。
なんと来年2022年で50周年ですよ。
現在も『キャプテン2』が公式の続編として連載されており、私にとって一番長い付き合いの漫画作品です。
『キャプテン』開始時は11歳。『プレイボール』は翌年の連載開始で12歳。
ずっと貸本屋さんで借りたり、少ない小遣いから『月刊少年ジャンプ』も『週刊少年ジャンプ』も購入したりして雑誌連載を追いかけました。
単行本も大人になってからですが揃えます。
所有している間はちょいちょい読み返して、蔵書整理で手放しては数年後又買って再読。
これを数回はやってます。
60歳となった現在まで最も多く読み返した漫画。
野球漫画と一括りにしてしまうと、プロ野球、魔球、甲子園、その他膨大な量の作品が存在します。
とても戦後の野球漫画を全て読む事は不可能に近く、私も自分の好みに沿った野球漫画しか読んでません。
それでも私は自分にとって野球漫画の最高傑作と『キャプテン』と『プレイボール』を位置付けてます。
私にとって片時も忘れることのない、殿堂入り中の殿堂入り作品です。
『キャプテン』は3年生近藤キャプテン率いる春の選抜敗退後、『プレイボール』は谷口くん3年生の夏の大会前に当時の連載が終わります。
私は高校生になっていた筈ですが、残念ながらこの連載終了時に何をどう思ったかの記憶はありません。
大人になって両作品のコミックを揃え、読む度に描かれなかった後の展開を妄想してきました。
というのもジャンプコミックス『プレイボール』最終の第22巻。
ちばあきおさん御自身の後書きで「谷口クンの大学生活、はたまたプロになった谷口クンまで描いてみたい」の言葉がとても刺さったからです。
谷口君だけでなく、丸井、イガラシ、近藤。
または倉橋や佐野といった愛すべき脇キャラのその後。
特に佐野投手は私のお気に入りで、『キャプテン』当初から『プレイボール』まで登場する重要なキャラクターです。
きっと大学でもプロでも歴代の墨谷キャプテンに立ちはだかり名勝負を繰り広げていくに違いない、とか考え出すと止まりません。
現在その妄想はコージィ城倉さんが気持ちよく上書きしてくれてます。
グランドジャンプの『キャプテン2』は息長く続いて欲しいですね。
そのコージィ城倉さんの続編が描かれるずっと前。
一度だけ1994年に後日談が描かれてます。
それが『その後の谷口くん』です。
『ちばあきおのすべて』というB5サイズの本に収録されており、自伝マンガ「がんばらなくっちゃ」も読めるとても素晴らしい本です。
この自伝マンガはちばあきおさんが兄のちばてつやさんの手伝いを始め、後に苦難の末にデビュー作を描き上げるまでが話の中心です。
参考までにちばてつやさんの作品で「屋根うらの絵本かき」というこちらも自伝的な漫画がありますが、幼少期のちばあきおさんが登場します。
太平洋戦争終結後の「ちば一家」の壮絶な体験が描かれてますがちばてつやさんが漫画家になるきっかけでもあり、お読みになることをお勧めします。
この『ちばあきおのすべて』という本、若い頃に所持していた物は蔵書整理で手放しました。
(あなた蔵書整理で手放してばっかりですね、と思われた方。弁解の言葉もありません)
手放した頃はあちこちの古書店に普通にあったのですよ。だから又買えばいいか、と思っておりました。
ところがここ最近はめっきり姿を消して、古書店ではなかなか見かけません。
ネットで物を買う習慣がない昭和のオヤジである私は記事に使いたいと思い探しましたが、少々手こずりようやく入手出来た次第です。
電子化もされておらず『その後の谷口くん』を現在読むのは難しいようで、今回はいつもより少しだけ多めに内容を紹介したいと思います。
春の墨谷二中。野球部の監督は車のセールスをする傍ら面倒を見る丸井。
新入部員がたった3人なのを嘆きます。
従来の部員の「がんばって勧誘したんですがJリーグ人気にはかなわなくて」というセリフが1994年を感じさせてくれます。
しかしその3人の中には谷口くんの息子であるタダオ君が。
驚きと感動で体を震わせる丸井監督。
谷口タカオの崇拝者である丸井は過度の期待をタダオ君に寄せますが、野球の実力はまだまだです。
丸井は入部したばかりの一年生にマンツーマンで指導するという周りを無視する行為にまで及びます。
タダオ君は丸井監督の期待を重荷に感じ、父タカオに相談します。
父タカオはそれを聞いて、
やっぱり全部の内容は書けません。もったいぶって申し訳ないですが、ここまでにします。
この後すぐ終わるんですけどね。扉ページを含めて31ページです。
話を考えたのは実弟の七三太朗さん。画はちばあきおさんのアシスタントでもあった高橋広さん。
初めて読んだときは感動しました。まさか後日談が読めるなんて当時思ってませんでしたから。
本編の2作品の連載終了段階での時系列から何十年も経っており、谷口くんと丸井のおっさん姿にはちょっと驚きましたけどね。
作中でイガラシはノンプロでヘッドコーチをしているとの説明もあります。
谷口くんは工務店経営。谷口くんのとうちゃんは大工さんなので工務店経営は納得できます。
こじんまりとした2階建ての住居兼用社屋です。
他に子供がいる描写は無く、息子が中学一年生という事は谷口くんは30代後半から40歳前後ではないかと推察されます。
かなりの期間をすっ飛ばしてますが、谷口くんは墨谷高校卒業後どのような人生を歩んだのかこれもまた妄想がはかどって楽しい限りです。
最後のページで奥さんが「やっぱり血はあらそえないわね」と心の中でつぶやきます。
なぜそう思うのか。
その展開を紹介することはどうしても出来ずに伏せました。でもこの心のつぶやきで少しは予想できるかもしれません。
そして「血が争えない」という奥さんの言葉が、大人になって結婚してからの谷口くんの人生がどのような感じだったのかという妄想を少しばかり手助けしてくれます。
七三太朗さんの言葉が柱に書かれてます。
「この話は、ぼくひとりが空想した『その後の谷口くん』であることを、あらかじめお断りしておきたい。」
ご一緒に仕事をされていた方だからこそできた話の内容だと思いますし、強く復刊を期待して多くのちばあきおファンにこの空想を読んでもらいたいと願います。
現在読むのが困難な作品の紹介で申し訳ありませんが、初めて公式が発表した後日談です。
機会がありましたら是非お読みください。