たか
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2020/12/04
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1990年代バリバリのキャラデザがたまらない珠玉のスポーツ短編集!
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以前マンバ読書会でスピナマラダ!のお話をしている際に教えていただいた作品。 「Let's Kick!」セパタクロー+サッカー (月刊少年マガジン1994年1月号増刊GREAT) 「フェイスオフ」アイスホッケー+フィギュアスケート (月刊少年マガジン1994年5月号増刊GREAT) 「ダブルフォールト!」テニス (月刊少年マガジン1994年9月号増刊GREAT) 「どーなることやら」ラブコメ(?) (月刊少年マガジン1993年9月号増刊GREAT) という4つのお話からなる短編集。 マンガとしてお話作りが上手いうえに、1990年代のキャラデザの癖の強さが全開でホントたまらないです。最高…! 特に表題作の「Let's Kick!」が良かった。 マレーシアから来た女の子・アミナがヒロインで、サッカー部の悪どいキャプテンにも怯まず、セパタクローの足技でコテンパンにするところが格好いい…! (典型的な外国人ステレオタイプがないところも好き) 一番古い8Pの作品「どーなることやら」の人気のおかげで、その後GREATに載せてもらえるようになったと書かれていましたが、なんとこの作品は「土曜の昼に依頼があって、日曜にネーム切って、水曜に原稿を完成させた」のだそう。 ちなみに読書会で伺った話によれば、なかざき冬先生はゲームのキャラデザなどのお仕事もされており、現在では絵柄が今風にアップデートされているそうで、「今の絵でセルフリメイクしたバージョンが見てみたい」とも仰っていました。たしかにそれは見てみたい…! 面白くて格好良くてヒロインが可愛い。少年漫画のエッセンスと90年代の香りが全部詰まった素敵な短編集でした。
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2020/12/04
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おのでらさんが贈るタイトル通り最強除霊ギャグ漫画!
「神おっさん」でバズりにバズった、創作活動にいそしむオタクたちの描いた『コミケ童話全集』の著者・おのでらさんの新作。輝夜月ガチ勢の日常も良かったですがやはりオリジナル作品を心待ちにしておりました。 主人公の除霊師・霊媒匠は、マジのガチで100%除霊する男でひとことでいえば最強。 そんな彼のもとに、ギンギンのビンビンに霊に取り憑かれている少女がやってくるのですが、なんとその除霊方法は霊を口説くというものだった…!という話。 あとがきによると、「最強=戦わずして勝つ→相手が惚れてしまえばいい」という発想から生まれたキャラだそう。 ワンパンマンのサイタマといい、呪術廻戦の五条悟といい、味方に最強キャラがいるってホント爽快ですよね。 低級すぎる霊だと目があっただけで除霊しちゃうから、依頼人が除霊を決めるまで目を手で覆っておいて、頼まれた瞬間に指を「パカーッ」と開けるシーン大好きです…! ギャグだけじゃなく、こういうキャラの見せ方のセンスがやっぱり最高だなと思います。 https://twitter.com/onoderasan001/status/1331942477335465988?s=20
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2020/12/04
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2052年、人型アンドロイドと人間の関係を描いたSF! #完結応援
2017年、WEBアクションで連載開始時に楽しみにしていた連載。Pinga経由で知った作品だったのでサービス終了以降連載を追うのを止めてしまっていたのですが、ちょうど先日完結したということで1巻からまとめて読みました。 あらためて感じたのは世界の解像度の高さ…! 2052年の生活感がリアルに描れていて惚れ惚れしてしまいました。 アンドロイドらしいメカメカしい描き込みも満載で、メカバレフェチの自分も大満足でした。   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 【好きなところ】 ・「タイプワン」という商品名が人型アンドロイドの代名詞になっている(J-フォンの「写メ」が名詞になったみたいな) ・タイプワンの説明書や購入ページなど、作中に登場するウェブデザインがやたらリアル ・タイプワンは家電らしくご家庭で組み立てる仕様になってる ・起動後に所有者の言葉を分析して勝手に日本語設定になる ・早速ロボット三原則の宣言をする ・パーソナライズや家電との同期などで最初のセットアップにやたら時間がかかる ・スリープモードでは人間で言う褥瘡を防ぐために寝返りを打つ ・タイプワンは所有者の随伴・許可なしに公道に出ることは出来ない ・アンドロイドに人間のような親しみを覚える人間はエンパスと呼ばれ偏見を持たれている   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ イヴの時間のときも思ったのですが、アンドロイドに親しみを覚える人間をやばいやつ扱いする社会の風潮があるという設定は、リアリティあるなと思う一方でアンドロイド好きとしては納得はいかないんですよね。一昔前の「アニメオタク=殺人犯扱い」みたいで。 ペットを家族扱いしたり、二次元の女の子を嫁にしたりするのと比べても、人型アンドロイドを人間扱いするのなんて当たり前の感覚じゃないでしょうか。 (ちなみにすでに「命乞いするロボットの電源を切るのは難しい」という実験結果もでてます) https://gigazine.net/news/20180803-harder-to-turn-off-robot/ 結局、あの黒い野良アンドロイドが何者であったのか全て説明されることはなかったのですが、それがアンドロイドという存在に神秘性を与えていて良かったです。人型ロボットには、やはり底知れない部分を持っていてほしいので。 わずか3巻ですが、ものすごい世界の密度を感じることのできる作品です。SFをの気分のときにぜひ読んでみてください。 https://comic-action.com/episode/13933686331657220387
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2020/12/02
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これはいい男子新体操漫画!! 人気出てくれ! #1巻応援
男子新体操漫画が発売になったという記事を見かけ早速購入して読んでみると、丁寧な解説と笑いのセンスがすごくいい部活漫画でした! https://i.imgur.com/lFl9CO0.png (△『シックス』照井にと 1巻) 自分は、歌・演奏・ダンス・新体操・フィギュアスケートなどなど人が何かを表現するのを見るのが大好きでして、もちろんYouTubeでも男子新体操のチャンネルを登録しています。 なので、作中でド素人で引っ込み思案な主人公が少しずつマスターしてく様子や、先輩たちが見せてくれる技を見て「これってこういう名前なんだ」とか「こうやって練習するんだ」って知ることが出来てすごく面白い。 監修に国士舘の監督が入っていて、作中では「男子新体操には団体と個人がある」、「団体のタイミングは呼吸で合わす」など、いままで一度も男子新体操に触れたことがない人にもわかりやすく、初歩の初歩から解説してくれるうえ、社会人で新体操を続けている先生たちの演技で団体の魅力を教えてくれるという隙のない構成にとなっています。 そして面白さの理由はほかにもあって、それは笑いのセンス…! 初心者が部活で新しいことを始める漫画というと、どうしてもキャラや展開に既視感を覚えてしまうことが多いです。しかしこのシックスは。要所要所に予想外のボケが挟まれ驚きと面白さを与えてくれるので、王道の初心者部活動物語でありながら新鮮に読むことが出来ます。 たとえば、2話で副キャプテンの高丸先輩がかっこよく技を見せてくれたあとの決め台詞。 実際のところはちゃんとした技名を言っただけでありボケじゃないんですけど、それが笑いに繋がってて最高。 笑いのセンスといえば、主人公が入部を決めるシーンも他の漫画にはないとんでもないインパクトがあってメチャクチャいい。 みんなの前に思いつめた顔でハサミを構えて現れて、いきなり前髪を切り出すという、笑いと恐怖と感動がギリギリでせめぎ合う素晴らしいシーンでした。 (断髪は過去との決別を示すロマンある行為で私自身も断髪萌えなのですが、こんなにハラハラさせられたのは初めてです) 1巻で、主人公たちはド素人にもかかわらず、入部早々8月のインターハイを目指さねばならないという高い課題に直面するのですが、どうやって目標まで近づいていくのか今後の展開が気になります。 1巻には7話まで収録されているので、続きはLINEマンガで連載を追わねば…! https://twitter.com/210terui/status/1242467177023717376?s=20 (追記) 国士舘の新体操部は海外遠征たくさん行っています。男子新体操は日本独自に発展したスポーツであるため、世界的な認知向上のために海外でのパフォーマンスを行っているようです。 (このパイレーツ・オブ・カリビアンのやつ好きです) https://youtu.be/iFj44TqYTjc
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2020/12/02
当たり前の規則正しい生活がなぜ大事なのかわかる1冊
物心ついてから親元を離れるまで、平日は朝6時半に起きてご飯を食べ、雨の日も雪の日も徒歩20分かけて学校へ行き、12時に給食、午後6時に夕飯、砂糖の入った清涼飲料水は飲まないという生活を送っていました。 18年間それが当たり前だと思っていたので、毎年スポーツテストと一緒に行われる健康に関するアンケートで「食事は毎日同じ時間に食べているか」や「朝食を毎日食べているか」と聞かれる意味がわかりませんでした。 ですがこの模範的で健康的な生活の反動で、1人暮らしの大学生活は乱れに乱れたものとなりました。 好きな時間まで起きていていい! お風呂は朝入ればいい! 好きなものを好きなだけ食べていい!! 律儀に3回食べなくてもいい!!! すごいぞ1人暮らし…! と感動した自分は、(少なくとも最初の半年間)「朝昼は好きなだけチョコレート、夜はスイスロール」のように、思いついた不健康を片っ端から試して暮らしました。 真剣に単位を取らねばならない時期だけはいつの間にか規則正しいリズムで暮らしていましたが、就職してからは夜勤と日勤が入り乱れることになりました。 とまあこんな感じで、もう10年以上不規則な生活に染まりきっているのですが、最近になって自分が入眠困難であるのを自覚したのをきっかけに、健康的な生活がしたいと真剣に考えるようになりました。 というわけで、Amazonで「不眠症 エッセイ」で出会ったのがこの漫画です。 軽く著者の先生について調べたら信頼できそうな感じだったので購入してみたところ、自律神経を整えるのに必要な情報だけが小難しい用語を使わずわかりやすく説明されていてすごく良かったです。 (むしろ医学的な堅苦しい文章が一切ないために、信じていいのかと逆に不安に感じるほど簡単な内容となっています) 各話は、この漫画の著者である一色美穂先生がものすごく若々しい担当さんの若さの理由が自律神経にあることを知り、小林弘幸先生(順天堂医院 総合診療科)の元を訪れ話を聞くというスタイルで進んでいきます。 初っ端の、担当さんの若さに驚いた一色先生が「クイクイ(※ヤクでもやってんのかのポーズ)」とするところで、もうこの本が好きになってしまいました。 「そもそも自律神経とはなにか?」という説明で、発汗や血液循環などは24時間自動的にコントロールしているものと聞き「イッツオートマチック…!!」という感想が出てくるところが最高。一色先生のシンプルなのにものすごく漫画らしい、いつまでも見ていられる絵柄もまた素敵。 https://i.imgur.com/bGesFKA.png (△『まんがでわかる自律神経の整え方』小林弘幸/一色美穂 Lesson1より) 小林先生が自律神経を整えるために大切なこととして挙げているのが ・朝起きたら水を飲む ・上を向く ・日を浴びる ・作り笑顔で良いから笑う ・食事は6時間おきに取る ・寝る前に湯船に浸かる なのですが、これもう全部小学生のときには自然にやっていたことですよね。当たり前すぎる。 この中の「作り笑いでもいいから笑う」について。 私が高校生のとき、なんのストレスもないのにやたら気分が暗い日が連続したことがあって、ふと「あ、この1週間大笑いしてない」と気づいたことがありました。お笑い番組をみたところその暗さがスッキリ消え、その経験から定期的にお笑い動画を見るようにしているのですが、ちゃんと医学的な根拠があると知って納得しました。 とまあ、これらの当たり前のことが体に(自律神経に)良いとはぼんやりとは知っていても重要視はまっっったくしていませんでした。が、この本を読んでみて現在日常で困ってる体調不良が全部この「当たり前のこと」で解消されるとわかり、その重要性を痛感しました。 やろうと思えばできる本当に些細な日常習慣ばかりなので、とりあえず常に締め切ったカーテンを開けるところから始めようと思います。
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2020/11/27
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地元の小学校に寄贈したい! 17世紀スペインと仙台を結ぶヒストリカルラブロマンス #完結応援
結構前に、伊達政宗が支倉常長をローマ教皇に向かわせた慶長遣欧使節について描いた少女漫画があると知り、マンガ図書館Zかどこかで読んで感動したのがこの作品。昨年電子で単行本が出ているのに気づき購入しましたが、とにかくめっちゃ良い恋愛&歴史漫画です! 上田倫子の作品ということでとにかく絵が美麗…! ヒロイン・マリアの可愛らしさ、ヒーロー・小次郎の格好良さがこれでもかと絵から伝わってきて1ページ1ページが眼福。 当時のスペイン、日本で着られていた衣服の描写も非常に丁寧で読み応えがあります。 物語は、マリアの住むスペインの港街に、遠い日本という国から奇妙な格好をした男たちがやってくるところから始まります。母の形見を持って逃げたネコを追いかけていたマリアは、人混みに押されて使節団の行列に飛び出し、ある1人の侍に抱きとめられて…というプロローグ。 https://i.imgur.com/TSUbOVn.jpg (△『ホーム』上田倫子 第1巻) も〜! 少女漫画においてこれ以上ないくらい完璧でロマンチックな恋の始まり方でたまりません…! そもそもマリアと小次郎の2人のキャラクターが無茶苦茶良い! マリアはツインテールが似合う可愛くて元気な女の子で、ネコを追っかけてドロワーズが見えるのも気にせず2階の窓から飛び出すようなお転婆。 一方の小次郎は言葉こそ通じない(※演技)が怜悧な顔立ちで、迷子になった異国の少年に折り紙を折ってやるような優しさを持つエキゾチックな青年。 最高の組み合わせですね…! ちなみにこの小次郎は、歴史上の人物である伊達政宗の息子で二代藩主・伊達忠宗の双子の弟。跡目は2人もいらないと支倉常長に命を狙われ大怪我をしたところをマリアに救われ、恋が進展していきます。 https://i.imgur.com/pKUHYAt.png (△『ホーム』上田倫子 第1巻) 伊達家で「小次郎」といえば、史実において政宗が殺したとされる弟の名で、この主人公の小次郎も、元服にあたり忌まわしい名を与えられたことを苦悩していると作中で告白するシーンがあります。 歴史モノの醍醐味である、この史実とフィクションが上手く絡まった設定がたまりません。 後編の2巻では、仙台にて小次郎と忠宗の双子をめぐる因縁の決着が描かれます。 元服時に行った試合で手を抜いて兄を勝たせた小次郎は、今度は本気で勝負に挑み兄を切り捨て、忠宗はようやく満足を得る。 これを受け父・政宗は小次郎の方を領主とすると告げるが双子の兄弟たちは入れ替わり、小次郎はマリアと同じ船に乗りスペインへ帰るという大団円ハッピーエンドを迎えます。 (ところで仙台に来てからマリアがものすごくゴージャスなドレスを来てるの、女の子の読者へのファンサービスっていう感じで大好きです) https://i.imgur.com/4cA9YFz.png (△『ホーム』上田倫子 第1巻) そしてプロローグは、 >「この物語から400年経った今… スペインの南部にはハポン(日本)という姓をもった人たちがたくさんいるのです…」 「それは… もしかしたら……」 というセリフで締めくくられています。はいブラボー!!(スタンディングオベーション) この2人の未来を、現実のそこと繋げるか〜〜〜!! すごい。 http://www.city.sendai.jp/koryu/shise/gaiyo/profile/koryu/h26/spain.html https://courrier.jp/news/archives/171165/ 実際、スペインに日本の侍の子孫がいるというのは有名なエピソードですが、それを主人公2人の未来と重ねるとはなんて粋なのか…! 歴史ロマンとラブロマンス、2つのロマンが見事に描かれていて最高。 機会があれば真剣に宮城県の小学校の図書館に寄贈したい、楽しみながら史実に触れることができる素晴らしい作品です!
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2020/11/26
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スポーツ少女漫画の名手が描く1970年代女子バスケ #完結応援
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以前、突然「ガチな女子バスケ漫画ってないのかな」と気になって調べたときに見つけたのがこれ。 表紙を見ての通り、金髪で目の大きいお人形さんみたいに可愛い女の子が主人公の古き良き華麗な少女漫画にみえますが、「オリンピック金メダル」を目指してガチガチにバスケをしています。 https://cdn-image.sukima.me/pubridge/BT0000362730/001/cover.jpg 高校に入学したばかりの美鹿は、風に飛ばされた帽子を追いかけ道路に飛び出しトラックに轢かれかけるものの、ナショナルチームに属する有望なバスケ選手・鈴子が突き飛ばしてくれて命拾いする。 九死に一生を得た美鹿だったが、鈴子のボールケースに付いていた鈴の音が耳から離れずふとした瞬間に事故の記憶がフラッシュバックしてしまう。亡くなった鈴子の葬式で妹・冴子から人殺しと罵られたことで、罪悪感を抱えて生きる傍ら鈴子の身代わりとなりオリンピックを目指し、鈴を金メダルに変えることで償いを果たそうと決意する…! 【見どころ①】美鹿の周りに敵が多すぎ&恋ともつれすぎ 妹・冴子は「鈴子の持っていた鈴を婚約者に渡して『私が殺しました』って謝ってこい」と罵り婚約者の名前も教えずに鈴を美鹿に渡す。 いろいろあって、鈴子の母校で美鹿の通っている高校のバスケ部で鈴子の婚約者 ・風巻がコーチを務めることになるが、美鹿のような新人にもボールを触らせる練習方法に反発する部員は多く、特にメガネの春日先輩は美鹿の強靭な指から繰り出されるパスが取れなかったことで恥をかかされ、美鹿を恨み妨害するようになる。 そしてラッピングした鈴を美鹿がコーチに返す場面を目撃した春日先輩は2人が良い仲であると誤解し、それを友人の冴子に手紙で伝えてしまう。 誤解が憎しみを呼ぶ展開に、いやこの意地悪2人繋がってんのかい…! と思わず頭を抱えてしまいました。 さらにそのうえ、事故がきっかけでバスケと学校を辞めるはめになったトラック運転手の息子・村神が登場。親切顔で美鹿に怪我した腕を酷使するようなアドバイスをしたものの、美鹿の一生懸命なすがたに心を動かされ惚れるが、当の美鹿は風巻コーチに惹かれていて…と、もつれまくったうえできっちり解消されるところが面白かったです。 【見どころ②】3ポイントルール導入前のバスケ 個人的なバスケ漫画を読む楽しみの1つが、最新のルールとの差異を楽しむことです。バスケは頻繁にルールの改定があり、自分が中学生のときも1年生に覚えたことが2年生で変わるというようなことを経験しましたし。実際中学校でバスケ部に入って思ったのが「スラムダンクとルール全然違うじゃん!」ということでした。(30秒は24秒だし、前半後半じゃなくて4Q制だし、後半開始にジャンプボールがない) 主人公・美鹿の得意技は、亡き鈴子の得意技でもあるフリースローラインよりさらに後ろから放つ「9mシュート」で、作中に「3ポイント」という言葉は一切出てきませんでした。 そこでもしや…と思いバスケのルールの変遷を確認したところ、3ポイントシュートが生まれたのはなんと1985年!! てっきりバスケが発明されたときからあるものだと思ってたので無茶苦茶衝撃でした。 『主なルールの変遷(Wikipedia)』 https://bit.ly/2V76MXP 美鹿が腕の痛みに耐えつつ決めまくる9mシュート…今のルールだったらもっと報われていたんだなと思うとちょっと切ない。 【見どころ③】タイトル通りのエンディング 美鹿がモスクワ五輪の予備チームであるジュニア選抜に美鹿が選ばれディフェンスに目覚め、ライバルと連携した速攻という新たな武器を手に入れソ連に向かうところで物語は終わり。 すっかり美鹿がバスケ選手として成長していく様に夢中になっていたので割と「えっ、ここで終わり!?」とショックだったのですが、思えば最初からタイトルは『栄光への出発』なんですよね。 もっと続きを見たいと思わせつつテーマを描ききって終わる見事なエンディングでした。 ちなみに3巻には2本の短編(『雨あがりのライバル』新体操、『燃えるライバル』スピードスケート)が収録されていて、その2つもガッツリスポ根で面白かったです。 【追記】 ちなみに『雨あがりのライバル』には、「紫水あずさ……おそろしい子 ムーンサルトを失敗したとはいえ一度見ただけでおぼえてしまうなんて…」というメチャクチャ姫川亜弓っぽいセリフが出てきます。 が、調べたところガラスの仮面の連載が始まったのは1975年で、この読切『雨あがりのライバル』が掲載されたのは1973年なのでこちらの方が早かったんですね。 いま「おそろしい子…」なんて使ったら狙った狙わないに関わらず全部パロディになってしまいますよね。偶然にも、ガラスの仮面以前に描かれた純粋な「おそろしい子…」を発見できて嬉しかったです。 【全話無料(全25話) スキマ】 https://www.sukima.me/book/title/BT0000362730/
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2020/11/26
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やっぱり笠太郎先生はいい…! #完結応援
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花板虹子がすごく良かったのでこちらも読んでみたのですが、全3巻で浪人が蕎麦屋として生きていくまでの道のりがしっかりまとまってて面白かったです。 侍としてのプライドを捨てきれない井左衛門は、金を工面するあてがなくなり妻に妾の真似事をさせるや否や…という段階になってようやく蕎麦屋として働くことを決意する。 始めのうちこそプライドが邪魔して「こんなんやってられるか!」といきり立っていたものの、あるきっかけで髷を町人で流行りの型に変えてからは一転して謙虚で実直な男として町人の世界に馴染んでいくところが笠太郎先生らしくて好き。 井左衛門が蕎麦屋として道を歩んで行く傍らで、侍の子として育った息子の丁稚奉公先での試練や、同じく侍で士官先を失った義弟の末路、今際の際の実の母に会いに行く話などがたっぷり盛り込まれていて、本当に全3巻なのかという読み応え。すごい…! 井左衛門が独り立ちの面倒を見ることになった、元小普請で不器用で楽天的すぎる水森のエピソードは脱サラの成功パターンを見ているようで楽しかった。 奥さんが用立てた最後の4両でなんとか食っていくため、家族総出で奥さん自慢のお稲荷さんを作るシーンはグッとくる。(水森は調理の腕はダメダメだけど商人としての才能があったというのも良い) そして最終話で井左衛門は新たな士官先からのオファーを断り蕎麦屋として生きていくことを選ぶ、まさに「侍やめます」のタイトル通りのエンディングが鮮やか。 銀平飯科帳といい、なんで江戸のご飯ってあんなに美味そうなんだろう…とりあえず今日は富士そばです。
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2020/11/17
少女漫画2000%!子々孫々に受け継ぎたい少女漫画 #完結応援
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マンバのKindleUnlimitedページにある「全巻読める3巻以下の作品」で見つけたのがこれ。表紙のそこはかとない洋風なテイストがキュートで読んでみると、中身も超かわいいお話だった。 主人公のれみちゃんはセーラームーンのうさぎちゃんぽいというか、一生懸命なんだけどそれが空回っちゃってすぐメソメソする子。でも泣いてもすぐ立ち直って元気100倍頑張る素敵な女の子。 物語は「小学4年生がドジをたくさん踏みながら、初恋の男の子に一生懸命自分の気持ちを伝えるだけのお話」で、腕に自信のあるシェフが1品だけで勝負するレストランのようなすごさを感じました。こんなにピュアなテーマをかけるなんて強い。小学生向け作品として王道を極めてる。 そしてまあ〜絵が可愛い!ギャグ顔がぴえんのお餅みたいになるところたまらない。着てる服も全部素敵! 初恋の男の子がくれたちっちゃな虹を作るスワロススキーや、そこに宿った恋の妖精など、女児の心をダイレクトにくすぐる要素がたくさんあるのも最高! あと美人の彼女がいる剣道部の高校生のお兄ちゃんがいるっていう設定もたまらない。高校生のお兄ちゃんほしい! 読むといつでも女児になれる、そんな作品です。
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2020/11/09
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丹羽庭最新読切! 小学生と変なおっさんの優しいSF!
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無茶苦茶よかった! トクサツガガガという特撮にハマり続ける大人の女性の次は、秘密基地を作って宇宙人を探す少年のお話。今回はみんなが好きなものから卒業していってしまう寂しさと、不思議な出会いについて描かれてました。 初っ端に出てくる目撃者のおばちゃんが任侠さんのお母さんだったので早速ひと笑い。 主人公・ユーキたち小学生は学校のそばにあるミステリー山に秘密基地を作り、宇宙人の異物(という体のガラクタ)を収集し飾っていた。ユーキ以外、誰も集まらなかったある日、秘密基地のそばに怪しいおっさん・ミナガミがいて…というあらすじ。 丹羽先生のボケとツッコミっていつまでも読んでいたい心地よさがありますよね。ユーキとミナガミのやりとりで「あっ、丹羽庭先生だ…!」と実感しました。 ユーキからもらった手作りのゴールデンレコードを再生するためにケーズにプレイヤー買いに行くのホント好き。 オリジナルフォームのミナガミがユーキをぎゅーってするとこ可愛すぎてやばいな…🥺 というか、ミナガミがゴールデンレコード知らないってことは、NASAのやつは少なくともミナガミ達の種族には拾われてないみたいですね。最近たまたまYouTubeでゴールデンレコードの中身についての動画を観たとこだったので、個人的にすごくタイムリーな内容で楽しかったです。
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2020/10/30
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2026年を生きる石川県大黒市の小学生になりたい
兄からのLINEによると、最近、10歳の野球少年の甥がメガネっ子になったそうです。 「メガネくんになっちゃった…」と、兄の文章からは心配しているのがよく伝わって来ましたが、当の本人はメガネをとても気に入っているようです。良い時代です。 私も兄も、幼い頃から筋金入りのメガネ。私はメガネのせいで幼稚園・小学校と嫌な思いをたくさんしたので、どんなにオシャレだろうとメガネの好感度がむちゃくちゃ低いんですよね。兄も同じだと思います。 こんな私のメガネに対するネガティブな印象をブッ飛ばす作品があるんですよ。 小学生の子どもたちが、電脳世界を見ることができるメガネを掛けて、デジタル技術を駆使しながら地方都市を駆け回る超おもしろカッコいい作品が。 『電脳コイル』っていうんですけど。 https://www.tokuma.jp/coil/ 自分が高校生のときに、NHK教育でやっていたのをたまたま見かけて「うわ絶対おもしろいじゃんこれ……!」と思ったものの、自室にテレビがなかったためにリアルタイムでは見ることを諦めました。(ただでさえ親と仲が悪いのにリビングで児童向けアニメを見る勇気なんてあるわけない) 大学生になってからふと思い出し視聴すると、これがもうマジでとんでもないおもしろさ(※)で、「これ小学生のときに観たかったな……」と、叶わぬ願いに血の涙がでそうになりました。小学生のときに観てメガビー撃ちたかった……。というか、欲を言えば2026年を生きる石川県大黒市の小学生になりたいです。 (※2007年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞・第39回星雲賞メディア部門・第29回日本SF大賞受賞・第7回東京アニメアワードTVアニメ部門優秀賞など) そこからさらに10年ほど経った先週。たまたまアマプラで電脳コイルを見つけてイッキ見したら、当然やっぱり最高でした。 全26話鑑賞後、「もっと私に電脳コイルの世界を見せてくれ〜〜〜!!!」と、とりあえずAmazonで注文したのがこの『漫画版・電脳コイル』でした。 ▽電脳コイル | 小学館 https://www.shogakukan.co.jp/books/09131265    ◆ ◆ ◆ 「いや話全然違う〜〜!! リンクスって何!? えーーっ、すご…!!」っていうのが第一声ですね。 当たり前ですが、26話のアニメを全1巻(2話)に収めるため、設定に様々な変更が施されています。 ただアニメと過程は違えどおおむね同じ結果に収束するようになっていて、そこにまたSFっぽさを感じました。 奥付によると、この作品はちゃおの別冊ふろく描き下ろしだったそう。 この電脳コイルという、SF・冒険たっぷりのお話が全国の女児たちに届けられていた、という事実を噛みしめるとなんだか嬉しくなってしまいますね…嬉しい…! ▽当時のちゃお公式サイト(Internet Archives) https://web.archive.org/web/20070703201050/http://www.ciao.shogakukan.co.jp/kongetu/index.html 以下、アニメとの違いです。 【1話】 ・ヤサコは転校の初日に遅刻しそうになり「リンクス」というワープ装置を使ったことで、ミチコを捕まえようとしているイサコと出会う ・転校初日のクラスへの挨拶にはイサコも一緒で、教室で初めてフミエとダイチと会う ・イサコの両親は生きており離婚したことになっている ・ヤサコは前の学校でいじめられていた ・探偵局への依頼という形でフミエと一緒に行方不明の電脳ペットを探す ・ヤサコはイサコと一緒にクジラ型のイリーガルに飲み込まれるが、ヤサコだけ助かる ・ハラケンと一緒にリンクスを使ってイリーガルの中に戻りイサコを救出する 【2話】 ・ダイチの大黒黒客はイサコの支配下になっていない ・ダイチ親のことでからかわれ、仕返しのためにフミエたちに決闘を申し込む ・決闘で負けたら「夏休みの間ずっと下僕になる」のが条件 ・決闘の内容はヤサコの父の会社・メガマスが探している子どもたちのメガネに不正アクセスするイリーガルを見つけること(発見すると賞金100万円、情報提供で謝礼がもらえる) ・イリーガルは子どもたちのデータを元に(はざま交差点のような)電脳大黒市を作り上げており、イリーガルに襲われたフミエ・ダイチ・デンパの意識がそこから戻ってこれなくなる ・慌てたヤサコが父を呼んだことで「オバちゃん」と出会う ・イリーガルを捕まえるため、イサコ・ハラケンとともにヤサコは電脳大黒市へ向かう ・フミエやそのほかの子どもたちとカレーを作って食べる ・カンナに導かれて、子どもたち全員が鳥居がたくさんある神社を通って現実世界に戻る    ◆ ◆ ◆ イサコは両親が存命だからかアニメと比べて超凄腕という感じはなく、割と普通のツンツンしたクールな女の子となっています。また両親は離婚しているそうですが、その原因がお兄ちゃんの死なのではと想像してしましました。 親への可愛らしい不満を言っていたヤサコたちが、子どもだけで電脳大黒市に閉じ込められたことで、「自分ってまだまだ子どもなんだな…」と自覚するシーンがあるなど、小学校高学年の読者をしっかり意識して作られているなと感じました。 わかりやすさを重視し、キャラの感情の複雑なところやストーリーがシンプルにされています。 例えばハラケンは電脳大黒市の事件でカンナをお別れをすることができたので、「自由研究はやめる。みんなで楽しいことをしよう。学校最後の夏休みだから」というあの名台詞を物語の最後に言ってくれます。 こんな感じで綺麗に終わるのかと思いましたよね、アニメ観てて…。 終盤でこのセリフ聞いて、「やった! これでハラケン闇落ち回避か…!?」と喜んでいたら、いっきに不穏な展開に突き落とされましたからね……。そりゃそんなに簡単にカンナのこと忘れられるわけないってわかってたけど…わかってたけど…。 アニメの夏休みは痛みの連続で、最後はメガネを卒業して終わりなんですよね。子ども時代の終わり、人としての成長が描かれている。そこが本当に素晴らしいんですけど、でもやっぱりちょっと切なくて辛い…。 一方、漫画の世界は、このあと彼らには楽しい夏休みが待っているのが示唆されていて、明るい前向きな終わり方で癒やされました。アニメでは苦労したからこっちでは平和な暮らしが続いていくようで良かったです。 このマルチエンド感、やはりSFっぽい。 なお作者の巻末コメントのおかげで、脚本家・宮村優子さんによる小説(全13巻)が存在することを思い出しました。まだまだ電脳コイル楽しめるなんて本当にありがたい…!! 次は小説読むぞ〜〜!
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2020/10/29
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フルカラー縦スク時代の2020年、読んでおいてほしいフルカラーMANGA
読み終わって「はあーーー……」と深い溜め息が出てしまうくらいも〜面白い。 ほぼ15年ぶりに読んだのですが、バスケ部だった中学生のときと同じように新鮮にワクワクしてしまいました。 当時はちょうど「スラムダンクあれから10日後」というイベントがやっていた頃で、それでイベントについて検索したときに井上雄彦のHPを見つけ『BUZZER BEATER』を知ったという流れだった思います。 (ちなみに井上雄彦先生は電子書籍嫌いで作品が電子化されていないことで有名だそうですが、私は『BUZZRE BEATER』を自サイトで掲載していた印象が強かったので「えっ、そうなの」とかなり驚きました) そもそも突然読もうと思ったきっかけは、先月「永里優季、“歴史的”な男子チームへのレンタル移籍が決定!」というニュースを見たことです。 https://www.soccer-king.jp/news/japan/japan_other/20200910/1117148.html このニュースを見て真っ先に、「いやこれアピルじゃん…!!」と思ったんですよね。それでどんな話だったか思い出すために15年ぶりに読んだんですが……。もう本当に無駄なく美しく完成されていて圧倒されました。 ### 手描きフルカラーがヤバい いや、手描きフルカラーですよ? 吹き出しの中のセリフすら全て手書き。普通にヤバい。 コピックで塗られる絵が本当に眼福でパラダイス。絶妙な影を作るために2色を重ねて塗ったり、その回のテーマカラーを決め色数を制限して統一感を出したり、ショックを受けているシーンでは人物が真っ青に塗られたり……。 井上雄彦というものすごい実力を持った漫画家が「漫画をカラーで描く」ことで、漫画という表現媒体の持っているポテンシャルがギュンギュン引き出されているのを感じられます。 グラフィック・ノベル、アメコミ、バンド・デシネだってフルカラーで横書きですが、「漫画」を描く一流の技術を持った人がフルカラーで描くとこれほど漫画って進化するのかと。もう、普通にすごすぎてすごい。 ちゃんと「漫画み」を感じるものの1つに、「扉絵」があります。 6ページから構成される各話の冒頭の1ページ目か2メージ目が必ず「扉」となっており、作品名・作者名・話数がドーーーンと挿入されるんです。 いやこれがもう、本当めっっっちゃかっこよくて。 タイトルロゴがドーンって、アニメでも漫画でも万人に愛される演出でみんな大好物だと思うんですけど、それを毎回やってくれるんですよ。 手を変え品を変え、毎回違う手描きタイトルロゴを見せてくれて……こんな贅沢あっていいのかという感じ。 (ただ後半はこの手描きロゴはなくなり、デジタルなデザインのロゴで固定になります)    ◆ ◆ ◆ ちなみに当時、HPではページが上下に6つ並べられて掲載されていました。上から下に、スクロールして読む。 そう考えると『BUZZRE BEATER』ってようは2020年の今どこでも読める「フルカラー縦スクロールウェブコミック」なんですよね。 井上先生の公式サイトによると、『BUZZRE BEATER』はオンラインコミック(スポーツアイ-ESPNのHP)として1996年5月より連載開始したそう。 いやもう、途方もなくすごい……。時代の先を行き過ぎ。 「フルカラー」で「縦スク」で「ウェブ連載」で、現在、星の数ほどある無料アプリコミックと共通する部分はたくさんあるのですが、先に書いたように「漫画を描く一流の技術を持った人がフルカラーで描く凄まじさ」は唯一無二なので、マジで1回味わってほしいです。ヤバいので。   ### 正方形のページに広がる無限のコマ割りがヤバい 最初から英語版と中国語版を出すことを想定していたのか、この作品のセリフは横書きで描かれており、正方形のコマ内は左上から右下に読みます。 正方形のページをコマで割るって……割れるか…??? って感じですけど、もうバリバリ割ってるんですよねー。 途中からページが正方形ってこと忘れるぐらい、それはもう普通の漫画のように迫力があってクールなコマ割りの連続。 茶室は宇宙なんていいますけど『BUZZRE BEATER』読んでそれが理解できました。 こんな狭くて制限されたスペースでも無限の可能性を見出せるんですね。   ### 多様性があまりにも自然に描かれ、2020年の今読んでも引っかかる描写が1つもないのがやばい 舞台は西暦2×××年。金も名誉も手にした老爺・ヨシムネが、宇宙リーグに地球チームが参加するという夢を叶えるため、地球最強のプレイヤー12人を集めることを計画。 そこへストリートチルドレンの主人公・ヒデヨシが一攫千金を求めてセレクションに参加し物語が始まります。 地球全体から選ばれ作られた最強チームだけあり、選ばれた12人の人種はみごとにバラバラ。日本、ロシアなどルーツが推測できるメンバーもいる一方で、見た目からは国籍不明の人物も多い。 サポート陣も多様で、白人女性、白人男性、黒人男性、そして医療スタッフの中には女性的な話し方をする男性がいます。 そして、最強のプレイヤーを集めるため必然的に大人ばかりになってしまったところへ、主人公・ヒデヨシとイワン、そしてヨシムネの孫娘・チャチェが待ったをかけメンバーに加わる。 こうして地球最強チームは、大富豪とストリートチルドレンという貧富の差を含むあらゆる人種・年齢・性別が結集した、まさに「地球代表」と呼ぶにふさわしい編成になったわけです。 大切なのは、意図的に多様なメンバーを集めたわけでなく、「優秀なバスケプレイヤーが同じ目標のために集結した結果、多様なバックグラウンドを持つ人間が集まっただけ」だということ。 そのため物語の中でその多様性を誇示することは一切なく、ただありのままにいろんな人達が描かれていて、それが本当に心地いい……! それぞれが地球最強チームに加わるだけの実力がきちんとある。だから子供や女性という、物語において「苦労する弱者」という役割を任されがちな属性を持っていても、周囲に貶められる展開にはならない。 たとえば、孫娘・チャチェがマルにシュート勝負を挑んだとき、マルは子供に舐められ内心カッとするけれど礼を欠くことは決してせず、それどころか「世界一のシューターに挑戦する君に敬意を表して」と尊重する。 物語の鍵を握る最強のポイントガード・DTには、女性的な喋り方の男性が担当の医療スタッフとして付いていますが、彼のことをからかったり馬鹿にしたりする人は出てこない。 こんなふうに、物語全体がフラットな人間関係で出来ている。 「どんなバックグラウンドを持つ相手であろうと、相手に対して敬意を持って対等に接する」というフラットな姿勢が物語の根幹にあるからこそ、四半世紀前に描かれた作品でありながら鼻に付く箇所がまったくないのだと思います。 (あとポケベルや携帯電話のように、後の世の読者が古いと感じるガジェットが登場しないというところも重要かもしれない)   ### 中学生のときオッサンだと思ってた登場人物が年下になっててヤバい 漫画はNGという方針の家庭だったのであまり幼少期に漫画を読んでいないため、これが初めての「あのキャラが年下に…!?」体験でした。マルが出てきた瞬間にマンガを放り出してベッドに崩れ落ちました。 マル27なのかよ〜〜〜〜!!! 妻子いたよね!? えーっ! 27〜? 27かぁ……。そしてモーも27なのかよ……! 彼らの年相応の大人らしい落ち着きぶりと、自分の人間的な成長のなさを直視してしまい見事に打ちのめされました。シンプルにつらい。 でも結果として「自分もこんなふうにちゃんとした大人になりたい」と、気持ちを新たにできたのでよかったかなと思います。   ### 当時気づかなかった細やかな伏線・小ネタがヤバい **【今回読んで気付いたこと】** **・DTとヒデヨシだけが合宿初日からご飯をもりもり食べられた** **・地球チームのユニフォームの柄はただの模様じゃなくてひらがなの「ちきう」を図案化したもの** **・「ディフェンスを飛び越えるジャンプ」はマジで存在する** 2000年シドニー・オリンピックのヴィンス・カーターの人間越えダンク https://twitter.com/olympicchannel/status/956945965486870536?s=20 https://the-ans.jp/news/16338/ **・ラズーリは正体を明かすまでずっとユニフォームやビブスの下にTシャツを着ている**    ◆ ◆ ◆ 特にラズーリのシャツは、気付いたときゾワッとしたほど感動しました。 バスケの、昔ながらの肩ひもが細いランニングシャツ型のユニフォームは、脇ベロベロなので着ると胸が見えちゃうんですよね。 (なのでこのランニングタイプの場合、女子用ユニは男子に比べると襟ぐりが浅くて脇が詰まったデザインになっている) 現在は男女ともに、胸も脇も空いてないノースリーブのTシャツ型のデザインが主流となっていますが、90年代の作品なので地球チームのユニフォームはこのランニングシャツ型。 そのためチャチェは練習中にはビブスの下にシャツを着ているものの、正式な試合では着ていません(なので黒いインナーが見えてしまっています)。 しかし、試合中でも下にシャツを着ているキャラが1人だけいるんですよね。それがラズーリ。 最初から女子メンバーとして参加しているチャチェとは違い、ずっと正体を隠していた彼女はインナーを見られるわけにはいかず、ずっと下にシャツを着ていたんだな……とやっと気づきました。    ### ストーリーについて 『SLAM DUNK』といい『BUZZER BEATER』といい。一番いい所で寸止めして、これからも登場人物たちの人生は続いていくのだと、未来の様子を少しだけチラ見せする終わり方が本当に良すぎる。 うまく言えないのですが……未完に感じられるところであえてストーリーを終わらせるのって無茶苦茶切なくて美しい。 ……もしやこういう味わいを「未完の完」というのでしょうか。 茶室の次は徒然草に繋がってしまった。    ◆ ◆ ◆ ストリートチルドレンのヒデヨシは、地球チームに入ったことで、初めて衣食住が足りた状態でバスケが出来るようになります。 自ら勝ち取ったチャンスとはいえ、このように多大な恩を受けている状態に置かれ、初めヒデヨシは医者やコーチといった周囲の大人たちに従順に従っていた。 それはおそらく、ヒデヨシ自身が路上で育ったこと、学がないことに起因している。大人はストリートチルドレンのことなんて金と力でどうとでもできる。よくわからないけれど、こういう偉そうな、ちゃんとした大人の言うことは素直に言うことを聞いた方がいい――経験からそう考えたのではないか。 しかし驚くべきことに、自分をプレイで圧倒してみせたDTは一切医療スタッフの言うことを聞いていなかった……! これはヒデヨシにとって、価値観を変えるほどのものすごい衝撃だったと思う。 食うのにも寝るのにも困っていたストリートチルドレン時代、大人に反抗したところで、その先に待つのは死しかなかったはず。 元気いっぱい生意気で勝ち気なヒデヨシだけど、大人には従順にしたほうが良いと、無意識に刷り込まれていたのではないだろうか。 「大人に反抗して良いんだ」という気づきを得たヒデヨシは、DTの真似をして大人の言うことを聞かない反抗期に入る。 大人になった今、このヒデヨシが普通の子供のように健全に成長している姿にもうジーンときてしまいました。 ハリー・ポッターもそうですが、虐げられて育った子供が心から安らげる場所を手にしたことで、普通の子供らしく反抗できるようになるって本当にいいですよね……泣いてしまう。    ◆ ◆ ◆ ヒデヨシはチームを外されることを恐れ酷い頭痛を隠し続けていたわけですが、隠しきれない状況に追い込まれたときに頼ったのはDTなんですよね。 屋外でのシュートの癖とか、頭痛に苦しんでることとか。DTは最初っからちゃんとヒデヨシを見てたし、ヒデヨシもまたそのことに気付いてたという。 ふざけたところもあるけど頼れる大人のDTが導き、まだまだ子供のヒデヨシがそれを慕うという、兄弟のような関係。 そしてこの2人は物語の最後で、同じ道を別のスタンスで行くことになる。 家族との唯一の繋がりであるアイデンティティ守りゴル星人として宇宙リーグに挑戦することを選んだヒデヨシと、地球人たちに「地球人でも宇宙リーグに行けるという」という“夢”を見せるため地球人として臨む“Dream Time”。 ヒデヨシという少年が、仲間と尊敬できる存在と出会い、変わり、成長し、そして別れてまた新しい一歩踏み出す。    ◆ ◆ ◆ もうめっちゃ少年漫画だ……めちゃめちゃ少年漫画。 1996年にこの作品が描かれてから24年。 その間にJBLスーパーリーグができ、bjリーグと分裂し、JOCから資格停止処分を受け、2016年には悲願のBリーグという統一プロリーグが誕生。そしてついに2019年には男子バスケが44年ぶりとなるオリンピック出場を決め、八村塁選手がNBAドラフト一巡指名を受ける。 漫画も、スマホでタダで読むのが当たり前となった。 デジタル作画の普及もあって、漫画よりもスマホに適した「フルカラー縦スクロールコミック(=ウェブトゥーン)」という新しい形態のコミックが親しまれつつある。 そんな2020年だからこそ、このちょっとすごい「フルカラー縦スクロール“マンガ”」を読んでみてほしいなと思います。こんな感じでヤバいの連続なので。
たか
たか
2020/10/29
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鏡のように退屈なスケーターと超一流バレエダンサーの出会い
新刊ページで見つけたフィギュアスケート漫画。元スケオタなのでホイホイ釣られて試し読みしたところ主人公の設定がものすごく面白くて思わず購入してしまいました! https://twitter.com/MJ_FF_ed/status/1319745411427565569?s=20 というのも、主人公・いばらは最高峰の技術を持った世界レベルの選手でありながら、競技者としての勝利への欲も、表現者としての情熱も全くないという無味乾燥な青年。試合では必ず大技を失敗するから、観客には演技時間をトイレ休憩扱いされる始末。 新たに振付師として紹介されたロシアの超一流バレエダンサー・ヴァシリーには、出会い頭に 「日本でフィギュアスケートって公務員だったりする?」 「もしかして年金は早くからもらえたりする?」 「社会的な地位が約束されている?」 と(ロシアっぽい)質問攻めにされ、「スケートなんて好きじゃないけど家族のために滑ってる、わけではない」ということを念入りに確認されたうえで「好きでやってるにしちゃ酷い演技だ」と歯に衣着せぬ厳しい評価を下される。 いばらはそれに対して、顔を引きつらせ硬直するわけでもなく、怒り狂ったり泣きわめくわけでもなく……曖昧に微笑みを浮かべて自分のために怒るコーチを宥めるだけ。 もうこれだけで面白い……!! そんな選手面白すぎる。 https://twitter.com/JOEfyfs/status/1317799300353597441?s=20 実際いばらは振付師をワクワクさせるような高い技術を持った選手なんだけど、振り付けを作ってみても彼自身になんの情動もないために、「鏡やオウムみたい」で退屈だと思われてしまう有様。 この「どうしてそんな情緒が死んだ状態で競技者として世界最高レベルまで登り詰めることができたんだ……!?」という疑問が、上下巻かけてしっかり答え合わせがされておりすごくよかったです。 上巻では、いばらの母が一流アスリートである20歳の息子の選曲・衣装に口を出しているという背景情報から、「あっ……お母さんヤバそう(察し)」というのがじわじわ伝わって来る。これのおかげで、いばらの「日本人だからシャイ()」という理屈では説明がつかない、ヤバいまでの自己主張のなさの原因が推察出来ます。 そして下巻でついにその母親が登場するわけですが、想像通りまあとんでもない毒親で…胸糞悪かったです。(しかもその流れでサラリといばらが幼少期に不審者から性暴力を受けていたことも明らかになります) 上下巻を通じて大きな成功や勝利のカタストロフがないところが特徴的で、それがすごく素晴らしい点だなと思います。 「20歳の男の子がほんの少しだけ良い方向に変化するだけのお話」。 はたから見たら取るに足りない些細な成長だけど、本人や周囲の人間(そして読者)にとっては驚天動地の変化を切り取って描いている、というのが素敵だなと思います。 そして何よりこの作品を語るうえで外せないのが、とんでもない絵の耽美さ……!! https://i.imgur.com/BHfGzPs.png (『アクトアウト 下』冬房承) 版画のように平面的なのに、顔はギリシャ彫刻のように立体的な画風なんですよね。もう完全に「美」ただそれだけを追求していて執念すら感じました。特に筋肉と瞳に命を賭けているのがビンビン伝わってきます。 さらに絵で特徴的なのが、カメラの位置(構図)です。 9割方、対象を正面から描いていて煽り・俯瞰はほぼありません。むしろ俯瞰のカットでも何故か平面的に見えてきます。 そして少年漫画ではおなじみのスピード感を表現するための効果線が使われていない。 それに加えてコマ割りが少女漫画的であるため、突然選手同士が衝突したりいきなり胸ぐらを掴むシーンでは、ちょっとびっくりするくらい迫力がありません。 けど「それでいいのだ!!」と思えるくらい、作品全体が「自分はこういう美を表現したいんだ」という独自の美意識に溢れていて素晴らしかったです。神聖さを感じるほどに美しい……。 すでに上下巻で完結していますが、芸術に身を捧げた超一流のアーティストであるヴァシリーと出会い、親の呪縛から解放され情緒が芽生えたいばら。彼が表現する心を手に入れたことで一体どれほどの選手となるのか……もうメチャクチャ気になります。続編出てほしい……! 【連載ページ】 https://www.shodensha.co.jp/mangajam/jam022.html https://twitter.com/JOEfyfs/status/1320364798010224640?s=20
たか
たか
2020/10/16
絢爛華麗で幻想的な奇術ショウ!!
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話題らしく先週のヤンジャンをチェックしてみたら無茶苦茶最高でした!! カクカクしたカートゥーンっぽくてキラキラした個性的なキャラデザと、大正・明治時代っぽい世界の雰囲気を伝える丁寧な描き込みで目が眼福…! 2人がショウを披露するシーンの見開きが圧倒的に美しい…!読者の自分も奇術に掛けられたのではと思うほど幻想的…。 尚月地先生の艶漢やあおきいっぺい。先生のパーフェクト・ガールが好きな自分には本当ドストライクのお話でした。 こりゃ連載決定だろ〜と思ったのですが、こんなにすごい作画で週刊連載が可能なのでしょうか…心配です。ウルジャンやジャンプSQ.の編集者の方、ぜひ伏見篠先生のことよろしくお願いいたします! https://twitter.com/fs_68M/status/1314081047366180866?s=20 【あらすじ】 貧民街に暮らしスリをしていた男・一灰(いっぱい)は、天勝という可憐な奇術師のショーを見たことで心を入れ替え劇場で働きだす。5年後、毎月ファンレターを出し続けていたらある日、天勝が劇場を訪れてくれたのだが、再会した天勝はかつての夢に溢れたショーではなく、エロ・グロ・ナンセンスに満ちた猟奇的な演目を行うようになっていた。 そんな現状を憂いている天勝の姿を見て、一灰が研究して習得した天勝の昔の技を披露する。それを見た天勝は座長に啖呵を切って2人でかつてのショーを行うことに…!
たか
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2020/10/09
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和山やま先生の学生時代の作品
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2019年の琉球新報の記事を読んで和山やま先生が在学中ちばてつや賞に入選していたことを知りました。またそれがきっかけで『渚へいこう』という読切がDモーニングに掲載されたそうで、調べてみるとその2作は『和山友彦(ともよし)』というペンネームで描かれており、東京工芸大マンガ学科のブログにも『和山友彦(ともよし)』という学生さんが受賞・掲載されたという記事が残っています。 この水を被ると凶暴な性格に急変してしまう優等生の読切『優等生の問題』は現在でもモアイで読むことができます。http://www.moae.jp/comic/chibasho_yutoseinomondai?_ga=2.45565988.1044547067.1602225273-988061719.1541088736 現在の柔らかい画風とくらべると、よりメリハリがあって耽美でシャープで古屋兎丸先生の強い影響を感じます。ちばてつや先生も「絵がなんとも言えず耽美的で、男のキャラクターに色気を感じさせるね。」とのこと。 濡れて暴れるせいで友達と仲違いしまった一方で、濡れることで不良に立ち向かえた…という流れがいい。 そしてからの半乾きはズルい😂 浮世絵っぽい水飛沫の描き方がすごく印象的でした。 ちなみにこの読み切りは学校の「水」がテーマの課題で描いたものとのことです。すごい…。 【琉球新報】 https://web.archive.org/web/20191006054122/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1002372.html 【学生・卒業生の活動『優等生の問題』】 https://blog.t-kougei.ac.jp/manga/2015/06/11/1432/ 【学生・卒業生の活動『渚へいこう』】 https://blog.t-kougei.ac.jp/manga/2016/12/20/2116/
たか
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2020/10/06
マッチョガールという生き方
最近ネットを見てたら偶然、このマッチョテイストの主人公・灯が描かれた 「私はマッチョさ!! 女のくさったみてえなてめえらなんかよりず〜〜っと男らしい女 マッチョガールさッ!!」 というコマを見かけて「なんだこのかっこいい女は…!?」となりソッコーで古本を購入しました。 読んでみると初っ端からわからない昔の言葉やスラングの連続で笑ってしまったのですが、このレトロでアウトローな空気が最高…! ギャグとシリアスの境目を行き来するような言動ばかりで、全部書ききれないほど名言が多かったです。 物語は「洗濯船」という名前の船の形をした女性専用アパートが舞台。そこにはファッションや恋愛を楽しむ普通の女性たちが住んでいるのですが、ある日、マッチョを自称する主人公・室戸灯が越してきたことで、彼女に鼓舞された住人たちもまた『マッチョテイスト(男らしい感覚)』を得ていく。 灯はマジで普通じゃない女で、アパートの庭で上裸でダンベル上げたり、いけ好かないプレイボーイの前でこれまた上半身裸になったり、ボディビルの大会でトップレスになったりする。 トレーニングを始めた女性たちが周囲からの反応を期待してウキウキしていると、「虚栄心を捨てるのさッ!! 他人に見せるとか見られるとか思っちゃァダメなんだッ」と一蹴する。 住人たちが不景気で金がないとぼやけば、「何でも欲しがるガキ(干し柿)だから、金がなくなると苦しいんだ」と一喝し、全員の食費やら何やらを徴収したあと「10日間、テレビも新聞も見るな。風呂に入るな、歯も磨くな。食費がなくなったら朝トレーニングして糞して寝ろ」と言う。 精神・肉体ともに普通の女性ではない。 まさにマッチョ。 作中ではレイプとかナンパとか結婚とか貧乏とか、いろんな試練が訪れるんだけれど、そのたびに灯による「マッチョの心得」が説かれ、それに叱咤されてみんなはなんとか壁を乗り越えていく。 先にも書いたとおり、この漫画はギャグとシリアスぎりぎりのお話……というか、四捨五入するとギャグなんですよね。ウェディングドレスでバイクに乗ったり、セックスの代わりに「街のダニ」に喧嘩を売ったりパンチの効いたエピソードが多い。 けどそんな面白エピソード以前に、そもそもこの時代(そして今も)「いい年こいた女が化粧もせず結婚もせず、ただひたすらに自分の体と精神を鍛えている」っていうこと自体がもう、そもそも世間から見たらギャグなわけですよね。「なにこの女ヤバ笑」っていう。 灯のことを普通の女性ではないと書いたけど、よくある言い方をすれば「女を捨ててる」。 けど、ただ女を捨てて終わりではなく、代わりに彼女は努力して「マッチョ」という新しい人間になったんですよね。 女じゃないので世間の「なにこの女ヤバ笑 女捨ててる笑」とか関係ないしダメージを受けたりしない。マッチョなので。 そしてふと、現代にはマッチョじゃないけどこのダメージと無縁な女性がいるな〜と思い出しました。 腐女子のつづ井さんです。 https://note.com/happyhappylove/n/n28f73ff5cdce 女性が1人でそのまんまありのままで超元気に生きてる物語が『裸一貫! つづ井さん』だとして、女性が男らしい感覚を手に入れてハツラツと生きるこの『マッチョテイスト』は、そのカウンターにあたるの物語なのかもしれない。 もう古本でしか手に入らないのですがぜひたくさんの人に読んでほしいですね。電子書籍化してくれ〜!!
たか
たか
2020/09/11
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私の2020年のNo.1読切はこれで決定です!
私の2020年No.1読切がもう決まってしまいました。あと3カ月ありますけど、これが1位でもう決定です。ジャンププラスに掲載された、森朝日先生の『深室(ディープスペース)レストラン』。間違って後編から読んじゃったのに無茶苦茶面白く、読後感が良すぎてしばらく放心状態になってしまったくらい最高でした…! https://twitter.com/aaaaam_punch/status/1301900526884323329?s=20 まずこの作品のすごいところは、「少女漫画のモノローグが少年漫画のコマ割りの中に書かれている」ところなんですよ。それでちゃんと漫画が成り立っているのがすごすぎる…! 絵が美麗なのはもちろんのこと、この会話とかモノローグの文章がホンッッットに良くて、小説を読んでるみたいな心地よさがたまらない。 キャラについても、自分の足で立っている意志の強い女の子2人がとにかく自分好みで…もう何もかも好き…という気持ちしか残っていません。 好きすぎてまともな文が書ける気がしないのですが、「みなさんはどう思うかわかんないけど、私はこんくらいメッチャ好きで〜〜〜す!!」!という気持ちを、書くだけ書いておこうと思います。   この作品に登場するのは、 お寺の娘で霊感が強い黒髪が麗しいつれない美少女・マイ。 名探偵コナンの園子っぽい見た目でジョジョみたいな喋り方するガラの悪い女の子・ラン。 黄金色の肌をしたふわふわした髪の毛とガラス玉のような目が美しい少年・クロード。 そして、レストランに100年前から囚われている妖しい美しさのある男。 https://i.imgur.com/8yh1qWb.png (『深室レストラン(前編)』森朝日) 主人公のクロードは、最愛の幼馴染・マイに告白するも「いくじなしとは付き合いたくない」と振られてしまう。 自分は度胸があると信じてもらうため、夜中に怪談本で知った平坂レストランに心霊写真を撮りに行く。 しかしクロードはあの世のレストランである平坂レストランでヨモツヘグイを犯してしまい、あの世から帰れなくなってしまう…。100年前からレストランに1人で閉じ込められているという先人の男は、初めての仲間として喜んで歓迎する。 あの世の住人となった人間は、人々の記憶から徐々に消えてしまう…。 クロードは自分の名前すら忘れてもなおマイの元へ戻ろうと必死であがくが、男はそれで何も変えることは出来ないと悟った目で無感動にただ眺める。 一方、この世にいるマイはマイで、失った記憶の人物は誰なのか突き止めようと、犬猿の仲であるランに協力を依頼し調査を始める。 もともとクロード・マイ・ランは、幼稚園からの幼馴染。 クロードはいつもランにべったりで、お似合いな2人の姿を見て嫉妬したランは、いつもマイに冷たく当たっていた。 しかしクロードが消えたことで、現実がどんどん修正されていく…。 https://i.imgur.com/KHl79LG.png (『深室レストラン(前編)』森朝日) 互いに密かに相愛だったマイとランは、ランの嫉妬の原因となっていたクロードが消えたことで、急速に距離を縮める。 そんな2人を、クロードはガラスの向こうから謝ることすら出来ずに眺めるのだけど、そんな虚しさは地球の終わりまで永遠に続くこのレストランでの生活の始まりに過ぎなかった…。   はぁ…………もう全部好き…………。 怪談、神話、文明の崩壊。 目が浄化されそうなほど美しい絵で「滅び」を描いているところに言いしれない良さを感じる。 作中にバンバン登場する、折れそうに細い腰、艶々した髪、ガラス玉のような目と瞬きしたらバサバサ音が鳴りそうなまつ毛、宝石のような涙は、それこそ永遠に眺めていたいほど美しい。 https://i.imgur.com/4wKYeCW.png (『深室レストラン(前編)』森朝日) この美しさが、死の世界の妖しい魅力をガンガンに引き立てていてホント最高だった。 そして後編の最後が、新しい住人が犬を連れてやってくるところで終わるのも格好いい。 クロードと男の背中には翼が生えていて、2人が人ならざるものへ変わってしまうほどの時間が経っていることにゾッとした。   さらに、1回目に読み終わって放心状態になったあと、冷静に読み直してみると、いろいろな気付きがあってさらに唸らされた。 >・前編の冒頭でマイとクロードが読んでいた雑誌の記事は男が投稿したもの ・レストランを見たマイが言う「今も窓からあんたをじっと見てる」人物も男のこと ・マイがクロードを自分と同じ度胸がない臆病者だと決めつけ、クロードの告白が本心ではないと思ってしまった理由は、手酷く嫌われてしまっているランのことが好きだったから もうあんまりにも作品がよくて、「森朝日先生って誰!?」となったのですが、絵柄とジョジョっぽさでピンと来た絵師さんの商業アカウント(別名義)をチェックしたところドンピシャで、「あ、あの方か〜〜!! ずっとお慕いしております…!」と感無量でした。 https://twitter.com/zakko_chan/status/1301537770008051713?s=20 森先生、こんなにも素晴らしい作品をありがとうございます。 この作品は私にとっての2020年No.1読切ですし、森先生ご自身がこれからガンガン商業でご活躍してほしい作家さんNo.1です。メチャクチャ応援しています…!! 【前編】 https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331704237785 【後編】 https://shonenjumpplus.com/episode/13933686331704315708