麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、次回放送の「マンガ家ガチアンケート・和山やま編」を、放送に先駆けて紹介していきます。
『このマンガがすごい!2021』に2作ランクイン
川島 今回のテーマは「マンガ家ガチアンケート」! 今回アンケートに答えていただいた先生、僕めちゃくちゃ大好きで、以前おすすめマンガのコーナーでも紹介させていただいた、いま話題の大人気マンガ家・和山やま先生でございます。今やもう、本当に日本トップクラスに忙しい先生じゃないですかね。
山内 すごいですよね。
川島 いきなり現れて、時代を作っている感じがしますよね。今回はお忙しいということで、アンケートでの出演ということでございます。それではまず和山先生のプロフィールからご紹介しましょう。和山やま先生は1995年生まれの26歳、沖縄県出身です。高校2年のとき、BLというジャンルに出会い、自分の中にある「萌え」をマンガで描いてみたいと思い、大学もマンガ学科へ進学。その後、デビューされました。そのデビュー作が、これも話題となった『夢中さ、きみに。』でございます。
川島 同人誌即売会「コミティア」で発表した同人誌『夢中さ、きみに。』を、2019年にKADOKAWAより単行本として出版。第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、そして第24回手塚治虫賞短編賞を受賞されました。2021年には実写ドラマ化もされております。そして、もうこれで大ブレイクしたと言っても過言ではないんですけども、2020年1月からフィールヤングにて初連載『女の園の星』がスタート。現在2巻まで発売中ですが、『このマンガがすごい!2021』オンナ編で第1位。とんでもないペースでマンガ界を駆け上がっておられます。
川島 そしてもう1つの代表作といえば、やっぱり『カラオケ行こ!』ですよね。全1巻でございます。この作品が『このマンガがすごい!2021』オンナ編で第5位という。
山内 『このマンガがすごい!2021』に2つランクインするだけでもすごいことなのに、しかも1位・5位で入ってくるというのは、とんでもないと思います。僕、この番組で紹介されるまで『カラオケ行こ!』をまったく知らなかったんですよ。ちょっと得意なジャンルではなかったので、どうなのかなと思ってたんですけど、読んだらめちゃくちゃ面白かったですね。
川島 1巻で完結してるマンガの中では、今までの全マンガ作品の中でトップテンに入ってくるんじゃないかと思いますね。
山内 展開がすごかったですね。1巻だけなのに。
川島 疾走感がすごくて、読んだ人に絶対すすめたくなる。すごくわかりやすいんだけど、ちょっとおかしな世界になっていくという、おもしろい話でございました。さあ、では『カラオケ行こ!』を紹介したいと思います。まず簡単にストーリーの説明から。表紙の右が歌が上手な中学生・聡実(さとみ)くんです。合唱部の部長なんです。で、左にいるのがカラオケが上手くなりたいヤクザ・狂児(きょうじ)。この狂児が聡実に歌を教えてもらううちに、奇妙な友情が生まれていくという。なかなかない設定ですよね。
山内 特殊なマンガなのかな、と思いきや、けっこうスッと入っていけました。
川島 あんまりマンガ読まない人でもハマっちゃうという。
山内 「アメトーーク!」のマンガ大好き芸人の回で、ジャングルポケットの太田がこのマンガを紹介してたんですよ。で、まあ好きすぎてだと思うんですけど、ストーリーを全部言っちゃってて(笑)。
川島 いや、難しいのよ! 普通のプレゼンは10冊くらい出てるマンガを1、2巻だけ紹介するけど、これは全1巻だし。あとこれ、歌でいうならサビの部分がない感じなんですよ。ずっと一定した気持ち良いリズムを刻んでて、あとで「結局これ、全部サビやったんかな?」と思うような作品じゃない? 人に説明するのが非常に難しいから、まだ読んでないという方には「とりあえず読んで」としか言いようがないですよね。僕、「アメトーーク!」でこのマンガについて「ちょっとBLの要素ありますよね」と言ったら、そっちの業界の人にけっこう「それ違いますよ」と言われて。
山内 あ、そうなんですね。
川島 実際は「ブロマンス」(*BrotherとRomanceを掛け合わせた造語)と言うんですって。今日は和山先生の担当編集の方がいらっしゃってるので、ちょっとお聞きしたいんですけど、BLとブロマンスって何が違うんでしょう?
担当編集 簡単に言うと「恋愛か恋愛じゃないか」ですね。友情が入ってくるのがブロマンスです。
川島 じゃあ恋愛要素があるのがBL? なるほど、それは叩かれるわ。恋愛とかそういうことじゃなく、男同士が同じ目的で惹かれ合ってるということだから。
『カラオケ行こ!』の選曲はなぜ「紅」だったのか?
川島 それでは僕が大好きな『カラオケ行こ!』について、和山先生にこんな質問をぶつけました。
「1巻で走り抜けた感がすごいと思いますが、続編を書く予定、または泣く泣くカットしたシーン、展開はありましたか?」
川島 もっと続けていけそうじゃないですか。まだ腹六分、まだ食べられますよという感じもするし。あるいはもともと1巻で終わる予定だったのか。
山内 個人的な感想で言うと、賞レース用の4分のネタに近い印象を持ちましたね。仕上げに仕上げて、削いで削いできた感じのマンガやなと。
川島 だからこそ泣く泣くカットしたシーンもあるのかなということで、先生に答えてもらいました。こちらです。
「最後のカラオケ大会の後に、ヤクザの狂児が暴行でお縄になるシーンや、中学生の聡実のその後の高校生活など、プロットには組んでいましたが、テンポが悪くなるのと単純に描く時間がなかったので、カラオケ大会の後すぐ聡実の高校卒業シーンに飛ばしました」
川島 プロットでは捕まるシーンもあったんですね。
山内 僕からも質問を用意させていただきました。こちらです。
「1巻完結ですが、長くするプランはなかったんですか?」
山内 さっき「描く時間がない」という回答がありましたけど、時間があれば長くしたかったんでしょうか。和山先生の回答はこちら。
「いろいろ付け足すことは可能だったが、1冊でサクッと読んでもらいたかった。同じキャラクターを何度も描けないので、いいやと」
川島 答えに情緒がないね(笑)。
「言いつつ、続編のようなものを描いているので、単行本が出たら読んでいただけると幸いです。襲いかかるおじいちゃんは出てきません」。
川島 ヤバい、バレてる! 山内の癖(へき)が。
山内 襲いかかるおじいちゃん、出ないんだ……。
川島 でもちょっと待ってください。「続編のようなものを描いている」ということですよ。その補足情報があるということです。こちら。
「現在月刊コミックビームにて大学生になった聡実の物語『ファミレス行こ。』を不定期連載中」
川島 そうなんや、単行本派やから全然知りませんでした。
山内 「行こ」シリーズですね。
川島 「行こ」シリーズ、いいですね。そのうち『コストコ行こ!』も出てくるんちゃいますか(笑)? 続いての質問はこちらです。
「『カラオケ行こ!』で1番好きなコマは何ですか?」
川島 全1巻だから、酒でいうなら炭酸や水で割ってない、ほぼストレートもしくはロックで行ってるような作品じゃないですか。その洗練された作品の中で先生的に気に入ったところはどこなのかと思って聞きました。先生の回答はこちらです。
「好きなコマは『カラオケ行こ!』単行本24ページ3コマ目です。ビジュアル系の楽曲のカラオケ映像では、よく手紙が燃えてたりするので、そのシーンが描けて嬉しかったです」
川島 そこ!? いや確かにあるけど。だいたい手紙かバラが燃えてますからね。先生の作品って遊び心がいろんなところにあって、面白い仕掛けが入っているということですね。これについても補足情報があります。なぜ『カラオケ行こ!』の選曲をX JAPANの「紅」にしたのか。これを聞いてみたところ、先生自身、もともとX JAPANが好きだったと。そして単純に誰でも知っている曲、曲のタイトルを見てすぐに頭の中にサビが流れるかどうかを基準にして、「紅」にしたそうです。マイナーな曲だと読者がイメージできず、物語に入り込めないと思ったからだと。『カラオケ行こ!』、読んでない人は、ぜひ読んでいただきたいです。
『女の園の星』の星先生を実写化するなら…
川島 続いては、和山先生が現在連載中の、話題の女子校教師マンガ『女の園の星』について深く掘り下げていきましょう。まずは質問前に、簡単に作品の紹介をお願いします。
山内 主人公は女子高で2年4組の担任を務める、地味で物静かな教師・星先生。日々の業務とマイペースで自由気ままに振る舞う女子高生たちに翻弄される先生の、ゆるふわ日常コメディでございます。
川島 これ、ギャグのレベルがとんでもなく高いマンガなんですよ。
山内 思いっきりツッコミが入る感じでもないですし、読み手側がクスッと笑うというか、感じ取って「あ、おもろ」となるタイプのマンガだったので、これはすごくセンスが要るなと思いました。
川島 ギャグマンガってだいたいツッコミ役が出てくるんだけど、このマンガは星先生が全部受け止めて、表情一発で笑いに変えてしまうようなところがある。でも、ただ単純にギャグマンガではないという静けさもあるんですけど。それでは『女の園の星』について聞いていきましょう。最初の質問はこちら。
「『女の園の星』で1番好きなキャラクターは?」
川島 先生の回答はこちら。
「1巻に出てきた鳥井という生徒です。自分の行動に何の疑いもなく、自信があるところが好きです。でも、現実にいたら苦手なタイプです」
山内 観察日記つけてた子だ。
川島 そうそう。黒のロングヘアーにカチューシャの。星先生の観察日記をひそかに作成しているんだけど、星先生を好きなわけではなく、単なる暇つぶしだったのが、面白いのでバレた後も熱心に観察日記を続けているという。補足情報ですが、男性キャラクターでは黒髪文系眼鏡男子が先生の萌えポイントとのことです。言われてみると、『夢中さ、きみに。』の二階堂くん、『カラオケ行こ!』の聡実、『女の園の星』の星先生、もう見るからに共通点がめちゃくちゃありますよね。
山内 先生のタイプの男子ってことなんですかね?
川島 だと思いますよ。実写化するなら誰がいいんだろうね?
山内 加瀬亮くんとか? ちょっとナヨッとした役もできる人がいいですよね。あと、神木隆之介くんとか。
川島 確かに。聡実はそうか。じゃあ星先生は……?
山内 超マイペースな感じですよね、星先生。
川島 でもこれ、美形じゃないと成立しないね。……すごく若いときの板尾(創路)さんやったらできたかもしれない(笑)。美形やけど、ちょっと何考えてるかわからへんという。そういう、つかみどころのない人じゃないとダメですね。
松本大洋の影響を受けた箇所
川島 続いては、僕たちが大好きなお約束の質問です。
「マンガを描くときの7つ道具は何ですか?」
川島 先生の回答はこちら。
「BGM(ドラマや映画)、お香、コーヒー、甘い物、ホットアイマスク、鏡、目薬」
山内 BGMと答えた人、今までいなかったんじゃないですか?
川島 でもこの答え方だと、映像が流れてるんだけど、見ないということですかね? あ、補足情報があります。「集中できるように画面を見なくても楽しめるドラマや映画を流している。アニメ『あたしンち』、ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』シリーズ、最近はABBAのCDをかけている」ということです。
山内 いまABBA?
川島 なんか面白いですね。世界観に合ってる。続いての質問。
「影響を受けたマンガ家は誰ですか?」
川島 これはちょっと気になりますね。系譜がなかなかわからない感じもしますからね。先生の回答はこちら。
「古屋兎丸先生、野中英次先生、小林まこと先生、松本大洋先生」
川島 兎丸先生テイストはちょっとわかるなあ。やっぱり描く絵がすごく綺麗で、それこそどこか性別を超えたものを描かれていて、けっこうグロテスクなシーンもあったりするという。野中英次先生の『魁!!クロマティ高校』は、もちろんわかります。ここで『柔道部物語』の小林まこと先生が入ってくるんですね。そしてやっぱり松本大洋先生。これも補足情報があります。
「高校生の時に古屋兎丸先生の『ライチ☆光クラブ』を見て、絵に影響を受けました。野中先生の真顔でふざけた言動を取ったりするギャグスタイルは学ばせていただいて、マンガに取り入れています。小林まこと先生の絵が好きで、『柔道部物語』は教科書にしています。松本大洋先生の影響で、人物の上唇を黒く太めに描く癖がつきました」
川島 え、そうなんだ。そこ(唇の描き方)に着目するのすごいな。そういうところ、今までちゃんと見たことなかったです。ちなみに和山先生に毎週読んでるマンガについて聞いてみたところ、こんな回答でした。
「いま一番熱い漫画はヤングマガジンの『ケンシロウによろしく』。作者のジャスミン・ギュ先生は、前作からの大ファン」
川島 どういったマンガなのか、山内さん紹介してください。
山内 『ケンシロウによろしく』はヤングマガジンに連載中で、単行本は4巻まで発売中。子供の頃、ヤクザに母を奪われ復讐を誓った少年は、暗殺拳を学び一人前の漢へと成長する。しかし、天才となった彼の拳に宿ったのは殺しの技術ではなく人を幸せにするテクニックだった。全世界を震撼させたギャグ『Back Street Girls』のジャスミン・ギュが描く天才指圧師伝説ギャグコメディ、でございます。
川島 『Back Street Girls』、思い出した! 中身がヤクザのやつですよね? あれを描いた人のマンガか。表紙には『北斗の拳』が積んであるんですね。
山内 ケンシロウみたいに暗殺拳の使い手になろうとして、指圧の方がめっちゃ上手になっちゃうという。
川島 タイトルの字体が『ブラックジャックによろしく』みたいな字体ですね。いろんなパロディを詰め込んでるんだ。これが和山先生のお気に入りという。
山内 先生、ちょっとユーモア入ってるのが好きなんですね。
川島 「真顔でボケる」という感じがなんとなく伝わってきますね。
成田狂児から特別なプレゼント
山内 では僕からの質問、こちらです。
「今後、血の出るマンガや、おじいちゃんが襲いかかってきたりするマンガを描く予定はありますか?」
川島 こういうこと聞くから先に先生が予防線を張ってたんや!
山内 でもちょっとバイオレンスなやつも読みたいですもんね。さあ、どうでしょう? 先生の回答はこちら。
「ないです」
(和山先生のイラスト付きの回答なので、詳しくはオンエアで)
川島 先生、この絵、山内君のためだけに……! これ、サインもらうよりすごいことやで。
山内 ありがとうございます。
川島 いろいろ質問させていただきましたけど、ちょっとわかった部分もあれば、さらにミステリアスになった部分もあって。
山内 たぶん、だいぶ変わってる方なんだろうという気がプンプンします。
川島 最後にこのコーナー恒例、番組宛に和山先生からサインを頂いております。あれ、ちょっと待って……「マンガ沼」宛てじゃなくて「川島明様へ」になってる。
山内 個人やん!
川島 番組じゃなくて個人に来てるよ。
山内 あれ、僕の分は……マジでない(笑)。今までは2人にいただいていたんですけど、ないです。いや……全然いいんですけど……。
川島 カンペ読んでください、山内さん! 「山内さんにも和山先生からプレゼントがあります」。
山内 (小さい封筒を渡され)……あ、成田狂児の名刺や。それと聡実のタトゥーシール。
川島 和山やま先生じゃなくて、成田狂児からプレゼント来てるやん!
山内 裏に手書きで何か書いてあります……。
川島 ちょっと読んでください。
山内 「2019年6月16日、カラオケ天国15時過ぎ、身長180近いヤクザ……」
川島 いや、それ聡実が描いたやつや! すげえお前、その成田狂児の名刺、(たーし先生からもらった)月輪組のバッジの横に飾れよ! 2つの組からお宝いただいてるやん(笑)!
「マンガ家ガチアンケート・和山やま編」の模様は、次回放送の「川島・山内のマンガ沼」にて(2週にわたって放送)。
(構成:前田隆弘)
【放送情報】
次回放送
読売テレビ●9月11日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●9月16日(木)深2:04~2:34
「マンガ家ガチアンケート・和山やま編」を2週にわたって放送。
(Tverでも配信中!)
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