花板虹子がすごく良かったのでこちらも読んでみたのですが、全3巻で浪人が蕎麦屋として生きていくまでの道のりがしっかりまとまってて面白かったです。
侍としてのプライドを捨てきれない井左衛門は、金を工面するあてがなくなり妻に妾の真似事をさせるや否や…という段階になってようやく蕎麦屋として働くことを決意する。
始めのうちこそプライドが邪魔して「こんなんやってられるか!」といきり立っていたものの、あるきっかけで髷を町人で流行りの型に変えてからは一転して謙虚で実直な男として町人の世界に馴染んでいくところが笠太郎先生らしくて好き。
井左衛門が蕎麦屋として道を歩んで行く傍らで、侍の子として育った息子の丁稚奉公先での試練や、同じく侍で士官先を失った義弟の末路、今際の際の実の母に会いに行く話などがたっぷり盛り込まれていて、本当に全3巻なのかという読み応え。すごい…!
井左衛門が独り立ちの面倒を見ることになった、元小普請で不器用で楽天的すぎる水森のエピソードは脱サラの成功パターンを見ているようで楽しかった。
奥さんが用立てた最後の4両でなんとか食っていくため、家族総出で奥さん自慢のお稲荷さんを作るシーンはグッとくる。(水森は調理の腕はダメダメだけど商人としての才能があったというのも良い)
そして最終話で井左衛門は新たな士官先からのオファーを断り蕎麦屋として生きていくことを選ぶ、まさに「侍やめます」のタイトル通りのエンディングが鮮やか。
銀平飯科帳といい、なんで江戸のご飯ってあんなに美味そうなんだろう…とりあえず今日は富士そばです。
長年の苦労の末に今井藩の剣術指南役に任命され絶頂にあった鮎川井左衛門だが、それから数年後、仕えていた今井藩は取り潰しになり、仕官先を求めて江戸に出るも誰にも雇われないままで妻子に負担を強いていた。大金を用立てした金貸しは、今流行りの商売そば屋をすることを提案するが、武士にこだわる井左衛門は首を縦にふらないでいた。しかし娘の死をきっかけに…。本当に大事なことは何か、生きることとは何か。笠太郎が送るヒューマンドラマ。
長年の苦労の末に今井藩の剣術指南役に任命され絶頂にあった鮎川井左衛門だが、それから数年後、仕えていた今井藩は取り潰しになり、仕官先を求めて江戸に出るも誰にも雇われないままで妻子に負担を強いていた。大金を用立てした金貸しは、今流行りの商売そば屋をすることを提案するが、武士にこだわる井左衛門は首を縦にふらないでいた。しかし娘の死をきっかけに…。本当に大事なことは何か、生きることとは何か。笠太郎が送るヒューマンドラマ。