麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、次回放送の「『BLUE GIANT』石塚真一先生にガチアンケート」を、放送に先駆けて紹介していきます。
目で読むエナジードリンク『BLUE GIANT』
川島 今回のテーマは「マンガ家ガチアンケート」、アンケートに答えてもらったのは僕がずっと昔から大好きで大好きで、以前オススメマンガでも紹介させていただいた大人気マンガ『BLUE GIANT』の石塚真一先生です。
山内 僕、今までまったく読んでないマンガだったんですけど、川島さんが大絶賛ということで、まだ第1部だけなんですけど読みました。
川島 無印の(第1部の)『BLUE GIANT』を。
山内 血が出ないマンガを読んだの、初めてに近いです。「そんなマンガあるんだ」と思って。
川島 僕はこのマンガ、「目で読むエナジードリンク」だと思ってます。読んでると熱くなるのよ。今回、石塚先生はご多忙ということで、アンケートでご回答いただきました。石塚先生から番組宛てにメッセージが届いています。
「数年前から川島さんが『BLUE GIANT』を取り上げていただいているのを知り、とてもとても感謝しております。ありがとうございます。川島さん、うぉおおお!」
川島 熱くなってますやん、文章が(笑)。
「スタジオに行けず、申し訳ございません。いつか直接お会いしてお礼を伝えさせていただくことを願っております」
川島 それではまず、石塚先生のプロフィールからご紹介したいと思います。
石塚真一先生プロフィール
・茨城県出身の49歳。
・22歳から27歳までアメリカに留学。
・留学中はロッククライミングや気象を学ぶ。
・帰国後、会社員を経て28歳でマンガ家に転身。
・2001年、『This First Step』で第49回小学館新人コミック大賞一般部門に入選。
・2003年、ビッグコミックオリジナルにて『岳』で連載デビュー。この作品で小学館漫画賞一般向け部門や文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞などを受賞。
・2013年にビッグコミックで音楽経験ゼロの主人公、高校生の宮本大が世界一のテナーサックスプレーヤーを目指すという壮大なジャズマンガ『BLUE GIANT』の連載をスタート。
・第2部となる『BLUE GIANT SUPREME』を経て、2020年から第3部の『BLUE GIANT EXPLORER』を連載中。現在、シリーズ累計発行部数が700万超え。
山内 「サラリーマン期間、短か!」と思いました。27歳までアメリカ留学で、28歳でマンガ家。(その間にやった)会社員、短くないですか?
川島 やっぱりいろいろあったんじゃないですか。「本当にやりたいことはやっぱりこっちだ。どうなるか分からないけど、やりたいことだから飛び込んでみよう」というそのときの経験が『BLUE GIANT』に反映されてると思います。
モブをモブとして描くか、一人の人間として描くか
川島 そんな石塚先生のガチアンケート、最初の質問はこちらです。
「ご自身の作品の中で1番好きなキャラクターは?」
川島 先生の回答を見てみましょう。こちら。
「第2部のヨーロッパ編にガブリエルという運転手が出てくるのですが、好きです。彼のような生き方に憧れがあります」
川島 大が組んでるバンド「NUMBER FIVE」のマネージャー兼運転手です。通称ガブ。ちょっともっちゃりした体型なんですけども、この方がいないと『BLUE GIANT SUPREME』は回らないです。元メタルロッカーで、今はメタボなんですけど、金じゃなく心を動かされたもののために動く、粋な男なんですよ。
山内 好きなキャラクター、主人公じゃないんですね。川島さんはどのキャラクターが好きですか?
川島 僕は4巻の表紙になってるハンナですね。
川島 彼女は「NUMBER FIVE」のメンバーなんですけど、体がちょっと小さいんですよ。男がひしめき合っているジャズバンドの世界では、女性というのはちょっとバカにされがちなんです。もともとは一流のプレイヤーが揃った、のちのちブレイクするようなバンドに所属していたんですけど、「技術と外見がバンドに合わない」という理由でそこをクビにされるんですよ。そこで大と出会うわけです。で、彼女がもう必死になってウッドベースを練習するんですよ。自分をバカにした奴らをなんとかして見返したいという一心で。ハンナの汗でマンガを持つ手が濡れてくるんちゃうかというくらい練習してる。それがいいんですよ。
山内 恋愛はないんですか?
川島 さあ、そこなんですよ!
山内 えーっ、あるの!?
川島 バンドは貧乏ですから、ツアーでホテルに泊まるときも1人1部屋じゃないわけですよ。1部屋に2人ずつになったりする。じゃあ誰と泊まるの?ということになってくるんですけど、それは読んでみてください。「えーっ、そんなことが?」って思わず声出ました。次の質問はこちら。
「主人公・大にモデルはいたのでしょうか? それとも描いていくうちに固まっていったのでしょうか?」
川島 先生の回答はこちら。
「連載スタート時からの主人公のモデルは特になく、前向きな高校生くらいのスタートでした。話を進めながら宮本大という若者像が作られていきました。今も謎ばかりです」
川島 モデルいないんだ。
山内 前向きな高校生くらいのスタートだと。
川島 あとは勝手に大が動いていったということでしょうね。続いての質問はこちら。
「お気に入りのシーンを教えてください」
川島 先生の回答はこちら。
「モブシーンはどれも思い入れがあります。モブをモブとして描くか、一人一人の人間として描くかで、マンガの何かが変わる気がしています。モブは気合いっす! 頑張ります!」
川島 アンケートなのに最後、意気込みで終わってます(笑)。
「ちなみにモブを描くのにめげそうな時は、ちばてつや先生の相撲マンガ『のたり松太郎』で、国技館のお客さん一人一人が違う表情をしているのを見るたび『ちば先生!」という気持ちになります」
川島 先生はいつもコメントが熱いですね。山内くんが気に入ってるシーンは?
山内 僕は第1部しか見てないんですけど、トンネルでサックスの練習をするシーンが好きです。ここなら雨でも練習できると教えられて、行ってみた場所がトンネルなんですよ。僕らで言うと、それはなんばHatch(大阪・なんばにあるライブハウス)だったなあ、という。若手の頃って、お金払って室内で練習する余裕なんかないんですよ。でも外で漫才の練習してたら、絶対注意されるじゃないですか。
川島 通報されたりもするから。
山内 そういう中で当時、ちょっと許してもらってたのがなんばHatchだったんですよ。あそこの川沿いだったり、上の方だったり。そこで壁に向かって練習してました。トンネルのシーンを見てたら、ちょっとそれを思い出しましたね。
川島 うちらのときは大阪球場の跡地でやってたな(解体工事前は住宅展示場と場外馬券売り場になっていた)。そこで2丁目(心斎橋筋2丁目劇場)の人、千原兄弟さんやジャリズムさんたちが練習してたと聞いて、聖地巡礼的に「そこでネタ合わせしたらおもろなるんちゃうか?」と思って。そういうのを思い出すね。
未来からの目線で語られるボーナストラック
川島 次は山内くんからの質問です。
「コミックのラストには、必ず大を知る人物がドキュメンタリー的なコメントを寄せてますが、このアイデアはどこから来たのでしょうか?」
山内 単行本の最後にボーナストラック的な感じで、数年後に家族や友人、関係者が大にインタビューコメントを寄せるマンガがあるんですよ。ちょっと新しい手法だなと思ってて。
川島 「大が成功した現在から過去を振り返る」という目線なんですよね。「あの時、車に乗せてあげたよ。あんなに偉くなるとはね」みたいな。すごい手法ですよね。
山内 このアイデア、どうやって思い浮かんだのかな?
川島 先生から回答いただきました。こちら。
「担当編集さんのアイデアです。画期的かつ挑戦的な試みだと思いました。担当編集者がずっと一緒で、『BLUE GIANT SUPREME』からストーリーディレクターとして『NUMBER 8』という名前で入ってもらっています」
川島 先生と二人三脚的に作品を作り上げてきた、その編集の方が今日はスタジオに来られているんですよ。このボーナストラックのインタビューのアイデアを出されたのは編集さん?
編集 確かそうです。
川島 でもこれ、すごく勇気がいることじゃない? 先に「未来で売れる」ということにしちゃってるから、あとで修正できないという問題もありますよね?
編集 そうですね。逆にボーナストラックで言ったことを回収しなきゃいけなくなるようなこともあります。
川島 「しまった。先にこれ描いちゃったから、構成のつじつまを合わせないといけない」ということは実際ありました?
編集 『BLUE GIANT』4巻のボーナストラックで、高校の同級生だった泰三というキャラクターが「大学に合格したとき、大が花束を持ってきてくれた」とインタビューで語ってるんですけど、第2部のヨーロッパ編のときに「そろそろ泰三が大学に合格する頃じゃないか?」という話が出て……。
川島 いらんこと言うてもうたなあと(笑)。
山内 それ、めっちゃ大変じゃないですか? じゃあそのために帰国する話も作らないといけないわけですよね。
川島 第2部で「なんとかして帰国しないといけない」というくだりがありましたもんね。このマンガって、ジャズプレイヤーからすごく評価が高いんですけど、ディテールはどうやってるんですか?
編集 石塚さんがサックス1本持ってるので、それを描いてるのと、あとはジャズクラブに行ったときの写真を参考にしたりしてますね。
川島 先生、サックスはどうなんですか?
編集 まあまあ上手です。
山内 どうやって上手になったんですか?
編集 独学で。
川島 大やん(笑)!
『釣りバカ日誌』をリスペクトする理由
川島 続いて私からの質問です。
「アイディアを出すために、先生も夜走ったりしますか?」
川島 大がそうだから。とにかく煮詰まったら走る、練習するしかないってことです。先生の回答はこちら。
「運動大好きです。インドア人と思われるのが嫌で、『今から3キロ走ってこい』と言われても、いつでも『押忍!』と飛び出せるようにしています」
山内 やっぱり体動かしてるんですね。
川島 じゃないとあんなに描かれへんよね。山内君は煮詰まったらどうしてますか?
山内 寝ます。僕も濱家も、お互い集中力がもつ時間が1時間くらいなんです。だから単独ライブの打ち合わせでも、1時間超えてまだ「うーん」と考える感じになったら、「もう帰ろっか」ってなります。
川島 いい職場! でもそういうのって時間じゃないからね。
山内 そうなんです。それ以上その場にいて頑張ったところで、アイデアが出る保証はないから。それならいったん解散しようと。何気ないときに出る可能性も全然あるし。だから長時間粘るのはまったくしてないです。
川島 粘って出たやつって、妥協案やからね。今日帰りたいだけのやつ。「いったん持って帰ります」の方が絶対いいよ。
山内 若手のとき、ちょっとお金を持てるようになって、練習場所が外からカラオケ屋のフリータイムに変わったんですけど、そのときもやっぱり1時間もたないので、1時間経ったらどちらかが歌ってました。今、相方に聞いてほしい歌を。それやって終わる(笑)。
川島 それの方がいいよ。すごく健康的だと思う。続いての質問はこちら。
「影響を受けたマンガ家は誰ですか?」
川島 先生の回答。
「ちばてつや先生、北見けんいち先生、やまさき十三先生、弘兼憲史先生、浦沢直樹先生などです。ちば先生のマンガや北見先生の『釣りバカ日誌』は、キャラクターの全身が描いてあるコマのオンパレードです。全身を描くのはものすごく根気が必要なので、超絶尊敬しています」
川島 そういう目線で『釣りバカ日誌』を読んだことないな。確かに『BLUE GIANT』でも、大の全身を描くシーンがよく出てきますね。
山内 ところで川島さんがサックスをやっているのは、『BLUE GIANT』の影響もちょっとはあったんですか?
川島 40歳になって「やったことないことをやりたいなあ」というタイミングで、藤井隆さんから「楽器やったら?」と言われて。それで最初に頭によぎったのがテナーサックスなんですよ。だからもう絶対『BLUE GIANT』の影響。『BLUE GIANT』でサックス始めたのは俺と(バイきんぐの)小峠さんですから。
山内 え、小峠さんも!?
川島 あんまりメディアで言ってないけど、黙ってやってるんですよ。自分の仲良しの芸人さんとトークライブをやって、最後に「もしよかったら聞いてください」といってサックスを演奏するという。
山内 それ、面白いからやってるんですか?
川島 マジのほうです。『BLUE GIANT』を読んで熱くなって、「俺もサックスをやりたい」ということで、ヤマハ音楽教室に通われて。俺も『BLUE GIANT』のおかげですごい経験をさせてもらったよ。スタジオノアという音楽スタジオがあって、そこを自分で予約するわけですよ。で、予約時間が来るまでロビーで待ってると、18歳くらいのバンドマンがめっちゃ喧嘩してんねん。「俺たちこのままでいいのかよ!」とか言いながら胸ぐら掴んだりして。それを45歳のおっさんがサックス持って震えながら見てるという(笑)。ちなみに石塚先生が最近読んでいる作品についても聞きました。こちらです。
「お薦めされた作品を単行本で読むことが主です。今は『特攻の拓』を読んでます。『チェンソーマン』や『鬼滅の刃』など、流行っているマンガも読みます」
川島 これは編集さんが薦めたわけですよね。『特攻の拓』はなぜ?
編集 『特攻の拓』はキャラクターが素晴らしいので、語り合いたくて。
山内 スーパーマラドーナの武智さんが言ってる、「ひき肉にしてやんよ」の元ネタのマンガですよね。
川島 いろんな表現がありますよね。「”不運(ハードラック)”と“踊(ダンス)”っちまった」とかね。もしかしたらそのうち『BLUE GIANT』に「ひき肉」という単語が出てくるかもしれません(笑)。
最後に、石塚先生から番組宛てにサイン色紙をいただきました。
石塚真一先生ガチアンケートの模様は、次回放送の「川島・山内のマンガ沼」にて!
(構成:前田隆弘)
【放送情報】
次回放送
読売テレビ●7月3日(土)深1:28~1:58
日本テレビ●7月8日(木)深1:59~2:29
「石塚真一先生ガチアンケート」を放送。
(Tverでも配信中!)
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