当方は最近、スマホゲーで新たにリリースされた『信長の野望 出陣』を始めました。通常のソシャゲはデレステとウマ娘だけで正直手一杯ですが、これは『ポケモンGO』的位置情報ゲームなので可処分時間を食い合わないですし、健康のために散歩でも増やそうと思ってたからちょうどよかったというところです。位置情報ゲームだと『駅メモ』もやってますが、これは鉄道乗ってる時がメインですし、『信長』は「委任」というモードにしておけば歩いてるときにいちいちスマホとにらめっこしなくてもよく、歩行の方に集中してる間にゲームが進むのもありがたい。というわけで今回の紹介は、散歩漫画であるところのスマ見『散歩する女の子』です。連載は『月刊少年シリウス』のX(旧Twitter)『ツイシリ』で21年から、単行本は既刊2巻です。
本作の内容は、散歩大好きな女の子「にほ」と、その良き理解者である友達「まよい」の二人の女の子が、散歩しながら見つけたものや考えたことについて語るという、言ったら散歩をより楽しむ色々な方法について描かれたものとなっています。例えば「見つけたもの」については、作品の公式アカウントで公開されている「ビル枯山水」の回(単行本では2巻収録)などが非常に分かりやすいでしょう。
ビル枯山水を鑑賞する(1/3) pic.twitter.com/Loee0hdXUs
— 散歩する女の子【単行本②巻9/8発売】 (@nihotosanpo) September 7, 2023
ご覧の通り、マンションやビルの脇の小スペースによく作られていることがある石庭的なもの、これを「ビル枯山水」と名付けて愛でています。これをコレクションすることで、散歩に一味違う楽しみが生まれるわけですね。
あるいは、1巻に収録の「死んでる水飲み場」の回。ここでは、「水が出なくなった水飲み場」が愛でられています。公園とかでしばしば見かけますよねこういうの(金属類の高騰で蛇口が盗まれてるってパターンもありますけど)。
本作で提唱される散歩の方法は、こういう街にあるものを観察するものだけではありません。例えば、「ずっしり大きくてアルミホイルで包んだ自作のおにぎりを近所の緑道で食べる」散歩とか、
あるいは、街の風景を見て「世界の裏面に行く方法」を妄想するというものだったりします。
こんな感じに、他人の散歩を見て楽しみ、自分の散歩もより楽しむヒントになる、それが本作なのです。
以下余談。本作の紹介を読むと、故・赤瀬川原平らによる「路上観察学会」を思い出すという方もいるのではないでしょうか。知らない方のために説明しておきますと、「学会」と名がついてはいますがこれはシャレで、街の中にある変わったもの・不思議なものなどを観察するユニットです。有名な活動(正確に言えば学会の結成より前から赤瀬川らが行っていた活動ですが)としては「超芸術トマソン」(先程の「死んでる水飲み場」のような、本来の役目を失っているが撤去もされずに保存され、あたかも現代芸術のようになっている物体のこと。名前の由来は当時ジャイアンツの選手だったゲーリー・トマソンで、「打撃不振で本来の役目を果たせていなかったのに4番に置かれていた様子が重なって見えた」という割とひどいもの。ドミンゴ・グスマンと並ぶ「謎の形で日本に名を残したプロ野球助っ人選手」でありましょう)の記録があります。筆者もここの本からは結構影響を受けていまして、歩いている時に「壺庭」(舗装された道路上でポールが撤去された跡などにできた小さな円形のくぼみに土がたまり草が生えている様子を、京町家などで見られる「坪庭」に見立てたもの。提唱者は建築史家の藤森照信)とか見つけるとつい写真撮ってしまいますね。
また、同会とも関連する漫画としては、とり・みきのエッセイ漫画『愛のさかあがり』内で、「街角のオジギビト」と銘打って、「工事現場の看板で『ご迷惑をおかけします』と頭を下げてる人の絵」を収集していた(『街角のオジギビト』の題でまとまった本にもなってますが、これは漫画じゃなくて活字書)なんてのもあります。
という具合で、『散歩する女の子』を好きな方は路上観察学会系の本を、路上観察学会系の本が好きな方は『散歩する女の子』をたぶん楽しめますので、ひとつお試しあれ。